INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.07: Honest

Interview by Chie Kobayashi

 


SATANIC ENT.を編集するスタッフが、今現在気になっているけど、まだSATANIC ENT.ではピックアップしていない次世代のバンド・アーティストに話を聞き、一方的に紹介するというシンプルかつ偏愛極まりない連載企画"Who's Next"。

第7弾では“名古屋メロディックパンクバンドになる予定”のHonestを紹介。パンクバンドを聴くきっかけはミュージックステーションで見たKen Yokoyama(2015年7月)、「YouTubeよりも口コミが面白い」という新世代で、かつ現在メンバーはまだ1人。しかし今年1月にリリースした1stデモCD「HONEST」を聴くとまっすぐな“メロディックパンクバンド”であることがわかる。そんなHonestの中心人物である……というか、唯一のメンバーである、17歳の樋口浩太郎に話を聞いた。

絶対にバンドがやりたかった

──1stデモCD「HONEST」購入させていただきました。歌詞カードに「KENさんのMステを見てHi-STANDARDを知ってギターを弾き始めてバンTばっか着てるガキンチョになりました」とありました。現在17歳の樋口くんがバンドを始めるに至った経緯を教えてもらってもいいですか?

楽器を始めたのはドラムが最初で。小学生のとき、近所の祭りで和太鼓を叩いていたんです。でも和太鼓って太鼓が2つだから、だんだん物足りなくなってきちゃって。で、ドラムを始めました。そのあと一度ギターも始めたんですけど、うまくならなくて挫折して。その当時は親の影響で聴いていたMr.Childrenやスピッツが好きで、そういう曲を練習していました。

──「ミュージックステーション」でKen Yokoyamaを見たのは何歳のときですか?

小学5年生のときですね。健さんを見たのは本当に偶然なんですよ。「ドラえもん」を観て、「クレヨンしんちゃん」を見たその流れで。すごくカッコいいと思って、そこからHi-STANDARDを知って、お父さんが持っていた「MAKING THE ROAD」のCDを聴いて。お父さんは基本的にブラックミュージックが好きなんですけど、なぜかNICOTINEのCDとか「Punk-O-Rama」(EpitaphRecordsによるコンピレーションアルバムシリーズ)も持っていて、Ken Yokoyamaが好きならと勧められて。そうしていくうちに、自分でも掘り下げてNOFXやRancidを聴くようになりました。でもやっぱり一番好きで聴いていたのはHi-STANDARD。「ANOTHER STARTING LINE」や「The Gift」はすぐに買いましたし、過去のものも近所の中古CDショップや、今もお世話になっている「マーブルレコード」で集めていきました。中学生になって、近所で「FREEDOM NAGOYA」というフェスがあることを知ったのですが、過去に健さんが出ていたことを知ったときは悔しかったですね。

──パンクバンドのライブを観に行ったことは?

小さなライブハウスに行くようになったのは最近で。それまでは本当に少し。dustboxのツアーファイナルをZepp Nagoyaに観に行ったのと、「FREEDOM NAGOYA」くらいです。dustboxのツアーファイナルは2階席で観てたんですけど、大きな箱の2階席でも、ドラムのビートや爆音が心に届いた感じがして感動しました。あとはお客さんが暴れ回る感じを見て「ヤバー!」って。「FREEDOM NAGOYA」は土曜日だったので朝から行って最前列で暴れて……っていうか暴れてる人に流されていくみたいな(笑)。

──そんな樋口くんがHonestとして音楽活動を始めたのはいつですか?

ライブに出させてもらうようになったのは今年からで、デモを作ろうと思ったのが去年、コロナの自粛期間に入ってからです。

──活動の最初はデモCDを制作したことだったんですね。

はい。実は高校受験に失敗しまして……。入学して周りを見渡したときに「ここで何もしないで卒業したらヤバイな」と思ったんです(笑)。だから高校を卒業するまでに音楽活動を始めてCDを作ろうと決めました。でも周りに音楽を好きなやつもいなかったし、学生だから思うようにお金も貯まらなくて。「音楽活動をしたい」という気持ちだけが頭の中にある状態で時間だけが過ぎていたんですけど、去年、コロナの影響で夏休み3回分くらい、急に学校が休みになって。そこでお金を貯めて、遊びで作ってた曲たちを仕上げて、CDを作ったのがHonestの始まりです。

──普通は……と言うのもおかしいですけど、ライブをやってオリジナル曲を貯めてからデモCDを作ることが多いと思うのですが、CDを先に作ったのはどうしてですか?

CDをきっかけにメンバーが集まればいいなと思って。本当はインタビューとかしてもらえるってなったら「こいつと昔から友達で、こいつがベースを始めたから俺もギター始めて……」みたいになるのが理想だったんですけど(笑)。なかなかハマる人が見つからなくて、メンバーが揃うのを待てずに1人で始めちゃいました。

──とにかくバンドがやりたかったんですね。

はい。絶対にやりたかった。

──絶対にやりたかったのはどうして?

ライブ映像を見て、人がいっぱい集まって盛り上がってるところを観たときに、「これを観に行きたい」というよりも、「ステージに立って、暴れてる人たちを観てみたい」と思ったんです。僕、Nirvanaもすごく好きなんですけど、カート(・コバーン)みたいに、ギターかき鳴らしてマイクに向かって叫んで、お客さんとごちゃ混ぜになって……みたいなのができたら楽しいだろうなって。

──先ほど「受験に失敗した」と言っていましたが、それも大きいのかなと思いました。高校生活が充実したものになっていたら、バンドに対してそこまで強い気持ちを抱かなかったのかもしれないなと。

そうですね、それはあります。だって高校生活、全然面白くないですもん(笑)。思った以上に青春がないというか……「こういうのじゃない!」みたいな気持ちがあって。そういう意味では受験に失敗したのはターニングポイントかも。

──あとネガティブな思い出になりそうなコロナ禍も逆に味方につけて。

意外と高校生は喜んでると思います。みんな「休みだー!」って言ってました(笑)。まあそのあと、休みだった期間の埋め合わせが大変でしたけど。でもやっぱり自粛期間にできたことは多かったし、考える時間も多かったので、よかったですね。
 

YouTubeよりも口コミが面白い

──今回のデモCDはギター、ベース、ドラム、すべてのパートを樋口くんが演奏したそうですね。

はい。スタジオの人にアドバイスをしてもらいながらドラムを叩いてギターを弾いて……そしたら「ベース弾いちゃいなよ」ってスタジオの人に言われて、ベースも自分でやりました。

──打ち込みでも曲が作れるこの時代に、どうして全パート自分で演奏したんですか?

とにかく楽器、生音が好きなので。スタジオの人にも初めは「打ち込みでもいいんじゃない?」って言われたんですけど、それだとキレイすぎると思ったんです。人間臭さの感じられる、生音がいいなと思いました。ベースはもし自分で演奏できなかったらスタジオの人に弾いてもらってもいいかなと思ってたんですけど、とにかく生音がよかった。

──ドラムも叩けて、ギターも弾けて、今回ベースも習得したわけですが、今募集しているのはベースとドラムですよね。

はい。

──それはどうしてですか? ギターを弾きながら歌うのが一番好き?

自分が作ったこの曲を誰かに歌われたくないんです。デモに入ってるもの以外にも、曲がどんどんできているんですけど、どれも「ほかの人に取られたくない」っていう気持ちがあって。

──そう思える曲を作ることができているのはいいですね。

はい。出来上がったときにニヤニヤするっていうか、自分で「これ、ヤベーわ」ってなるものを曲にしています。

──正直、今回インタビューをさせてもらうまで、このデモCDがバンドとしての最初の活動だと思わなかったんです。曲のクオリティが高くて。

ありがとうございます。デモですけど、僕にとって最初の作品になるので絶対にいいものにしたくて。起承転結とかも考えて作りました。1曲目は誰でもわかる英語がいいな、2曲目は悲しい曲で、最後はショートチューンで終わってみたいな。……そう思って1曲目を「I Like You」にしたんですけど、あとあと「クソダセー」って思ってます(笑)。Twitterとかでも「I Like You」が好きって言われたりすると恥ずかしい(笑)。語呂が良いし歌ってて口が気持ちいいから、まあいいんですけどね。

──普通に口にするとちょっと恥ずかしくても、歌詞にすることで言える言葉もありますしね。今も曲ができているとのことですが、Honestとしての今後の予定は?

メンバーが揃ったらバンドでライブしてみたいです。今1人で出させてもらっているライブハウスに、バンドで出たい。それが今一番の目標です。できれば今年中にはと思っていますが、最悪、大学で集められればと。

──現在、Twitterでは「Honest」のトレイラーを公開していますが、トレイラーやMVをYouTubeにアップしてメンバー募集する予定はないんですか?

今のところYouTubeに何かをアップする予定はないです。口コミで広がっていくというのが面白くて。あとはCDが一番好きだから。

──世代的に、周りの人はCDを再生する機械も持っていない人も多いのでは?

はい。CDを買ってくれた友達でも「買ったけどCD再生できないんだよね」ってやついます。

──それでもCDにこだわるのはどうしてなんですか?

もちろんサブスクもいいんですけど、僕自身、CDを集めるのが楽しくて。お金を貯めてタワレコに行ったり、中古CD屋さんで持ってない過去のCDを揃えたり。最近はレコードも集めてるんですけど、そういうのが楽しいんですよね。こういう時代だからこそ、デジタルじゃなくて、アナログなものを使ったほうが面白いかなという気持ちもありますし。で、CDを買って、歌詞カード見て「あ、こいつ高校生なんだ」ってわかってくれるくらいがいいんですよ。そうやってCDを聴いてくれた人の中からメンバーが見つかればいいな。名古屋で活動できる人で募集中です!



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