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タイトル

ROCK CLASSICS SELECIONS Vol.07 selected by TAISHI IWAMI

この世に数多溢れる名盤と呼ばれる音源の数々。このシーンにおいても、そんなキラキラ金ピカのままに輝き続けるロックのクラシックが存在するわけです。この連載企画"ROCK CLASSICS SELECTIONS"では、現在のシーンに繋がるパンク、ロック、ラウドの名盤を各セレクターにピックアップしてもらい、セレクターの思いと共にお届けしたい。このシーンが好きでCDショップやサブスクでもっとディグりたい! というアナタに捧げる名盤特集。最高のロックエクスペリエンスをどうぞ!
第7回目のセレクターはDJ兼ライター、TAISHI IWAMIによるセレクション。ガレージを知っている人も知らない人も聴くべき2000年代初期の大名盤。

Select ROCK CLASSICS

jet

Jet "Get Born"(2003)


Recommend by TAISHI IWAMI

"2020年現在でも時々耳にする、2000年代初頭から後半にかけて起こった“ガレージ・ロック・リヴァイヴァル/ロックンロール・リヴァイヴァル”と呼ばれるムーヴメントとは何だったのか。文字通り、1950年代のロックンロールや60年代のR&B/ガレージ、そこに連なる70年代のオリジナル・パンクなどのサウンド・スタイルを受け継いだバンド勢の台頭を指した言葉だが、実際に“ムーヴメント”と言えるほどのものだったのか。ヴィンテージなサウンドを愛好するバンドはいつの時代にも存在し一定の人気がある。そのシーンが大きな塊として時代を動かすほどのモダンな空気を持っていたのかとなると、もともとその手の音楽が好きだった私の贔屓目線からでも、そこまでではなかったように思う。

とは言え、ガレージやオリジナル・パンクの文脈上にあるシンプルで生々しいエネルギーを受け継ぎつつ、エポックメイキングなポテンシャルが溢れ出すサウンドを鳴らすいくつかのバンドのデビューがシーンに与えた衝撃は凄まじく、私がその頃働いていたレコード店の景色にも、新しい色が加わったことは確かだった。派手に装飾されたサウンドや大袈裟なまでに泣き向かうメロディーといった、商業的に成功するロックのイメージを覆す脱力感とクールなセンスで大きな人気を獲得したThe Strokes、オリジナル・パンクの代表格・The ClashのMick Jonesがプロデュースを手掛けたThe Libertines、“The BeatlesとNirvanaの出会い”と評されたThe Vines。それ以前からアルバムを出してはいたが、このタイミングで大きく取り上げられた、トラディショナルなブルーズをギター・ヴォーカルとドラムだけでアップデートしたThe White Stripesや、独自のレトロなエンターテインメント性に溢れた曲やライヴが鮮烈だったThe Hivesといったバンドに出会ったことで、天地がひっくり返ったような感覚を覚えたリスナーは多くいただろうし、かく言う私もその一人だ。

そして、“ストーナー・モッズ”という斬新? な触れ込みとともに日本国内デビューし、のちにさらなる大躍進を遂げたKings of Leonや、ポストパンクの鋭角的なギター・サウンドとキャッチーでダンサブルなビートが融合したFranz Ferdinand、パンクとダンスを掛け合わせた“ディスコ・パンク/ダンス・パンク”という概念を数段上に持ち上げたThe Rapture、今もなお世界的にもっとも重要なロックバンドとして語られるArctic Monkeysら、さまざまなスタイルのバンドが表舞台に次々と登場し、連動性とスピード感を以て多くの人々に広まっていったことは間違いない。そこにはKlaxonsのようなニュー・レイヴと呼ばれたシンセの強いダンスミュージックに接近したサウンド、VitalicやJusticeらエレクトロ勢までもが重なってくる部分があると、いろいろと端折って言ってもそこまで暴論にはならないだろう。ようするに、“ガレージ”は引き金の一つであり、もっと広い意味で、プリミティヴなロックのエネルギーを独自の感覚で進化させたバンドやアーティストが最高におもしろかった時期、ロックというターミナルから、どこへでも飛んでいけた時代だったのではないだろうか。

そんななかから今回紹介するのは、オーストラリアはメルボルン出身の4人組・Jetが2003年にリリースしたデビュー・アルバム『Get Born』だ。彼らは、異彩というか、インディペンデントなエッジや斬新な切り口を求めたわけでもなく、商業主義に対するカウンターでもなく、むしろ伝統的でビッグなロックの超王道を躊躇なく貫いたからこそ、ひと際眩い輝きを放っていた。同じオーストラリアの大先輩・AC/DC、The Rolling Stones、Led Zeppelin、The Whoといったレジェンドたちのスタイルをダイレクトに踏襲し、飛び抜けたキャッチーなセンスとともにワイルドでパワフル且つクールにぶちかました、“ザ・ロックンロール”が鳴り響き、世界で350万枚を超えるヒットを記録した。



こちらはiPodのテレビCMに起用され、ここ日本でもヒットした彼らの代名詞的な曲。


豪快なリフとタフなビート。すっきりしたいならJetを聴こう。


イントロのスリルが思いっきりAC/DC。


こんな激甘バラードも。こちらはマストで押さえておくべき隠れた(というほどでもないが)超名曲。


ベタベタだけどクールでハイファッションな雰囲気も漂う。あらためて唯一無二。“ロックンロール”、“Jet”、“Get Born”、私とっては三つ合わせて勇気の出る魔法なのだ。彼らはその後、2006年に『Shine On』、2009年に『Shaka Rock』、2枚のアルバムをリリースするも2012年に解散。2016年には再結成し2018年には来日も果たしている。再結成後の新曲は2017年にリリースしたイタリアのエレクトロ・ハウス・プロジェクト・The Bloody Beetrootsとのコラボ曲「My Name Is Thunder」のみだが、タイトルを超えてくるストレートなインパクトがたまらない最高にカッコいい曲なので、ぜひチェックしてもらいたい。ちなみにエレクトロ・ヴァージョンとロック・ヴァージョンの2種類があるので、こちらではロック・ヴァージョンを。


最後に余談を。私は大阪・心斎橋のmusic bar ROCK ROCKという、来日したアーティストが高い確率で訪れる店で、上京する2017年までDJをしていた。そこにJetが4人全員で来店した時の話。

大騒ぎの店内。そんななか、ギター・ヴォーカルのNicholas John CesterがDJブース内に。私のレコード・コレクションを物色しつつiPodの画面を見せ「お前、これ持ってるならこのバンド知ってるか?」など、彼と音楽談義をしながらDJをしていた。すると、お客さんの一人がブース前にやってきて「大好きなバンドが目の前にいるなんてめったにない機会だから「Are You Gonna Be My Girl」をかけてくれませんか?」とリクエストをくれた。

アーティストは自分の曲がかかることを嫌がるケースも多いので、彼に確認すると「ああ、気持ちはわかるしきっとエキサイティングなことになるだろうね。でも、こんなダメな曲はかけなくていいからあれにしよう。彼女もわかってくれるさ」と、私のレコードバッグから見えていたSex Pistolsのレコードを指さした。私がその旨を彼女に話したあと、彼は彼女に握手を求めた。なんてカッコいいんだ。あの時の体中に電気のようなものが走り鳥肌が立った感覚は今でもはっきり覚えている。"



Selecter's Profile taishi
TAISHI IWAMI
大阪を拠点に90年代後半よりDJを始める。心斎橋ROCKROCK、京都CLUB METRO、新宿ROLLING STONEといった東西老舗クラブでのレギュラーDJほかさまざまなイベントやフェスにも出演。レコードショップのバイヤーやラジオDJなども経験し、近年はライター/編集者として読むメディアの世界にも本格的に関わるようになる。2017年に上京。現在は執筆やDJ、イベント制作、自主でのマンスリー・パーティ・SUPERFUZZのオーガナイズなどを中心に活動中。
https://twitter.com/TAISHIIWAMI
https://www.instagram.com/taishi
iwami/
https://twitter.com/superfuzz2019
https://www.instagram.com/superfuzz2019/


いかがでしたでしょうか、今回の"ROCK CLASSICS SELECTIONS"。
最後のエピソード、本当にイカしてますよね。イケてるR&Rは夏に聴くとさらに爽快で痛快。この夏、家でパーティするならJetもプレイリストに加えてみて。
それでは、次回もお楽しみに!!

ROCK CLASSICS SELECIONS ARCHIVE

Vol.06 selected by SENTA from NUMB-Madball “Set It Off”(1994)
Vol.05 selected by TAISHI IWAMI-GREEN DAY “Dookie”(1994)
Vol.04 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - blink-182 “Enema Of The State”(1999)
Vol.03 selected by SENTA from NUMB - HATEBREED / Satisfaction Is the Death of Desire (1997)
Vol.02 selected by TAISHI IWAMI - Matthew Sweet / 100% Fun (1995)
Vol.01 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - Rage Against the Machine / S/T (1992)