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live report

タイトル

SHANK “LAST ACOUSTiC TOUR SLOW SHANK” LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by 岩渕直人


2020.11.9
SHANK “LAST ACOUSTiC TOUR SLOW SHANK”@Billboard Live YOKOHAMA


 

「いつ(ライブが)通常通りに再開できるのか分からない状況なので、今考えてるのはディナーショウですね。」(松崎兵太Gt/Cho)
「人を入れて、距離を取って、とかいくら考えても今まで通り普通にはライブ出来ないんで、何か変わったことをやりたいと思っています。(中略)当面の目標はクリスマスディナーショウですね。」(庵原将平Vo/Ba)
(2020年8月20日公開のインタビューより抜粋)

今年9月2日にリリースした『Candy Cruise EP』のインタビューで、前掲の通りメンバーたちがディナーショウと言い出した時は、申し訳ない。てっきりジョークだと思っていたのだけれど、「LAST ACOUSTiC TOUR SLOW SHANK」と銘打ったツアーに大人の音楽ファン向けのライブレストランという、これまでのSHANKらしからぬ会場をブッキングしたんだから、ディナーショウはジョークなんかじゃあなかったようだ。

さすがにクリスマスディナーショウとはならなかったし、料理もフルコースとは行かなかったが、ウィキペディアによると、ディナーショウーとは食事と芸能が楽しめる催しのこととあるから、ディナーショウをやりたいというメンバーたちの願いは、とりあえず叶ったと言ってもいい。

いや、とりあえずどころか、「Billboard Liveにこんなにパーカーの人、来ることないでしょ?(笑)」と庵原が開口一番言った通り、普段、Billboard Liveにはいない類の観客が客席の大半を占めるという滅多に見られない光景が我々の目の前に広がったんだから、その痛快この上ないことを思えば、大成功と言うべきだろう。今まで通り普通にライブができないなら、何か変わったことをやりたいというバンドの思いはこの日、見事、成就した。

 そして、Billboard liveだからと襟付きのシャツを着てきた松崎を、そういう自分も横縞のおしゃれなニットを着てきた庵原がイジりながら、「長いことやるんで、お酒でも飲んでゆっくりしてってください」と自分たちのアコースティック・ライブを初めて観るかもしれない観客に楽しみ方を伝えてから、演奏は「Surface」でスタート。アコースティックということなら、まずこの曲だろうとSHANKファンなら誰でも思うに違いないその「Surface」からオリジナルとのギャップにちょっと驚かされるアコースティック・アレンジがメランコリックな魅力を際立たせる「Departure」になだれこみ、アコースティック・ギターでコードをかき鳴らしても曲が持つオルタナ・ロック調という芯は変わらない「Rising Down」に繋げたところで、「調子乗ってニット着てきたけど、暑かっ」と庵原は件のニットを脱ぎ、いつも通りの白いTシャツ姿に――と書いたら、メンバーたちの熱の入れ具合がわかっていただけると思うが、そこからアンコールを含め、3人は全19曲(現在も絶賛ツアー中なのでセトリの公開は控えさせていただく)を、庵原が曲ごとにアコギとベースを持ちかえ、池本雄季(Dr/Cho)が曲によってはカホンも叩き、そして松崎が時折、ハーモニカも吹きながら、1時間半たっぷりと披露していった。
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11月1日の岡山からスタートしたツアーはこの日、5公演目。全公演2部制だから、筆者が見たのは9本目のライブとなる。「SHANK “Acoustic Live 2020”」と銘打った9月6日の恵比寿LIQUIDROOM公演の時に感じられたという堅さはもはやなく、途中、メニューを見ながらオーダーしたバーボンやカクテルを飲んだり、軽口を叩いたりしつつ、気持の赴くまま、次にどの曲を演奏するのか決めながらというある意味リラックスした進行は、メンバーたちが思い描いていたアコースティック・ライブの理想にかなり近かったんじゃないか。

 もちろん、リラックスしていたとは言え、決して緩んでいたわけではない。いつものように観客と言葉を交わせない代わりにバンドのインスタで募集したファンからの質問にメンバーが答える中盤のコーナーで、携帯電話の電波が圏外だったため繋がらないというアクシデントが発生。急遽、スタッフが店のWi-Fiに繋げている間、「1曲やろう。だらっとしてるから速い曲。暗い曲が多いSHANKの中でも爽やかな」(庵原)と「Honesty」を疾走感満点に披露。見事、流れをピシッと引き締めてみせるあたりは、前身バンドの結成から16年、ライブ・シーンで生き残ってきたバンドならではだ。どういう空間を作りたいのか、アクシデントが起きたからこそ垣間見えたライブに対するバンドの姿勢が興味深かったりもしたわけだが、この日、庵原と松崎がそれぞれに言った「怖かったんですよ。望まれないこと(=アコースティック・ライブ)をするって」「最後のつもりなんで」という言葉からは、今回のアコースティック・ツアーがこれまで通りライブができないんだから背に腹は代えられないという苦渋の選択だったことが窺える。しかし、どうしてどうして、蓋を開けてみれば、SHANKというバンドが持つ本質のところの魅力を今一度印象づける結果となったんだから、庵原曰く望まれないことに挑戦することには大きな価値があったはずだ。
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 ところで、SHANKの本質のところの魅力とは何か? それはもう、序盤で早くも庵原の口から飛び出した「やっぱSHANKって曲がいいよね!」という一言に尽きる。これまでライブハウスを熱狂させてきた速いビートをはじめ、圧倒的なバンド・サウンドから歌メロを浮き彫りにするようなアコースティック・アレンジにしてみたところ、曲の良さが際立ってきた。これまでSHANKのライブを見て、気持ちがアガるとか、かっこいいと思ったことはあったが、曲がしみじみと染みると感じたのは、個人的にはこの日が初めてだった――と言ったらメンバーたちは気を悪くするかしら。

 もっとも、ファンはそのへんをよくわかっているらしく、今回、アコースティック・ライブをやるにあたってファンからのリクエストがやたら多かったのが、ライブで1回もやったことがないバラードの「Judy」というんだから、バンドとファンの間には、曲がいいという言わずもがなの共通認識がずっとあって、今回のアコースティック・ツアーはそれを面と向かって確かめ合う機会にもなったんじゃないか。松崎のアコギと池崎のカホンだけをバックに庵原が歌い上げるその「Judy」を聴きながら、ふとそんなことを思った筆者はこの日、バラードにアレンジした「Keep on Walking」を聴いた時もメロディーの良さが染みるとしみじみと思ったのだった。
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 その「Keep on Walking」のオリジナルは、12年発表の『Calling』のオープニングを飾るメロディック・パンク・ナンバーなのだが、そんなふうにアコースティック・ツアーを開催するにあたって、普段やらないようなアレンジをした曲が幾つもあって、せっかくアレンジしたんだからとレコーディングした曲の数々を、アコースティック・アルバムとして制作し配信リリースすることになったというから、「LAST ACOUSTiC TOUR SLOW SHANK」、当初考えていた以上の成果を残せるんじゃないか。LASTとは謡っているけれど、ライブを重ねながら、「年1ぐらいでやりたい」(松崎)とメンバーたちの気持ちも変わってきたようだから、いつかまたやってほしいと思わずにいられないが、庵原が以下の言葉に込めた切実な思いを考えると、無邪気に、またやってほしいとはちょっと言いづらい。

「このツアー、これで最後にしたい。ワンマンもそもそもしたくない。でも、この状況じゃないですか。ちょっとずつ止まっていたものが動き出している。絶対、(今まで通りのライブをやりに)戻って来るんで、それまで一緒に生き残りましょう」
 本編ラストに選んだのは、そんなステートメントに相応しい「Set the fire」。彼らのライブには欠かせないこの曲を、テンポを落として観客に語りかけるように演奏した3人は客電がついても帰ろうとしない観客のアンコールに応え、さらに2曲を披露。オーラスは「気をつけて家に帰ってね」(庵原)という思いとともに「Home」で締めくくった。
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曲に込めた思いとは裏腹に別れを名残惜しくさせるメロディーを持つこの曲を、最後の最後に選ぶなんて、なんとも心憎い。印象的なイントロのギターのアルペジオもアコギで奏でると、オリジナルとはまた違った印象になるからおもしろい。この曲は前述したアコースティック・アルバムに入っているかしら? それも含め、この日、SHANKに対する興味が筆者の中でぐんぐんと膨らみ始めた。
もしチャンスがあったら、ツアーを通してどんな気づきがあったのか、メンバーたちの話を訊いてみたい。
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