INTERVIEW

Northern19「GOODBYE CRUEL WORLD」INTERVIEW!!

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Akira”TERU”Sugihara

 


Northern19がニューシングル「GOODBYE CRUEL WORLD」を7月28日にリリースした。

リリース発表時から「バンドがネクストレベルに到達した」と各所で伝えられていた本作。その実は、“自分たちがエキサイトすることをやる”、その一心から生まれた1枚だった。本作の手応えや、細かなこだわりについて3人に話を聞いた。
 

新作はブラストビートから

──さっそくなんですが、『GOODBYE CRUEL WORLD』を再生して驚きました。1曲目「MOVE ON」から今までのNorthern19の1曲目と雰囲気が違って。歌心のあるイントロも印象的でしたし。

笠原健太郎(Vo, G):ありがとうございます。メタラーとしては、ギターソロとかギターリフで歌うのが好きなので、そう言っていただけるとうれしいです。

──勝手に、“ライブでシンガロングができないぶん楽器で歌おう”みたいな意図があったのかなと推測してしまったのですが。

笠原:あー……正直なこと言うと、それはそんなに意識はしていなくて(笑)。自然と出てきたものです。最初にオクターブのフレーズができて、これはアルペジオにも置き換えられるぞと思ってアルペジオのパートも作って。結果、オクターブプレイとアルペジオ、同じメロディでのバリエーション違いが2パターンできました。自分たちの曲にあんまりそういうプレイがなかったので、うまくできたなと思いましたね。

敦賀壮大(B, Vo):最初のイントロ部分は、作り始めたときはブラストビートじゃなかったんですよ。で、ブラストにするときに「哀愁ハードコアみたいにしたい」という話になってアルペジオになりました。

馬場豊心(Dr, Cho):そうだ、ブラスト入ってなかったんだ。メロディは一緒だったけど、イントロもサビもツービートで。

笠原:そうそう。で、「この曲、ブラスト導入してみない?」って言って、まずはイントロにブラストを入れてみて。そこからサビメロを変えて、ちょっと展開を整えたら、アルペジオのイントロが浮かんで。いい曲って、全部のパーツが準備されていたかのように偶然ピタッとハマるんですけど、この曲にはそれを感じました。

──「ブラストを入れてみよう」というのはどなたのアイデアだったんですか?

笠原:僕です。最近、いろんな音楽を聴いては「この曲カッコいいよ」とかそういう話をメンバー間でめちゃくちゃしてたんですよ。その中で、ブラストビートいいなと思って。ブラストっていわゆるハードコアとか、ラウドな曲に使われることが多くて、そこにメロディが乗ってることってあんまりない。近いのがブラックメタルだったんですよね。そこからヒントを得て、自分たちらしいメロディアスなものを乗せたら面白いんじゃないかと思ってやってみた感じです。

──ブラストビートを取り入れるというのは、ドラマーの馬場さんにとっては大きな変化ですよね。

馬場:そうですね。今までもちょこちょこ入れてはいたんですけど、今回はメインで入れているので、叩き方を研究しました。

笠原:Northern19が初めてブラストを入れたのは、たぶん2012年くらいで。そのとき僕がハードコアにどハマりしてて、馬場くんに「ブラストやってよ」って言ったら、馬場くんがなんとなくでやってくれて。「できるじゃん!」って曲に入れたんですけど……。

馬場:なんとなくでやったから手首を痛めちゃって。それで嫌になったんですよ、「ブラストなんなの!?」って(笑)。だから自然と遠ざけていたんですけど。

笠原:今回、自然と戻ってきたよね。

馬場:今まではスタジオで曲を作っていたんですが、壮大が入ってからパソコンを使って曲を作るようになったので、叩けなくても曲が作れちゃうんですよね。それで今回ブラストを入れた曲ができたんですけど、すごくいいからこれでやろうということになって。レコーディングが終わった今もいまだに研究してます。YouTubeでブラストビートを叩く動画を検索しては、手首ばっかり見てます(笑)。
 

LUNA SEAを聴け

──先ほど、最近は聴いている音楽の話をよくするとおっしゃっていましたが、もともとそうなんですか? それとも壮大さんが入ってから、価値観の共有みたいな意図を込めて?

笠原:壮大が入ってから変わったと思います。前からよくメンバー間でそういう話はしていましたけど、より増えた。壮大はポップパンクが好きで、でも幅広くてって感じで。僕は好きで、馬場くんはあんまり聴いてないGuns N' Rosesを聴いていたりするので、そのへんの話をしたり。



敦賀:親の影響でハードロックはよく聴いていて。そのあと2000年代のメロディックパンク、最近は静かなエモめのものをよく聴いています。THE YELLOW MONKEYも好きで、その話をしたりしますよね。

笠原:そうそう!

馬場:ただ、うちらの世代はビジュアル系がめっちゃ流行ってたんですけど、壮大はそこがなくて。そのあたりは年齢差を感じます。

笠原:だからよく「LUNA SEAを聴け」って言ってます。「Jさんのベースやばいから!」って。

敦賀:今作のレコーディング中、自分の出番がないときはずっとLUNA SEAのベースをコピーしてました。

──笠原さんには、音楽オタクというか、常に幅広く音楽を聴いているイメージがあります。そこをみんなで共有することによって、バンドでもいろんな要素を取り入れやすくなりそうですよね。

笠原:そうですね。普段から自分なりのアンテナでいろいろ聴いては、ジャンルとか関係なく「これはノーザンに持ち込めそうだな」っていうものをアイデアをストックしていて。曲作りのときに「こういうのどう?」って共有していく感じですね。
 

日本のメロディックパンクを変えていきたい

──冒頭で、「MOVE ON」のイントロに驚いたという話をさせてもらいましたが、今作は全体的に今までのNorthern19にはなかった要素を感じました。前作は新体制になって1作目だったこともあって、“Northern19らしさ”が多かったのに比べると、今作はそこにあまりこだわらず自由に作ったんじゃないかなと思って。

笠原:そうですね。ちょっと今までとは違う、というか一歩先に進んだ感じを出したいと思っていて。壮大が入ったときから、そのモードではあったんですけど、前作『YES』では一旦“これがNorthern19だよね”っていうものを自分たちでも確かめたかった。で、今作では……これまでもずっと思ってたんですけど、日本のメロディックパンクって、表現が凝り固まっているなと思っていて。“いわゆるこういう感じ”みたいな。もちろんそれが良さでもあるし、それが好きでいいんですけど、新しいことができないかなと。僕たちももちろん日本のメロディックパンクが好きだし、シーンに対する愛もあるんですけど、それでいて、変えていきたいという気持ちもあって。「MOVE ON」ではそれが一番色濃く、うまいこと出せたんじゃないかなと思いますね。テンポを下げたり、エモい方向に持っていったりっていうのはよくやる手法だと思うんですけど、そうじゃなくて、逆にもっと加速させちゃって。もちろんそういうことをやっているバンドは国内外にいますけど、メロディックパンクではあんまりいないんじゃないかな。



馬場:その考えはわりと昔からあったんですよ。“メロディックパンク”っていうくくりになってるけど、もっと広げていきたいなって。それがうまく形にできたのが今作なのかな。

笠原:そうだね。でもやっぱり、速いビートで美メロで、っていうのはすごい好き。それが根本にあるのは間違いなくて。そこを軸にしながらどうやっていくのか。もちろん賛否というか、「変わった」みたいな意見があるのはわかっていて。自分でも好きなアーティストを聴いてて新作に馴染めないことってあるし。でも何年も経ってから聴いてみたらめっちゃよく聞こえたりする。だからあとあと「やっぱNorthern19っていいな、好きだな」って思えるようなものを作っていきたいと思っています。

──これまでNorthern19を外から見ていた壮大さんは、今作でのNorthern19の変化や進化をどう感じていますか?

敦賀:俺が外で見ていたときのメロディックパンクど直球な感じもカッコよかったし、今は自分が作る側に入ったこともあって「いい曲だな」って思っちゃいます(笑)。自分がメンバーになったので客観視はできないんですけど、満足いく曲ができました!って感じです。

笠原:そもそも俺らの曲聴いてた?(笑)

馬場:え、その確認、今する?(笑)

笠原:いや、聴いてるだろうなとは思ってたけど、確認してなかったなと思って(笑)。

敦賀:1stが出たときから聴いてましたよ!

笠原:ありがとうございます(笑)。

なんでもできる気がしている今

──曲作りにおいて、壮大さんが入って変わったことってありますか?

笠原:ないようである気はしますね。俺の気持ちがより楽になっているっていうか。

──楽になっている?

笠原:なんか「なんでもできるじゃん?」っていう気持ちになってるんですよね。今までNorthern19でやってきたことはさておき、新曲では自分らがエキサイトすることをやっていけばいいんじゃないかなって思えるようになった。

──心機一転というか。

笠原:そうですね。だから何かがガラッと変わったというのはないかもしれないですけど、自分の中では変わっている気がします。

──壮大さんにとっては今作『GOODBYE CRUEL WORLD』はNorthern19として2作目ですが、変化はありますか?

敦賀:“ベーシストになっていく”みたいなことは考えました。『YES』のときはまだギターの名残があったけど、今回はもっとベースにシフトしていくというか。ベースとしてのベースラインを考えたいなという意識が強かったです。

──ご自身の中でのギタリスト要素を消すような?

敦賀:そうですね。もっとベースらしいベースラインを考えてみようと。他のバンドの曲を聴いていてもベースラインに耳が行くことは多くなりましたし。

笠原:ギターとベースって役割ももちろん違うし、弦の鳴らし方とかも違うので、そこで成長していく壮大を見ながら、「俺、ベースじゃなくてよかったな~」って思ったりしてます(笑)。

──それこそ馬場さんがブラストビートの研究をしたりと、ここにきてバンドとしても成長期のような感じがしますね。

馬場:去年1年はなかったようなもので、言ったら、このメンバーではまだ2年目みたいな感じ。まだまだこれからです。


「何のために」じゃなくて、「やってて楽しいから」

──ここでいきなり4曲目の話をしてしまいますが、「NEVER FORGET, SUMMER '20」はそれこそコロナ禍でライブができなかった去年の夏を歌った歌ですよね。

笠原:はい。去年の夏が終わったくらいにすごく思ったんですよ。「こんなに何もなかった夏なんて予想だにしなかったな」って。リモート飲みとかもしてみましたけど、やっぱり「なんか違うなー」って気持ちがどこかにあって。そのときの不安を曲にしました。

──そんな夏を経て、Northern19は去年11月に行ったワンマンライブ「TONIGHT A LIVE」で、ひさしぶりの有観客ライブを行いました(Northern19 presents “TONIGHT A LIVE” LIVE REPORT!!)。あのときの気持ちを教えてもらってもいいですか?

笠原:とりあえずお客さんの前でライブをやるっていうだけで、こっちは勝手にアガるなと思いました。椅子がある形でのライブだったので、始まる前に楽屋で「座ってる人もいるかもね」という話をしてたんですけど、実際ステージに出たら、みんな立ってくれてて、“待ってたよ”って感じがいきなり伝わってきた。あとから聞いたんですけど、SEが鳴ったらパッとみんな立ち上がってくれたみたいで。それだけでもう気分が一気にアガりました。あとは純粋に“ライブいいな”って。もちろんシンガロングもできないし、モッシュやダイブもないからいつもと同じ「最高!」っていう気持ちにはならないけど、自分たちのライブがやりたいっていう気持ちと、ライブがやれてうれしいっていう気持ちが何よりだよなって思ったんです。それでいて、この状況下でのライブが増えてきた最近は「これが最高じゃない」っていうことを忘れちゃいけないなとも思います。この状況に慣れちゃいけない。

敦賀:「TONIGHT A LIVE」が終わって、“やっぱりライブはできるならやりたいよね”っていう気持ちになりました。みんなでワチャワチャするライブがもう今後ずっとできないというんだったら違うかもしれないですけど、俺の中では「いつかまたできるから」という気持ちがあって。そこに向かっているのでテンションも保てているし、やれるときはやりたいなって。

馬場:僕はそれまでどっちかと言うと「あんまり無理してライブやらなくてもいいんじゃないの?」という考えだったんです。でも「TONIGHT A LIVE」をやってみたら、「こんな感じだったらできるじゃん!」って思えて。それまではライブをやるにしてもどんなふうになるかまったく想像がつかなかったし。配信ライブは一回やったけどそれともまた違うし。

笠原:配信ライブの時も、やったら「楽しい!」ってなったよね(笑)。「やっぱいいなー」って。

馬場:結局ね(笑)。

──純粋に3人で大きな音出して演奏するのが楽しいんでしょうね。

馬場:うん。そこに気付いたって感じですね。

笠原:「何のために」とかじゃなくて、「やってて楽しい」「やりたいからやる」という気持ちが根本にあるんだなって確認できたのはデカかったですね。またライブが普通にできるようになっても、この気持ちは大事にしていきたい。

──私はあのライブを拝見して、シンガロングがなくても、会場全体の集中力みたいなものがあるんだなということを感じました。

笠原:そうなんですよ。だからシンガロングがないとかって関係ないんですよね。まああるんですけど……「関係ないけど関係ある」というか。ワンマンライブって、自分たちのことが目当ての人しかいなくて「ありがたいな」「ご褒美みたいな日だな」っていつも思うんですけど、「TONIGHT A LIVE」はその極みみたいな空気感で。すごく楽しかったし、すごく幸せでした。ライブができない間、表現の発散の場みたいなものがなくなって自分本来のものが閉ざされていくみたいな感覚があったんですけど、あの日一気に戻された感じがして。「俺はやっぱりここにいたい」って思えた。そこからの数日間はめちゃくちゃハイでした(笑)。それくらい、ライブにはエネルギーがあるんだなと思いましたね。

甘く見てもらっちゃ困ります!

──『GOODBYE CRUEL WORLD』の中で特に聴いてほしいところや、注目してほしいところを教えてください。

敦賀:「STILL ALIVE」は作ったあとにスタジオで練習してたら一番難しくて。パターンが1曲の中に多いんです。繰り返しているようで繰り返してない。

笠原:むずいよね~。同じコード進行、同じメロディを2回しで使ってるんですけど、その中でいろんなことをやっていて。背景が変わってるみたいな感じ。実は面白い曲です。

馬場:そういう聞きどころで言うと、「STILL ALIVE」の最後のサビが実はちょっと速くなってるんですよ。そこにどれくらいの人が気付いてくれているのかなっていうのが気になります。微妙に、BPMで言うと3だけ上がってるんです。

笠原:わかりやすく速くなった感じはないんですけど、ちょっとだけ勢いが増してる。ちなみにこれ、元ネタLUNA SEAなんですよ!

馬場:この話長いから、ここではいいよ(笑)。

──(笑)。すみません、時間の都合で今日は割愛させてください(笑)。

敦賀:そういうオマージュ的なのはほかの曲にもちょこちょこ入ってます。よく聴くと「あれ?」みたいな。

馬場:そうだね、そういうの探してみるのも面白いかも。


──「NEVER FORGET, SUMMER '20」の最後、パンを左右に振っているのも面白いなと思いました。

笠原:あれは単純に「うわー」ってさせたかっただけっていうか、サイケっぽくしたかっただけなんですけど。Andrewさんとミックスしていて、悪ノリというか、どんどん「こうしましょう! こうしましょう!」ってやっているうちにたどり着きました。自分が予想していたものからミックスでさらに進化したのがあそこですね。それってけっこう“Andrewさんあるある”でもあるんですけど。そこまで左右に振ってるのって、メロディックパンクだと珍しいんじゃないかなと思って。あと「NEVER FORGET, SUMMER '20」で言うと、曲中にずっと同じアルペジオが流れてるんです。1曲中ずっと。それもずっとやってみたかったことで、今回初めて入れられました。

──3曲目の「RECALL」も、今までのNorthern19とは違う雰囲気ですよね。90年代のポップパンクっぽさがあって。

笠原:まさに! この曲はもともと弾き語りで作ったバラードだったんですけど、ATARISっぽいアレンジにしてみたらめちゃくちゃよくなって。そこにshort circuit感を入れて……。

馬場:意外とこういうテイストの曲、なかったんですよね。それこそ壮大がもともといた界隈っぽいというか。

敦賀:そうですね。今までのNorthern19とはまた違う爽やかさがあって。

笠原:青臭さもあるんですけど、18年目の俺たちがそういう曲をやるのも面白いかなと。

──先ほど、今は「『なんでもできるじゃん』と思ってる」とおっしゃっていましたが、今作は本当に好きなことを自由にやった1枚なんですね。

笠原:そうですね。ずっと自分の中で、軸はブラさずにいかに新しいことをやるかというのはテーマだったんですけど、今回は本当にいい形で出せたと思います。しばらくはこのモードでいきたいなと思ってます。でもまた、シンプルに自分たちの軸になる音楽をやりたいっていうモードも来るだろうし。そのときそのときで自分たちがやりたいと思ったことをやっていけたらなと。

馬場:そうしないと自分たちも飽きちゃいますし、面白くなくなっちゃうので。

笠原:毎回言ってることなんですけど、まずは固定概念を取っ払って聴いてもらえたらなと思います。Northern19やメロディックパンクが好きな人はもちろんですけど、そうじゃない人も。「Northern19って昔からいるし、安心感あるよね」って感じだと思うんですけど、ちょっと待てよと。そんな安パイばっかり放ってるわけじゃないんだよと。甘く見てもらっちゃ困ります!




■Northern19「GOODBYE CRUEL WORLD」
01. MOVE ON
02. STILL ALIVE
03. RECALL
04. NEVER FORGET, SUMMER '20

■Northern19 “GOODBYE CRUEL WORLD”リリースツアー
2021年8月15日(日)千葉LOOK
2021年8月27日(金)札幌BESSIE HALL
2021年8月28日(土)旭川CASINO DRIVE
2021年9月4日(土)仙台MACANA
2021年9月5日(日)八戸FOR ME
2021年9月7日(火)水戸LIGHT HOUSE
2021年9月25日(土)甲府KAZOO HALL
2021年10月9日(土)広島cave-be
2021年10月10日(日)岡山CRAZY MAMA2nd ROOM
2021年10月16日(土)横浜F.A.D
2021年10月17日(日)大阪ANIMA
2021年10月23日(土)福岡Queblick
2021年10月25日(月)名古屋 HUCK FIN
2021年11月4日(木)静岡UMBER
2021年11月6日(土)太陽と虎
2021年11月7日(日)KYOTO MUSE
2021年11月9日(火)高松DIME
2021年11月19日(金)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2021年11月20日(土)金沢van van V4
2021年11月26日(金)新宿BLAZE

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