COLUMN

ROCK CLASSICS SELECIONS Vol.16 selected by Taishi Iwami

この世に数多溢れる名盤と呼ばれる音源の数々。このシーンにおいても、そんなキラキラ金ピカのままに輝き続けるロックのクラシックが存在するわけです。この連載企画"ROCK CLASSICS SELECTIONS"では、現在のシーンに繋がるパンク、ロック、ラウドの名盤を各セレクターにピックアップしてもらい、セレクターの思いと共にお届けしたい。このシーンが好きでCDショップやサブスクでもっとディグりたい! というアナタに捧げる名盤特集。最高のロックエクスペリエンスをどうぞ!
第16回目のセレクターはDJ兼ライター、TAISHI IWAMIによるセレクション。今聴くとまたフレッシュな名盤をご紹介。
 

Select ROCK CLASSICS

psychocandy

The Jesus And Mary Chain “ Psycho Candy”(1985)

Recommend by TAISHI IWAMI

ロックンロールとは、過去への愛とともに現在を塗り替えていくことの繰り返しだ。そういう意味で私がもっとも衝撃を受けた1枚。とは言え、リリース当時まだ幼い子供だった私が本作を初めて耳にしたのは約15年後のことだった。それでも圧倒的に刺激的で現在もそのエッジが錆びて聞こえることはなく、フォロワーと呼べるバンド/アーティストも後を絶たない。

The Jesus And Mary Chainの始まりは1983年。ヴォーカリストのJimとギタリストのWilliamのReid兄弟が、地元スコットランドはイースト・キルブライドで結成した。1984年にはベーシストのDouglas HartとドラマーのMurray Dalglishが加入し、バンドとして本格的に動き出す。そして同年の11月に、OasisやPrimal Scream、My Bloody Valentineらの作品で広く世界に知られることになる、Alan McGee主宰のCreation Recordsとシングル1枚の契約で「Upside Down」をリリース。アルバムには未収録だがまずはこちらを聴いてほしい。



オーディオが故障したのかと思うほどの、耳から脳を刺すギターのフィードバック・ノイズ、地底に埋もれたような低音や暴走するリズムといったぶっ壊れたサウンドと、それらと対をなすポップで甘いメロディの化学反応が、食い合わせの概念をひっくり返すようなロックンロール。そのスタイルは、彼らが影響下にあると公言していたThe Shangri-Lasのエヴァーグリーンなメロディや、The Velvet Undergroundの退廃的なサイケデリアなどのミクスチャーであることをダイレクトに感じさせつつ、今聴いても唯一の轟音というオリジナリティが空間を支配する。そしてこの曲は全英インディー・チャートで1位を獲得。観客無視でひたすらノイズを鳴らし短時間で切り上げるため、暴動が起こることもしばしばだったライヴ・パフォーマンスも相まって一気に各メディアやリスナーの注目を集めた。



そして翌年の1985年にBlanco y Negro Recordsと契約し、先行シングル「Never Understand」、「You Trip Me Up」を経て本作をリリース。その魅力をさらに拡張するノイズと美メロの洪水は、まさに『Psycho Candy』というタイトルの如く、ヤバいと分かっていてもやめられない止まらない中毒性に満ちている。ちなみに「Upside Down」のリリース後に脱退したMurrayに代わってドラムを叩いているのは、後にPrimal Screamのフロントマンとして活躍するBobby Gillespieだ。



アルバムの冒頭曲で彼らの代名詞的な曲のひとつ。ドラムはPhil Spectorがプロデュースを務めたThe Ronettesの大ヒット・シングル「Be My Baby」(1963年)から、Hal Blaineが叩いたフレーズを引用。


その歴史を知らなくてもポップスの定番として多くの人々の体に染みついているあのビートだ。また両曲のタイトルからもわかるように、どちらの歌詞も大切な人への想いを綴った定番でありながら、ノイズに覆われたこちらを聴くと、愛と狂気の狭間で揺れているような感覚になってくるのは私だけだろうか。そんな曲を皮切りに、ノスタルジーが歪みスリルを帯びてくる流れがたまらなく癖になる。ただ過去を称えるだけでなく、視点ややり方ひとつでレガシーにまた新しい光を当てることができるロックンロールの真髄を示した本作は、90年代のオルタナティヴ・ロックやシューゲイザーといったムーヴメントに繋がり、現在もロックの歴史に燦然と輝いている。

そして最後に、The Jesus And Mary Chainは、その後のアルバムにも外れがないことを付け加えておきたい。Primal Screamの活動に専念するため脱退したBobbyの穴をドラム・マシンで埋めたアルバム『Darklands』(1987年)、さらに打ち込み色を強めた『Automatic』(1989年)では持ち前のメロディ・センスをまた違った角度から響かせ、ヒップホップやハウスに接近した『Honey’s Dead』ではダンサブルなロックンロールを展開。そういったキャリアを集約させたような名作と呼ぶにふさわしい『Munki』(1998年)、同作のツアー後に解散状態となるが2007年に復活し、さらに10年後にリリースした最新作『Amputation』(2017年)もまた素晴らしく、どこを切り取っても全力でおすすめできる。
 


Selecter's Profile taishi
TAISHI IWAMI
大阪を拠点に90年代後半よりDJを始める。心斎橋ROCKROCK、京都CLUB METRO、新宿ROLLING STONEといった東西老舗クラブでのレギュラーDJほかさまざまなイベントやフェスにも出演。レコードショップのバイヤーやラジオDJなども経験し、近年はライター/編集者として読むメディアの世界にも本格的に関わるようになる。2017年に上京。現在は執筆やDJ、イベント制作、自主でのマンスリー・パーティ・SUPERFUZZのオーガナイズなどを中心に活動中。
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ROCK CLASSICS SELECIONS ARCHIVE

Vol.19 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - Descendents “Everything Sucks”(1996)
Vol.18 selected by SENTA - TURNSTILE “GLOW ON” (2021)
Vol.17 selected by Taishi Iwami - RED HOT CHILI PEPPERS “BLOOD SUGAR SEX MAGIK” (1991)
Vol.16 selected by Taishi Iwami - The Jesus And Mary Chain “ Psycho Candy”(1985)
Vol.15 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - LIMP BIZKIT "Significant Other"(1999)
Vol.14 selected by TAISHI IWAMI - The Vines "Highly Evolved"(2002)
Vol.13 selected by SENTA - SWITCH STYLE "....TO INFINITY"(1997)
Vol.12 selected by TAISHI IWAMI - Machine Gun Kelly "Tickets To My Downfall"(2020)
Vol.11 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - NOFX “Punk in Drublic”(1994)
Vol.10 selected by TAISHI IWAMI - The Music "The Music"(2002)
Vol.09 selected by SENTA - V.A. "NEW YORK'S HARDEST"(1995)
Vol.08 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - Korn “Korn”(1994)
Vol.07 selected by TAISHI IWAMI - Jet "Get Born"(2003)
Vol.06 selected by SENTA from NUMB - Madball “Set It Off”(1994)
Vol.05 selected by TAISHI IWAMI-GREEN DAY “Dookie”(1994)
Vol.04 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - blink-182 “Enema Of The State”(1999)
Vol.03 selected by SENTA from NUMB - HATEBREED / Satisfaction Is the Death of Desire (1997)
Vol.02 selected by TAISHI IWAMI - Matthew Sweet / 100% Fun (1995)
Vol.01 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - Rage Against the Machine / S/T (1992)