INTERVIEW

TOTALFAT, BIGMAMA「WE RUN ON FAITH」INTERVIEW!!

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Shingo Tamai

TOTALFATとBIGMAMAのコラボ曲「WE RUN ON FAITH」がリリースされた。高校時代からの先輩後輩という関係にある2組。20年来の付き合いでありながら、今回が初めてのコラボクリエイトとなった。2組が今も歩み続ける“青春”の道。その道のりをShun(TOTALFAT)と金井政人(BIGMAMA)に語り合ってもらった。


仲間と居場所を見つけた高校生活

──二組の出会いであり、コラボ曲「WE RUN ON FAITH」で歌われている“青春”でもある、高校時代の話から聞かせてもらってもいいですか?

Shun(TOTALFAT):俺らが高校に入学したときはまだ高校が男子校で(※編集部注:のちに共学になる)。文化祭で先輩たちがHi-STANDARDとかGARLICBOYSのコピーをやっていて、体育館なのにモッシュが起きたりして、ものすごく盛り上がってた。けど、先輩がめちゃくちゃ怖くて……俺はそれが嫌だったんです。「音楽がやりたい」って思うやつらとはみんなで一緒に音楽を楽しんでいきたいと思ってた。で、自然とBunta(TOTALFAT)とか、グッドモーニングアメリカの金廣(真悟)とか(渡邊)幸一とかたなしんと集まるようになって。休み時間に学校の図書館にあったパソコンから、MP3.comっていう音楽系のSNSの走りみたいなサイトを使って、みんなで海外のヤバいバンドを探していくっていう毎日を過ごしてた。情報をみんなでシェアして、影響を受けて似たような曲を作って。自分たちでもバンドやってみたいと思って始めたり、みんなが一番集まりやすい八王子のライブハウスでマキシマム ザ ホルモンのライブと出会って衝撃を受けたり。そうやって仲間を見つけて、居場所を見つけて、居場所でカッコいい先輩と出会って……っていう高校生活だったかな。



金井政人(BIGMAMA):僕は音楽をやるつもりはなくて。中学時代に野球で肘を壊して、サッカーで膝を壊していたので、高校では何をやろうかなとぷらんとしているときに、隣のクラスにいるKOZO(Wienners、MUGWUMPS)と出会って。KOZOはすでにドラムをやっていて、たぶん僕たちの学年で一番、音楽に対する熱量とかアンテナが高かった。そこに、何もわからない僕や安井(英人)が誘われて、なんとなくバンドとか音楽に興味を持つようになっていったんですけど……やっぱり決定的だったのはTOTALFATのライブを観たこと。文化祭の体育館なりライブハウスなりで、数百人を興奮させている様を観たときの衝撃は、いまだに上書きできずに残ってます。それまではどこかふんわりとバンドをやっているだけだったけど、その姿を見て、ちゃんとバンドをやろうと思ったし、高校生活での熱量の使い方が決まった瞬間でした。僕が入学した時、生徒会長はBuntaくんで、文化祭の実行委員長はShunくんだったんですけど、僕、3年生のときに自分が文化祭の実行委員長やってますからね。

Shun:そうだよね。

金井:あと僕が一番衝撃だったのは、僕らが高校3年生のときに、TOTALFATが渋谷のタワレコでインストアライブをやったこと。それを見てすごく夢があるなと思った。そんな先輩たちを見ていたから、バンドを始める=自分で曲を書いて、全国ツアーを回るって思ってました。普通、高校生でバンドを組むといったら「何をコピーするか?」じゃないですか。なのに、僕たちはコピバン期間をすっ飛ばしてますからね。すごく間違った常識だったんでしょうけど、今思うとそれが大正解で。今まで一度も歌詞を書いたことのない人間が当たり前のように曲を作って人に聞かせる。それってものすごく恥ずかしい行為なんですけど、どうやったら自信満々にできるかを考えて。それが今の自分の原点だなと思います。


仲間と居場所を見つけた高校生活

──そんな二組が、このタイミングで初のコラボ楽曲を制作したのはどうしてだったんですか?

Shun:いつでもできたと思うんだけど、純粋に、忙しくて一緒にやれたのが今だったっていうだけだと思う。ただ、忙しくても「今だ」と思ったら動いていただろうから、結局、今だったんだろうな。

金井:最も身近で、最も頼り甲斐があって、かつまだ一緒にクリエイトをしていない存在がいるというのは常に意識していたんですけど、その人たちを誘うのはどんなタイミングで、どんな提案がいいんだろうかということも考えていて。理由を挙げれば、いくつもあるんですけど、とにかく今このタイミングで誘うのが、一番お互いにいいモチベーションで挑めるんじゃないかと思いましたね。

Shun:お互い旧体制のときに1回コラボしておけばよかったかなーっていう気持ちもなくはないんだけど、逆に言うと、旧体制でやらなかったものが新体制でできたっていうのも今の実績というか。「新体制になった」ということはトリガーではないけど、お互いに高いところで出し切っていい作品ができたというのは、お互いが新体制のこのタイミングだったからなんだろうなと。

金井:基本的にアーティストのコラボ曲って超むずいんですよ。どっちかに寄りすぎちゃったり、下手したら双方の良さを殺しちゃうことすらありえる。でもいろんな経験を経て、今回一番いいコンディションの今のタイミングでShunくんに声を掛けたことは、今年イチいい仕事したと思えるくらいに良かった。このタイミングでShunくんに声をかけた俺、最高に勘が良くて、最高にセンスがいいって自画自賛してます。


同じDNAを持つバンドとしてコアな部分を引き出したかった

──曲作りを共にするのはいかがでしたか?

Shun:お互いのコアの部分を擦り合わせるという意味で、ZoomやLINEで“昔あんな曲聴いてたよな”シリーズの共有をしたんですよ。それが超楽しかった。Matchbook RomanceとかYellowcard、New Found Glory、Inspection 12あたりを聴いたり、逆に最近の若手バンドはポップパンクをどう昇華しているかを聴いてみたり。あとはレコーディング前にカッキー(柿沼広也)から「ここ、どんな感じで弾いたらいいですかね?」って聞かれたから「Four Year Strongみたいな刻みで!」と返したりして。金井にも「パンクマナーで言うと、ここはこう歌って」みたいなことをDTMの波形を見ながら話したら、金井が次のテイクからノリを変えてくれた。BIGMAMAにポップパンクのセオリーを注入していくのが楽しかったし、BIGMAMAが目の前で開花していく様を見るのが喜びだったな。

金井:今、自分の中で、これからどこを伸ばしていくのか、どういうクリエイトをしていくのかがかなりフラットなんです。今のBIGMAMAって“バイオリニストがいるロックバンド”ということ以外に決め事がない。何語で歌うとか、どういうビートに乗せるとか、どういうことを歌うとか。そんな時期に、もっと手前のこと……自分は何が好きなのかとか、自分のどこが魅力だと思っているのか、何を発信できるのかみたいなことを、この距離感の人に見つけてもらったり、ブラッシュアップしてもらったりしたことはすごく貴重な機会だなと思いましたね。おかげで以降の歌録りはすごくよくなったと思う。

Shun:BIGMAMAは同期を入れたり、EDM調のビートの曲があったり、それはもちろん金井含めバンドの趣味趣向だったり、求める音をその時々で探してきたからだと思うんだけど、一方で俺はBIGMAMAが持っている武器はそこじゃないんじゃないかって思ってもいて。今回金井が俺に声をかけてくれたからこそ、命題の一つとして、同じ高校が生み出した、同じDNAを分かち合っているロックバンドとしてのコアな部分を引き出さないと意味がないと思った。だから「パンクマナー」みたいなことも何度も言ったし、Buntaのドラムに合わせて、指弾きを貫いていた安井にピックを持たせた。もちろんそれは「今後、これをやれ」ってことじゃなくて、そういう要素を引き出すキッカケになったらいいなと思ってのこと。それと、あとから振り返ったときに「“これを昇華してやる”ってモチベーションで作ったあの曲やばかったよね」っていう記憶をバンドに持ってもらえたらいいなと思って。

金井:僕らはTOTALFATの背中を見て始まってますから、子供が親の真似をするように僕らはTOTALFATの真似をして、ハッと気づいてそこから離れようとして……トライアンドエラーならぬトライアンドトライ。BIGMAMAはずっとこの繰り返しなんですよ。今の話も「ハイ! ハイ!」って聞いてるだけだと、また「この人たちには敵わないな」と思うだけ。そうじゃなくて、その中でShunくんに誇れる部分を見つけて提案する。ずっとこの関係性なんです。この関係でいられることが宝物です。

Shun:新体制になったときって、なるべく早く、自分たちの骨と肉と血が何なのかっていうことに気づかないとたぶんいい作品を生み出せないんですよ。TOTALFATもそういう気持ちで『MILESTONE』(2020年1月発売)と『WILL KEEP MARCHING』(2020年7月発売)を作ったの。だからBIGMAMAにもそういう気持ちになってほしかったっていうのもある。だからテクニックというよりも、1つひとつの音に対する向き合い方とかアティテュードをみんなで共有できたことはよかったんじゃないかな。

金井:そうですね。これは僕だけじゃなくて、ほかのミュージシャンもみんなそうだと思うんですけど、人生における大きな出来事って、それがいいことであれ悪いことであれ、それを音楽に変えると、すごいものができることが多いんですよ。僕はメンバーが変わるということを、一番いい形で音楽に変えたかった。そういう意味で、BIGMAMAの新しいターンになって作った「PRAYLIST」「The Naked King」という2曲はかなり大きくて。「WE RUN ON FAITH」はそのラインに並ぶというか、BIGMAMAの新しいターンにおける、ホップステップジャンプみたいなものになったんじゃないかなと。新しいBIGMAMAを形作っていくうえでの滑走路的なもの。そういう意味で、この曲は自分自身の背中も押してくれる曲になりました。この曲と、TOTALFATに、喝を入れてもらった感じ。

──TOTALFATにとってはどんな曲になりましたか?

Shun:この曲はBPMを途中で変えたり、仕掛けが多くて、今のTOTALFATにはやれないタイプの曲なんですよね。やれないというか、今の3人だと消化しきれないからやらないとジャッジする。今はよりシンプルに曲を仕上げていくということにフォーカスを当てているから。でもBIGMAMAと一緒にこういう曲を作ったことで、「こういう感じだったらハマりそう」とか「こういうサウンドにあわせると俺とJoseの声はこう聞こえるんだ」とか、見えたことはたくさんあって。新体制になってからずっとシンプルなポップパンクをやってきたけど、こういうのもやってみようかなという気持ちになりましたね。
 


「俺たちはそれを元に信じて走るんですよ」

──最後に「WE RUN ON FAITH」というタイトルについても聞かせてください。タイトルはもともと決まっていたものから変わったそうですね。

Shun:はい。「Rules Of The Youth」というタイトルでデザインとかもほぼほぼ仕上がった状態だったんですけど、最後に金井が「『WE RUN ON FAITH』がいい」ってちゃぶ台をひっくり返して(笑)。

金井:そりゃ、ちゃぶ台をひっくり返すときにはいろんな顔が浮かびましたよ。デザインしてくれた人や、その連絡を入れるShunくん。でも、全部思い浮かべたうえで、それでも「WE RUN ON FAITH」がいいと思いました。理由を言うと「なんとなく」なんですけど、ものすごい信念と自信を持って「なんとなく」です。

Shun:英詞を書いたのは俺なので、ひっくり返すくらい金井がこの歌詞をパンチラインとして持ってくれたことがうれしかった。一緒に作業してみて思ったのは、俺は割と昔のことを大事にしがちなんですけど、金井は先のことを大事してるってこと。「Rules Of The Youth」は後ろを振り返ったときに言えることなんですよね、「こういうことが俺たちの大事なルールだったよな」って。でも金井は「いや、Shunくん、俺たちはそれを元に信じて走るんですよ」って前を向いて言うみたいな。最終的にタイトルで前を向かせてくれたのは、いいチェンジだったなと今になってみると思います。

金井:これをタイトルにすることで、“信じた道を走り続ける”ということを、聴いてくれる人や、一緒に作ったTOTALFATと約束していくみたいな気持ちもあります。この曲に恥じないアーティストでありたいなって。

Shun:ありふれた表現ではあるけど、結局“信じた道を走り続ける”ということが一番大事なことで。前に進むということが、できそうでできない時代になりかねないって感じているからこそ余計に。だからこそ金井は今「楽しいことやりましょうよ」って声を掛けてくれたんだと思うしね。