このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

live report

タイトル

KEMURI TOUR 2019 “ANCHOR” LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by WATARU UMEDA


2019.7.12
KEMURI TOUR 2019 “ANCHOR”
@Shibuya TSUTAYA O-EAST


全19公演、ゲストを迎えた対バン・スタイルとなった「KEMURI TOUR 2019 “ANCHOR”」。その16本目となる渋谷TSUTAYA O-EAST公演は、ゲストにCOKEHEAD HIPSTERSが迎えられた。

 スケーター・パンクにスカ、ファンク、ヒップホップといったさまざまな要素を取り入れ、ミクスチャーの先駆けと謳われたCOKEHEAD HIPSTERSと日本におけるスカパンクのパイオニア、KEMURI――その顔合わせは異種格闘技の様相を呈しながらも、90年代以降のパンク・シーンを、ともに解散~復活を経てサヴァイヴしてきた盟友同士の共演が生む化学反応という意味でも大いに見応えがあるものになった。
“予選を勝ち上がりまして、フロント・アクトに抜擢されたCOKEHEAD HIPSTERSです(笑)”
 そんなジョークとともにファンキーな「NEVER BE THE SAME」でライヴをスタートさせたバンドは、自分たちのオリジナルに加え、彼らのアレンジ・センスをアピールするバングルスの「WALK LIKE AN EGYPTIAN」やラモーンズの「DO YOU REMEMBER ROCK 'N' ROLL RADIO?」を挟んだナックの「MY SHARONA」他のカヴァーも披露。ミクスチャーと言いながら、決してへヴィにならずにノリがどこか飄々としているところは、KEMURIのファンとも相性が良かったのだろう。
_smallTZ8A3212_680.jpg
 暴れたくてウズウズしている観客の気持ちに火をつけ、早速、大きな盛り上がりが生まれたが、その盛り上がりをさらに大きなものにしたのが、KEMURIに敬意を払ってブラスコアを掲げるfrailのホーン隊を迎えた終盤の3曲だった。
 「HERE YOUR POP FOOD」で観客にスカンキンなダンスをさせると、デズモンド・デッカーの「YOU CAN GET IT IF YOU REALLY WANT」を挟んで、ラストはダメ押しの「COME ON EILEEN」。デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのヒット・ナンバーを、ハードコア、レゲエ、スカの要素がごた混ぜになった、まさにミクスチャー・スタイルにアレンジした演奏を、観客はモッシュ、ダイヴ、シンガロングと大いに楽しんだのだった。
_smallTZ8A3550_680.jpg

 そして、いよいよKEMURIである。
 再結成から7年。バンドとして活動が止まっていた4年という時間を、まるで取り戻すようにKEMURIは精力的に活動を続けてきた。
 この7年間、彼らは毎年、何かしら作品をリリースしてきたわけだが、オリジナル・アルバムが5枚というのは、その間、ツアーも含め、休むことなくライヴを続けてきたことを考えると、なかなか…いや、かなりすごい。
 まるでデビューしたての若いバンドのようなペースからも、バンドに取り組むメンバーたちの並々ならぬ意欲が感じられる。KEMURIが立ち止まることは、もうないだろう――誰もがそう信じているに違いないと思うが、今回の対バン・ツアーは年々、エンジンの回転数を上げてきたKEMURIの活動がここに来て、新たな局面を迎えたことを、各地のファンに伝えるものになったんじゃないか。この日、ライヴを見ながら、筆者が感じたのは、そんなKEMURIの“今”だった。
 オープニングのSEが流れる中、ステージに出てきたメンバーたちを、観客が手拍子しながら、“Oi!Oi!Oi!”と声を上げ、迎える。伊藤ふみお(Vo)が微笑みながら聞き耳を立てるしぐさを見せると、歓声が一際大きくなった。この日、スタンディングの客席に仕事帰りと思しきワイシャツ姿の観客を見つけた伊藤は“金曜の夜、いろいろなことに落とし前をつけて来てくれたみんな!”と呼びかけたが、ここにいる全員がKEMURIのライヴをとことん楽しもうとしているんだから、盛り上がらないわけがない。
 しかも、前述したようにCOKEHEAD HOPSTERSが観客を、存分に暴れさせた直後だ。体も気持ちもすっかり温まっている。さあ、暴れさせてくれ! そんな観客たちにバンドがいきなりぶつけたのは、13年にリリースした復活第1弾アルバム『ALL FOR THIS!』のオープニングを飾る「Standing in the rain」。そこには、どんなメッセージが込められていたのか? その答えを考える間もなく、“Oi!Oi!Oi!”という声とともにイントロからモッシュとダイヴが始まった。2階席にあるファミリー・エリアで見ているちびっこたちもすでにノリノリだ。
_smallTZ8A3817_680.jpg
 そこにエレキ・ギターのアルペジオでつなげたのが、昨年2月にリリースした目下の最新アルバム『【Ko-Ou-Doku-Mai】』のタイトル・ナンバー。それまで大暴れしていた観客が動きを止め、譜割の大きな日本語の歌に耳を傾けると、そこからさらに一転、“ジャンプ!ジャンプ!”と伊藤が煽りながら、スピーディーなスカパンク・ナンバー「GO! GO! GO! GO! GLOW!」をつなげ、再びモッシュにダンスにと観客を暴れさせる。
_smallTZ8A4012_680.jpg
 序盤から緩急の振り幅が大きいバンドの演奏にしっかり食らいつき、決して振り飛ばされたりしない観客たちの姿に“いいよ!みんな!”と伊藤も思わずニッコリ。そして、“明日のことなんて考えずにぶち壊れて帰ってください!まだイケるでしょ?歌うよ!踊るよ!ぶっ壊れる!?”と声をかけると、たっぷり2時間、バンドはスカもパンクも、英語も日本語も織り交ぜながら、メンバーがステージを降りる最後の瞬間まで、観客に声を上げさせ、歌わせ、踊らせ、暴れさせたのだった。
_smallTZ8A3982_680.jpg
 この日、バンドが演奏したのは、アンコールを含め全26曲。リリースに紐づいていないツアーということで、自由に選曲した(と思しき)セットリストが、代表曲の数々に今回のツアーで初披露したスカパンクな新曲「ANCHOR」を加えたオールタイム・ベストと言えるものになったところが興味深い。
_smallTZ8A4061_680.jpg
 そんなセットリストと、それに応える観客の盛り上がりが改めて印象づけたのは、KEMURIがバンドのスタートからずっと、バンドと観客が1つになることができる曲を作り続けてきたということだった。そんな曲の数々がバンドと一緒にシンガロングする観客の気持ちを、どれだけ鼓舞してきたことか。そして、ライヴにおいて、記憶に残る光景をどれだけ作り上げてきたか。
 この日もKEMURIの代名詞と言える「PMA」ではモッシュ中、倒れた観客を周りにいる観客がひっぱりあげ、そのままダイヴさせるという単に暴れているだけじゃない、ある意味、KEMURIのライヴならではのホスピタリティの発露と言える瞬間を目撃。また、ヨコノリのポップ・ソングの「Dancing in MOON LIGHT」ではミラーボールが輝きながら回る中、観客たちが肩を組んで作った大小の円陣がピースフルな空気を作るさまを見ることもできた。
_smallTZ8A4133_680.jpg
 ピースフルと言えば、“こういう奴らに贈る曲です”と伊藤が中指を立てながら紹介した「HATE」。〈Hate!Hate!Hate!〉とみんなでシンガロングしながら、ピースフルでポジティヴなヴァイブが感じられるところが、この曲で歌っているとおりネガティヴな感情をポジティヴなエネルギーに変えるKEMURIらしい。
 そして、この日、伊藤は後半戦に入る前、KEMURIが来年、結成25周年を迎えることを報告。なるほど、オールタイム・ベストなセットリストは、それをちょっと意識していたのかもしれない。しかし、この日のライヴに回顧ムードはこれっぽっちも感じられなかった。それどころか、バンドを代表して、伊藤は“また始めようと思う!”と宣言したんだからうれしいじゃないか。
_smallTZ8A4299_680.jpg
 KEMURIとして初めてデモを作った25年前、マイティ・マイティ・ボストーンズの来日公演でサポート・アクトだったCOCOBATとCOKEHEAD HIPSTERSのライヴを見たという思い出を語った伊藤は、この日のCOKEHEAD HIPSTERSのライヴが“あの時の景色と似ている…と言うか一緒(笑)。感慨深い。(COKEHEAD HIPSTERSは)好きなことをやっている。(それを見て、自分たちも)好きなことをやっていこうと思いました”と続けた。
 各地、対バンに強敵を迎えた今回のツアーがKEMURIにとって大きな刺激になったことは想像に難くないが、中でも、この日、対バンしたCOKEHEAD HIPSTERSのマイペースそのものの在り方は、目下の最新アルバムで“孤往独邁”=俺は俺の道を行くを掲げたKEMURIにとって大いに感じるものがあったようだ。
“変なスカやってると、ずっと言われ続けながら、最高最悪いろいろな景色を見てきた。だからこそ、いろいろな曲を作れたし、いろいろな人に出会えた。25周年を迎えるにあたって、これだけは言っておきたい。貫いてきたものは貫き通したうえで、好きなことをやっていきたい。好きにやらせてもらいます。先は長いから、一緒に行こう!”
 そう新たな決意を語ってから、選曲が心憎いアンセミックな「Along the longest way」になだれこむと、“今日から始めたいと思います!”とダメ押しで宣言。
“みんなに1曲贈ります”と「New Generation」で本編を締めくくったが、もちろん、そこで終わるわけがなく、アンコールに応え、「Don’t Know」他4曲を披露。それでもアンコールを求める観客の声は鳴り止まない。
“もう1曲やらせてください”と再びステージに戻ってきたメンバーに観客が拍手喝采。“来年25年、新しい曲を作って前に進みたいと思います。どんな出会いがあるかワクワクしながらやっていきたい。KEMURIはもう何枚もアルバムを作っているから、そう簡単に曲はできないんだけど(笑)、できないと嘆くよりは挑戦しつづけたいと思います! 嘆いているヒマはない!”
 イントロから観客を狂喜させた「Prayer」を演奏する前に伊藤が言ったこの言葉を、この日、ここにいる全員が待っていたに違いない。なぜなら、それは結成25周年を迎えるタイミングで、バンドが心機一転、さらにスピードを上げながら走り出したことを確信させるものだったからだ。
_smallUME05383_680.jpg




[SETLIST]
01 Standing in the rain
02 Ko-Ou-Doku-Mai
03 GO! GO! GO! GO! GLOW!
04 Ohichyo
05 shining stars
06 ima-sorewo-hikarini-kaete-susume!
07 FATHER OF THE BRIDE
08 ANCHOR
09 THUMBS UP!
10 P.M.A (Positive Mental Attitude)
11 Here rise the sun again
12 Mr. SMILING
13 I am proud
14 I BEGIN
15 Workin' Dayz
16 Dancing in MOON LIGHT
17 HATE
18 Ato-Ichinen
19 SUNNY SIDE UP!
20 Along The Longest Way...
21 New Generation

en1 Don't Know
en2 our PMA
en3 白いばら
en4 Prayer



[ツアー情報]
"SKA BRAVO TOUR 2019"
11月2日(土)大阪 BIG CAT w/ MUSTARD PLUG / GELUGUGU
11月3日(日)名古屋CLUB QUATTRO w/ MUSTARD PLUG / THE SENSATIONS
11月4日(月・祝)東京 TSUTAYA O-EAST w/ MUSTARD PLUG / RUDE BONES
[チケット]
前売 ¥5,500(オールスタンディング/税込)
一般発売:8月10日(土)10:00~



>>>KEMURI OFFICIAL HP