INTERVIEW

【Livehouse's voice】Vol.2 図師和博さん(SR BOX宮崎・LAZARUS店長)

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Chisa Tanaka


2021年10月、宮崎に新しいライブハウス「LAZARUS」(ラザロ)がオープンした。店長は、SR BOX宮崎で店長を務める図師和博さん。閉店するライブハウスが多いこのコロナ禍の今、なぜ新しいライブハウスを作ったのか。図師さんに話を聞いた。


「消えゆく光に向かって怒れ」

──まず、LAZARUSを作った経緯を教えてください。

最初のきっかけはコロナ禍になって、ライブハウスとして何もできなかったこと。2020年春に初めて緊急事態宣言が出て、ライブが1本もできなくなったので、僕らライブハウスの人間は何もすることがなくなりました。“ライブハウスを続けていけるのか?”ということすら悩んでいたのですが、そんな状況がすごく悔しかった。この状況を打破したいという気持ちが大きくなって、それだったらライブハウスをもう1つ作ろうかなと思って。

──そこでどうしてライブハウスを作るという発想に!?

アホでしょ?(笑) 僕、7年ほど前に親父を癌で亡くしているんですが、親父が死んでいくのを看取っていく中で、僕と兄貴には悔しさと怒りがあったんです。僕と兄貴にもっと経済力があったら、先進医療を受けさせて1日でも長生きさせられたのにって。そのときの悔しさや怒りが僕の根本にあって。それと同じように、コロナ禍でライブができずにバンドがどんどん解散して、ライブハウスが悪者扱いされて、というこの状況が本当に悔しかった。僕が影響を受けている詩人ディラン・トマスの作品に「消えゆく光に向かって怒れ」という一文があるんですけど、まさにその状況というか。親父の死、経営の苦しいライブハウスが“消えゆく光”なんだなって。そしたら、それに対してちゃんと怒って行動しないといけないと思ったんです。



──SR BOXで何かを立ち上げるという案もあったと思うのですが、どうして新しいライブハウスを?

いつかは路面店のライブハウスをやりたいという夢があったんです。SR BOXはビルの8階にあって、どうしてもアクセスしづらい。SR BOXで20年間働いていますが、町との一体感がないなというのは痛感していて。“来る人は来る”という状況から抜け出せていないなと思っていた。そしたらコロナ禍で、路面店の物件の空きが出てきて。

──さまざまな路面店が閉店したから?

そうです。これはチャンスだと思った。コロナは最初ピンチだと思ったけど、路面店でライブハウスをやるにはチャンスやなと。

──そう考えると確かにチャンスですね。

新しいライブハウスを作ることを決めてTwitterに書いて、関係者にメールを送ったんですが、反響がすごく大きくてびっくりしました。いろんな人に「アホやな」って言われました(笑)。でも「がんばれよ」ってみんな言ってくれて。アホでよかったと思いましたね。


“アーケード沿い”を最大限に生かして

──LAZARUSをどんなライブハウスにしたいと考えていますか?

地域に根付いた、誰でも入りやすいライブハウスにしたいです。

──そのためにこだわっているポイントなどはありますか?

橘通りというアーケード街に面しているんですけど、そのど真ん中で。入りやすいように、チケットカウンターとドリンクカウンターを外に作りました。だからLAZARUSで何かイベントをやっていたら、誰が見ても「人が集まってるな」「何かイベントやってるな」ってわかる。実際に、イベントの日は外に音がちょっと聞こえて、みんながワクワクするっていう現象が起きてるんですよ。注目が集まっているのを肌で感じます。

──すでに実感されているんですね。

はい。「ここに作ってよかったな」と思っています。ライブの日じゃなくても、僕が一人で店のドアを開けて作業していると、通りがかった人がふらっと入ってきて「ここ、何ですか?」と声をかけてくれることもあって。「ライブハウスです」と言うと「ライブハウスってどういうところですか?」と聞かれて話をしたり。LAZARUSだけじゃなくて、ライブハウスというものに馴染みのない人に、知ってもらえる機会にもなっているのはすごくうれしいですね。



──そもそも図師さんがライブハウスで働きたいと思ったきっかけは何だったんですか?

Hi-STANDARDが大好きで、学生のときにHi-STANDARDのコピーがしたくてバンドを始めて。高校生のときにライブハウスでライブをしたのがきっかけです。そこで音響の仕事がしたいなと思って音響の学校に通って、その後SR BOX宮崎で働き始めて……いつの間にか20年経ちました。

──SR BOXでの20年間の中で特に印象的だったライブは何ですか?

健さん(Ken Yokoyama)が来たときはびっくりしましたね。宮崎ってツアーにも入らないような土地だったから「本当に来るの!?」って。ライブで見たときは「健さん、動いてる!」って思いましたもん(笑)。ギターの音もめちゃくちゃ図太くて、英語がペラペラで……もうずっと「すごいな~」と思ってました。完全にミーハーですよね(笑)。あとはARTIFACT OF INSTANTっていう地元のバンドがツアーファイナルで凱旋ライブをやっていたときに、ビルの地下に入っている焼肉店が火事になって、ライブが中止になるということがあって。あれは20年間で一番の危機でしたね。そのとき僕はそれこそ親父の葬式の数日後で、家で喪に服していたんです。そしたらスタッフから「火災報知器が鳴り止まない」と電話がかかってきて。「こういうときっていろいろ重なるよな」と思いながら対処した思い出があります。

──そんな危機も乗り越え、図師さんが20年間ライブハウスで働き続けている理由は何ですか?

やっぱり好きだからでしょうね。音楽やバンドが好きだから続けられたんだろうなって。逆に、これ以外にやりたいことがないんですよ。それこそコロナ禍で考えたんですよ、「20年続けてきた音楽の仕事を辞めて、別の仕事をするか?」って。でも他にやりたいことがなかった。僕、今年で40歳なんですが、自分の人生をあと20年として考えたときに、「だったらあと20年、ライブハウスがんばろう」と思ったんです。辞めるのって簡単じゃないですか。続けるほうが難しい。でもやっぱり振り返ると「続けていてよかったな」と思うから。


やっぱり街にライブハウスって必要なんだな


──この20年で、ライブハウスやライブシーンの変化は何か感じますか?

ライブシーンは弱くなっていってるんじゃないかなと思います。特に地方は。宮崎で言うと、郊外に大型ショッピングセンターができて、街中の若者がどんどん減っていってるんです。その影響でライブハウスにもどんどん人が入らなくなってきてるなと。

──そこに対して、図師さんがやるべきことはどういうものだと思いますか?

それがLAZARUSを作った理由の一つでもあるんですが……バンドもそうだし、音楽の仕事をしたいと思っても宮崎には音楽の仕事がないんです。それでみんな宮崎を離れていくのであれば、そういう若い人たちが働ける場所を作ることが、僕の次のフェーズなのかなと。



──バンドやお客さんのためでなく、音楽の仕事をしたい人にとっての居場所も作ると。

そう。あとは、やっぱり「消えゆく光に向かって怒れ」ということを、若いバンドにも伝えたい。「コロナ禍でライブができないなら仕方ない」で終わっている人が多いですけど、本当は仕方なくなんてないんですよ。もっと声をあげるべき、怒るべきなんです。それをバンドで、ライブで主張するべきなんです。そういう想いも込めて、LAZARUSを作ったところもあります。

──それこそライブハウスの閉店や、バンドの活動休止・解散というニュースが続く中、新しいライブハウスをオープンするというニュースは、それだけで意思表示になりますもんね。

そうですね。僕の中ではそんなつもりなかったんですけどね。実際にあるバンドマンに「バンド辞めようと思ってたんですけど、図師さんのSNSを見て、続けようと思いました」と言われたこともあって。そういうものを求めていたわけじゃないですけど、よかったなと思いました。

──では、コロナ禍におけるライブハウスの役割はどんなものだと思いますか?

生の音楽で、人を元気にさせたり、勇気付けたりできる場所なんじゃないかなと思います。この間、宮崎のライブハウスを使った「MEGANE ROCK 2021」というサーキットイベントがあったんです。そこでひさしぶりにバンドマンやお客さんに会ったんですけど、本当にみんなうれしそうなんですよね。ニコニコしてて。数日経ってもSNSでみんな「楽しかった」と書いて余韻に浸っていて。その様子を見て、やっぱり街にライブハウスって必要なんだなと改めて思いました。こんな気持ちにさせてくれる場所、僕はほかに知りません。

──最後に、改めてLAZARUSをアピールしてください。

アーケード直結型なので、通りがかった人が「今日はちょっとライブ見て飲んで帰ろう」と思えるような、宮崎の遊びの選択肢の一つになりえるライブハウスなんじゃないかなと思っています。バンドが使いやすいようにと、“バンドファースト”で設計しているので、ぜひ一回使ってみてもらいたいですね。宮崎はごはんもおいしいし、気候もいいし、空も大きいし……あと宮崎弁の女の子はかわいい! これ、バンドマンにアピールしておいてください!(笑) あとはコロナ禍にライブハウスをオープンさせるという暴挙に出た図師くんを観に来てくれんかな~と(笑)。

──それは大きなきっかけになりそうですね。

ちなみになんですが……LAZARUSの建物の3階が空いているので、来年、そこにもう一つライブハウスを作ろうと思っています。SR BOXが3月31日に閉店になるのですが、そうすると機材が余るじゃないですか。箱が減ったら増やせますから。ピンチはチャンスです!

LAZARUS

オフィシャルサイト:http://lazarus-miyazaki.com/
Twitterアカウント:https://twitter.com/LAZARUSMIYAZAKI