LIVE REPORT

山人音楽祭2023 DAY1 LIVE REPORT!!

Report by Chie Kobayashi
Photo by 青木カズロー(赤城ステージ)、半田安政(榛名ステージ)、ハマノカズシ(マキシマム ザ ホルモン)

 

山人音楽祭が聖地に帰ってきた! コロナ禍により2020年は開催中止。2021年、2022年は高崎芸術劇場に会場を移して行われた「山人音楽祭」。今年はようやく“聖地”グリーンドーム前橋での開催となった。この記事では9月23日に行われた1日目をレポートする。

 

2023.9.23 @日本トーターグリーンドーム前橋
山人音楽祭2023

 

「京都大作戦」では、牛若ノ舞台に出演したバンドが、「いつか源氏ノ舞台へ」を目標に掲げ、実現していくという物語が毎年繰り広げられる。もちろん「京都大作戦」だけではないが、バンド主催のフェスともなれば、やはり大きなステージに出られる=主催バンドに認められ、オーディエンスに認められたという一つの指標になる。今年の「山人音楽祭」では、同様にして念願の赤城ステージへとたどり着いたバンドがいた。赤城ステージのトップバッター、4年ぶりにグリーンドームに帰ってきた「山人音楽祭」の1音目を鳴らしたFOMAREだ。群馬出身の彼らは、学生時代は山人音楽祭の前身「GUNMA ROCK FESTIVAL」に遊びに行き、2016年には「山人音楽祭」の前夜祭に出演していた。榛名ステージのトリを担ったこともあれば、高崎芸術劇場で開催された昨年の「山人音楽祭」でも激情ステージに出演した。そしてとうとう念願の赤城ステージ登場となったのだ。

 

 

喜び勇んでステージに飛び出してきた彼らはアマダシンスケ(Vo, Ba)のボーカルから始まる「Lani」でその幕を開けると、群馬のからっ風を思わせる「風」や、群馬の街並みを歌った「夕暮れ」など、ホームタウンを思わせる楽曲群を誇らしげに届けていく。MCでは「ヤバイっす!」「最高っす!」「気持ちいいっす!」と3人が順に感想を口にしていた。しかも群馬のバンドが山人音楽祭のトップバッターを務めるのは今回が初だそう。大役を託された彼らは、喜ぶだけではなく「俺たちがまた新しい世代に繋いでいけたら」と群馬のバンドとしてのバトンも背負って、その大舞台を降りた。

 

 

トップバッターのFOMAREを筆頭に、初日は若手のアーティストが多く出演したのが今年の山人音楽祭の特徴の1つ。FOMAREからバトンを受け取って榛名ステージの幕を開けたのは岐阜出身のKUZIRA。彼らは末武竜之介(Vo, Gt)の心地よいハイトーンのボーカルと、性急なメロディックパンクで朝一から榛名ステージをライブハウスに変えていく。末武は何度も「G-FREAK FACTORYには田舎に住んでてもこんなカッコいいことができるって教えてもらいました」「G-FREAK FACTORYが群馬を背負っているように、僕らも岐阜を背負ってやっていきたいです」と、G-FREAK FACTORYが群馬に根を張って活動する姿に感銘を受けたと口にしていた。そんな彼らのステージからもわかるように、G-FREAK FACTORYは、その境遇や姿勢をも後続のアーティストたちに影響を与えている。赤城ステージに出演したハルカミライも、山口出身の橋本学(Vo)がまた、G-FREAK FACTORYの姿に力をもらっていた。山口でのG-FREAK FACTORYと共演した彼らは、その日茂木から「山口も群馬と似て、何もねえな」と言われたそうで、橋本は愛おしそうにグリーンドームをぐるりと見渡し「群馬、俺の地元と似て何もないっすね!」と声を上げた。さらに「世界を終わらせて」の歌唱中に、橋本が「ダディ・ダーリン」の一節を歌い始め、ステージ袖から茂木を引っ張り出す場面も。初っ端から4人共がフロアにおりたり、ステージ内を駆け回ったりと大暴れしながら、元気よく(シンプルに「元気よく」という表現が彼らには似合う)、「To Bring BACK MEMORIES」や「アストロビスタ」などを届けていく中で、「バンド組んでよかった!」「これからも俺もあんな風に歌っていたいよなぁ」と、その演奏の根底にある想いを表明していた。

 

 

もちろん若手だけが爆発していたわけではない。「GUNMA ROCK FESTIVAL」からの常連・HAWAIIAN6はひさしぶりのグリーンドームに登場するなり「いい景色じゃねえか!」と声を弾ませる。「大きい会場だろうが、やることは一緒」との言葉通り「Burn」や「RAINBOW, RAINBOW」を重厚に畳み込んでいく。「お前たちもひっくるめてお帰りなさい!」と観客へ言葉を贈ったあと、「お前たちのおかげで潰れなくていいライブハウスがいっぱいあったし、辞めなくていいバンドがいっぱいあった」と観客と共に戦ったコロナ禍をコロナ禍でのライブバンドの状況を改めて回想していたHATANO(Dr)。「やることはどこでも一緒」なのは観客も同じ。グリーンドームでも大暴れするフロアを見て「これがいつもの景色なんだ。ありがとう」と最後まで観客への賛辞を贈る姿に、改めてフロアの景色も含めてライブなんだと思い知らされた。赤城ステージ終盤にはマキシマム ザ ホルモン、ROTTENGRAFFTYと、さらに盟友が続いた。

 

 

榛名ステージではSHERBETSやフラワーカンパニーズ、LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSとこちらもベテランが続々と登場。卓越したスキルやその存在感、説得力ある歌声で集まったオーディエンスを魅了していく、フラワーカンパニーズのステージでは「深夜高速」の演奏時に茂木が乱入。二人が向かい合って<生きててよかった そんな夜を探してる>と歌唱する姿を見て「ああ、生きててよかった」と思った人も多かったことだろう。

 

 

もちろんトリを務めるのはG-FREAK FACTORY。「帰ってきたぞ、グリーンドーム!」と茂木が高らかに宣言すると、「REAL SIGN」や「Fire」などをひさしぶりのグリーンドームに響かせていく。この日会場に集まったのは約8000人。「俺たちは後進国に生きてんだって痛感した。海外に憧れることなく、県外に憧れることもなく、こうやって群馬でのろし上げたら、みんなが心を込めて賛同してくれる。そう信じて今日はFOMAREにトップバッターをやってもらいました。とんでもないステージで、バトンを落とすのが心配なぐらい俺たちは握力がほんとに少ないから、最後まで行けたらそれでやっと成功だと思ってます」とグリーンドームでの開催ができなかった3年間、そしてこの日1日を振り返った。さらに「ダディ・ダーリン」では茂木が「LEDあるか?」とオーディエンスに問いかけ、客席からはスマホのライトが点灯。オーディエンスのシンガロング、観客のスマホの光。人の手で、「山人音楽祭」のトリのステージを完成させていく姿がG-FREAK FACTORYらしい。アウトロでは、茂木が「2023年9月23日。ここにいる全員と、コロナを超えて明け元年、同じ空気を共有して一緒に歌を歌ってんだぜ。あの頃信じられたか、この光景。だけど、お前らが諦めなかったから、全てのバンドが一人も諦めなかったから、スタッフが諦めなかったから今日が成立してます。本当にありがとうございました」と改めて“聖地”グリーンドームに帰ってきたことの喜びを噛み締めていた。その後のアンコールでは「こんなん見ちゃったら、また来年もやりたいねぇ!」とうれしそうに声を挙げていた茂木。バンドは最後にROTTENGRAFFTYのN∀OKIをゲストに迎え「Sunny Island Story」で初日の幕を下ろした。

 


 

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http://yamabito-ongakusai.com/2023/