LIVE REPORT

STOMPIN' BIRD “30th Anniversary One Man Live” LIVE REPORT!!

Report by Chie Kobayashi
Photo by Yasumasa“H.and.A”Handa

2024.4.12 @CLUB CITTA’
STOMPIN' BIRD “30th Anniversary One Man Live”

 

2024年4月12日、クラブチッタには様々なバンドマンから祝い花が贈られ、通常の入場口はもちろん、関係者受付にも長蛇の列。さらには当日券売り場でも次々とチケットが売れていた。

バンド結成30周年の記念に、クラブチッタでのワンマンライブを選んだSTOMPIN' BIRD。この日の告知のために、メンバーのYASU(Ba, Vo)はXを始め、 TOM(Vo, Gt)とYASUは30周年対談をインスタライブで行なったあと、自分たちでテキスト化して特設サイトに掲載。また「STOMPIN' BIRD VIDEO ARCHIVES」として過去のライブ映像を順にアップしていくなど、まさにD.I.Y.で当日まで盛り上げていた。STOMPIN' BIRDというバンドが、30年経った今でも、多くのキッズと多くのバンドマンに愛される所以はここにある。作るもの、見せるもの、すべてに血(と横浜家系ラーメンの汁も?)が通っているのだ。

この日は金曜日。平日だからこそ19:30スタートもありがたい。フロア内にはセーフティエリアも用意され、見事に老若男女が集まっている。酒を片手に友人との再会を楽しむ人、グッズを求めて列に並ぶ人、待ちきれずにSTOMPIN' BIRDとコールをする人など、それぞれが自由にライブハウスを楽しみながら主役の登場を待つ。

開演予定時刻を少し過ぎた頃、場内に用意されたビジョンに「STOMPIN' BIRD VIDEO ARCHIVES 0/9」と銘打たれた、1994年のSTOMPIN' BIRDの初ライブの映像が映し出される。そして「2024.04.12 CLUB CITTA’」との文字が映し出されてビジョンは消え、ステージに照明が。ステージ目一杯の大きなフラッグが掲げられ、初ライブ当時のSEに乗せて3人がゆっくりと登場する。TOMがゆっくりとギターを弾き始めると大歓声が上がり、「STOMPIN' BIRDが始まるぞー!」の声を合図に HOLY(Dr, Cho)のドラムが炸裂。「Wild Ride」でライブはスタートした。2006年リリースの4thアルバム『Can't Help Blowin' Up』収録曲「Brandnew World」や、2023年リリースの最新作『Sing Along EP』収録曲「Sing Along」、さらには2002年リリースのシングル『We Love Us』収録曲「Empty」、2001年リリースの2ndアルバム『Crackers' Cool Clash』収録曲「Route 134」など、新旧のナンバーが矢継ぎ早に投下されていく。

9曲を終えたところで、TOMが「ところで、水色のアルバム持っている人ってどれくらいいる?」と尋ねる。水色のアルバムというのは、1999年リリースの1stアルバム『Let's Try Our Luck!』のこと。挙手した中にはライブハウスの常連“下駄親父”が。その姿を見て「下駄」「親父」というコール&レスポンス(?)も挟んでしまえるのが、STOMPIN’ BIRDとそのファンだ。YASUが「1stアルバム大好きなやつ、こっから15分間、よく焼き付けて帰れよ!」と言うと、バンドは曲順通りに“水色のアルバム”こと『Let's Try Our Luck!』の収録曲を全曲プレイ。1stアルバムについてYASUは「1stアルバムを知らない人もいると思う。俺たちが最初に出した音源は、関係者からは『絶対に売れません』って言われたの。5000枚プレスしたら、ディストリビューターに『厳しいですよ』って言われたの。でも年内に1万枚売れたんだよね。SNSもない時代になんでそこまで売れたかっていうと、口コミなんですよ」と説明していた。3人は「25年前の曲、速ぇよ」と笑っていたが、1曲目の「Rockin' Show」なんていまだにライブの定番曲だし、改めて30年前からSTOMPIN' BIRDの楽曲センスの良さを感じさせられる。もし今の時代にリリースされても口コミであっという間に売れるだろう。……なんて余韻に浸っているうちに、気がつけば同作最後の「One or Eight」が終わってしま……ったかと思いきや、「One or Eight」をお代わり! からのお代わり! アルバムを曲順通りに披露しておきながら、予定調和じゃないのがSTOMPIN' BIRDだ。

そしてYASUがここで「いつも来てるやつは気付いてると思うけど、俺を中心に堅いでしょ? だってやり慣れてないんだもん(笑)」と告白。「申し訳ねえ気もするけど、でも1stアルバムぶりにライブ来るやつとかもいると思うんだよ。そういうやつのために、こけてもいいし、恥を晒してもいいから、1stアルバムを頭からケツまでやろうって決めたの」と思いを明かした。そして「次のセットもなかなか堅いけど」と言いながら始まった次のブロックは「Days」から。と思いきや、イントロから失敗してやり直し。「俺たち、何度でもやり直すから!」というと、改めて「Days」でライブを再開。「Candle」「Childish」としっかり歌を聴かせる楽曲を続けていく。さらに「Spring Has Come」ではミラーボールが場内を彩り、ドラマチックなムードを生み出した。

盛り上げつつもしっかりと演奏を聴かせてきた1時間を経て、YASUが「ここから運動会にしたいんだよね」と言う。そして、「空白を埋めろ!」とステージとフロア最前列の柵の間に入っても良いことを告げると(きちんとその前に、全員でセキュリティースタッフへ感謝の言葉を贈ることも忘れない)、“前柵ソールドアウド”状態に。そして「今までに見たことのない泥仕合が見たいよ、俺は」「地元を大事にして30年続けてるバンドの底力を見せたい」と煽ると、「Ready to Rock?」で“運動会”がスタート。以降はまさに泥仕合で、もはや文字にする必要がない気がするのだけど、一つ言えるのは、STOMPIN' BIRDがライブをすれば、クラブチッタも横須賀かぼちゃ屋に、F.A.D YOKOHAMAに、なるんだということ。あまりにも見慣れた景色がクラブチッタに広がっていた。

フロアも自由ならステージ上も自由だ。「Your Right」では、先ほど3回演奏した「One or Eight」を曲中にさらにお代わり。「Tight Guy Tight」ではYASUの小さな“マブダチ”がステージに登場し、和やかなムードに包まれる。しかしステージ上ではしっかり“3秒ルール”が守られており、タイトで正確な演奏が続けられる。勢いのまま演奏に入ろうとしたYASUに対し、TOMが「チューニングが違って気持ち悪い」とチューニングをし直すように言うところも彼ららしい一場面だった。自由に遊ぶために、3人のグルーヴは決して乱さない。このトライアングルこそがSTOMPIN' BIRDだ。

終盤、YASUが「全国各地にライブハウスがあって。そこにはライブハウスを守っている人と、ライブハウスを大事にしているお客さんとスタッフがいるの。だから地元に帰ってライブハウスに行ったら、YASUがありがとうって言ってたって、直接言ってほしい。君たちのおかげでクラブチッタでライブができてますって」とライブハウスへの想いを語る。その言葉のあとに始まった「I Love Me」では、ステージ袖からSHACHIのTAKEが乱入してコーラスを聴かせるスペシャルな一幕も。ライブハウスで彼らが築いてきた関係性が、この日のフロアやステージ袖に凝縮されている。そんな盟友の気持ちも受け取ったTOMが、「やっぱり勇気をもらっているのは俺たちの方だった」と言うと、YASUが「思い出してほしい、俺たちが神奈川県代表、もも組代表、STOMPIN' BIRDだぞ!」と吠え、ラストナンバー「Brave Song」へ。いくつもの拳と大きなシンガロングと共に本編を終えた。

アンコールではTOMが「俺たち、こんな人気あったっけ?」と笑いながらビール缶を開ける。「今のビール、生まれて一番おいしかったです」とライブの手応えをうれしそうに口にした。そして3人は最後に「Know?」「Hurry Up」「Ready to Rock?」を叩き込み、盛大で美しい泥仕合を締めくくった。

この日、YASUは30年間を振り返り、こう話していた。「25年前に1stアルバム出して、その頃来てたお客さんがさ、来れなくなるんだよ。『仕事します』とか『大学に行きます』とか『子供ができました』とかで来れなくなるんだけど、30年やってると、そういう人たちが、子供の手がちょっと離れたとか言ってまた来てくれんのよ。その間に、仲間が死んだり、結婚がうまくいかなかったとか仕事先でどうこうとかで、いろんな人生が入り組んで『もうライブなんか行かねえ』って思ってた人も、何周かして来てくれてると思う。ありがとう。何周かしたその先に、今日があるとしたら、本当にありがとうございました」。バンドを30年続けるということはこういうことだ。

STOMPIN' BIRD OFFICIAL SITE
http://stompinbird.com/