COLUMN

ROAD OF SATANIC CARNIVAL'21 Document #02 -BOOKING-

Report by Ryo Tajima(DMRT)
Photography by Taio Konishi


2020年某日、ピザ・オブ・デス・レコーズ社屋。

『2021年はSATANIC CARNIVALをやりてぇ……。今すぐ"開催します!" と叫びたい。が、しかしだ……』

ーーと、思案しながら頭を垂れて苦渋の表情を滲ませている男一匹。
そう、SATANIC CARNIVALプロデューサー、I.S.Oである。
彼は頭を抱え込んでいた。いや、今も現在進行形で抱え込んでいる。

ーやれるのか、SATANIC CARNIVAL'21ー

これは、そんなイベントプロデューサーと、それを取り巻く人々のドキュメントである。
※室内は充分に換気を行いながら撮影を行なっています



I.S.Oは考えていた。どうやってバンドにオファーしていくべきなのか。「SATANIC CARNIVAL'21に出てください!」と例年通り言える状況ではないからだ。6月の第一週週末の開催を前提としているが100%の決定ではない。今後の情勢によっては中断せざるを得ない状況にもなってくる。『早々に声をかけることで、バンドがスケジュールを空けてくれた結果、やっぱり中止にします。となってしまったら、バンドに迷惑をかけてしまうだろう』そう考えると、なかなかブッキングという行動を起こせなかった。 だが、今ここに至っては、正式な開催発表前だからと言っても"やると決めて進んでいかないと何も始まらない"という考えがI.S.Oの思考を占めていた。出演するバンドにオファーするにあたって、"なぜ、SATANIC CARNIVALを開催する必要があるのか"を改めてI.S.Oは考えた。 『今、乗り越えなくちゃいけない壁はバンドやイベンターの前だけに立ちはだかっているわけでない。世界中の人が同じような苦境に立たされている。音楽シーンに特化して言えば、アーティストだけではなく、周囲で仕事をしている全員が一緒になって生き抜いていかなくては、みんなが帰ってこられる場所も失ってしまう。おこがましいかもしれないけど、自分たちが場所を残していかねばならないんじゃないか。SATANIC CARNIVALというイベントにしてもそうだし、ピザ・オブ・デス・レコーズというレーベルにしてもそうだ』 そんな使命感が1人の音楽人として、I.S.Oの胸中にあった。 同時に、懸念点もたくさんある。その最たるものが、"出演バンドに迷惑をかけてしまう事態"及び、"音楽シーン全体のイメージダウンに繋がる出来事が起こるリスクがある"ということ。最悪の場合を考えると懸念点は数えきれないが、それでも"やると決めて進む"というのが現段階での判断だ。 そうとなったらやることは1つ。出演してくれる人々との対話である。 通常であれば、最初から"出演オファー"という形で各バンドのチームに連絡をする。または、このシーンにおいてI.S.Oだけでは集めきれない情報を収集するために、サタニック運営チーム、レーベルやライブハウスの知人、友人に相談することもあった。 だが、今回に限っては、SATANIC CARNIVAL'21に出演してほしいバンドが、各々どういう状況なのか、どんなアクションを現在行っているのか、アーティスト自身はどんなモチベーションなのか、といった仔細を聞くことから始めることにした。このコロナ禍にあってバンドの対応は千差万別。イベントオファー自体が非常にセンシティブなことなのだ。


ある日、ピザ・オブ・デス・レコーズ社屋にて。I.S.Oは某バンドのマネージャー・A氏とWEB会議を行った。SATANIC CARNIVALの常連バンドの1つであり、これまでにヘッドライナーとして出演したこともある。I.S.Oは今年も絶対に出演してほしいと考えていた。「ご相談ベースで色々とお話できれば」と切り出し、会議はスタートした。


まず、I.S.Oは、これまでのSATANIC CARNIVALと異なる点として開催場所が野外であること、開催予定時期、自分の中で抱えていた懸念点などを伝え、今現在イベントを開催するにあたってどういう思いを持っているのかを話した。そこに賛同してもらえるのか、今バンドはどんな状況にあって、SATANIC CARNIVAL'21開催予定の時期(6月上旬)はどのような活動予定であるのかをヒアリングした。 このバンドは現在、定められたガイドラインに従って全席指定のライブを行っていた。これまではモッシュにダイブが吹き荒れるライブを展開していた同バンドにとっての現段階での決断として。 「最初は色々と思うこともあったが、全席指定とは言え、実際にライブをやって、来てくれたお客さんの反応を目前にすると、やはりライブでしか表現できないことがあるし、(ライブの)力があるんだってことを身をもって実感しました。これからもできるところで、やれることを、有人のライブという形で少しでも多くやれるように、と考えて行動しているところです。お客さんにとってもバンドにとっても、少しでもプラスになることができれば、と思い、前向きな気持ちで進めています」 マネージャー・A氏は言葉を選びながらバンドの現状を伝えてくれたうえで、私感を伝えた。


この答えに対して、まさにI.S.Oも同じ思いを持っていた。この状況を踏まえたうえで、"それでもライブに行く"という決断をしてくれる人がいる。ライブは不要不急なものではなく、今も必要なものなのだと感じてくれる人のためにも開催したいと思う。同じ心境と手応えを持って、某バンドのチームも動いていることを改めて確認した。 「モッシュやダイブが出来ないからサタニックには価値がない、そんな風に思わないようになったんです」というI.S.Oに対して、マネージャー・A氏は「(SATANIC CARNIVAL'21は)やるべきだと思います」と即座に返した。 このようにして、I.S.Oは各バンドと連絡を取り合い、お互いの意思疎通を図りながら少しずつオファーを行なっている。 イベントを開催するにあたって、どんなに対策を行ってもウィルスに対して完全安全領域を作ることは現段階では不可能。やらないことも選択の1つ。だが、やらないことで大切なものを無くしていってしまうことが懸念としてI.S.Oの脳裏にある。 今年、同じ使命感をもったバンドとスタッフ、そして来てくれるお客さんとで、新たな何かを作り上げる。制限があったとしても、何かを一緒に作っていきたい、という気持ちでやっていく。これがI.S.OのSATANIC CARNIVAL'21に向けた想いだ。 会議の最後に、I.S.Oはマネージャー・A氏に「良い意味で老けたねw」と告げ
「いや、良い意味って………というか、お前もな」とモニターの向こう側で顔が硬直したことを追記しておく。

 

~今回のドキュメントでわかったこと~

①モッシュやダイブが出来ないとしても、SATANIC CARNIVALには意味がある
②バンドへのブッキングは"対話"を持って続々と進行中
③未来は誰にもわからない!! (良くも悪くも)

ROAD OF SATANIC CARNIVAL'21 は随時、開催に向けた準備をドキュメントとして配信予定。
Believe in SATANIC CARNIVAL'21!! ARCHIVES
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