10年という節目を乗り越え、まさしく新時代の幕開けを示す回となったSATANIC CARNIVAL’24。今回のラインナップは明らかに昨年までとは異なるカラーがあった。こういった提示になったのは、昨年からの流れがあるだろう。これまでを踏まえて、未来のサタニックに向けて、総合プロデューサーのI.S.Oは何を思う。
締めくくりの2023年を経て今年はどうするのか
ープロデューサー、今年も総括の時間がやってまいりました。今年のサタニックを振り返ってみていかがでしょう?
I.S.O まず、昨年のサタニックが大きかったんですよね。コロナ禍を経たうえでの“解放されたフェス”を開催して。何よりHi-STANDARDがああいった形で出演したことで自分の中で大きな節目となったんです。昨年は開催10年目でもあったので、なおさら大きな区切りになりました。
ー2023年開催はサタニックにとって10年目、9回目の開催になりましたもんね。
I.S.O そうですね。自分がやってきた10年間を締めくくるような内容に結果的になりました。それを踏まえて、「じゃあ今年はどういったものにするのか」っていうのを考え抜いた結果、原点回帰した方がいいんじゃないのかという考えが念頭に浮かびワンデー開催にしました。
ー開催前のステートメントでも今年のテーマとして“原点回帰”を宣言してらっしゃいましたからね。そして、1日のうちに過去最大数のバンドが出演することになったわけですが、バンド数が増えたというのは何か理由がありましたか?
I.S.O 始めた頃は認知度も低かったですし、イベントならではのストーリー性も弱かったんですが、10年続けてきたことで、物語や繋がりが生まれてきたので、それらを1日に詰め込むには、どうしてもバンド数が増えてしまうんですよね。結果的に、こんなにも多くのバンドが出演することになったんですが、12バンドがSATAN STAGEに出演できるとなったとき、1番最初に思い浮かんだのは「トリをハルカミライにする」ってことでしたね。
ーハルカミライがトリだったことに意外性を感じる人もいると思いますが、悩まずに決められたんですか?
I.S.O 数年前であれば、ちょっと文脈が違うと感じる人もいたかもしれないんですが、そういうバンドが今やこのシーンを背負って立つような存在になったわけですし、去年からの流れで今年のトリをお願いすることで、より大きな意味を持つんじゃないかと考えられたので。むしろ悩んだのはサブステージの方でしたね。今年のサタニックに対する考え方はEVIL STAGEのラインナップに色濃く反映されていると思います。
ーEVIL STAGEには、日本語歌詞のロックを表現するバンドが増えたように感じます。
I.S.O 今のライブハウスシーンを見ると、日本語詞でメロディアスに歌い上げるロックバンドが多いですよね。彼らは今までのサタニックがサポートしてきたライブハウスシーンと同様に、同じマインドを持って活動しているわけなので、ラインナップとして違和感がないです。むしろ今のサタニックを表しているバンドだと感じています。英詞のメロディックハードコアパンクではないですけど、最近はジャンル云々の話よりも、バンドマンとしての真の表現であるとか、アティチュードに共感できるかどうかなんじゃないかと思うんですよ。四星球のライブを観ていて、めちゃくちゃ面白かったんですけど、カッコいい! って思う瞬間が多々あるじゃないですか。全力の本気でボケて質の高いパフォーマンスをしてくれるっていうところに心が動かされるし、バンドの本質ってそういうところにあると思うんです。
ーそうなると、サブスクですぐに曲が聴けたとして、ますますライブを観なければバンドの本質が伝わらない時代になってきているとも言えますか?
I.S.O それは大いにあるかもしれないですね。例えば、サバシスターにしてもそうなんですけど、彼女たち次世代が表現する音楽って、僕の世代からするとすごく新鮮ですし。次世代のバンドの中で、サタニックっぽいか、そうでないか、というのは意外と内面的な問題なのかもしれないです。反骨心の見え方次第というか。そういう熱量は現場だからこそ伝わってくるものですからね。僕にとって今はそういう時期なんだろうなって感じです。
年月を経たことで物語が生まれ他フェスと違うことができる
ーI.S.Oさんが仰るように、今年のサタニックは次世代を強く感じさせる回でした。そうなると、中堅やベテラン勢の扱いも変わってくる部分があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう?
I.S.O 彼らに関してはほぼレギュラーでお願いしている状態ですからね。去年はこうだったから今年はこれでお願いしますっていうケースが多いです。そして、みんなパワーがまったく落ちないっていう(笑)。正直、どんな出順でも、どこでもやれてしまうわけじゃないですか。だからこそ出番をどこでお願いするのかについて悩む部分はあるかもしれません。あと、全体を見ていて感じたのは、もしかしたら今年の客層はちょっと若い世代が多かったのかも? って気がしました。
ーそれは私も感じました。意外とベテラン勢世代が少なかったのかもしれません。
I.S.O まだデータを見ていないからわからないですけど、そうかもしれないですね。10-FEET、ホルモンはもちろんですけど、フォーリミやヘイ(HEY-SMITH)といったバンドの層が客層としては厚かったのかもしれません。そこに加えて若いオーディエンスが来てくれていたのなら嬉しいですね。もしそうなら、来年も頑張りたいと思えます。
ー早くも来年は2デイズ開催を発表されています。再び2デイズにしようと思ったのは何か理由があったんですか?
I.S.O 正直なところ、ちょっとやりすぎたかなって(笑)。ぎゅっとし過ぎて無茶だったなっていうのが、終わって感じたことでした。あと、各バンドの持ち時間も短くせざるをえなかったんで、もう少し持ち時間を渡したいって気持ちもありますね。それもこれも、昨年を経て今年は何ができるのかなってところから構想を練って、やってみた結果、次が見えたので。今までもそうだったんですけど、若手やシーンの未来にフォーカスして、同時にレギュラーで出演してくれるバンドを軸にしつつ、どんどん新しい空気を流し込んで、サタニックからライブハウスシーンを盛り上げていきたいと思っています。
ーやはり若手バンドは積極的にフックアップしていきたいと考えていますか?
I.S.O そうですね、良いバンドは。そのまま物語ができて続いていくかどうかは、そのバンド次第だと思うので。今、サブステージに出演して爪痕を残そうと頑張っているバンドの中から誰がメインステージに上がって、その位置をキープしていくのか。そういうことをけっこう考えますね。
ーメインステージをどうするのかっていうのは、ここ数年のサタニックが抱える大きな悩みでもあるし難しい問題ですよね。
I.S.O なかなか難しいんですけど、1つ自分の中で思ったことがあって。フェスってメインステージのラインナップの揃い方で集客も含めて評価されがちだったりするんですね。それが、今年で言えばPaleduskがメインステージに出演したりすることがサタニックならできる。ベテラン勢で言えば、Ken Bandがニューアルバムをメインにセットリストを組むことができる。こういうことは、イベントとバンドに繋がりやストーリー、意味があってこそできることなので、そこがサタニックならではの良さだと思ったんです。他フェスであればできないことでもサタニックだからできるっていうのは、バンドにとっても信頼感があるってことでしょうし、イベントとしての安心感があるからチャレンジできるってことでしょうからね。メインステージにチャレンジ枠を設けるというのも、ちゃんとアーティストと一緒に意図を持ってやれば理解してもらえるんじゃないかと、改めて思いましたね。
ー10年という月日はサタニックにとってもI.S.Oさんにとっても長く大きな年月だったと思いますか?
I.S.O ええ。続けていくということは、本当に同じことを繰り返すのは無理なんだなって思いました。絶対に何かしら変化や成長がないと続かないことを学びましたね。こんなに思い知らされるとは思いませんでしたよ(笑)。だって、形が出来上がったら繰り返していきたいじゃないですか。ルーティン作業でやっていきたいんです。でも、それじゃダメなんだって学びました。
ー今後、長い目で見たときに、サタニックはどうなっていくと考えられますか?
I.S.O これまでは10年続けることを1つの目標にやってきたんですが、この先の10年を考えたときに思うのは、もう積み重ねの結果でしかないなと思います。これから先、いつ終わってもおかしくないぞって気持ちで、その1回を大切に考えながらやっていくしかないですね。最終的に誰かに引き継ぐようなことになればいいんですけど、そういうもんでもないのかな、と思っていますね。