WANIMA "1CHANCE NIGHT TOUR 2018→2019" LIVE REPORT!!
Report by 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
Photo by Yukihide[JON...]Takimoto
2018.11.05
"1CHANCE NIGHT TOUR 2018→2019"
@Zepp NAGOYA
筆者の自宅近所には幼稚園がある。ある日、家でテレビを見ながらぼんやりしていたら集団下校中の園児たちの賑やかな歌声が聞こえてきた。「あ~りがとうを込めて歌っ~た♪」「うんうん。良い曲だなあ、ってWANIMA!」思わず一人で人生初のノリ突っ込みをしてしまうほどの驚き。また、同じ幼稚園の運動会のリレーで「いいから」を爆音で流してみんなが走っている姿も見たことがある。「うんうん。先生もWANIMAが好きなんだろうなあ、ってこんなド直球の下ネタソング絶対駄目でしょう!」人生二度目のノリ突っ込みである。いやしかし、薄暗いライブハウスで、地下のライブハウスで、我武者羅に歌っていた3人の声がここまで浸透していることにただただ興奮する。だってこんなの希望でしかないから。
彼らの快進撃を象徴するかのように2018年8月には計7万人を動員した初のドーム公演「Everybody!! Tour Final」をメットライフドームにて2日間に渡り開催したWANIMA。そのライブ中に発表されたのが年を跨ぎ、ライブハウスとホールを回るツアー「1CHANCE NIGHT TOUR 2018→2019」だ。飛ぶ鳥を落とすなんて表現をよく聞くが、飛ぶ鳥を優しく捕獲して友達にしちゃう勢いで全国を駆け巡るWANIMAのツアー初日、名古屋はZepp NAGOYA公演。近所の幼稚園を通りながら園児たちに「今からWANIMAを観てくるよ」と無言のメッセージを心で送りながら会場に向かう。
会場であるZepp NAGOYAにはWANIMAのTシャツや背中にPIZZA OF DEATHのロゴを背負ったキッズが大集結していた。時が流れて景色が変わってもこの光景はずっと変わらない。筆者も20年前から着てるPIZZA OF DEATHのTシャツをパーカーの下に秘かに着込んでいる。会場を見渡すと年齢層の幅広さも実感する。子供から大人まで、みんなを笑顔にするWANIMAのパワーを開演前にしてまざまざと感じた。ここで会場にいる親子に声をかけられWANIMAタオルを掲げた親子の写真を撮影した。この時点で「今日はいいライブになるな」となんとなく確信した。流れ込むようにフロアがどんどん埋まっていき客電が落ちた瞬間大歓声がZepp NAGOYAを包んだ。
お馴染みのSEが流れKENTA、KO-SHIN、FUJIがステージに走りこんでくる。太陽が猛スピードで昇ってきたようなその姿に一斉に照らされる会場。「この光はなんだろう」そんなことを一瞬考えていたのだが答えはこの後すぐに分かることになる。ライブは「juice upのテーマ」「1CHANCE」「OLE!!」とのっけからフルスイングだ。「OLE!!」では「意地張ってないでピース」という歌詞が耳に飛び込んできた。その瞬間だった。あの光が射し込んできたのだ。KENTAが続ける。「情けない気持ち、悔しい気持ち、抱えてると思うけど、今日くらいはアクセル全開でドライブしようぜ!」もう完全に光である。この強烈な光は例えるならキン肉マンのフェイスフラッシュ。その光に触れたものには奇跡が起きる聖なる光をWANIMAは全身から放っているのだ。その流れで披露された「Drive」は冒頭から「光る星を繋ぎ合わせ夜を超え朝が来るまで」なんて歌っている。全身がキラキラしている気分になる。
疾走するイントロから青春プレイバック待ったなしの「花火」は少年時代の思い出をキュンキュン刺激する。「ラムネを買って何も無い空き地に手作りの地図拡げどこへ行こう」なんて本当に溜まらない。映画「グーニーズ」に憧れて自転車で隣町まで冒険していたあの頃がフラッシュバックする。ステージを観るとKENTAもKO-SHINもFUJIもまるで子供のような顔でライブをしている。ずっと子供でいることは難しい。でも子供の心は持ち続けていたい。少なくともWANIMAを観ているときは子供でいられる気がする。「みんな昔子供だったんだよな。ここにいるみんなはどんな子供だったのかな」なんて思いながら会場を見渡すと、本当にみんないい顔をしている。最高だ。
ライブ中盤、泣きのイントロからグッとくる「TRACE」では「あな~たがい~れ~ば~」の大合唱が起きる。筆者も負けじと大声で歌いながら「英語じゃないとなあ」なんて言っていた若かりし頃をふと思い出した。独立していた様々なシーンがクロスオーバーしたことで必然的に壁がなくなりみんなが自由な表現をする。WANIMAには日本語の素晴らしさも教えてもらっている気がする。「あなたがいれば」というシンプルな言葉の先に色んな想像も膨らませることが出来る。きっと聴いた人の数だけの解釈がある。そんなことを思いながらみんなで大合唱出来るWANIMAのライブがとんでもなく楽しいのだ。大合唱といえば「終わりのはじまり」も印象的だった。デビュー前より演奏されてきたこの曲の「ラララララララ」のシンガロングが、何も変わらないままあの頃の何倍もの声で聴こえてくることにWANIMAの軌跡を感じる。回り道もきっとしただろう。それでもただ真っ直ぐ前だけ見て走ってきたからこそ辿り着いた今が彼らにはある。「明るく元気なみんなのWANIMA」になるまでの道のりを「終わりのはじまり」からは強く感じた。
「昨日の歌」から「ともに」への流れも秀逸だった。あの頃「明日がくれば今日は昨日の歌」と歌っていた彼らが「どれだけ過去が辛くて暗くても昨日よりも不安な明日が増えても悩んだり泣いたりする今日も進め君らしく心踊る方」と前に前に前に上に上に上に突き進むとびきり全開パワーをくれる。子供には子供も大人には大人の色々があってみんなそれぞれ涙をこらえ笑って生きている。その中で心が躍るものに出会えたからこそ、WANIMAに出会えたからこそ、自分らしく進むことが出来る。最初にも書いたけれど、みんな本当にいい顔してるんだ。
空気が一転したのは「Everybody!! Tour」より披露されている新曲「りんどう」だった。故郷である熊本に向けて歌われたこの曲はまるで祈りのようにも感じる優しくて強い曲だ。「弱いままで強くなれ」というメッセージが会場を包む。WANIMAというバンドの持つパブリックイメージとは違う角度から違う手法で笑顔にさせてくれる名曲だ。KENTAが亡き祖父に向けて歌ったという「1106」も感動的だった。「目の前にいる人を大事にしてください。生きてるうちは伝えなきゃ!」とメッセージを放ち歌われた「1106」を聴きながらみんながそれぞれ大事な人を想ったことだろう。生きている限り、会える限り、生きているうちに、会えるうちに、気持ちを伝えて欲しい。そう強く思った。じいちゃん、会いたいな。不覚にも涙してしまう。
「ワーニーマー!ワーニーマー!」の合唱と共にフロアからタオルが一斉に掲げられると後半戦がスタート。筆者もライブレポートどころではなく気付いたら一緒に「ワーニーマー!」と叫んでいた。用意していたノートはすっかり鞄の中だ。しかし、そもそもWANIMAという、一見どんな意味があるか分からないバンド名を大声で叫んでいるこの光景が凄い。結成時のメンバーの頭文字から名付けた名前がギリシャ語で「みんなで頑張ろう」という意味を持っていた奇跡も凄い。だってギリシャ人がこの光景を見たら「みんなで頑張ろう!」って大合唱している訳だから。そんなのWANIMAでしかない。
大熱狂の中、ライブ本編が終わりアンコールではリクエストコーナーに。オーディエンスの中から選ばれた3人がリクエストしたのは「THANX」「やってみよう」「オドルヨル」だ。こうやってバンドとファンでライブを作り上げていくのもWANIMAらしさだ。みんなの気をメンバーに集めてでっかい元気玉を作る、元気を与えるだけじゃなくみんなの元気もWANIMAのパワーとなっているのかもしれない。しかし改めて「THANX」は凄い曲だ。もう会えない人を想いどうしようもない瞬間があって、それはライブを観ている今も急に頭に浮かんでしまうのだけれど「離れるのは距離だけ」とWANIMAが歌ってくれることで気持ちが晴れるのだ。雲の上のあいつに心配されちゃうようじゃ駄目だからまたいつか会えるときまで笑顔でいたいと思う。もう本当にWANIMAのライブは感情をグワングワンに揺さぶってくるんだから。
泣いたり笑ったり大変だ。テレビからもガンガン流れてくる「やってみよう」では「正しいより楽しい、正しいより面白い、やりたかったことやってみよう」と自分がやりたいことを躊躇してしまっている人の背中を優しく押す。これは「ともに」で歌っている「君らしく心躍る方」を自分で選んで進むことにも繋がってる。WANIMAのライブにはあらゆる年齢層のファンが集まっているが進路に悩む人、人生に悩む人もこの中にはいるだろう。そんなときは「正しいより楽しい」「正しいより面白い」「自分らしく心躍る方」を選んだらいいと思う。きっとKENTAもKO-SHINもFUJIもそうやってきた結果。今僕らの前で歌っているのだから。って、何か良い話みたいになってきたところでガッツリ下ネタオンパレードの「オドルヨル」でフィニッシュ。泣いて笑って踊って大忙しのWANIMAのツアー初日、最高なんて言葉の何倍も最高の夜だった。
ライブを終えたZepp NAGOYAは満面の笑みを浮かべた老若男女で溢れていた。名古屋から始まった「1CHANCE NIGHT TOUR 2018→2019」できっとここから、年を跨ぎ全国各地で笑顔の連鎖が起きるのだろう。色んな場所で色んな人に光を放ちまくって、自分自身も元気を貰いまくって、光合成しまくったWANIMAにまた会えるのが楽しみで仕方ない。日本中のあちこちで元気玉の作り合いっこをしてきて欲しい。音楽で世界は変わらないかもしれないけれど音楽で元気になった人はきっと世界を変えると思う。その先頭で走っているのはきっとWANIMAの3人な気がしてならない。
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※ツアー中の為、割愛いたします。
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