LIVE REPORT

dustbox“The Awakening TOUR” LIVE REPORT!!!

Report by 柴山順次(2YOU MAGAZINE )
Photo by 岩渕直人

 

2019.7.24
dustbox“The Awakening TOUR”
@Imaike HUCK FINN


7月24日、週の真ん中水曜日。この日は20周年を迎えたdustboxの「The Awakening TOUR」の名古屋公演が今池HUCK FINNにて行われたのだが、会場に向かいながら、丁度自分がHUCK FINNに入り浸るようになって20年くらいだなとふと思った。あの頃とは変わった街並、あの頃から変わらない空気感。今池という街が自分は大好きだ。今池のライブハウスが大好きだ。HUCK FINNの目の前のいつもの駐車場に車を停めて、靴紐を結び直し、薄暗い階段を降りる。取っ手をグイッと持ち上げ重い扉を開ける。超満員のライブハウスは開演前にも関わらずお酒の匂いと汗の匂いが充満し、40歳を超えた今も20年前と変わらず小さなライブハウスでギュウギュウ詰めになっていることに少し笑ってしまった。

9枚目のアルバムには『The Awakening』と名付けられている。「目覚める」という意味を持つこのアルバムを引っ提げ、6月から始まった今ツアーは各地で仲間を迎えながら全国をグルっと回り、来年2020年1月にZepp東名阪にてFINAL SERIESが行われる。ツアー前半戦、今池HUCK FINNには盟友Northern19が登場した。

5月より新メンバーとしてBassに敦賀壮大を迎え新体制としての活動をスタートしたばかりの彼ら。現体制では初の名古屋でのライブは、「たった今新たなスタートを切ったところ」というメッセージを大シンガロングで叩きつける「GO」でスタートダッシュをキメる。畳みかけるような高速ビート、ため息が出るほどのグッドメロディ、息吹を感じるメッセージは新体制になった今も健在だ。いや、むしろより強靭なものになっているように感じる。結成時より演り続けてきた「CRAVE YOU」や、リフの応酬から2ビートが炸裂する「RED FLOWER」と容赦のないNorthern19の総攻撃にオーディエンスも負けじと応戦。ペンを持つ右手とノートを支える左手がウズウズし始める。ライブハウスでメモを取るなんて辞めだ。自由になった自分の両手が嬉しそうに拳を握らせる。「dustboxに捧げます」と笠原健太郎(Gt/Vo)の弾き語りから始まった「TONIGHT,TONIGHT」では空気が一変し、曲展開の中でバンドインした瞬間には涙が溢れ出した。バンド同士の友情や愛って本当に美しい。僕らの想像を超えた綺麗なだけではないアレやコレもあるだろう。だけどもバンド同士の関係性が羨ましく思える瞬間がステージにはある。Northern19とdustboxが供にした日々が今目の前のこのライブに繋がっているんだろう。もうライブで何百回、何千回と全国各地で歌ってきたであろう「STAY YOUTH FOREVER」をHUCK FINN全体で大合唱し、dustboxに繋ぐ。

転換の為、満員のHUCK FINNに客電が点く。見渡す限りの人、人、人。いや、もはや見渡すことも不可能、身動きの取れない中で考えていたのは、何故dustboxがツアーで毎回HUCK FINNを訪れるかということ。変な意味ではなく、もっと大きな会場を埋めることも可能だろうし、名古屋でも大きなライブハウスでのライブも多い。実際に来年開催されるツアーのファイナルシリーズはZepp NAGOYAだ。それでもツアーにはちゃんとHUCK FINNが名を連ねている。そんなことを考えていたらアルバム『The Awakening』のオープニングを飾った「Awakening」をSEにメンバーがステージに現れた。さっき詰め込んだノートとペンを鞄から出し、「冷静に、冷静に」と暗示をかける。しかしそんなものは何の意味もなかった。アルバムの流れ同様、「Awakening」から「21g」の流れを全身で浴びてしまったら最後。ここから本当に何もメモには残っていない。よってMCで何を喋っていたかとか、この曲のここで何が起きたかとか、何も出てこない。しかしこの身体が覚えている。あの日、HUCK FINNに居た人の心に焼き付いている。なんてもっともらしいことを書いているが、簡単に言えばメモなんて取ってられないくらい楽しかった。それだけだ。許して欲しい。

ハードコア要素を上手くメロディックパンクに昇華した極上の「21g」、メロディを追いかけるようなギターリフにキュンキュンしてしまう「Not Over」とライブ冒頭から飛ばしまくりのdustbox。まだ始まったばかりだというのにここでモニターをJOJI(Ba/Vo)が退かし、唯でさえ柵のないHUCK FINNのステージとフロアがゼロ距離に。苦笑いしながらも「任せろ」の表情でセキュリティにつくスタッフに容赦なく身体ごとぶつかるダイバー達。そしてそんな彼らをフロアに押し戻すセキュリティ。その模様はさながらランバージャックデスマッチだ。分からない方はキン肉マンか週刊プロレスをチェックして欲しい。




「Try My Luck」「Don't Call Me An Average Guy」とdustbox節炸裂の美メロディと掛け合うコーラスの絡みで涙腺が崩壊した所で、ニューアルバム『The Awakening』から「Farley」を披露。縦横無尽に行き来する曲展開の中にサブリミナル効果みたいな立ち位置でぶち込まれた日本語詞と、「ネバー!トゥーレイト!」のアクの強さ。これをさらっとやってしまうのがdustboxの面白さだ。こういった彼らの振り幅はアダルティにカヴァーしたThe Cardigansの「Carnival」でも感じることが出来る。メランコリックな世界観を作り、応援歌とも取れる「Riot」で感動させた後に、脱サラしてメロンパン屋さんを始めた父親の暴走を描いた「Out Of Control」を持ってきちゃう辺りもめちゃくちゃdustboxだ。




「Still Believing」でいつの間にか涙が出ていて、「Pity Party」で軽快にダンスして、「Right Now」の「セーッチュフリー」を合唱、そしてニューアルバムより「One Thing I Know」、日本語をフィーチャーした「Missing Piece」と、活動20年目にして天井知らずのポテンシャルをまじまじと感じる。dustboxが日本語で歌っていた時期、つまりメジャー期はバンドにとってどんな時期だったのだろう。きっと良いことも悪いこともあって、全部抱きしめて全部受け止めて今に至っているのだろうけれど、あの時期とはまた違った角度から歌われる日本語詞に、改めて20年という時間の長さと軌跡を感じずにはいられなかった。「Hurdle Race」「Tomorrow」と思い入れたっぷりの名曲を披露し、ラストは「You Are My Light」。「あなたは僕の光」と何度も繰り返し歌うSUGA(Vo/Gt)の表情が脳裏に焼き付いて離れないでいる。




鳴りやまないアンコールの声に応え「Bitter Sweet」「Bird Of Passage」「sun which never sets」「Here Comes A Miracle」「Jupiter」と彼らの20年の歴史を振り返るように歴代の名曲を演奏。まさかのWアンコールでは、まさかのNorthern19笠原健太郎を迎え、まさかの新バンド「天然銀河ブラザーズ」として、まさかの聖闘士星矢カヴァー。天然銀河ブラザーズが次いつ観れるかは分からないが彼らの今後に期待もしつつ、最後は「Love」で大団円を迎える。バンドメンバーは勿論、ランバージャックデスマッチを戦いきったセキュリティとオーディエンスもみんなめちゃくちゃ良い顔している。そういえばライブ中、何度もセキュリティをしていたスタッフとJOJIが目を合わせて笑い合っている姿も見た。そうか、これだ。何処でやるより誰とやる。それはライブに足を運ぶお客さんは勿論だけど、全国各地のライブハウスのスタッフとdustboxが20年で作り上げてきた信頼関係なのだろう。来年1月には東名阪のZeppでのFINAL SERIESが行われる。そしてきっとまたここHUCK FINNにも帰ってきてくれるだろう。そうやって西へ東へバンドは旅をしてそれぞれの場所にそれぞれの思い出や大事な人が出来るのだろう。そんな人たちを驚かせたいからバンドは常に新しいことに挑戦して、何度も何度も目覚めて、また新しい作品を引っ提げて会いに来てくれるのだ。この旅の先でどんなdustboxに会えるか。今から楽しみだ。







>>>dustbox OFFICIAL HP