locofrank “IKKI NOT DEAD presents Reel it vol.1 ” LIVE REPORT!!
Report by 小林千絵
Photo by Yasumasa Handa
2019.9.7
locofrank “IKKI NOT DEAD presents Reel it vol.1 ”
@新宿Antiknock
IKKI NOT DEAD主催イベント「Reel it」が始動した。IKKI NOT DEADはHAWAIIAN6が創立したレーベルで、HAWAIIAN6のほかKAMOMEKAMOME、THE NO EAR、SABANNAMANなどが所属しており、昨年locofrankが所属したことでも話題を集めた。1回目となるこの日のイベントには39degrees、OVER ARM THROW、locofrankの3組が出演した。この日のラインナップについて主催者に話を聞いたところ、「若いバンドを1組は入れようと思った。その選定基準で大きかったのはライブの本数」だという。その言葉で、このレーベルが何を大切に活動しているかがわかると思う。
この日の一番手は39degrees。彼らは「一番若いからじゃなくて、『トップバッターを39degreesに任せたい』と思ってもらった……“てい”でここに立ってるんで」と彼ららしい言葉選びで意気込みを語っていたが、その言葉通り「ALL I WANT」でライブの口火を切ると、パワフルな演奏で観客のテンションを引き上げていく。3曲を畳み掛けたあと、クリハラコウキ(B, Vo)が「めちゃくちゃ楽しくない?」と頬を緩ませたかと思いきや、そのまま「Rise Again」になだれ込めばその緩急につられるように観客もヒートアップ。一気にダイバーの数が増える。
この日の競演者であるOVER ARM THROW、locofrankについてバンドウナオト(G, Vo)は「高校の頃から聴いていて、mixiでレビューを書いていた」と競演の喜びを口にしていた。おそらくクリハラもコージ(Dr, Cho)も同様で、彼らに影響を受けて生み出した、バンドウいわく「メロディックの名曲」たちを次々と繰り出していく39degrees。しかし3人は憧れのバンドと対バンできたことをただ喜ぶだけではなく、2組を目当てで来たであろうファンをも取り込むかのようにハンドクラップを煽ったり、背伸びをして後方のオーディエンスも気にかけ、場内の一体感を高めていく。そんな彼らに引き込まれるように、初めは様子を伺っていた後方のファンまでも、途中からは拳を突き上げ、39degreesは見事に会場中の観客の心を掴んでいった。
続いて登場したのはOVER ARM THROW。菊池信也(Vo, G)が、おそらくIKKI NOT DEADのロゴマークをイメージした独特のポーズを見せながら「IKKI NOT DEADー!」と叫んで主催者への愛を見せ、バンドは「Shooting Star」でライブをスタートさせた。初っ端から「S.O.G」「ZINNIA」「Mr.know-it-all」とシンガロング必至の楽曲を連投し、すでに熱気に満ちた会場の温度をさらに上昇させる。かと思えば曲間には鈴野洋平(B, Cho)がフロアを伺い落し物を気にかけたり、ダイバーが落下しやすい箇所を指摘して「協力し合っていこう」と声をかける。また先日、寺本英司(Dr, Cho)が加入10周年を迎えたことから観客から「おめでとう!」との声が上がるなど、物理的にも精神的にも距離の近い中でライブが進行する。
さらに菊池がlocofrankの木下正行(Vo, B)のモノマネを披露し、そのままlocofrankのカバーを披露するかどうかでメンバー間で揉めるひと場面も(結局「locofrankのライブの際に乱入させてもらおう」という結論に達した)。しかし、彼らがイジるのは盟友のlocofrankだけではない。後輩であり、この日の一番手であった39degreesにも「あいつらウケてたなー」と触れるなど、MCでも誰一人として置いていかない姿が印象的だった。
OVER ARM THROWはIKKI NOT DEAD所属ではないのだが、翌日に行われる「Reel it」の2 回目にも出演することが決定していた。同イベントに2日間出演するのは、所属バンドを含めてOVER ARM THROWだけ。所属バンドとの密な関係性がゆえの2DAYS出演であることを説明し、最後に「レーベルの垣根を超えて、楽しいことならどんどんやっていきましょう」とメッセージを送り、ショートチューン「All right, all wrong」で、この日唯一のIKKI NOT DEAD所属バンド・locofrankへとバトンをつないだ。
木下が「おーい、後ろ見えてるかー?」と後方のファンを気遣ったあと、「CALLING」で伸びやかなボーカルを響かせたlocofrank。MCでは木下がバンドウのmixiでlocofrankの「share」を“シェア”していたというMCに触れ「うれしいやんか」と破顔する。「今日は(「share」を)やりません」と言いつつも「懐かしいの聴いてもらおうかな」と告げると、次のブロックでは「cycled promises」「reason」「Pack of mutts」「BE FULL」と初期曲を連投。ライブではなかなか披露されていない楽曲もあり、イントロからファンは大盛り上がりだった。それまでの熱狂から一転、語りかけるように「THE LIGHT」を丁寧に届けたあと、木下はステージ袖に控えていた菊池をステージに連れてくる。そして菊池が木下のモノマネをしながら曲振りをして、バンドは最後に「START」をドロップ。サビでは木下が歌わずともフロアから大合唱が発生し、一体感に包まれたままlocofrankの3人と菊池はステージをあとにした。
アンコールの声に応えて再びステージに上がった木下は「キクの『START』の破壊力よ! もうオーバーアームに(『START』を)あげよかな」と冗談交じりに本編を回想。そして菊池のリクエストだという「WORDS」と、「survive」をプレイして、灼熱の一夜を締めくくった。
この日、初期の楽曲をメインに披露したlocofrankだが、木下はMCで9月18日リリースのニューシングル「Beyond the epilogue」を告知する際、「音楽ってやつはお前らが守るんよ」と語った。その言葉にはもちろんCDを買って新曲を聴いてほしいということ、ライブで育ててほしいという意味が含まれている。この言葉を、レーベル主催のイベントで、唯一の所属バンドが放った意味は大きい。レーベルの所属バンドとしては“新米”ではあるが、レーベルという看板を背負って活動を行うということを理解しているバンドが所属しているIKKI NOT DEADのたくましさを感じたイベントだった。