Survive Said The Prophet “Inside Your Head Tour” LIVE REPORT!!
Report by 山口智男
Photo by toya
2020.2.21
Survive Said The Prophet “Inside Your Head Tour” -
@恵比寿 LIQUIDROOM
Survive Said The Prophet(以下サバプロ)の勢いが止まらない! 昨年12月9日に新木場STUDIO COASTで「Made In Asia Tour」のファイナルを迎えた5人はそこから一息つくどころか、さらにたたみかけるように今年1月15日に5thアルバム『Inside Your Head』をリリース。そして、その『Inside Your Head』をひっさげた新たな全国ツアーを、2月21日、恵比寿LIQUIDROOMからスタートさせた。
冒頭にも書いたとおり、LIQUIDROOMのキャパは、現在の彼らにとってはひと回り、いや、ふた回りは小さかったんじゃないかという気もするが、新しいツアーのスタートだ。ぱんぱんになったライヴハウスの熱気を感じることはもちろん、できるだけ近い距離で受け止めた観客の興奮を持って、5月31日の沖縄公演まで、全23公演を行うツアーに臨みたかったのだろう。
実際、この日のLIQUIDROOMは関係者エリアを作れないほどの超満員。一人でも多くの観客に見てもらえるよう、めいっぱいチケットを売ったことがうかがえるが、Yosh(Vo)が同期に合わせ、1人で歌い始めた「Inside」からアルバムと同じように、順々にステージに出てきた楽器隊の4人とともに「Your Head」になだれこんだとたん、超満員の観客がシンガロングの声を上げる。
もちろんそれで満足するサバプロじゃない。
「大きい声でちょうだい!」とYoshが発破をかけ、バンドがヘヴィなリフから間髪入れずに「Calm:Unison」に繋げると、観客は「ハイ!ハイ!ハイ!」とさらに大きな声を上げながら、曲の展開に合わせるようにジャンプ、シンガロング、ヘッドバンギング、ダイヴとバンドの熱演に応え、滑り出しからいきなりスタンディングのフロアを揺らしていった。観客にだって、これだけ近い距離で見られるならという気持ちがあったに違いない。
「男子!女子!選ばれし者たち!今日イチのカオスを見せてください!」と、さらに煽ったものの、煽ったそのYoshが思わず「ケガすんなよ」と言うほど、序盤から盛り上がったんだから、LIQUIDROOMからツアーを始めた甲斐は大いにあった。
もっともこの日、バンドが考えていたのは、ライヴハウスならではの熱狂を作ることだけではなかったと思う。新作のツアーのスタートだ。新作からの曲を中心にしたセットリストを観客にぶつけ、その手応えを確かめることも大きなテーマだったはず。
シンガロングやコール&レスポンスを交えたライヴ・アンセムになっている「Mukanjyo」や「Bridges」はさておき、「Hero」「Heroine」「Last Dance Lullaby」「Never; Saying Never」「red」「3 A.M.」といったラウド・ロックと言うよりは、R&Bの要素が濃い、暴れさせると言うよりは、じっくり聴かせるタイプの曲がさらに増えたことで、サバプロのライヴは――この日のライヴを見るかぎり、若干変わってきたという印象もあったが、メタリックな「Network System」を演奏する前にYoshが言った「アンダーグラウンドから叩き上げてきたラウド・バンド。ここからアンダーグラウンド感を見せてやる!」という言葉は、自分たちのライヴがより多くの人たちが楽しめるものになってきたという自負も含めた思いがバンドにもあるからこそなのだろう。
その「Network System」ではダイヴしながら怒涛の如くステージに押し寄せる観客と、ぐータッチしながら、Yoshは彼らに向かって、「おまえら、みんなかっこいい!」と感嘆の声を上げた。そして、「全員で歌うことが大事」と言った「Bridges」では観客にシンガロングを求めながら、「疲れてるんですか?」と、敢えてのダメ出しから、観客にさらに大きな声を上げさせ、不思議と耳に残る《石橋叩き続けてきたんだ》という歌詞をコール&レスポンスしながら大きな一体感を作り上げる。
そこから、本編最後の「3 A.M.」まで、バラードの「S P I N E」や「red」といったテンポを落としてじっくりと聴かせた曲やR&B色濃い曲を並べた選曲は、なかなか攻めていたように感じられたが、ファンのみなさんは、どう思っただろうか?
ヨコノリのリズムがサビで4つ打ちのタテノリになる「Never; Saying Never」、Show(Dr)がドラムパッドを叩き、Tatsuya(Gt)、Ivan(Gt)、Yudai(Ba)がアンビエントなサウンドを奏でたポスト・パンク調の「red」。ラウド・ロックとは違うやり方で、白熱した演奏が、その2曲をライヴのハイライトとして印象づける。因みに、「red」は18年12月にシングルとしてリリースしてから、ライヴで演奏されることはなかったそうだが、満を持して、この日、初披露となったことからも新たな全国ツアーの初日にかけるメンバーたちの意気込みがうかがえるようだ。
そして、前述したように本編の最後を飾った「3 A.M.」。同期でストリングスとピアノを鳴らしたバラードを、観客はサビでシンガロングの声を上げるまで、身じろぎもせず、じっくりと聴きいった。それは、楽曲の魅力はもちろん、スタジオに入る金がなかった下積み時代、深夜、代々木公園で作ったこの曲を、現在のサバプロのチーム全員が代々木公園で、メンバーに歌ってくれた。「だから、この曲で終わりにしましょう」と演奏前にYoshが語ったエピソードが観客をエモい気持ちにさせたからだ。
アンコールに応え、もう1曲、演奏したアンセミックな「Conscious」と高々と掲げたピースサインで締めくくったこの東京公演の後、釧路、札幌とライヴを重ねながら、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、2月28日の旭川、29日の苫小牧に加え、3月中の公演はすべて延期せざるを得なくなった現在、LIQUIDROOMのステージでYoshが語った言葉がズシリと響いている。
「音楽を大切にしている人ほど、仲間と言えるのかな。そういうコミュニティを守っていきたいし、そういうコミュニティに守られていきたい。どうなるかわからないけど、最後までとことん生きてやりましょう。音楽っていいものだと最後まで言いたいし、音楽を愛している奴に悪い人間はいないと最後まで言いたい」
東京公演の開催も危ぶまれていたそうだから、この時、すでに今後、ライヴができない状況になるかもしれないと予感していたのだろう。活動を加速させながら、走り続けてきたバンドにとって、今回のライヴのキャンセルがどれだけ悔しかったか。この夜の手応えを、ライヴを重ね、ツアー・ファイナルまでさらに大きなものにしていこうと5人が情熱を燃やしていたと思えば、それはなおさらだ。
4月からのツアーは再開する予定だそうだ。サバプロのことだから、この悔しさをバネにリヴェンジにかける思いを、今まさにめらめらと燃やしているに違いない。
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