WANIMA "COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINE STADIUM" LIVE REPORT!!
Report by Chie Kobayashi
Photo by 瀧本JON...行秀
2020.9.22
WANIMA “COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINE STADIUM”
全国の映画館とライブハウスでのライブビューイングおよび配信ライブとして行われた無観客ライブ「COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINE STADIUM」。正直なところ、無観客ライブならメインステージだけでいいし、始まりからメンバーがステージに立っていてもいいはずなのに、WANIMAはこの日も、いつも通りにSEでステージに登場してきて、しかも最初にセンターステージに進んでひと騒ぎしていた。まるで、ファンの顔を見たり、ファンの声に耳を傾けたりしているかのように、会場内をたっぷりと見渡したあと、メインステージへ戻り「COMINATCHA!! TOUR FINAL、開催します!」と声を上げる。呼応するように、SNSでは「開催しまーす!」との投稿が続々と上がっていた。
KENTA(Vo, B)が何度も「見とるかー?」と心配しながら、3人は「COMINATCHA!!」の1曲目“JOY”でライブをスタートさせる。序盤からFUJI(Dr, Cho)が得意のモノマネを織り交ぜたり、“夏のどこかへ”の間奏でKENTAがKO-SHIN(G, Cho)に向かって「ギター、ノーミスで!?」と煽ったりと、生憎の雨も忘れさせるようなハイテンションの3人。楽しそうに笑顔を見せながら演奏をする3人だったが、ファンの歓声や歌声のないライブはどこか寂しそうで、同時配信されているライブハウスの様子が映し出されると、ホッとした様子を見せていた。
「おーい! どこにおるん? おーい! どこで見とるか?」と呼びかけたあと、「母親代わりのばあちゃんに作った歌やります」と口を開き始めるKENTA。彼は「自分のことで申し訳なかやけど」と言いながら、「歌詞も飛んだり、間違えたりするけど、今の俺はどう映ってる?生きとるうちに伝えたかったけん、遠くのばあちゃんに伝えます」と祖母への思いを伝え、“Mom”へ。映像でも雨にうたれる3人のシルエットや、演奏にあわせ雨粒を弾くドラムセットのアップなど、エモーショナルな姿が切り取られ、配信ライブならではの演出が切ないムードを盛り上げていた。
しんみりした雰囲気を一蹴するように笑顔を見せた3人は、KO-SHINのカッティングに乗せて再びセンターステージへと進む。Twitterでのリクエストに応えるリクエストコーナーを一瞬挟みつつ(イントロで断念。でも彼ららしいサービス精神を垣間見た)、KENTAが「コロナになって俺らにできることは音楽を届けることやと思いました」ときっぱり。そしてセンターステージで向かい合うように立った3人は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛期間に急遽制作・配信リリースした“Milk”をプレイした。さらにセンターステージで続けた“渚の泡沫”、“いいから”では、ライブ人気曲ならではのテンションももちろんながら、このライブのために開発された、リアルタイムでの360°映像の配信を可能とした世界初となる映像技術soundiv.による演出でも視聴者を驚かせた。
“ともに”まで演奏すると、3人はゆっくりメインステージに戻ってくる。KENTAは無人ながら2万5千本のサイリウムで彩られた客席を観ながら「ツアーが中止になって俺らも目の前のことが白紙になったけど、観てる人もいろんなことがあったと思う」と改めて未曾有の事態に言及。そして「いつもは『がんばれ』も『大丈夫』も言わん。がんばってることもわかってるし、大丈夫じゃないこともわかってるけん。けど……大丈夫やから! 弱いままで強くなっていきましょう」と言葉を重ねて“りんどう”、“宝物”を歌う。ストリングスの音色と共に届けられた2曲に、SNSにはKENTAの言葉や歌詞を噛みしめるファンの投稿がずらりと並んだ。
ライブの終わりを告げる“GET DOWN”の演奏後には、野外ライブならではの演出・花火が上がる。花火を見つめる3人の顔には達成感のほかに、どこか寂しさが残っていたのは気のせいか。KENTAが「これからもしぶとく生きていこう!WANIMAでした」と挨拶をしてステージを去ると、スクリーンに突如カウントダウンが表示される。そしてゼロのカウントと共に2ndミニアルバム「Cheddar Flavor」が、しかも翌日9月23日に発売されることが発表された。着替えて再びステージに登場した3人は「やっと言えた!」と清々しい表情で「なんとかみんなを驚かせたかった、なんとか楽しみを届けたかった」とサプライズ発表について説明した。そして新曲として表題曲と、収録曲で配信リリースされた“春を待って”を演奏してライブは終幕。しかし別れを惜しむように、彼らはステージ袖でも「Cheddar Flavor」の告知を時間をかけて行い、約1時間半のライブを終えた。
ライブ中、KENTAは「やっぱ、みんながおらんと物足りんな」とつぶやいていた。観ているこちらも、いつものようにライブを観ている気持ちになったかと思えば、ふと映し出される無人の客席に寂しさを覚えた。しかし彼らは本当にカメラの向こうにファンがいるかのようにまっすぐに笑顔を見せてくれたり、3人の力強い演奏が空いっぱいに広がる様子をカメラ越しにも感じさせてくれたりした。そして思い出した。これまでテレビ番組に出演することの機会が多かった彼らは、いつも「テレビに出ることは遠くなることじゃない。むしろどこにいても会えるから近くなっていると思う」と話していたことを。もちろん“ゼロ距離”で会って、コールアンドレスポンスしたり、一緒に歌ったりできるに越したことはないけれど、小さなライブハウスでも大きなホールでも、いつも一人一人に向けて歌っているWANIMAは、画面越しでも一人一人に向けて歌ってくれていた。「Cheddar Flavor」は「誰かに歌うな、自分に歌え」と言い聞かせて作った9曲が収録されているそうで、KENTAは「自分の内側の曲やから、受け取ったらみんなの歌になるように願ってます」と話していた。いつも一人一人に向けて歌ってくれる彼らが、直接会うことのできないこの時代にどんな作品を届けてくれるんだろう。私もCDショップに駆け込もうと思っている。
[SETLIST]
01. JOY
02. Hey Lady
03. つづくもの
04. Japanese Pride
05. BIG UP
06. 夏のどこかへ
07. GONG
08. Mom
09. Milk
10. 渚の泡沫
11. いいから
12. ともに
13. りんどう
14. 宝物
15. GET DOWN
16. Cheddar Flavor
17. 春を待って