LIVE REPORT

ENTH × SPARK!!SOUND!!SHOW!! presents “爆走!白虎珍道中” LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by Daiki Miura

 

2021.1.4
ENTH × SPARK!!SOUND!!SHOW!! presents “爆走!白虎珍道中”@渋谷CLUB QUATTRO


   ENTHとSPARK!!SOUND!!SHOW!!(以下スサシ)のコラボレーションによる白虎隊の「#ワイタイスカッ」がいきなり飛び出したオープニングに意表を突かれ、思わずニヤリとなった。
 もっとも、その「#ワイタイスカッ」をタイトルに冠したスプリット・アルバムのリリース・ツアーだから、当然、「#ワイタイスカッ」もやるに違いないと誰もが思っていたはずだが、やるとしたらアンコールと高を括っていたこちらの裏をかくような幕開けに観客が大喜びしたことは言うまでもない。
しかも7人は同曲のMVと同じ学ランおよびセーラー服(スサシのベーシスト、チヨ)姿と来た! スサシのタナカユーキ(Vo/Gt)が後々語ったところによると、新型コロナウイルス感染防止に配慮した、バンドも観客も不慣れなライブのハードルを下げるために「最大の茶番を挟んだ」そうだが、茶番だろうが何だろうが、やる以上はとことんやろうという心意気が、そこにはしっかりと感じられた。
その「#ワイタイスカッ」の演奏が終わってからもステージに残って、BGMの「男の勲章」(by 嶋大輔)が流れる中、観客が向けるスマホに向かって、ツッパリポーズ(?)をキメる7人の姿を見ながら、そんなことを考えていたのだが、メンバーたちは、「そんなに大袈裟なものじゃない」と言うかもしれない――なんてことはさておき、数年来、対バンしながらお互いを高めあってきたENTHとスサシの友情、そして刺激を求めながら、ワルノリも楽しむ2バンドの遊び心の結晶とも言える『#ワイタイスカッ』のリリースから10か月、コロナ禍の影響で延期を重ねてきた同作のスプリット・ツアー「ENTH × SPARK!!SOUND!!SHOW!! presents 爆走!白虎珍道中」がこの日、ついに始まった。

 トップバッターはスサシ。ユーキ、イチロー(Dr/Cho)、そしてENTHからゲストに迎えたdaipon(Vo/Ba)の3人が歌をリレーしながら繋ぎ、そこにチヨ(Ba/Cho)とタクマ(Key/Gt/ Cho)が加わって、演奏がドカンと炸裂する『#ワイタイスカッ』からの「あいどんのう」で、いきなり観客全員を立ち上がらせる。そして、「改めまして、白虎隊の新年会へようこそ!今日はワルい奴らが集まっているようなのでブンブン言わせていきましょう!」(ユーキ)と観客全員が両手をブンブン!とやりながら踊る「黒天使」になだれこむと、この日を待ち焦がれていた観客の気持ちに応えるように「GODSPEED」「感電!」、そしてこれもまた振り付きで盛り上がる「かいじゅうのうた」とお馴染みのレパートリーの数々を披露していく。



そして、シーケンスでホーンを鳴らした「NU ERA」を『#ワイタイスカッ』から演奏したところで、ユーキが観客に語ったのは「延期を重ねたリリース・ツアーがやっとやれました。でも、それも(緊急事態宣言が発令される直前という)ギリギリ(のタイミング)だった。(ならば、悔いが残らないように)思いっきりぶちこんでいきたいと思います!」というこの日のライブにかける意気込みだった。

J-POPを思わせるメロディもさることながら、ライブができない日々を送る中、自分に向けて書き、SNSに発表したところ、「いいね!」とdaiponが真っ先に反応してくれたというユーキが語ったエピソードもエモい新曲の「優気」や「アワーミュージック」というミクスチャー調の曲が多いスサシの中でも歌ものと言える2曲を挟んでからの後半戦は、前掲の宣言どおり、ドープなラップ・ナンバーの「無愛愛」、4つ打ちのダンス・ナンバー「DEATHTRUCTION」、ハードコアの「STEAL!!」と激しい曲をたたみかけ、会場の温度をさらに上げていく。それと同時に演奏する自分たちの気持ちもアガッていったのか、ユーキのエネルギッシュなパフォーマンスもどんどんエスカレート!



「good die」ではステージの袖にいるスタッフに馬乗りになったり、「こんな時代でもこの4人を信じている!」となだれこんだ「南無」では照明を吊り下げる天井のパイプに足をかけ、ぶらさがってみせたりといつもと変わらぬアクロバチックなパフォーマンスで客席を沸かせたのだった。そして、ユーキ、チヨ、タクマ、イチロー全員がマイクを持ち、打ち込みのビートに合わせ、4MCの迫力を見せつけた「TOKYO MURDER」ではユーキが客席にダイ……いや、その気持ちをぐっと抑え、「人間の代わり!」とマイクスタンドを客席に投げ入れる。そして、それを受け取った観客がバトンを渡すようにスタンドを繋いでいくという連係プレイによって前代未聞のマイクスタンドのダイブが実現するというクライマックスが生まれた。 そして、メンバーたちは再び楽器を手に取ると、ハードコア・ナンバーの「SCAR」で1時間に及ぶ熱演を締めくくったのだ。



「楽しんでいきましょう!ENTH始めます!」(daipon)
 その熱気を受け取ったENTHは、「Bong! Cafe' au lait! Acoustic guitar!」から演奏になだれ込むと、たたみかけるように曲を繋げ、スタートダッシュをキメた。takumi(Dr/Cho)のテクニックが光る変拍子や破天荒な構成を持つENTHならではと言える曲の数々を、曲間を空けずに繋げたため、daiponの「踊れ!」という言葉とは裏腹にそのスピーディーな展開が少なからず観客を置いてけぼりにしてしまったようなところがENTHらしくて痛快だった。



「新年1発目にかっこいい友だちとやれてうれしいです。こんなご時世にライブハウスに来てくれてありがとう。人目もあるだろうけど、めっちゃ素敵なことだと思います。難しいことはよくわからないし、めんどくさい。来たからには楽しんでいこうぜ!踊っていこうぜ!」
 daiponが観客に語りかけたところで、ようやく観客の気持ちも追いついてきたようだ。昨年11月にリリースした最新アルバム『NETH』からの「WHATEVER」のポップなメロディに体を揺らし始めた観客は、「LOVE ME MORE」から繋げた「HAHA」のスカ・ビートに合わせ2ステップ! その光景に気を良くしたのか、daiponは「俺が何言ってるかなんてどうでもいいからとにかく遊んでってくれ!」と声を上げた。  この日、ENTHが演奏したのは、『#ワイタイスカッ』と『NETH』の曲を中心にした新旧のレパートリー。daiponが飼っている猫のことを歌ったという『#ワイタイスカッ』からの「MAXX THE CAT a.k.a. lil white tiger」では猫に扮したイチローを連れたユーキがラップを加え、この日ならではと言えるハイライトシーンを作ったが、一番の見どころはやはりNaoki(Gt/Cho)のギター・プレイによるところが大きい日本人離れしたダイナミックなバンド・サウンドとともに新旧織り交ぜたセトリが浮かび上がらせたdaiponの多彩なメロディ・メイキングのセンスだったように思う。



 疾走感あふれるメロディック・ハードコア風のメロディはもちろんだが、前述した「WHATEVER」のアメリカンなポップ・メロディ、歌ものと言える「IN MY VEIN」の親しみやすいメロディ、そして、「SWAY」「SLEEPWALK」のアンセミックなメロディと僕らはこの日、いろいろなメロディを楽しませてもらったが、中でも終盤、「ライブハウスに来る時は、とにかく楽しんでほしい!」というdaiponの言葉とともにエモい感情を胸に焼きつけた「SLEEPWALK」の歌メロが持つ威力はあまりにも大きかった。
 曲を受け止めようと挙げた手を、Naokiのリクエストに応え、観客全員が懸命に横に振った光景はまさに壮観の一言だった。そして、バンドはラスト1曲、哀愁のメロディを持つスカコア・ナンバー「Gentleman Kill」を駆け抜けるように披露したのだった。



 冒頭のコラボレーションに加え、前述したとおり、フロントマン同士のフィーチャリングも実現したこの日のライブだが、ただ単純に楽しかったねという一言だけでは語れないようなところもあったことを最後に付け加えておきたい。思うようにライブができないことも含め、しかたがないとは言え、さまざまなことに自粛を強いられている現在の状況に対する苛立ちをはじめ、捌け口を求めたまま見つけられずに持て余している感情がパフォーマンスやMCの端々に感じられ、爆発寸前とも言えるどこか不穏な空気が流れていたようなところは、ENTHおよびスサシならではと思いながら、2021年1月4日の記憶として記しておきたい。  



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