Dizzy Sunfist「DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-」INTERVIEW!!
Interview by Chie Kobayashi
Photo by Taio Konishi
10月15日のライブをもって、いやま(Ba, Cho)が卒業したばかりのDizzy Sunfist。新体制で10月27日にフルアルバム『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』をリリースする。
『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』は、これまで以上にバラエティ豊かで、バンドの今後が楽しみになった。そう伝えるとふたりは「マジで楽しみにしててください」と寸分の迷いもなく言った。彼女たちの決意と覚悟が詰まった新作について、あやぺた(Vo, Gt)とmoAi(Dr, Cho)に聞いた。
コロナ禍で自分が終わっていく感じがした
──今作に収録されている「Never Again」は、6月に急遽リリースされました。リリース前にライブを拝見した際、「うちらには時間がない」ということを言っていたのが印象的で。まずは「Never Again」を作ったときの心境から教えてもらってもいいですか?
あやぺた(Vo, Gt):作ったときはコロナ禍の絶頂期やって。テレビをつけてもしんどいし、SNSを見ていてもしんどい。このままやと自分が終わっていくと思って、自分を元気付けるために作りました。同時に、もし同じことを思っている人がいるとしたら、この曲で元気付けられたら最高やなって。
──その“終わっていく”という感覚、もうすこし具体的に話せますか?
あやぺた:なんかね、1日1日が終わっていくのが早く感じたんですよね。もっと大事にしないと、あっという間に終わっちゃうなって。やっぱり子供ができたことも大きいと思います。今しか見られないことってたくさんあって。「今しかない」ってめっちゃ思うんです。
moAi(Dr, Cho):この曲をコロナ禍のライブハウスでやったときに、すごくリアルだなと思いました。メッセージ性をひしひしと感じました。
──この曲を急遽出すことになったのはどうしてだったんですか?
あやぺた:うちが出したいって言ったんです。「今出してほしい」って。みんなしんどそうやったんですよね。緊急事態宣言が何度も延長して、ライブはなんとかできるもののお酒は飲めなくて。そういう状況を見てて「みんな大丈夫かな」って思った。新曲を聴いてちょっとでも元気出してほしいなと思って出しました。
前のフルアルバムを超えるアルバムを作らなアカン
──ではここからアルバム『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』について聞かせてください。フルアルバムとしては『DREAMS NEVER END』以来3年9カ月ぶりですが、どのようなアルバムを作ろうと思っていたのですか?
あやぺた:「前のフルアルバムを超えるアルバムを作らなアカン」しか頭になかったですね。そのプレッシャーがすごかった。結果、超えられたと思います。
moAi:毎回「こういうものを作りたい」という作品作りができないというか。そのときに浮かんだアイデアを入れ込んでいく形なので、ある意味、常に等身大。それが過去より上回れたらとは思っていて。毎回ちゃんとグレードアップできるようにというのは心がけていて。今作でもそこはちゃんと更新できたなと思います。
──今作は曲調のバラエティがとても豊かなので、moAiさんはチャレンジが多かったのでは?
moAi:あー、確かにそうですね。それこそ「Never Again」も、これまでのディジーにありそうでなかった曲で。今はしっくりきてますけど、最初は演奏していて違和感がものすごくあったんです。それも一つの挑戦だったのかも。
──今作の収録曲、歌詞もサウンドも、どこか新鮮味のあるものが多い印象です。
あやぺた:そうですね。いつも通り、自分から出てきたものを集めていっただけなんですけど。でも今までを超えるためにも、“今までにない曲”というのは考えていたから、自然とこうなったんだと思います。
──1曲目「The Proof」は、これまでのバンドの道のりや覚悟をストレートに歌った曲ですね。意外と、バンドをこうやって俯瞰で見た歌詞はなかったですよね。
あやぺた:まあ10年やってますからね。自分にも「自分はまだバンド続けてんねんぞ」って言い聞かせてます。
──いやまさんの卒業後に出るアルバムの1曲目で「いつでも諦めないぜ」と歌われているのも頼もしいですよね。
あやぺた:そうか、1曲目か。そこまで考えて作ってなかったですけど、言われてみたら確かにそうですね。
moAi:この曲、イントロは僕が作ったんですけど、ちょっと悲しすぎるし、ディジーっぽくないかなと思ってたんです。でもメロディには合ってるし、と思ってあやぺたに渡したんですけど、結果的に歌詞にも合っていた。結局メンバーで詰めていくとディジーっぽくなっていったので、もしかして「ディジーっぽくない」っていう心配はいらないのかなと思いました。
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「これを俺に歌わすんか」ってキレられたらどうしよう
──あとは触れずにはいられない8曲目「N.i.n.j.a feat PETA&LARRY (GARLICBOYS)」。どういう経緯でGARLICBOYSとコラボすることになったんですか?
あやぺた:「あやぺた」の「ぺた」はPETAさんから来てるくらい、GARLICBOYSはうちらにとってルーツになっているバンドで。5、6年前くらいから対バンさせてもらう機会も増えてきて、「いつかコラボできたらいいな」という野望があったんです。そんなときに「N.i.n.j.a」っていう曲ができて。これは頼むだけ頼んでみようと。聞くのはタダやしと思って。そしたら快く引き受けてくれました。
──曲ありきだったんですね。てっきり、コラボすることが決まってから曲を書いたのかと思っていました。となると、どうしてこの曲ができたのでしょうか? 日本語詞ですし、Dizzy Sunfistにはこれまでこういう曲はなかったので驚きました。
あやぺた:moAiに送っていた曲ネタの中に「忍者」っていうのがあったんですけど、それをmoAiが気に入ってくれて。
moAi:10秒くらいの曲ネタを、50曲分くらい送ってくれていたんですが、その中で1つだけタイトルが変だったんです(笑)。「忍者」って。「これは忍者って曲を作ろう」って。たぶん、ちょっと悪ふざけです(笑)。
あやぺた:うん、悪ノリやな(笑)。
──それこそ、Dizzy Sunfistにはこういうノリの曲がなかったから新鮮ですよね。
moAi:そうなんです。作ってるとすぐ真面目になっちゃうから。
あやぺた:でもやってみたらめちゃくちゃ楽しかったです。日本語をレコーディングしたのも楽しかった。
──GARLICBOYSのおふたりとはどんなやりとりがありましたか?
あやぺた:最初、「『いろはにほへと』を歌ってください」って連絡したんですけど、それが怖かったです。ふざけた歌詞って思われたらどうしよう、「これを俺に歌わすんか」ってキレられたらどうしようって。
moAi:大先輩ですからね
あやぺた:でも大丈夫でした。優しい方でよかったです。
──レコーディングはいかがでした?
あやぺた:もう、さすが。やっぱり重鎮やなって思いました。
moAi:PETAさんが歌ってくれて、すでにすごくいい感じだったんですけど、LARRYさんが「ここシャウトしたらええんちゃうか?」ってディレクションとアレンジをしてくれて。そしたらさらにめちゃくちゃ良くなって。ディレクションもさすがでした。
あやぺた:バンド続けてると、夢みたいなことが現実になっていくじゃないですか。今回もまた「バンドやっててよかった、続けててよかった」って思いました。
みんなからの愛に生かされてる自分の人生は美しい
──11曲目「So Beautiful」は先行配信もされています。ひときわ美しいメロディと、「Life is so beatiful(人生は美しい)」という歌詞が印象的です。
あやぺた:子供を寝かしつけて「今日は絶対に曲を作らなアカン」と思ってたときにできた曲です。そのときに「Life is so Beautiful」という歌詞も出てきたんですけど、まだ30年しか生きてないのに「人生は美しい」って歌っていいのか、葛藤もあって。でも、今リアルに「人生は美しい」と思えてるから、歌おうと決めて、歌詞もすぐに書けました。
──「今、リアルに人生は美しいと思えてる」とのことですが、それはずっと思えてるんですか? それとも今だから思えている?
あやぺた:これまでは「めっちゃ美しい」までは思えてなかったですね。やっぱり大変やし、悔しいこともいっぱいあったし。でも活動休止後にツアーを回ったときに、待っててくれてる人がいて、みんなからの愛がすごかったんです。それで、みんなの愛に生かされてる自分の人生はすごく素晴らしいなと思った。
moAi:アレンジしてても行き詰まることがすごく少なくて。そういうときって大体いい曲ができるんですけど、やっぱりその通りでしたね。シンプルだし、すごくいい曲ができました。
──最後の12曲目「Everyting’s Gonna Be Alright」はレゲエ調。Dizzy Sunfistにとっては新しいサウンドですが、これはどのようにしてできたんですか?
あやぺた:大阪にサトサンシャイン(SUNSHINE DUB)っていう先輩がいて、サトサンシャインっぽい曲を作りたいなと思ってできた曲です。SUNSET BUS感というか、大阪感というか。
──今までにない曲調ですが、制作はスムーズでした?
あやぺた:いや。最初作ったデモ、ヤバかったよな?
moAi:どんなんやったっけ? でもヤバかったのは覚えてる(笑)。
あやぺた:「こういうの作りたい」っていうのはあるんですけど、どうやって作るのか全然わからなくて。プロデュースで入ってもらったマサさん(masasucks[FULLSCRATCH / theHIATUS / RADIOTS / J BAND])にいろいろ教えてもらいました。
moAi:僕もこういう曲調は自分の中にまったくない要素だったので大変でしたね。洋楽を参考にすると、あやぺたの言う“大阪感”は出せないよなと思ったので、それこそSUNSET BUSとか、G-FREAK FACTORY、HAKAIHAYABUSAとか、日本のバンドのアプローチを参考にしました。
──この曲にはホーンも入っていますが、このホーンはどなたですか?
あやぺた:この曲も「No Biggie」も、GELUGUGUのKAZUMA(Trumpet)さんです。うちらはGELUGUGUと面識がなかったんですけど、エンジニアの方とマサさんが「GELUGUGUがいいんじゃない?」って紹介してくれて。大阪でレコーディングしていたこともあって、大阪の方がよかったんですけど、やっぱり大阪人最高でした!
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ディズニーランドを超える楽しさをライブハウスで
──このアルバムに「DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-」というタイトルを付けた理由を教えてください。
あやぺた:「ディズニーランド」の“ライブハウス版”というか。ディズニーランドに行くと、いる間はディズニーのことしか考えないし、すごい楽しいじゃないですか。それを超えたいと思って。みんながディズニーランドで感じる楽しさとかワクワクを、ライブハウスで超えたいなと思って「DIZZYLAND」と付けました。
──サブタイトルの「-To Infinity & Beyond-」は?
moAi:2ndミニアルバム(『SUPER DELICIOUS』)に「SULLEY」があって、この間のシングルは「ANDY」。で、今回は『DIZZYLAND』が来るなら、サブタイトルにもディズニーを絡めたほうが面白いかなと思って。トイ・ストーリーのバズの言葉を借りました。
あやぺた:「無限の彼方へ さぁ行くぞ!」
moAi:意味合いにもいいしね。
今はもう怖いものなしですよ
──さらに初回盤付属のDVD/BDには「No Audience & No Live Streaming Special Live -Dizzy Sunfist with Many Favorite Bassists-」という、無観客ライブの映像が収録されています。いろいろなベーシストと演奏したライブということですが、これを企画したのはどういった想いからですか?
あやぺた:発売日にはもういやまが卒業していて。ベースがいない今しかできないことは何かないかなと考えて、いろんなベーシストに助けてもらうのはいいんじゃないかなと思って、お願いしました。
──ライブ映像ということですが、6曲全部同じに?
あやぺた:はい、同じ日に撮りました。めちゃくちゃ楽しかったです。一人ひとりのベースの個性も知れて。
──では、お一人ずつについて聞かせてください。1曲目「SHOOTING STAR」はdustboxのJOJIさんです。Dizzy Sunfistがdustboxをリスペクトしているのは、各所で語られていますが、実際に一緒に演奏してみていかがでしたか?
あやぺた:初めてベースが点で見えて。ツービートやのに。感動しましたね。
moAi:「やっぱdustboxってすげーなー」って思いました。高校生のときからdustboxは聴いていて、どのパートもめちゃくちゃうまいと思ってたんですけど、それをライブでも再現できるのは、やっぱり本当に上手だからなんだなって。一緒に演奏して改めて思いました。
──2曲目「Andy」はGOOD4NOTHINGのMAKKINさん。
あやぺた:MAKKINさんは「Andy」のレコーディングのとき、スタジオに来て「ええ曲やん」って言ってくれたんです。それがめっちゃうれしかったので、お願いしました。
moAi:MAKKINさんは安心感がすごかったですね、あとは、すごいんだけど、変に突出してこないというか。「俺はここで弾いてるから、お前らかませ」みたいな。カッコよかったですね。
あやぺた:MAKKINさんだけ、自分のベース持ってこなくていやまのベースを弾いたんですよ。そういうところも「アホやな~」って思いました(笑)。いや、カッコよかったです。
──3曲目「Wonderful Song」はSUNSHINE DUBのサトサンシャインさん。「Everyting’s Gonna Be Alright」のときに“こんな曲を作りたい”と指標になった方ですね。
あやぺた:この「Wonderful Song」で、サトシさんがやってるブランド・LOU DOGとコラボでTシャツを作った縁があって。「ここまで速い曲弾いたことない」って言って、むちゃくちゃ練習してくれました(笑)。
moAi:コーラスもアレンジしてくれて、一気にサトシさんっぽくなりましたね。「SUNSET BUSやー!」って。ゆるさも出て、さすがでした。
──4曲目「Someday」は39degreesのクリハラコウキさん。
あやぺた:唯一くらいになってきた、同い年のバンドマンです。10年前くらいにDizzy Sunfistと39degreesとして出会って、今も同じバンドやってるっていうのは少ないんですよ。だから昔からやってる「Someday」をやってもらいました。
moAi:クリハラはマルチでギターもうまいしピアノも弾けるけど、何よりも気持ちを大事にしてるやつ。「誰にお願いしよう」って話になった時に、俺は最初にクリハラにやってほしいと思ったんです。だから叶って一番うれしかったですね。
あやぺた:しかも自分のライブ後に。汗だくのまま来てくれました。
──「Tonight, Tonight, Tonight」はヤバイTシャツ屋さんのしばたありぼぼさん。
あやぺた:ありぼぼは愛嬌があって、ずっと笑顔で、最高でしたね。ありぼぼ、Dizzy Sunfistに入ってくれへんかなって思うくらい(笑)。
moAi:ずっとニコニコしてたよね。
あやぺた:「楽しい」っていうのが伝わってきて、すごいうれしかった。
moAi:ありぼぼに会ったのは2年ぶりくらいだったんですけど、その間に演奏もめっちゃうまくなってて。ちょっとグッと来ちゃいました(笑)。
──最後は打首獄門同好会のJunkoさん。
moAi:Junkoさんは一番未知数ではあったんです。打首獄門同好会とディジーは、どっちもポップですけど、そのポップさの種類は違うので。でも結果、めちゃくちゃよかったですね。
──「The Dream Is Not Dead」という選曲もいいですよね。
あやぺた:やっぱJunkoさん見てたら「夢は死なへん」って思いますもん。何歳になってもバンドできて、武道館立ててツアー回って。ベースも本当に上手でした。
──メンバーの脱退という状況も、ポジティブに変換しているところがDizzy Sunfistらしいなと思いました。では最後に、新しい体制での決意を聞かせてください。
あやぺた:やっぱりメンバーが抜けるのが決まったときは、めちゃくちゃ不安でした。次のメンバーも決まってないし、全然未来は見えないし。だけど今は「信じてやるしかない」っていうモードです。コロナ禍でも活動してきたし、ここで活動を止めるわけにもいかない。最近、サポートの子とスタジオに入り始めたんですが、むちゃくちゃ楽しくて。これから最強になっていくDizzy Sunfistしか想像できていないですし、そんな今がすごく幸せです。
moAi:もちろんいやまが抜けるのはショックですけど、意見の食い違いとかじゃなくて、お互いのやりたいことが違っただけ。だから落胆や悩むことに時間を使うのは違うんですよね。お互い、それぞれの思う道を進んでいくだけなんで。
──今後のDizzy Sunfistも楽しみにしてます。
あやぺた:マジで楽しみにしててください! 今はもう怖いものなしですよ!
Dizzy Sunfist『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』
<CD>
01.The Proof
02.Our House
03.Dinosaur
04.Never Again (Album Ver.)
05.Andy (Album Ver.)
06.Little More
07.No Biggie
08.N.i.n.j.a feat PETA&LARRY (GARLICBOYS)
09.Drama Queen (Album Ver.)
10.STRONGER (Album Ver.)
11.So Beautiful
12.Everyting’s Gonna Be Alright
<初回盤付属特典DVD/Blu-ray(両形態内容共通)>
●No Audience & No Live Streaming Special Live -Dizzy Sunfist with Many Favorite Bassists-
01.“SHOOTING STAR” with JOJI from dustbox
02.“Andy” with MAKKIN from GOOD4NOTHING
03.“Wonderful Song” with サトサンシャイン from SUNSHINE DUB
04.“Someday” with クリハラコウキ from 39degrees
05.“Tonight, Tonight, Tonight” with しばたありぼぼ from ヤバイTシャツ屋さん
06.“The Dream Is Not Dead” with Junko from 打首獄門同好会
●Music Video
01.STRONGER
02.Brand New Page
03.Wonderful Song
04.Diamonds Shine
05.Andy
通常盤CD 2,750円(税込) COCP-41563
初回盤CD+DVD 3,300円(税込) COZP-1808-1809
初回盤CD+Blu-ray 3,999円(税込) COZP-1810-1811
特設サイト
https://columbia.jp/dizzysunfist/
Dizzy Sunfist OFFICIAL WEB SITE
https://dizzy-sunfist.com/