“On The Alert Vol.2 -USEN STUDIO COAST FINAL-” LIVE REPORT!!
Report by 小林千絵
Photo by 岩渕直人
2021.12.27
“On The Alert Vol.2 -USEN STUDIO COAST FINAL-” @ USEN STUDIO COAST
USEN STUDIO COAST。簡単にソールドアウトさせられるキャパシティではなく、しかし決して届かないわけでもない、バンドにとって、一つの指標となりえる会場である。広い敷地にはテントステージを設置することもでき、屋内にもメインステージのほかにも複数ステージを用意することができることから、さまざまなイベントなども行われた。そんな、バンドにとっても、音楽ファンにとっても馴染み深い会場が、2022年1月末に閉館する。「On The Alert Vol.2 -USEN STUDIO COAST FINAL-」と銘打たれたこの日、出演したDizzy Sunfist、Northern19、SHANKにとっても、この日が最後のSTUDIO COAST出演となった。
トップバッターはDizzy Sunfist。大きなフラッグを前に「Joking」でその幕を開けると、「もうこれ以上、うちらの大事な場所を奪われたくない!」という切実な思いを口にして「Our House」を届けるなど、始まった瞬間から感情が全開だ。あやぺた(Vo, Gt)おなじみの「ヤーマン!」の挨拶すらも「ここでのラストヤーマンや!」と噛み締め……ているかと思いきや「そのままYMCA」に繋げてしまう愛嬌はいつも通り。しかし「なんで無くなるん、マジで」とやはり寂しさは隠しきれない。
2021年、メンバー卒業という大きな転機を迎えた彼女たち。「思い通りにならへんこといっぱいあるけど、つらいこと、さみしいことを乗り越えて強くなっていけると思う」との言葉から「STRONGER」が続けられる。自らが作った楽曲が年月を重ねてさらに説得力を増していく、それこそがDizzy Sunfistの強さだ。
またバンドにとっての大きな転機とともに、柔軟を手に入れたようにも感じた。現体制でツアーを回っているからか、サポートメンバーとの演奏も息がぴったり。あやぺたもmoAi(Dr, Cho)も、サポートメンバーと何度も顔を合わせて楽しそうに笑う。また初の日本語詞「N.i.n.j.a」ではゲストボーカルとしてSPARK!!SOUND!!SHOW!!のイチローを迎えたコラボステージに。今の彼女たちは、なんでもアリで、どんなものも、どんな状況もDizzy Sunfistらしくしてしまえる。その理由はきっとあやぺたが話していた「過去にされたくない」「あの時がよかったと、言いたくないし言われたくない」「今が最高っていうのをずっとずっと更新していきたい」という想いが、バンドに加わったからだろう。そんな思いを抱える中、最後に選曲されたのは、STUDIO COASTでMVが撮影された「So Beautiful」。さまざまな思いを乗り越えてきた彼女たちが、2021年の最後に「Life is so beautiful」と歌う。メロディの美しさも相まり、会場は感動的なムードが広がった。しかし最後、時間が残っていると知るなりバンドは「FIST BUMP」を叩き込み。1分足りとも無駄にしないそのステージングは、“二度と戻ってこない今を大切に生きよう”という思いを込めた「Never Again」をリリースした彼女たちの2021年の姿そのものだった。
続いてステージに登場したのはNorthern19。Dizzy Sunfist同様にバンド名が書かれた大きなフラッグを掲げ、キラーチューン「STAY YOUTH FOREVER」で幕開け。声を出せない、モッシュやダイブができないライブハウスでも、まるで目に見えるような一体感を生み出す。加えて敦賀壮大(B, Vo)がメインボーカルを取る「MORATORIUM」やソリッドな「DRAIN」を間髪入れずに続け、その加速度は増すばかり。さらに“日本のメロディックパンクを変えていきたい”という気持ちと、自由な発想で作られた最新作『GOODBYE CRUEL WORLD』収録曲「MOVE ON」「STILL ALIVE」が続けられる。フラッグの「Northern19」というバンド名が、照明に照らされさまざまな色に変化していく様が、18年間日本のメロディックパンクの最前線を走り続けてきた彼らの楽曲の引き出しの数とリンクするようで、妙に印象に残った。
すると、MCで笠原健太郎(Vo, G)がやわらかくギターを奏でながら「正直言うと……」と口を開き、2010年に『SMILE』のリリースツアーのファイナルがSTUDIO COASTでのワンマンライブだったことを回想し、「でも全然埋まらなくて」と苦い顔に。「いつか叶えたいと思っていたんだけど」と続けながら、この日掲げているフラッグがそのときに作ったものだと明かされると、フロアから拍手が起こる。そして今後もさまざまなライブハウスで音を鳴らし続けることを宣言すると、少しの悔しさを滲ませながらも、「TONIGHT, TONIGHT」を伸びやかに歌い上げた。
当時の悔しさを吐きだすかのように「NOTHING BUT MY HEART」「GO」をフルスロットルでプレイしたところで、再びMCへ。今度はNorthern19としての2021年を振り返り、「やっぱりね、ライブとかライブハウスっていいな~って思った」と破顔。その楽しい気持ちを爆発させるように「SUMMER」、馬場豊心(Dr, Cho)が弾むドラミングでハンドクラップを煽った「NEVER ENDING STORY」、そしてひときわ輝きを放った「MESSAGE」で駆け抜ける。「良いお年を!」と去った彼らは、現在レコーディング中だそう。“19周年”を迎える2022年への期待を漂わせた、心踊るパフォーマンスで、STUDIO COASTへの後悔はすっかり払拭されたようだった。
トリのSHANKはアルコール片手にふらりとステージヘ。Dizzy SunfistとNorthern19がいずれもバンド名を大きく記したフラッグを掲げていたのに、彼らのステージにはそもそもフラッグがない。……と思っていたら庵原将平(Vo, Ba)が「なんで俺らだけ、幕ないんですか?」とステージ袖に問いかけ。すると小さなフラッグが彼らの後ろにゆっくりとあがるも右肩下がり。思わずメンバーがツッコむという、スタッフとの距離の近さを感じさせるやりとりが展開された。そう、この日のライブはそれぞれのバンドと付き合いの長い裏方スタッフが企画したものだ。このささやかなやりとりも、SHANKなりの主催者への感謝の形なのだろう。
そんなマイペースなムードも、松崎兵太(Gt, Cho)によるアルペジオが始まれば一瞬で締まる。「Set the fire」「Rising Down」とどっしりしたナンバーがライブの最初に並んだが、それはコロナ禍でも歩みを止めなかったどころか、アコースティック編成でのツアー“SLOW SHANK”やビルボード公演など、この状況を逆手に取って活動を続けてきた彼らだからこそ。そしてマイペースな裏に、盤石な演奏力を持ち合わせているからこそ。フラッグの大きさなんか関係なく、彼らの音楽が会場をぎっしりと埋め尽くす。
再びマイペースなMCが挟まると、どこか張り付めていた場内の空気がふわりと和らぐ。そんな空気を感じたのか、バンドの演奏にもギアが入り「Departure」や「Phantom」と疾走感あふれる楽曲が続けられる。随所にアドリブも加えられ、3人も自由に演奏を楽しんでいる様子が伝わる。その象徴とも言えるのは「Life is...」でのことだった。間奏で、松崎が池本雄季(Dr, Cho)のドラムセットに歩み寄り、ドラム台に登って後ろ向きで高らかにギターを弾きあげると、その様子を庵原がじっと見る。そして演奏が終わると同時に庵原が「カッケー、兵太!」と感嘆の声をあげたのだ。メンバー同士ですら、その日のステージで誰がどんなパフォーマンスを見せるのか予想も付かず、だからこそ素直にカッコ良くて驚いたりする。そんな彼らを、観客は何度「カッケー!」と思ってきただろう。
「ありがとう新木場COAST。ステージも楽屋もウォシュレットも大好きでした」と庵原がSTUDIO COASTへの思いを口にし、「ミラーボール回してください。エッチな感じにしてください」とSTUDIO COASTへの愛情を感じさせる指示出し。そしてその言葉通り、ピンク色の照明の中ゆっくりミラーボールが回る“エッチな”感じの中、「My sweet universe」をプレイ。さらに1月26日リリースの新作から「Steady」、「良いお年を!」との言葉から「Love and Hate」と最後まで愛情たっぷりのセットリストで駆け抜けた。
アンコールでは「何か言いたいことあります?」「なーーんもない」とマイペースながらも、楽曲演奏前には楽曲に込めた思いをさらっと告げる。最後まで彼ららしいステージングで「Honesty」「submarine」をプレイし、STUDIO COASTでのステージを締めくくった。
ちなみにこのイベントのタイトル「On The Alert」は直訳すると「虎視眈々」。3組が、それぞれのやり方で“虎視眈々”と前を見据える姿を、しっかりと見せつけられた一夜だった。
[SETLIST]
<Dizzy Sunfist>
- Joking
- Life Is A Suspense
- Someday
- Our House
- STRONGER
- Never Again
- SHOOTING STAR
- N.i.n.j.a(ゲスト:イチロー[SPARK!!SOUND!!SHOW!!])
- Little More
- New world
- The Dream Is Not Dead
- Andy
- So Beautiful
- FIST BUMP
<Northern19>
- STAY YOUTH FOREVER
- MORATORIUM
- DRAIN
- RED FLOWER
- MOVE ON
- STILL ALIVE
- TONIGHT, TONIGHT
- NOTHING BUT MY HEART
- GO
- SUMMER
- BELIEVER
- NEVER ENDING STORY
- MESSAGE
<SHANK>
- Set the fire
- Rising Down
- 620
- Hope
- Departure
- Two sweet coffees a day
- Phantom
- Weather is Beautiful
- Take Me Back
- Good Night Darling
- Life is...
- Bright Side
- My sweet universe
- Steady
- Love and Hate
<アンコール>
16.Honesty
17. submarine
>>Dizzy Sunfist Official Web Site