LIVE REPORT

Suspended 4th “KARMA! KARMA!! KARMA!!! Tour“ LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by Shoma Yasukawa(Suspended 4th)/ ハライタチ(WOMCADOLE)

2022.6.17
Suspended 4th “KARMA! KARMA!! KARMA!!! Tour“ @EIBISU LIQUIDROOM

1stシングル『KARMA』をひっさげ、5月27日から全5公演を行ったSuspended 4th(以下サスフォー)の「KARMA! KARMA!! KARMA!!! Tour」が6月17日、東京・恵比寿LIQUIDROOMでファイナルを迎えた。全5公演中唯一、対バン・スタイルだったファイナルに招かれたのは、滋賀の4人組ロック・バンド、WOMCADOLEだ。

「(サスフォーとWOMCADOLEの対バンを見にきた)あなた達は、いい心と、いい耳を持ってるよ。つまらんロックがテレビを賑わせてるが、あんなものにだまされちゃイカンです。ずっと生が好きなバンドだから、ここで再会できた。骨太のロックを堪能してくれ!」

そう豪語した同バンドのフロントマン、樋口侑希(Vo/Gt)がこの日、ステージで語ったところによると、以前、実現しかけたサスフォーとの対バンは、樋口が骨折してしまったため流れてしまったそうだ。それだけにサスフォー、WOMCADOLEともに「念願の!」という気持ちがあったんじゃないかと思うのだが、向こう意気に満ちた前掲の樋口のMCは、そんな気持ちのみならず、なぜサスフォーとWOMCADOLEが今、対バンするのかに加え、念願成就の歓びだけに止まらない2バンドの興奮の理由も物語っていた。

「WOMCADOLE VS.サスフォー。かかってこいLIQUIDROOM。セックスよりも気持ちいいものを知ってるならかかってこいよ!」

ステージに出てきた樋口がいきなりそんなふうに観客を煽ったのも頷ける。爆音の演奏と歌謡メロディが交差する1曲目の「人間なんです」から観客の拳が上がり、樋口が物騒な言葉を吐きながら繋げた「絶望を撃て」では樋口が求めるまま、観客が手拍子で応えた。サスフォーのファンが大半を占めていると思しきスタンディングのフロアの反応は序盤から上々だ。そして、そんなフロアをさらに沸かせたのがメランコリックな「少年X」から繋げた4曲目の「黒い街」。

「スペシャルゲスト!Washiyama!」

樋口に呼ばれ、ステージに出てきたサスフォーのKazuki Washiyama(Gt/Vo)がギターをかき鳴らしながら、ハンドマイクで歌う樋口と歌声を重ねると、観客が拳を振った。そして、悲壮感をアピールするバンドの熱演に大きな拍手が沸き起こる。

「こういうことでしょ!ねえ!」と樋口が快哉を叫ぶ。

この日、30分の持ち時間に代表曲ばかりのセットリストで臨んだWOMCADOLEは、バンドの持ち味の1つでもあるバラード(「ラブレター」)を演奏して、観客を釘付けにすることも忘れなかった。そして、「出会えたのは偶然じゃないと思うんですよ。何かとんでもない革命が待ってる気がする!」とここまで演奏してきた手応えを樋口が言葉にしてから「ラスト1曲!」と観客にぶつけたのが、マツムラユウスケ(Gt)が奏でる速いリフが印象的なロック・ナンバー「軌跡」だった。

「踊らせつづけたい。鳴らしつづけたい。歩いてきた道は平坦じゃないけど、ともに歩きたい奴らがいる。ともに見せたい景色があるから、ここでやることに意味がある!」(樋口)

男泣きを思わせる悲壮感いっぱいの樋口の歌をはじめ、最後を飾るにふさわしい渾身の演奏は、オチサビからの安田吉希(Dr)によるドラムの連打とともに、さらに加速! そこに楔を打ち込むように黒野滉大(Ba)が刻むリズムがバンドのサウンドをより無骨なものに!! そして、この日、WOMCADOLEはロック・シーンを変えるかもしれないサスフォーとの共闘を訴えかけながら、喜怒哀楽に突き動かされる人間臭さと誰にも負けないと自負する熱量を確実に観客の脳裏に焼きつけたのだった。

「(WOMCADOLEから)おまえらのお客さん最高と言われてうれしかった」と序盤の3曲が終わったところで、Washiyamaは観客に語りかけた。思えば、Seiya Sawada(Gt)とHiromu Fukuda(Ba)がステージに出てきたとき、観客に見せた拳は、WOMCADOLEに最高と言わせた観客を称えながら、「お前らの期待に応えるぜ」という意思のアピールだったんじゃないか。そんなふうにこの日、サスフォーは演奏以外でも積極的に観客に訴えかけ、これまで以上に彼らと一緒にライブを作り上げようとしているように見えたのだが、インプロビゼーションからなだれ込んだキャッチーなメロディを持つ1曲目の「ストラトキャスター・シーサイド」から、「GIANTSTAMP」「97.9hz」とお馴染みのファンク・ナンバーをたたみかけるように繋げ、観客を存分に跳ねさせたところでWashiyamaが言ったのが「最初から最高ですね!」だった。

実はその時、Washiyamaの足元にあるエフェクター・ボードにトラブルが発生していたのである。それにもかかわらず、「最高ですね!」という言葉が出てきたのだから、序盤の3曲でWashiyamaがいかに大きな手応えを感じていたかが窺えるではないか。

「いいライブしている時こそ機材が壊れるっていうジンクスがある。けっこうエフェクターが繋がってるんだけど、そういう小細工を使うなってことですね。ファズ、ワウ、ディレイしか使わない、ノイジーな感じになるけど、よろしく!」

Washiyamaが余裕綽々なのは、もちろんサスフォーがライブ・バンドとして武者修行とも言える数々の経験を積んできたからこそだと思うが、この日は、目の前に信頼できる観客がいるという安心感もあったからなんじゃないかと想像したりもする。

「WOMCADOLEがあっためてくれたから、あとは俺達が! 超が付く最高よろしくお願いします!」

そんな言葉を投げかけ、Washiyamaが奏でるダイナミックなリフからなだれこんだのは、ミッドテンポの演奏にテクニカルなプレイを詰めこんだファンク・ナンバー「KARMA」。そこからバンドはハード・ロック×ファンクな「BIGHEAD」、ラテンのリズムが観客の体を揺らした「Betty」と曲間を空けず、大きなうねりを作るように曲を繋げていく。

「ここまで来られたわLIQUIDROOM! やれることは1つしかない。マジでいいライブをやります!」と言った後者では、一瞬ジャズにもなる長尺のインプロビゼーションを繰り広げ、ぐっと熱を上げた演奏で観客を酔わせたのだった。

「(名古屋出身の自分達のライブに)東京でこんなに人が集まってくれて、マジしあわせです」(Washiyama)

AORを思わせる音色を持つバラードの「think」では、Washiyamaが甘い歌を聴かせながら披露した泣きをたっぷり含んだギター・ソロに観客は大歓び。大きな拍手を贈った。

「前半は実験的だったけど、集まってくれたお返しに、ここからは振り切ります。やれる?信じてるよ」

Washiyamaの宣言どおり、Fukudaのパワフルなスラップから始まった後半戦は、Washiyamaがラップするファンク・ナンバーの「HEY DUDE」、複雑に絡み合うアンサンブルよりも疾走感を重視したストレートな演奏がサスフォーには珍しい(?)新曲を繋げ、再びフロアを揺らしていった。観客の反応に満足したのか、まるで勝利宣言するようにSawadaとFukuidaがギター、ベースを高々と掲げたが、もちろん、そこで終わりじゃない。

WashiyamaとSawadaが重ねる高速のカッティングにFukudaの高速スラップが絡むスピーディーなファンク・ナンバー「KOKORO-DOROBOW」では曲の後半、「ギター替わります」(Washiyama)とWashiyamaとDennis Lwabu(Dr)がパートをスイッチ。歌いながら、ドラムをプレイしたWashiyamaがソロを決め、Dennisにバトンを渡すと、Dennisが背面弾きでソロを披露。それを見たSawadaも負けじと背面弾きをキメるという、まさにサスフォーの真骨頂と言えるアクロバチックな展開に観客が割れんばかりの拍手で応え、ハイライトに相応しい盛り上がりが生まれた。

その時々の即興を楽しむため、これまで決めこまなかったセトリをかちっと固めたことや、最近、スタジオに入るようになったことを、「(バンドらしい)バンドになりました(笑)」と語ったWashiyamaの言葉からは、追い風を感じながらバンドがスケールアップするために彼らの中に何か芽生えたものがあることが窺えた。

路上の無頼派だとばかり思っていたサスフォーは今、ひょっとしたらWOMCADOLEの樋口が言うとんでもない革命を期待するようになったんじゃないかなんてことを思ったりも。とまれ、7月20日に1stアルバム『Travel The Galaxy』のリリースを控え、さらい勢いづいてきたサスフォーの絶好調に加え、新たな変化を感じられたのは、この日一番の収穫だったと記しておきたい。

「まだやりきれてないんじゃないですか? みなさん、どうですか? ツアーに悔いがある。もっとやれたなっていう。(その悔いを)次のツアーで進化に変えるから次のツアーも来てください……なんて思ってたけど、残り3曲で取り返します!」(Washiyama)

本心だったのか、盛り上げるための演出だったのか。それはさておき、その言葉どおり、「Vanessa」「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」「INVERSION」と、過去何度もフロアを沸かせてきたアンセミックなキラー・チューンをたたみかけ、ダメ押しでフロアを揺らした。Washiyamaのプレイにジミ・ヘンドリックスへのオマージュが滲む「INVERSION」を演奏する直前に「思い残すことはないです!」とWashiyamaは声を上げたが、あまりにも大きな手応えに名残惜しくなったのか、「もうちょっと弾きたくなっちゃった」と他の3人がステージを降りた後も一人残って、「INVERSION」のサビを弾き語りしたのだった。

アンコールに応え、ステージに戻ってきたとき、「珍しいWashiyamaが見られて、俺もうれしかったです」とSawadaは言った。それも含め、この日、サスフォーが我々に見せた変化は、やがて訪れる飛躍の兆しなんじゃないか。少なくとも筆者は、そう信じている。

サスフォーは8月14日、ゲストG-FREAK FACTORYを迎え、この日と同じ恵比寿LIQUIDROOMで、「『Travel The Galaxy』Release Party」を開催する。

 

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