coldrain - 15th ANNIVERSARY “15×(5+U)” LIVE AT YOKOHAMA ARENA LIVE REPORT!!
2022.10.16 coldrain - 15th ANNIVERSARY “15×(5+U)” LIVE AT YOKOHAMA ARENA
Photograph_Masahiro Yamada, Takeshi Yao Report_Ryo Tajima
届けられた感謝と約束。必要なのは楽しむ姿勢
「ラウドロックが元気のない時代がやってきました。でも、いつまでもこの場所を守って。でけぇところでやって夢を与えて。次の世代が現れて。ラウドロックが死なないように、coldrainは絶対に何があっても音を止めないと約束するので、これからもよろしくお願いします」。
Masatoが本編最終曲「From Today」開始前に叫んだ最後のMCだ。今だからこその言葉ではあるが、15年前も今も、coldrainの本質的メッセージはいつも同じ場所にある。すなわち、ラウドロックバンドが取るべき正しい行いをチョイスし続け、それをひたむきに続けるということ。これがcoldrainの行動原理であり、横アリ単独公演という大舞台であっても、そのアティチュードは隅々まで染み付いていることを存分に実感させてくれた。
どんな場所であろうとも、その思考と行為に一切のブレはなく、愚直とも言えるほど真っ直ぐなライブに感動しないわけがない。広いステージにどデカいスクリーンを背負いながら、coldrainが奏でた2時間30分のサウンドは実に煌めいていて戦慄を覚えた。
彼らのライブにはいつも神々しい何かを感じるが、その理由はきっと、ラウドロックに魅せられた人間が、ラウドロックを武器に世界へ挑み続け、勝ち負けの分野を超えているにも関わらず、何があってもへこたれるものか、と自分を鼓舞しながら突き進み続けている様を、そこに見るからである。
さながら、オリュンポス十二神に挑み続けるスパルタの戦士のようである。常に己をビルドアップさせながら策を練り、改善を怠らず刀を研ぎ続け、勝っても負けても(勝ち負けはないが)、まだ足りぬと求め続ける。
ラウドロック道における永遠の求道者たるcoldrain。15年間かけて研ぎ澄ませ続けてきた楽曲は強靭なオリハルコンの刃となって、我々オーディエンスの鼓膜をズギャンヌ! と突き刺していった。
今回の横アリ単独公演は「15th ANNIVERSARY “15×(5+U)” LIVE AT YOKOHAMA ARENA」と銘打たれ、バンド結成15周年を祝福するイベントであり、アルバム『Nonnegative』のツアーファイナルの立ち位置としての開催となった。もちろんフェスなどを除く単独公演としてはバンド史上最大キャパ。coldrainにとっては、コロナ禍の2年間をおいて、まさしく念願を叶えた1日となった。満員状態のアリーナは座席なしのオールスタンディング。大声は不可だが、マスクをしてちょっとした歓声ならOKというのも、コロナ禍以降初となった。当然ながら、コロナ禍を経ての変化はcoldrainにも大きくあった。その心情がアルバム『Nonnegative』に反映されているわけである。
10曲目の「Rabbit Hole」から「Counterfeits & lies」を経て、Masatoは、その胸中を語った。
「今日のライブは感謝の気持ちで一杯です。なぜなら2年前とちょっと違うから。2年前にここに立っていたら、やっていたライブは全然違ったと思う。2020年に、色んなことが起きて活動が止まったりする中で、大きなマイナスを感じていました。でも、少しずつ動き出す中で感じたことが、1回ゼロに戻したいって思いでした」。
「世界が音を止めている間にも、日本では音を出し続けていこうって、色んなライブを主催している人が動いてくれて。そこにみんなが来てくれたことで受け取ったプラスをいっぱい注ぎ込んで『Nonnegative』というアルバムを作る力をもらいました」。
「新しいロゴは、たくさんのゼロからcoldrainという文字を作りました。新たに立つゼロっていうのは必要だったと思うし、今年がゼロの終わりで、来年からプラスの1歩を向けるように、という思いで作ったアルバムです」。
「コロナが大事なことを教えてくれたことと言えば、みんなに曲を聞いてもらえるという立場にいるという幸せさでした。そのアルバムを作る力をくれたことに、オレたちはまず感謝しなくてはいけないと思っています。本当にありがとうございます」。
そして「Boys And Girls」へ。イントロが流れ始めると、辺りが波を打ったような静けさに見舞われ、美しいメロディと厳かなドラムロールに彩られた曲は、何かこう、横アリにいる人間全員の祈りのように受け取ることができた。
このコロナ禍を経て次へ向かっていこうとする姿勢はライブ後半へ活かされていく。「1曲でも多くの曲を聴かせたい。5分で4曲!」と宣言されて、22曲目に投げかけられたのは2ndアルバム『The Enemy Inside』からのメドレー。スクリーンには演奏曲が映し出され、繋ぎ目のリフをアレンジしながらの圧倒的カオスな時間となったわけだが、ここからがハイライト。終曲と共に暗転するや、“あの”空襲警報とアラートが入り混じったSEが流れ、ホワイトネクタイの映像が映し出され、周囲のオーディエンスはポツポツと「SiM……MAHさん?」と呟き、そのドキドキが充満しきったところでパッと照明がつくとステージにMAHが降臨している。
ワッと歓声があがるや「The Maze」へと移行。この楽曲はMAHが参加しているものなので、昔からのファンは『The Enemy Inside』のメドレーがスタートした段階で、ちょっとした期待があったようだ。それが現実になりライブ終盤ともあって、その熱は常軌を逸したものがあった。この後、沸騰し切ったアリーナに向けてのMasatoのMCが次の通りである。
「1歩進んだ、このライブ環境。活かすしかねぇよな、オレたちで。長い長い戦い、でもオレは信じている。今日は確実に1歩進んだ。お前らと1歩進めたことが、オレたちのキャリアにおいて最高の自慢です」から「REVOLUTION」へ。
「Boys And Girls」から「REVOLUTION」に至るまでは、およそ12曲。この間にcoldrainの15年の歴史を体現しながら物語を見事に運んで、ライブは最終局面を迎えた。ラス前「PARADISE (Kill The Silence)」。全員を座らせてのイントロでジャンプした瞬間は、確実に1日を結ぶ決定的最高瞬間速度を観測したワンシーン。コロナ禍になってのcoldrainファーストリリース楽曲が、今の時代におけるcoldrainオーディエンスのアンセムとなり、次の時代へ繋ぐ希望の歌として横アリを揺らしていた。そして、物語は冒頭の記述へ戻る。
一貫してcoldrainが伝えていたことは、まずは感謝。それは “15×(5+U)”のサブタイトルにも集約されている。Uは言うまでもなく、バンドを取り巻く人たちのことだ。ファンはもちろんスタッフ、これまでcoldrain15年間の活動における楽曲やアートワーク、活動を支えてきた、すべての人たちが“U”だ。続いて約束。中盤のMCで「ライブ定番曲なんてない。ライブに来続けてくれさえすれば、あなたの1番を必ず聴かせます」とMasatoがセットリストに対して強く言及していたり、音を絶対に止めないと宣言していた通り、ファンとの絆や繋がり、音楽カルチャーへの誓いを改めて打ち立てていた。そして、何よりも楽しむということ。1曲目「Help Me Help You」に始まり、coldrainは自らがめっちゃ楽しみ倒していた。実際に7曲目「VENA」前のMCでは「カッコつけてやりたかったんですが、出てきた瞬間にニヤついちゃいました。もうカッコつけるのはやめにします、楽しんで帰るのが1番いい」といった言葉も飛び出していた。SugiやY.K.Cもセンターポジションにガンガン乱入し、Masatoが“やれやれ”な笑顔になるシーンもあって、音を楽しむ姿勢を何よりも体現して見せてくれていたように思う。その楽しんだ姿勢はアンコール・ラストの「Final destination」で、Masatoがサビを初めて間違えるというチャーミングなワンシーンに帰結する。感謝、約束、楽しむ。この3つがキーワードだった。
2022年10月16日(日)、横浜アリーナ。ラウドロック・ヒストリーに刻まれた1日を我々は忘れない。そして、次の1歩に続くプラスの初年度、2023年。『BLARE FEST.2023』が2月4、5日に開催されることが決定。この日までに、シーンはどう変化しているだろうか。5人の戦士たちは再び己という武器を磨きにかかるだろう。我々オーディエンスとしても手をこまねいて待っているわけにはいかない。日々をプラスにしていくことを考えて何でもいいから行動していこう。まずは鍛錬につぐ鍛錬が必要だ。普通にフィジカルの強化をしておかなくちゃいけない。なぜかって? 2時間30分のラウドロックパーティを経た次の日の月曜日、ヒザがガクついてしんどかったからだよ。
MasatoのファーストMCは「横アリ! 2年待ちましたよ。この言葉を、何度頭の中で叫んだことか。大変長らくお待たせしました、coldrain初の横アリ公演へようこそ! もう準備はできてるよな。約束する、coldrainの音でお前らクタクタにして明日は最悪な1日にしてやるからな」であった。そうだった、約束しちゃってた……。いつだってcoldrainは有言実行なもんだから参っちゃうのさ。
SET LIST
01.Help Me Help You
02.CALLING
03.2020
04.The Revelation
05.ENVY
06.Cut Me
07.VENA
08.FIRE IN THE SKY
09.GIVEN UP ON YOU
10.Rabbit Hole
11.Counterfeits & lies
12.Boys And Girls
13.HEART OF THE YOUNG
14.THE SIDE EFFECTS
15.No Escape
16.Evolve
17.F.T.T.T
18.Miss you
19.Don't Speak
20.Bloody Power Fame
21.Here With You
22.The Enemy Inside メドレー
-To Be Alive
-New Fate
-Rescue Me
-Adrenaline
23.The Maze
24.REVOLUTION
25.PARADISE (Kill The Silence)
26.From Today
encore
27.SEE YOU
28.Before I Go
29.Final destination