INTERVIEW

SHANK "Midnight Grow" INTERVIEW!!

SHANKが結成20周年というアニバーサリーイヤーの幕開けとしてニューシングル『Midnight Grow』をリリースした。絶妙なビート感とテンションで立体的なサウンドを響かせるタイトル曲「Midnight Grow」、彼らならではのエッセンスが施されたゆったりと沁み渡る「Sandpaper」の2曲は臆することなく歩みを進めるという宣言にも聴こえてくる。昨年末に前ドラマーが脱退し、サポートメンバーを迎えて新体制となった彼らだが、バンドとしての矜持はそのままに、これまで以上に未来を切り開くことは変わらない。


Text by ヤコウリュウジ
Photo by 岩渕直人

今までやったことを追っかけても出す意味がない

――まず、新作について伺う前に、メンバー脱退という驚きのニュースが年末にありました。インスタライブで経緯を説明されてましたけど、お二人と温度差が出てきたというお話でしたよね。

 

庵原将平(Vo/Ba):そうですね。昔から(温度差は)あったりはしたんですけど……オレらはふざけてやりたいんですけど、その為には本気でやらないといけないことがあるのが前提じゃないですか。

 

松崎兵太(Gt/Cho):ちゃんと音楽をやった上で、ふざけるところはふざけて、っていう。ただ、その音楽的な部分のズレが大きすぎて。本人に意識確認したときも共有できないというか。これはバンドとして健康的じゃなさすぎるよね、って。


――人間的な関係性が壊れていったというより、フォーカスしたい部分が違ったような。

 

松崎:そうですね。


――とは言え、実際に脱退が決まったときは不安もありましたよね。

 

庵原:(サポートメンバーが)見つかるか、見つからないか、っていうときは多少不安もありましたけど、今は楽しいという部分が勝ってますね。やりがいもあるし。


――年明けからサポートドラマーとして早川尚希さんが参加されています。以前から接点はあったんですか?

 

松崎:それこそ、(早川が)最初にやってたSCOTLAND GIRLとは僕らが1stフルアルバム『From tiny square room』を出したころによく対バンしてて、(その後に早川が参加した)3styleとも1回やって。ただ、そこからは長く会ってなくて。

 

庵原:昨年の10月中旬ぐらいからサポートを探し出して、いろんな人に声をかけたり、相談してる中で尚希がバンドを辞めるって話を聞いたんです。で、久々に連絡してみたら「今後は何も決まってないんですけど、バンド自体はやりたいんですよ」みたいな。だったら、SHANKで叩いてみてよ、って感じですね。


――となると、この人だと決めてコンタクトしたというより、もうちょっとライトな感じというか。

 

庵原:最初はライヴを止めないということを考えてたんで、それこそmoAi(Dizzy Sunfist)とか、何人か誘ってて。


――まず、活動ペースを落とさないことを考えたんですね。

 

庵原:ただ、みんなメインのバンドがあるわけで、そうなると先が見えるサポートではないし。というところで、尚希は凄くタイミングが良かった、ってところですね。


――ちなみに早川さんってどんな人なんですか?

 

松崎:マジメでドラム馬鹿みたいな(笑)。10年近くライヴは観てなかったんですけど、いいドラムを叩く印象はあったし、ドラマーとしては間違いないんじゃないか、と。あと、僕らはSHANKしかやったことがないんですけど、尚希はいろんなバンドで叩いてきてるし、適応力があるだろうなと思いましたね。話もわかるヤツだし、そこは信頼してた部分でもあって。

 


 

――今回の新作はそういった体制の変化とは別に作り続けてたんですか?

 

庵原:そうですね。そことはまったく関係なく。

 

松崎:だから、昨年の秋に1回録り終えてはいたんです。それもわりと(脱退の)キッカケではあったんですけど。

 

庵原:5thフルアルバム『STEADY』ってフルアルバムも結構そうだったんですけど、今までやったことを追っかけても出す意味がない、っていうのはずっと意識してて。そういう新しいモノを作っていく上での演奏面のズレもあったというか。


――モノづくりとしてはモヤモヤするところもあるような。この新作は新体制でのレコーディングになってますよね。

 

庵原:そうですね。これはスタッフからの発案でもあったんですけど、新しいメンバーで録った作品を出す方が先が見えるのかな、と。


――実際、新作の2曲、新しい味わいが生まれてますよね。「Midnight Grow」はサウンドに立体感もあって、ハリのある歌声もそうですけど、鼓動を刺激するようなドラムも印象的です。

 

庵原:だいぶ良くなったと思います。

 

松崎:『STEADY』を録ったときはいい作品だなと思ってたんですけど、後から聴くとキーの設定だったり、そういう細かいところまで詰めきれてない部分が気になったりもして。今は将平の声の感じだったり、1回レコーディング前に歌ってもらって「こっちのキーの方がいいんじゃないか?」とか、そういうところも気にしてるんですよ。耳に残るようなフレーズだったりも凄く時間をかけて作ってますね。

 


 

――この曲はどういったアイデアから始まったんですか?

 

庵原:オレが兵太に元となるトラックを発注することが結構あるんですけど、こういう感じの曲をやりたいっていうイメージを伝えて。こういうノリのビートの曲が(SHANKに)なかったから。ずっと作業を続けてると今までにないモノを、ってなるんですけど、そういうところからですかね。


――そういったリクエストを受けた松崎さんは?

 

松崎:ビートやテンポ感を把握して、そこからどうSHANKっぽくしていこうかな、って。メロディーは将平がつけるだろうし、テーマとしてはあんまり曲の中でビート感を変えずに、というのがありましたね。


――速いビートじゃないのにいい緊張感があって、SHANKらしいんだけど違うニュアンスもあるし、絶妙な塩梅だなと感じました。

 

松崎:まあ、おっさんになったんですよ、きっと(笑)。

 

庵原:ハハハハ(笑)

 

松崎:そういうところもありつつ(笑)、コロナ禍とかもあって、モッシュやダイブがない状況でみんなの耳に残りやすい音楽を、というのをちょっと意識するようにもなってて。ノリがいいなら大丈夫だろう、みたいなところもあるし。


――20周年の幕開けを飾る作品ですし、ガツンとした速い曲がくるのかなと想像してたところもあって。

 

庵原:そういう意味では暗い曲ですね(笑)。

 

一同:ハハハハ(笑)


――そういうわけでもないんですけど(笑)、SHANKがちゃんと前に進んでるバンドだということも感じました。

 

庵原:それはありがたいですね。今、2ビートの曲をやるとしたら、どうするべきか難しいというか。

 

松崎:音楽的にもいろんなことを吸収して考えてる今、何も考えてないころの自分と戦うのはやっぱりキツいな、っていうのはあって。


――ありますよね、メロディック特有の初期衝動から生まれるモノって。

 

庵原:そうなんですよね。

 

松崎:ああいうときじゃないと書けなかった曲もあって。作れば作るほど、ウソっぽく聴こえるときもあるし。だから、ホントに作りたいと思ったり、いいアイデアが浮かんだときにやればいいかな、って。(速い曲を)作りたい気持ちはあるから。

 

惚れただの腫れただのっていう曲が今までなかったんで。


――アイデアやイメージがあればやるけど、そこにウソをついてまでパブリックイメージに合わせる曲は作りたくない、という。

 

松崎:それはホントにそうですね。


――昨年の秋に1回録っていたということは歌詞も以前から書き上げていたんですよね。意図せずなんでしょうけど、新体制になった今っぽいニュアンスも感じたりして。

 

庵原:そうなんですよね。運が良かったな、って(笑)。


――ハハハハ(笑)。日本語訳で言えば、<大丈夫だ、大丈夫>と冒頭にあるけど、その後には<多分大丈夫>となる揺らぎだったり、葛藤しながらも<何処へ向かうかは自分で決めるんだ>と決意するところだったり。

 

庵原:ただ、日本語訳はリリースする直前に意訳して書いてるんで、そこはちょっと寄っていったところもありますね。


――あぁ、新体制になった感情も入ってきたような。

 

庵原:あと、昨年に出したシングル『Rude Foundation』がちょっとひねくれた感じを出し過ぎたかな、と思ったりもして。次はもうちょっとわかりやすくしようかな、というのもありましたね。


――また、「Sandpaper」はSHANKとアコースティック編成でやるSLOW SHANKの中間にあるような曲だなと思ったんです。

 

松崎:最初、この曲はSLOW SHANKでやろうか、っていう話にもなったんですよね。でも、SLOW SHANKはSHANKありきだしな、っていうのも踏まえて、ちゃんとバンドで出そうと考えたんです。


――アコースティック編成で表現する場が増えたことは制作にも影響を及ぼします?

 

松崎:どうなんですかね。

 

庵原:まあ、純粋にこういうのもやっていきたいな、というのはずっとあったし。いいと思ったモノは、消化できるモノはやっていこう、という。『STEADY』のころからこういう風なザ・メロコアっていう感じではないモノも入れていこうという流れもあるし。もちろん、アコースティックでやるようになったこともデカいとは思います。


――先程、大人になった、みたいな話もありましたけど、間奏のギターソロとかもそういう感じがありますよね。

 

松崎:おっさんですからね(笑)。


――より幅も広くなってきたっていう。

 

松崎:何かまあ、車の中で曲をよく考えてるんですけど、子供の送り迎えをしてると安全運転にもなるし、昔よりゆっくりな曲が増えてて(笑)。そういう風にしてても聴ける曲を書いてるのが今なのかな、って感じですね。


――SHANK特有の哀愁が散りばめられたSublimeみたいな印象もあって。

 

松崎:それはありがたいですね。こういう音楽のビート感とかリズムが好きなんですよ。


――歌詞をもうちょっと素直に、という話がありましたけど、この曲に関してもその影響が出てます?

 

庵原:まさにそうですね。やっぱ、惚れただの腫れただのっていう曲が今までなかったんで。去年、男鹿ナマハゲロックフェスティバルでモンパチを観たときに、一緒に観ていた人とそういうことを話してて。で、「来年、死ぬほど惚れただの腫れただのを言ってやるんで見といてください」って言ったのが頭にあって。それで、まあ、やってみようかな、みたいな。

 


 

――この歌詞をラブソングと説明するのが適切かどうかわからないところもあるんですけど、日本語訳ですと<また悲しませているのか/怒らせているのか>と言った後に<大丈夫だよ/君も同じだから>と続けたり、謝るかと思いきや<そんな分かりやすい男にはなりたくないんだ>となるところが凄く庵原さんっぽくて好きなんですよ。

 

庵原:ありがとうございます。

 

20周年ではありますけど、もう1年目みたいな気持ちもあるし、バンドとしては。


――SHANKが支持される理由っていくつもあると思いますけど、こういう風に綺麗事を言わないところ、妙にカッコつけないところも大きいだろうなと思ってて。そこが出てるなと感じたんです。

 

庵原:カッコつけきれない、最後までそのままでいけないんですよね。どうしてもふざけちゃうし。


――理想としてはバチッと決めたいみたいな気持ちもあるんですか?

 

庵原:いや、ないんですよ(笑)。照れちゃうから。


――松崎さんもそこは共通してそうですよね。

 

松崎:それはありますね。もう、カッコつかないんで(笑)。

 

庵原:そこなんですよ。カッコよく喋れる人とか凄いな、って。そういう風にはなれないから、もう正直にやるしかない、と。

 

松崎:僕ら、カッコつけたことを言おうとしたら、途中で笑いますもん(笑)。

 

一同:ハハハハ(笑)

 

庵原:思ってねえ、って自分でなっちゃうから(笑)。

 


 

――そこがいいところだと思いますけどね(笑)。そういう意味でもこれまでとまた違う味わいがありつつもSHANKらしい2曲が揃ってて。多くのファンに支持される曲になるんだろうなと思います。

 

松崎:ありがとうございます。

 

庵原:ありがたいです。そうであればいいなと思います、ホントに。


――そして、4月からは20周年を冠とした長いツアーが始まりますね。SHANKはあんまり節目を気にしないバンドなイメージもありましたけど、そのあたりは?

 

庵原:そうですね。でも、20年もやったのか、っていうところと、20周年ぐらい節目としてツアーをやってもいいのかな、って。

 

松崎:僕もあんまり節目は気にしてなかったんですけど、15周年のときに10-FEETと喋ってて、「やってこれたのは来てくれる人たちがいるからだし、そういう人たちの為に(ツアーを)まわるって考えると気が楽なんじゃない?」って言ってくれて。自分らのことを祝ってよ、っていう感覚じゃなく、ありがとうの気持ちを込めてやればいいんだよ、って。だから、20周年のツアーにはすんなりと向き合えたんです。あと、体制が変わったのもあるし、こういうタイミングでいっぱいライヴをやれるのもいいな、と。どんだけスタジオに入ってもライヴをやらないとわからないんで。新しい3人の形ができればいいなと思ってるんです。

 


 

――発表になってるだけでも37本。しかも、... and moreという注釈もあります。

 

松崎:今、走りどきかなとも考えてて。時間をかけてのんびりバンドを作り上げていくのはできないというか。20周年ではありますけど、もう1年目みたいな気持ちもあるし、バンドとしては。周りはどう思ってるかわからないんですが、僕は1回リセットされたようなもんだと感じてるんですよね。


――新体制になってライヴを何本かやられてますけど、感触としてはどうですか?

 

庵原:どんどん良くなっていくだろうな、って感じがしてますね。ここをこうしたらもっと良くなる、って明確に見えてるので。


――新体制になって、これまで目指してたモノの形は変わったりするんでしょうか? それとも、そこは同じまま突き進んでいくのか。

 

庵原:どっちもあると思います。やっぱり、今までやってきたことでも、例えば「こういう曲だったんだ!?」みたいな気づきもあるし、正解だと思ってたことが正解じゃなかったりもして。だったら、今後こういう曲がもっとできるんじゃないか、と感じたりもしてるんですよ。



 


Midnight Grow

01. Midnight Grow
02. Sandpaper

CD, CD+T シャツ, アナログ盤:公式通販限定発売
品番:BRCD-00004 │ 価格:¥1,000(税抜¥909)
公式通販サイト:BAiTFiSH WORKSHOP https://baitfish-workshop.net

配信:Apple Music, Spotify, YouTube Music, etc.
https://linkco.re/rfGThta4

20周年ツアー
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