dustbox 25th Anniversary Tour "Still Dreaming" -ONE MAN SHOW- LIVE REPORT!!
Report by Ryuji Yakou
Photo by 岩渕直人
2024.3.21 @SHIBUYA CLUB QUATTRO
dustbox 25th Anniversary Tour "Still Dreaming" -ONE MAN SHOW-
「こんなに嬉しいこと、ねえわ!」とJOJI(Ba/Vo)が満面の笑みで叫べば、SUGA(Vo/G)は力強く拳を握りしめ、YU-KI(Dr)もしみじみと頷く。結成25周年を記念した東名阪のワンマンツアー最終公演、渋谷CLUB QUATTRO。特別に派手な演出はなかった。ただただ喜びを爆発させながら珠玉の名曲たちを放ち、観客はその輝きを全身で受け止め、得も言われぬ多幸感で会場が満たされ続けていた。
結成25周年、言葉にすれば簡単だが、人生で例えるならば産声を上げてから社会に揉まれて一人前に仕事ができるようになるぐらいの期間でもある。決して短くないどころか物凄く長い。加えて、彼らの道のりは平坦ではなかった。結成から3年でウサギと亀のジャケットが印象的な1stフルアルバム『Sound A Bell Named Hope』を完成させ、ツアーファイナルは渋谷O-WEST。その後すぐにメジャーのフィールドへ足を伸ばす。ただ、水が合わなかったのだろう、約1年でインディーに帰還し、改めてバンドを再構築していく中で名声を高めたが、メンバー脱退、YU-KIの加入といったことも含め、とにかくいろいろあった。
それでも俯くことなく走り続けてきた25年。フロア前方ではお気に入りのバンドTシャツに身を包んだダイバーが飛び交い、後方では仕事終わりに駆けつけたのだろう、長きにわたって彼らを愛し続けてきたスーツ姿の観客たちが大きな声を上げる。ここまでやってきたからこそ生まれた美しい光景が嬉しくないはずがない。
そんなことを思い返してしまうほど、もっと自由に、というメッセージを輝かしいメロディーで響かせる「Right Now」で開幕したこの日のライヴはバンドと会場を埋め尽くした観客の呼応っぷりがとにかく凄まじかった。SUGAが歌い出した瞬間に会場全体を揺るがすような歓声が上がり、ヘヴィでシリアスなムードを醸し出しつつ、すっきりとしたキレの良さを見せつける「Emotions」がプレイされれば、JOJIのコーラス、後押しするYU-KIが叩き出すビートもあって、天井知らずで熱狂するフロア。「いいじゃん! ガンガンいこうぜ、最高潮まで!」とSUGAが絶叫するが、どこまで上り詰めてしまうのか、ドキドキが止まらない。
いつもの彼ららしく、無駄に意気込むことはないが、貰った愛はしっかり返すと言わんばかりに名曲たちを放ち続け、それらどれにもそれ以上の気持ちをステージにぶつける観客。ギターリフで歓喜の声が広がった「Riot」や「Sun Which Never Sets」、「Spacewalk」ではここぞというポイントでは驚くようなシンガロングも起こり、一体感は増すばかり。
愛ある野次も余裕で受け止め、フロアを指差しながら「全員、味方なんだよ!」と口にするJOJI。キャリアが浅ければその状況に甘えてしまうこともあるかもしれないが、彼らに限ってそれはない。自らに高いハードルを課しながら、忍び寄るような美メロと激しく覚醒する様がたまらない「Farley」、活力を生み出す「Time To Wake」、速射砲のようなビートでぶっ放す「Resistance」と繰り出していき、まだまだ行くぞとヒートアップ。少しアプローチを変えて、こんな楽しい夜がずっと続きますように、という願いを込めながら華やかなダンスチューン「Dance Until Morning」、SUGAが少し溜めながら奏でたアルペジオから疾走し、いい抑揚を描く「Smile Like A Child」と続いても熱気が冷めることはない。互いにすべてを受け止めてこの瞬間を味わい尽くそうとしているのだ。
中盤戦に入っても中だるみなどすることはない。ストレートなメロディックチューンと思いきや、サビの展開やコーラスにらしさが施された「Dive」、No Use For A Nameの「The Answer Is Still No」を彷彿とさせる冒頭の掛け合いから疾走する「Still Believing」、「ホントに長く続けてきて良かったと思うわ」とSUGAが口にし、改めて進んでいく意志と願いを込めた「Carry On」といいテンション感を保っていく。
そんな中、噛みしめるようにSUGAがギターを一音一音鳴らし、そこへJOJIとYU-KIが折り重なり、幻想的な広がりとメロディック特有の推進力が合わさった「Pieces of My Heart」は印象的なシーンのひとつ。全身に染み渡らせるように聴き入る観客も相まって、グッと惹き込まれてしまった。その余韻を残しつつ繋げた「Hand In Hand」というセレクトも絶妙。小気味よいリズムで心地よく会場を揺らしていったのだ。
ここで「声が出なかったり、迷ったり。dustbox史上、凄く辛い時期だった」とSUGAが語る5thフルアルバム『Blooming Harvest』のリリースツアーでJOJIに逆ギレをしたという思い出話で笑いを誘いつつ、今回のワンマンツアーで「何かお返しをしたい。ちゃんとしたモノを渡したい」という想いから無料配布したCDに収録した新曲「To All My Friends」を披露。JOJI曰く、「お前らが大好きな短い曲だよ」というだけあって、パッションと感謝を詰め込んだ激烈ショートチューンだ。
ただ、あまりにも一瞬で駆け抜けたこともあり、観客からすぐさま「One More!」の声が上がり、2回目の「To All My Friends」へと突入。順応が早いのはパンクシーンの特長であり、フロアはグチャグチャ、ダイバーの大渋滞まで生まれる盛況っぷりを見せ、次の曲へと移っていくかと思いきや、まさかの3回目を求めるリクエストが起こる。そんな予想外のリアクションに対して、「オレ、歌ってもいいかな?」とJOJIが歌う特別バーションで放ったのは流石の対応力と言わざるを得ないだろう。その場の空気を瞬時に感じ取れるライヴバンドだからこそと言い切りたい。
そして、終盤戦で更にグッとギアを上げられるのも現場で培ってきたライヴ力があってこそ。高まりまくっている観客に対して「本気でこい!」とSUGAがアジテートし、畳み掛けるように「Rise Above」、「Don't Call Me An Average Guy」、「Stand by me」と突きつけていく。張り詰めた勢いはありながら、要所では抜け感もあり、決してモノクロームな仕上がりにはならない彼らならではのナンバーを連投。エネルギッシュなYU-KIのドラミングも頼もしく、いい重みを伴って押し寄せてくるのだ。
「25年ぐらいやってるんだけど、まだね、こんな曲も作れるかも?って思ったりさ。みんなこうやって集まってくれて、楽しそうな顔をしてくれてるじゃん。もっと、いろんなことをやりてえなって。まだまだやろうと思ってるんで、よろしくお願いします!」とSUGAが今後に向けての意気込みを語り、「これからも一緒に奇跡を起こしていこうぜ!」と呼びかけて始まった「Here Comes A Miracle」はクライマックス突入にふさわしい盛り上がり。これでもかと前へ踏み出すバンド、コーラスもコールも声を枯らさんばかりに張り上げる観客が合わさったライヴでしか味わえない空気。「お前ら、最高だー!」とJOJIが叫ばずにはいられなかったのも当然だろう。とにかく圧倒的なエネルギーに満ち溢れていた。
ただ、そこで満足しないのもライヴバンドらしいところ。この素晴らしい空間に気持ちをさらに解放し、SUGAが「半端ないのを見せてくれよ! やっちまえ!」という言葉を添えて「Hurdle Race」を投下。長丁場のワンマン、バンドも観客も体力はそんなに残ってないだろう。だが、そうであっても突き動かされるモノがある。お互いにすべてを使い尽くそうとする姿はライヴにおける醍醐味だ。快活なメロディックチューンでありながら中盤にはゆったりと惹きつけるパートも魅力的な「Life is Beautiful」で一体感をさらに高め、「Jupiter」をドロップ。頭を振り乱しながらSUGAがイントロを鳴らせば、まだ先があるのかと驚くばかりの大熱狂で包みこまれる会場。歓声なのか絶叫なのか、もはやわからないほどの声が湧き上がり、最高潮を更新して本編は幕を閉じた。
そして、まだこの空間を味わいたいという観客の熱烈な声援に呼び戻された彼らはアンコールとして「Bitter Sweet」、「Tomorrow」とプレイし、遊びに来ていたというNorthern19の笠原健太郎が急遽ベースを弾くという嬉しいサプライズもあった「Neo Chavez 400」と続け、JOJIの「もう1曲やるよ」との言葉から「Just One Minute」をセレクト。客席の照明もつき、リミッターを振り切った状況が眼前に広がっていく。映画ならばここで最高のエンディングであり、それぐらいの絶景だった。
だが、アンコール前に総勢21バンドによるトリビュートアルバム『Timeless Melodies』が7月3日にリリースされること、10月11、12日に主催イベントであるKOSHIROCK GALAXY 2024を豊洲PITにて開催することを発表したことからもわかるように、dustboxというバンドの物語はまだまだ続くのだ。この日を超えるような熱がまた生まれるに違いない。
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