LIVE REPORT

Good Grief "GOOD SONGS : BETTER TIMES TOUR 2025" LIVE REPORT!!

Report by 横堀つばさ
Photo by Leo Kosaka
 

2025.1.17 @渋谷CYCLONE
Good Grief "GOOD SONGS : BETTER TIMES TOUR 2025"

 

“SAD POP PUNK”を掲げる5人組・Good Griefが、2025年1月17日(金)に東京・shibuya CYCLONEにて『GOOD SONGS : BETTER TIMES TOUR 2025』の最終公演を開催した。2024年12月に発表したEP『GOOD SONGS : BETTER TIMES』を引っさげた同ツアーのファイナルとなったこの日は、4 RosesとThe Cards I Play、Knosis、そしてアメリカからAll Hypeが出演。ジャンルも国境も超えた1日に、フロアの至る所で英語が飛び交っていたのも印象的だった。

ツアーファイナルの狼煙を上げたのは4 Roses。本ツアーに通訳として同行していたと話したXavier.(Vo)を筆頭に、先輩の大切な1日の一発目を任せられた喜びを全身から立ち昇らせ、初っ端の「You & Me」から純真無垢なポップパンクサウンドを炸裂させていく。「時間もないんで、言葉じゃなくて音楽で恩返しをしたい」と「Fix This Love」を披露し、愛する人へ届くように放ったファルセットで自らの存在をフロアに打ち付けると、五月雨式に「My Juliet」をドロップ。名前を呼んでと叫ぶナンバーでこの瞬間の邂逅を意味付け、ツアーファイナルの開幕に華を添えた。

リハーサルから銃声を想起させるスネアドラムを響かせていたのが、盟友・The Cards I Play。Joji(Vo)の「Good Grief愛してるぜ」という叫びを合図に「MADNESS」で走り始めると、鳴り止むことないサイレンが怪しく会場を染色していく。ブンブンに鳴らされるDaiya(Ba)のベースサウンドで息もできないほどに内蔵が揺れたかと思えば、隙間を縫って耳へ飛び込んでくるDaniel(Gt)の畳み掛けるラップが軽やかさを担保。「Good Griefとの思い出の1つになるような時間にしたいです」とピリオドを打った「TIME」では、宇宙の旅をイメージさせるファンタジックなメロディーがフロアを満たし、1つの旅を終えたGood Griefの帰還を迎え入れた。

アメリカ・オレゴン州ポートランドからやってきたAll Hypeが全公演に帯同したことは、本ツアーを象徴する出来事の1つ。Good Griefが2024年7月にUSツアーを敢行するべく活動していたことも記憶に新しいが、彼らの視線は国内のみならず、国外までを捉えており、All Hypeの初来日もこうしたアティチュードの沿線上に位置づくと言えよう。

Good Griefからのラブコールをフルスイングで打ち返すべく、『3D』収録のナンバーを中心に重ねていく。時に軽快に、折にヘビーに叩かれるビートの移ろいも魅力的で、客席はさながらサラダボウルの様相に。「Good Grief is family to us. Japan is Ichiban.」と日本への膨大なラブを届け、太陽を彷彿させるエネルギーを注入した30分だった。

続いて登場したのはKnosisだ。ライブ中盤、3日間の共演への感謝を伝えたRYO(Vo)は、「SAD POP PUNKじゃなくて、俺らは生きててごめんなさいメタル。でも、必死に頑張っているんで、一緒にやっていきましょう」と口にした。冗談交じりに伝えられたこの語りは、しかし確実に彼らがツアーの相棒として選ばれた理由を説明していたように思う。「揺らしてこう。悲しみを添えて」とプレイされた「毒沼」をはじめ、Knosisのナンバーは、深層に隠された本音をラウドな音像と肉体的なダンスで洗いざらい吐かせるアングリーミュージック。こうした楽曲に由来する読後の胸の空くような思いは、Good Griefが提唱するSADの概念と通底しているのである。POP PUNKとメタルを真正面からクロスオーバーさせたKnosisが、大トリ・Good Griefへ襷を繋いだ。


4バンドの想いを背負って、いよいよGood Griefが姿を現した。「SAD STATIONから名古屋、大阪を経て、渋谷へ帰ってきました。やろうぜ!」。Yasu(Vo)のこんな開幕宣言を添えて、オープニングナンバーにセレクトされたのは「Sapphire」。2021年、新体制のGood Griefが始動する契機となった1曲で<これでよかった 気の遠くなる理想が この炎が消えなくてよかったな>と現在地を踏みしめる様子に、今日がこれまでのGood Griefの楽曲や思い出、苦悩を丸ごと引き受けた上で、過去の自分たちをアップデートするライブになると確信する。思えば、このタイミングで『GOOD SONGS : BETTER TIMES』という潔いタイトルを掲げることができたのも、彼らが錆びないナンバーを響かせてきたことへの自信の表れであると同時に、『SAD STATION』以降確実に熱視線を浴びている現在の5人のモードを示しているからだろう。

中盤戦では、「全員に捧げます」と放った「Stay Cool」やアルペジオとコーラスワークが涙腺を緩める「Blue Ink」など、最新作の楽曲を乱れ打ち。ギター交換で一時離脱したSota(Gt)の不在をカバーするべく、ボリュームを上げたKeisuke(Gt)が舞台前方で掻き鳴らした「Mayfly」からは、この5人でGood Griefであるというメッセージを受け取ることができた。

ツアーの幕切れが刻々と近づく中、Yasuは「SAD POP PUNKって何ですかって言われる時代だった」と当時を振り返り、「このツアーを通じて自分の曲に、集まってくれたみんなに力を貰った。その分、かませたらと思ってます。SAD STATION未来編を始めます!」と語る。過去と現在を線で結んだ彼らが向かう先は今よりも輝いた未来であることを宣誓すると、新曲を投下。Yasuのシャウトが静寂を割き、The Cards I PlayやKnosisともリンクするRyuto(Dr)のヘビーなビートがGood Griefの進化の片鱗を示すと、始まりの歌の1つ「Contempt」へ。

先刻のMCの通り、誰とも自分の音楽を分かち合うことができなかった怒りや反抗心が凝固した同曲に対し、掲げられた無数の両腕と会場を埋め尽くす大熱唱が伝えたのはもうそんな思いをする必要は一切ないということ。最新曲と最古の曲を連ね、いつだって彼らが最高点を叩き出してきたことを見せつけると、Yasuの可憐なアカペラが牽引する「(i will stay)」から「WITH YOU」をプレイ。オーディエンスがGood Griefの側にいるだけではなく、5人の音楽がファンの隣で鳴り続けることを全員で今一度約束する。ラストは「全員の声を聞かせてくれ!」と「July」でフィニッシュ。本ツアーの意味を体現した最終ブロックを経て、この曲をエンディングに選んだのは、きっと「July」が彼らのSADの源泉であるから。離別の悲しみを胸中で抱きかかえ続けるわけでも、完全に吹っ切れるわけでもなく、自分の弱さや悲壮と対峙しながら、それでも強くあろうとすること。そして、その悲しみを乗り越えるフェーズ自体に目を向け、時には弱音を吐いても良いと届けるのがGood Griefなのだ。

こうしてゴールテープを切ったGood Grief。駅。それは人々の生活が交差する場所。であるならば、彼らが掲げるSAD STATIONとは、口にできない鬱屈や乗り越えられない困難をそれぞれが持ち寄る舞台だ。そして、それはまさしくライブハウスにほかならない。5人は今日もGOOD SONGSと共に、ステージへ立ち続けている。

 

OFFICIAL HP:https://goodgrief.tokyo/