INTERVIEW

SC’18開催直前! デザイナーインタビュー:Verdy [VK DESIGN]

SATANIC CARNIVAL’18開催直前特集! インタビューしたのは2014年の初開催以降、皆勤賞でSATANIC GRAPHIC EXIHIBITIONに出演し、ライブペイントを展開しているアーティスト、Verdy。Verdyはこのシーンから世界のファッションシーンへ羽ばたき、現在進行形で歴史を塗り替え続けている。デザイナーとして大きく飛躍するVerdyから見て、SATANIC CARNIVALはどんなイベントなのか? そして世界のファッションシーンを知る人間として、このシーンのファッション性はどう見えるのか。今年の参加への意気込みも踏まえて聞いてみたいと思う。

"シーンで本気で頑張っている人にチャンスを与えてくれるフェスだからこそ……"

ーVerdyさんはパンクシーンから生まれたデザイナー/アーティストとして、今や世界中のファッションシーンで活躍するようになりました。改めて、Verdyさんがデザインするもののルーツを教えてもらってもいいですか?

Verdy:ボクは高校生の頃にHi-STANDARDやBRAHMANを好きになって、いわゆるAIR JAM世代の1人でした。その当時、活動していたBBQ CHICKENSが2002年にリリースしたアルバム「GOOD BYE TO YOUR PUNK ROCK」に『OLD SCHOOL』っていう楽曲が入っていて、歌詞の最後の方に[Black Flag、Minor Threat、Bad Brains、Circle Jerks、7 seconds、Descendents、And more]って出てくるんですよ。

ーああ! はい。私もよく聴いていました。80'sハードコアな楽曲群が新鮮でした。

Verdy:はい、まさに。それで『これは、何だろう?』と思って、当時働いていた(音楽)スタジオの先輩に聞いたんですよ。そしたら80年代のハードコアバンドだってことを知って。

ーVerdyさん、スタジオで働いていたんですね。

Verdy:そうなんです(笑)。そこから彼らのCDをディグって聴きまくって、ハードコアの世界が好きになっていきました。それからハードコアパンクのフライヤーをマネてイラストを描いたりして、自分のグラフィックが始まっているんです。なので、何かデザインするときは、そういう自分のバックグラウンドも見せられればいいな、と思って制作しています。


※Girls Don't CryのTOKYO POP UPより
※Wasted Youthの上海 POP UPより

ー自身のブランドとして展開しているWasted YouthとGirls Don't Cryはポップアップを行えば長蛇の行列必至。それも世界中で。バンドマンの愛用者も多く、フェスで着ているキッズも数多く見受けられます。この2ブランドにも、Verdyさんのハードコア・マインドが詰まっている?

Verdy:特にWasted Youthに関しては、そういうハードコアパンクな背景がないと生まれていなかったアイディアなんですよね。そして、Wasted Youthが出来たときに、自分のグラフィック表現のやり方を確立していったんです。こういうのが自分らしいやり方なんだなって。だから根底にはそういった精神が流れています。



※Wasted Youthの上海 POP UPより

ーなるほど。Wasted Youthについてハードコアな部分というのは?

Verdy:Wasted YouthはGANG GREEN(アメリカの80年代HCバンド)というバンドをモチーフにしているんです。彼らが発信していたメッセージに共感するものがあったので使い続けていて。例えば、Wasted Youthの缶グラフィックがバドワイザーではなくGANG GREENって書いてある点も、ボクのメッセージです。表面的に見えるデザインの部分も体感してほしいし、ボクがなぜ、こういうグラフィックを思いついたのか、というルーツ的な部分も見てほしいと思ってデザインしていますね。本当にバンドのカルチャーからの影響がすごく多いし、シーンに対して本当に感謝をしているんです。

ーではSATANIC CARNIVAL'18 Tシャツはどのような意図でデザインされましたか?

Verdy:普段から自分が着れるもの、というのは意識しました。パーティやストリートで遊ぶときに自分が普通に着れるTシャツをデザインしようと思って。街に着て行ったら「何のTシャツ? かわいいね?」って言われるように。まさに海外のブランドデザインを手がけるときと同じ気持ちで、自分のグッズとして作ったんです。だからバンド名も小さめにデザインして。

ーあえてイベントTシャツにおけるデザインのセオリーを外したんですね。

Verdy:そうですね。それもSATANIC CARNIVALだからこそなんです。初年度からアートブースも展開していて、デザイナーにも注目してくれるイベントだからこそ、ボクもしっかり自分らしいデザインを表現しようと思って、自分の意図をデザインに反映させたんです。他のフェスでしたら、もう少しバンド名を大きくデザインするかもしれません(笑)。

ープリント位置も少し上めで。ここにもこだわりがあった?

Verdy:はい。ボク自身、自分がTシャツとして着るうえで"プリントはこの辺り"というポイントが一昨年くらいから出てきたので、自分の1番気持ちいい場所にプリントしてもらうようにお願いしました。そこは今年、特に気にした点ですね。やっぱり本気でデザインしたものなので、自分的にも違和感がないようなモノとして仕上げたかったんです。


 

ーそれはVerdyさんがファッションの世界でも活躍されているからこその感覚だと思います。そういった別のシーンから見て、今、SATANIC CARNIVALはどんなイベントだという印象がありますか?

Verdy:パンクやラウドのバンドを軸に、その周辺のファッションやアートなどの総合的なカルチャーが体験できるフェスだと思います。それは初年度から変わらないですし、"ライブハウスの入り口となる"という意志を貫いている点だと感じていますね。でも、別の世界から、このシーンを俯瞰して見たとき、ちょっと気になってしまう部分も見えるようになってきました。

ー気になる部分というのは?

Verdy:これはシーン全体に言えることだと思うんですが、いわゆる原宿や渋谷を中心とするストリートカルチャーと、パンク・ラウドのシーンが少しかけ離れているように見えてしまうことがあるんですよね。例えば、ストリートにいるキッズに、全国的に人気があって何千人も集客できるバンドの話をしても、意外に知られていなかったりするんです。バンド自体はすごく人気があってCMやテレビで楽曲が流れているのに、街にいるストリートキッズが認識していない、というのは、あまりにももったいないなって。

ー確かに、街を歩いているキッズとライブハウスにいるキッズの服装はまったく異なりますよね。

Verdy:ボクがパンクを聴きはじめて、このカルチャーを知った頃は、ストリートにおいてもパンクなどの音楽がカルチャーの一部として、ファッション性も含めて全てがカッコいい存在として受け入れられていたように記憶しています。今はそこが変わってきているのかもしれません。ボク個人の意見になってしまうんですけど、やっぱりライブハウスにオシャレをして遊びに行ってほしいんです。決められた服装じゃなくて、自分らしいファッションをしていってほしいなって。カッコいいバンドのライブをカッコいい人たちが観にくる光景っていいじゃないですか。そこにいる人たちの服装も十人十色のハズだし、そうなれば、もっと楽しく面白い空間になってくると思うんです。

ー確かに。今、このシーンではディッキーズのハーフパンツが制服のようになっていると思いますし、みんなが同じ格好をしてライブを楽しんでいるような気がします。

Verdy:本心でカッコいいと思う服を着た結果、同じ格好になった、というのはいいと思うんですけど、無理に同じパンツを履く必要性はないんじゃないかな? と思います。ボクがパンクを好きになった理由は(パンクが)人と違うからであって、それが良しとされるカルチャーだから、のめり込んでいったんです。だから、みんなが一緒の服装でなくちゃいけない、という固定概念みたいなものが、このシーンに根付いているんだとしたら、それはすごくもったいないと思うんです。自由に自分らしく楽しもうと考えて服を選べば、きっと、もっとシーンを楽しめるはずなんです。

ーシーンにおけるファッション的な面白さも、デザイナーとして伝えていきたいと思いますか?

Verdy:こういうことを言ったら批判されるだろうし「Verdyの言うことなんて知らねぇよ、どうでもいいよ」って思われるんでしょうけど、自分のルーツであるシーンだからこそ、もっと自由にクールになってほしいという思いは強くて。だから、伝えていきたいですよね。ボクが作っているWasted YouthやGirls Don't CryのTシャツは、バンドマンの友達が着てくれているお陰で、ライブハウスに通うキッズも大勢着てくれていると思うんですが、Tシャツだけじゃなくて、着てくれているバンドマンのスタイル、全身のシルエット感なども参考にして楽しんでほしいなって思います。そうしたら、シーンのファッションもちょっと変わってくるんじゃないかと。ボクもデザイナーとして責任があると感じているので、1枚着るだけでカッコよく決まるデザインをもっと作っていきたいと考えています。

ー初開催からSATANIC CARNIVALに出演し続けているVerdyさんだからこそ見えるものがあるんですね。

Verdy:そうかもしれないです。SATANIC CARNIVALには初開催から出演させてもらっていて、本当に感謝しているんですが、実は今年を最後にしようと思っているんですよ。

ーえっ!? そうなんですか?

Verdy:逆に自分がそうしていかなくちゃなって。やっぱり自分がずっといるシーンなので、毎年この季節がやってくると「今年も出たい、呼ばれたい」と思うんですよね(笑)。でも、デザイナーとして出演できる枠にも限りがあるじゃないですか。もし自分が20歳でパンクの絵を描いていたら「Verdy、毎年出てるからもういいよ、どけよ」って考えると思うんです(笑)。SATANIC CARNIVALはシーンで頑張っている若いバンドやデザイナーにチャンスを与えてくれるフェスでもあるので、ボクより下の世代のデザイナーに機会が多くなくちゃいけない、と思って。そう考えているからこそ、最近はバンドのマーチャンダイズやアートワークのデザインをやるのも意識的に減らしているんです。自分じゃないデザイナーに順番が回るべき時なんじゃないか、と考えて。

ーデザインの世界においても活性化を望んでいるんですね。実際に下の世代のデザイナーとも交流はあるんですか?

Verdy:それがなかなか無いんです。良い人がいたら話してみたいですね。自分みたいな気持ちで、このシーンにいる若いデザイナーもいるのかな? って気になっています。地元、大阪には何人かいたりもしますけど、デザイナーは少ないのかもしれません。今年もDAY.2(17日)にライブペイントをやるので、もし、ボクみたいにデザインをやってみたいと思う人がいたら、遠慮せず話しかけてください。作品集を持ってきてくれてもいいし、聞きたいことがあったら聞いてください。そしてSATANIC CARNIVAL'18に来る皆さん、今年もよろしくお願いします!!

Verdy 6.17 GRAPHIC & PHOTO EXHIBITION
https://www.instagram.com/verdy/