Crystal Lake “HELIX Tour” LIVE REPORT!!!
Report by Junji Shibayama (2YOU MAGAZINE)
Photo by TAKASHI KONUMA
2019.1.18
Crystal Lake “HELIX Tour”
@Imaike THE BOTTOM LINE
活動を続ける中でメタル、ハードコアという基盤に様々な音楽要素を吸収することで独自の音楽スタイルを築き上げてきたCrystal Lake。その進化の過程の中で2018年11月にリリースしたアルバム『HELIX』はある種の原点回帰ともいえる作品だった。作品を重ねながらクリーントーンの導入や視野を広げた音楽性で大きくバンドの幅を拡大してきた彼らだが、ここにきて再び圧倒的な攻撃力のヘヴィな要素をぶち込んだ作品を作り上げたことで、ライブに対する期待値も高まる中、今作を引っ提げ東名阪で開催されたワンマンツアー「HELIX TOUR」最終日の名古屋は今池THE BOTTOM LINE公演で、Crystal Lake の真骨頂をしっかりと見せつけてくれた。
アルバム冒頭を飾る「Helix」をSEに、無機質な音声がフロアに響くと待ちわびた観客の拳が一斉に挙がる。その期待を一斉に引き受けたかのように「Aeon」でRyo(Vo)が畳みかけるように雄叫びをあげると、会場はいきなりの地獄絵図に。Crystal Lakeの持つ音楽的なエッセンスを全て盛り付けたような「全部乗せ」的ハイブリッド感を感じさせる「Aeon」はカオティックな展開を見せながらハードコア、メタルコア、ブラックメタルを行き来しつつ、しっかり落としたブレイクダウンや映画的な展開を見せるなど様々な色を見ることが出来る、曲名さながら、まさにイオン的な意味合いも持つ楽曲な気がする。シンフォニックな楽曲にマシンガンのようなドラムと男臭いメロディといった、捉え方によっては真逆にあるものが同居することで新しい世界を作り出す「Agony」、突っ走るような疾走感からラップを経てからの鬼ブレイクダウンが炸裂する「Prometheus」、これでもかとヘヴィなリフでぶん殴ってくる「Matrix」と、のっけからハイライト続き。
まるで主役がアーノルド・シュワルツェネッガーのSF映画を観ているようだ。「飛べ!飛べ!ジャンプ!ジャンプ!」とRyoが煽るとボトムラインの屋根を突き破る勢いで一斉にジャンプする観客。この光景にメンバーの勢いも更にヒートアップした様だ。
続く「+81」はHIP-HOPとハードコア、パンク、ロックがクロスオーバーした伝説のサントラ「JUDGMENT NIGHT」を彷彿とさせるマッシュアップ的なアプローチが光る。印象的なリフとシンガロングは、アクション映画っぽさもあって揉みくちゃのフロアがまるでバトルロイヤルしているように見えてくる。「名古屋が狂っていることを証明してくれ!」と会場を煽り「Six Feet Under」「Machina」と戦闘能力53万クラスの楽曲を立て続けに披露すると、観客の盛り上がりも中盤にして早くも最高潮に。
Crystal Lakeにとってこの日は4年振りのボトムラインでのライブだという。「色んなことがあったけど名古屋の熱気は変わってない」とRyoが言っていたように、物凄い熱量でバンドに応えるオーディエンス。その姿に「支え合うことを忘れないでいよう。カルチャーをみんなで守っていこう」とバンドと観客でライブを作り上げていることを真っ直ぐな表情で語り掛ける。この信頼関係がとんでもない空間を生み出すのだ。またここでライブハウスで起きる痴漢行為にも言及したRyo。「(痴漢があったら)ライブを止めることを恐れないで声を出して欲しい」と泣き寝入りする必要などないことを伝える。こういう行為がライブハウスで起きること自体が信じられないが、実際に被害にあった女性も現実的に多くいるのも事実。Ryoが言っていた通りライブを止めてしまっても声に出すこと、恐れないで欲しい。きっとこの会場にいたイケてる男達はみんなそう思ったはずだ。
さらにRyoは語る。「レールを外れることを恐れないで新しい一歩をバンドとして踏み出した曲です。みんなで進んでいきましょう」と演奏された「Lost in Forever」はまるでCrystal Lakeそのものだった。楽曲のスピード感からはバンドの辿ってきた道を感じ、美しさをも感じる展開からなる楽曲は祈りのようだった。続く「Mercury」でも彼らの多面性は表れていて、ゴリゴリに引っ張るベースライン、兵隊の行進のようなブリッジ、アルペジオの美しさ、宇宙的なギター、そして曲中通して叫ばれるシンガロングと、「Aeon」同様、Crystal Lakeの持つあらゆる武器を装備した曲展開に、つい拳に力が入る。「帰る場所があるってことはホッとする」とファンとCrystal Lakeという大家族を前に語り「Metro」を演奏すると、大家族の儀式のようにフロアの全員が手を挙げる。絆なんて言葉はもしかしたら安っぽく聞こえるかもしれない。でも確実にそれは絆だった。ひとつ屋根の下でこの空間を共有しているんだ。そんなのもう家族だ。
ライブ後半戦はサポートメンバーであるGakuのドラムソロにより開幕。「Ritual」から「Hail To The Fire」に流れ込む。しかしここにきて破壊力だらけの「Hail To The Fire」なんてバンドも観客も狂っている。特大のコール&レスポンスで意思をぶつけ合うその姿は恐竜同士のセックスのようだ。あの光景を目の当たりにしながらメモに「恐竜のセックス」と書いたその瞬間のことを、あれから日数が立った今でもはっきり思い出せる。さらに「Mahakala」と畳みかけるCrystal Lake。そう、2回戦だ。破壊と再生の二面性を持つ神シヴァの別名を冠したこの曲は、バンドのスクラップ&ビルドな精神を表しており、彼らが戦い続けてきたものが曲に宿っているのがライブの気迫からも感じ取ることが出来る。そう、彼らは戦ってきたバンドなのだ。だからこそ目の前で繰り広げられているようなライブが行われているのだろう。足跡は嘘をつかないのだ。
空気が一変したのは「Devilcry」だ。クリーントーンのアンサンブルとRyoのエモーショナルなヴォーカルがボトムラインを包み込む。もう何度も書いている気がするが、美しさと強さを併せ持つCrystal Lakeだからこそ作り出せる音の空間、世界。『HELIX』の中でもこの曲の存在はとても大きなものであったが、ライブにおいても圧倒的な存在感を放っていた。このスケールは確実に世界クラスだ。
「見えてんだろ名古屋!聴こえてるんだろ名古屋!」とライブ終盤に差し掛かったにも関わらず攻撃の手を一切止めず叩きつけた「Beloved」も圧巻だった。ライブには参加していないながら、楽曲でタッグを組んでいたKoie(Crossfaith)の姿が、まるで孫悟飯の後ろでかめはめ波を撃っていた孫悟空のように目に浮かぶ。そういった仲間との絆もCrystal Lakeはあらゆる場面で感じさせてくれる。男の子はそういうのに弱いんだ。
「これが日本で生まれた音楽だ。自分の魂から出てくる音楽だ。」とRyoが語ると、YD(Gt)がマイクを手にし「今日のライブを観て何かしたいという気持ちが芽生えたら、それを大事にして欲しい。これがやりたいと思ったら踏み出して欲しい。」と自分達の音楽が誰かのきっかけになっていることに対する熱い気持ちを観客に投げかける。きっと彼らもそうだったんだろう。あの頃、誰かのライブを観て心を動かされ一歩を踏み出したはずだ。そして今こうやってステージに立っている。繋いでいくことで、また新しい何かが始まるかもしれない。会場を見渡し、この中から生まれるだろう何かに期待が膨らむ。
そしてライブは、爆音でフロアをひとつにする「Apollo」、神秘的で幻想的なシンフォニックナンバー「Sanctuary」とアルバムのクライマックスと同じ流れで本編が終了。『HELIX』収録曲を中心に歴代の曲も織り交ぜながら組まれたセットリストでアルバムの世界観を見事に体現した素晴らしいライブだった。変化を恐れずにチャレンジを続けてきたバンドの原点回帰でもあり進化でもある『HELIX』を経て、そしてこのツアーを経て、Crystal Lakeはまたひとつ先に進むだろう。アンコールで披露した「The Fire Inside」はメンバー全員がかめはめ波を撃ち合うような、全員が全員最後の力を振り絞ったパフォーマンスに胸が熱くなった。戦っているのは観客だって同じだ。みんながみんな自分の持つ技をフロアから撃ちまくっていた。誰ひとり欠けてもいけない、Crystal Lakeという大家族のパワーを思いっきり爆発させた素晴らしいライブだった。
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