LIVE REPORT

UKFC on the Road “GO AHEAD TOTALFAT, GOOD BYE Kuboty” LIVE REPORT!!

Report by (全体)秦理絵
(BIGMAMA、グッドモーニングアメリカ、TOTALFAT)山口智男
Photo by UKFC

 

2019.8.22
UKFC on the Road “GO AHEAD TOTALFAT, GOOD BYE Kuboty”
@新木場STUDIO COAST


 レコード会社UK.PROJECTとプロダクションUKPMによる恒例のライブイベント「UKFC on the Road 2019」が今年も新木場STUDIO COASTで開催された。TOTALFATのKuboty(Gt/Cho)が10月に脱退することを受けて、今年は「GO AHEAD TOTALFAT, GOOD BYE Kuboty」をテーマに、TOTALFATがキュレイターを担当。TOTALFATのメンバー自身がUKFCで対バンしたいというバンドを、UKファミリーの枠を飛び越えてオファーしたことで実現した一夜限りのスペシャルなイベントになった。

 開演の少し前、まずTOTALFATが全員ステージに登場して前説がおこなわれた。「Kubotyがいる状態での最後のUKFCです。いろいろなステージに首を突っ込みます。会場で俺らを見つけたら、ハイタッチをかましてください!」と、Shun(Vo/Ba)。TOTALFATが作るイベントならば、みんなで陽気なキャラクターになろうということで、「今日はみんなで!?」という言葉を合図に、「陽キャー!」と叫ぶ開会宣言でイベントは幕を開けた。

まずサブステージとなるFUTURE STAGEに綺麗な電飾をあしらって登場したのは、UKプロジェクト内レーベルDAIZAWA RECORDSから今年デビューしたEASTOKLAB。美しく幻想的なシューゲイザー「In Boredom」からスタートすると、美しいアンサンブルにのせた日置逸人(Vo/Syn/Gt)の恍惚のファルセットで会場を魅了した。「ここはFUTURE STAGEなので、未来に向けた曲を最後にやってお別れしたいと思います」と新曲「Dive」を披露。これからの彼らの活躍が楽しみになるような、未来へ向かって突き抜けていくような楽曲でイベントがスタートした。



メインとなるFRONTIER STAGEのトップバッターthe telephonesは、メンバー全員がアフロをかぶった陽キャ全開のスタイルで登場。石毛輝(Vo/Gt/Syn)が持ち前のハイトーンボイスで「猿のように踊ろうぜ!」と叫ぶと、「Monkey Discooooooo」で一気にフロアを踊らせていく。「Urban Disco」では、岡本伸明(Syn/Cow/Shr)がフロアを縦横無尽に暴れまわり、石毛が「ウィーアー!」「ディスコ」という恒例のコール&レスポンスで湧かせると、終盤はKubotyとBunta(TOTALFAT,Dr/Cho)も参加。過去には一緒のツアーをまわったこともある2組だが、テレフォンズのステージでTOTALFATがコラボするのは今回が初めて。予定とは違う曲を演奏するというKubotyへのドッキリを仕掛けて笑いをとりつつ、ラストは「I Hate DISCOOOOOOO!!!」で、Bunta&松本誠治(Dr)のツインドラムが炸裂する圧巻のステージだった。




 「最低だなんて」を皮切りに、繊細なギターロックに端正なメロディを紡いだのは初出場のスリーピース、the shes gone。「真っ直ぐに目の前のあなたに伝えにきました」という兼丸(Vo/Gt)の誠実な言葉からつないだ、未練が滲むミディアムテンポ「想いあい」から、軽やかに駆け抜けた「緑とレンガ」まで、大切な人を想い、聴き手の日常に寄り添うために投げかける切実な歌がフロアを優しく揺らした。



結成20年を越えるファミリーの長兄=POLYSICSは、ボコーダーを駆使した変声ボーカルとシンセが絡み合う強靭なバンドサウンドで「シーラカンス イズ アンドロイド」でスタート。「Twist and Turn!」では機材トラブルで、ハヤシ(Gt/Vo/Syn/Pro)とフミ(Ba/Syn/Vo)の立ち位置が急遽入れ替わるアクシデントもあったが、「UKFCスペシャル仕様でした!」と、百戦錬磨のライブバンドらしくトラブルも鮮やかに乗り越える。お馴染みの「トイス!」コールを挟み、10月9日にリリースされる新作アルバム『In The Sync』からカオティックな攻撃力を研ぎ澄ませた「Kami-Saba」や「Belong」をいち早く披露すると、ハヤシが口に含んだ水を噴射した「Let's ダバダバ」では、途中で黄色のつなぎとバイザーを着用したShunが乱入。“ダバダバ”が、いつの間にか“PARTY PARTY”に変わったかと思えば、「How are you?」では、Kubotyも参戦。痺れるような速弾きとポリサウンドが絡み合う貴重なコラボレーションだった。




波の音が響きわたり、FUTURE STAGEに心地好いチルタイムを作り上げたSPiCYSOL。KENNY(Vo/Gt)の華やかなボーカルが映えるシーサイドナンバー「Mellow Yellow」、サンバのリズムとPETE(Key/Trumpet/Cho)による生のトランペットが熱い昂揚感を生んだ「Fresh Go」でフロアを穏やかに揺らすと、TOTALFATを呼び込み、SPiCYSOL風のメロウなアレンジで聴かせたのは「Room45」。2組の陽性のヴァイブスが重なる熱演だった。



声を枯らさんばかりの絶唱と爆音に剥き出しの感情をぶつけたtetoは「高層ビルと人工衛星」から体当たりのパフォーマンスを繰り広げた。衝動的な演奏のなか、マイクスタンドをなぎ倒した小池貞利(Vo/Gt)は、「拝啓」ではギターを抱えたままフロアへダイブ。新曲「全肯否定」に人間に対する熱い想いを託すと、MCでは、お酒ばかり飲んで孫の名前も思い出せなくなった祖父だが、tetoのCDを聴かせると、「貞利の歌はいいな」と言ってくれる、名前を思い出してくる、と語りかけた小池。「音楽に人を救える力がないと思ってる。救われるのは、その人が強いから、音楽が救われた気持ちになると思ってるけど、その時、音楽には人を救う力があるなと思いました」と伝えた「光るまち」で命を燃やすような渾身のパフォーマンスですべての力を出し尽くすと、小池はフラフラとした足取りでステージをあとにした。




 愛というかたちのない感情を丁寧に紐解く「名もなき感情」からライブをスタートさせたウソツキ。普段あまり披露されることのない「アンダー・ザ・シー」のカバーで、Shunとのスペシャルなコラボを展開すると、MCでは、竹田昌和(Vo/Gt)が「UKFCで一番の陽キャです」と言いながらも、「陽キャのみなさんが苦手なんですよ(笑)」「僕たちは夜中のひとりのあなたのために音楽をやっています」と言って、新曲バラード「0時2分」を披露。去年よりも一回り進化した姿をFUTURE SUTAGEに刻んだ。



続けて、大きな手拍子に迎えられて登場したBLUE ENCOUNTは、「KICKASS」から、4人のプレイが激しく主張し合う骨太なナンバーでフロアを震撼させた。田邊駿一(Vo/Gt)が「新木場、もっとかかってこいよー!」と挑発的な言葉を投げかけ、さらに「Survivor」と「DAY×DAY」というキャッチーなライブアンセムを容赦なく投下されると、彼らがUKファミリー以外の出演アーティストであることなど関係なく、フロアは熱狂的なムードに包まれていく。ラスト1曲を残して、田邊が「正直に想いを伝えるのが苦手な人がバンドをやってる、特にTOTALFATはそういう先輩だと思うから、伝えたいことは言葉ではなく、音楽で届けたい」と言うと、その出会いに感謝を込めて「THANKS」で終演。どこまでも熱くエネルギッシュなパフォーマンスが鮮烈な印象を残した。




ライブエリアの外で展開している「CHILL GARDEN」では、SPiCYSOLのメンバーによるアコースティックライブも行なわれた。ショートバージョンで披露された「#goodday」や「Honey Flavor」といった楽曲に、虫の鳴き声も重なり合う空間。集まったお客さんはライブハウスの熱狂とは一味違うリラックスしたムードに酔いしれていた。

後半戦の口火を切ったのはTOTALFATと同じく八王子発の次世代メロディックパンクバンドINKYMAPだ。初っ端からKubotyが飛び入りするというサプライズでも湧かせると、「Shine」や「Take The Lead」というポジティブなナンバーの連発にフロアから力強くこぶしがあがる。最後に「仲間の歌です」と紹介した「Still In A Dream」まで、ライブハウスという場所が巻き起こすミラクルな瞬間を信じ続ける真っ直ぐなアクトだった。





 スタートから4時間30分。それまで9組のバンドがそれぞれに熱演を繰り広げてきたイベントは、いよいよ終盤戦に突入! その口火を切ったBIGMAMAは、ベートーヴェンの「交響曲第9番 歓喜の歌」をモチーフにした「No.9」のアンセミックなメロディーで、1曲目からフロアを沸かせると、「MUTOPIA」「最後の一口」「ダイヤモンドリング」とイントロから歓声が上がる人気曲の数々を、言葉は必要ないと言わんばかりにたたみかけるようにつなげ、アンセミックでエモーショナルな盛り上がりを、ぐいぐいと作り上げていった。 そして、ライヴの流れにさらに弾みをつけるように“新木場に革命の合図を!”と金井政人(Vo/Gt)が声を上げると、それに応え、TOTALFATからKubotyが登場。柿沼広也(Gt/Vo)と「ファビュラ・フィビュラ」のハード・ロッキンなリフを鳴らす。続く「CPX」では、そこにShunが加わって、金井の歌に声を重ねる。ひと際、熱が上がったアップテンポな演奏にフロアではモッシュとダイヴが始まっている。柿沼、東出真緒(Violin/Key/Cho)、Kubotyがソロを応酬する光景は、2度と見られないかもしれないという意味で、まさに革命的だ。

Shunがフロアを焚きつけるように“Hi! Hi! Hi!”と声を上げる中、東出がドヴォルザークの「新世界」をモチーフにしたリフを鳴らすと、フロアから“ウォー??”という大歓声が上がる。「荒狂曲"シンセカイ"」。Shunがステージからフロアにダイヴ! 駆け抜けるような演奏に応える観客のダイヴとモッシュは、柿沼とKubotyがギター・バトルを繰り広げる最後まで止まらなかった。
Kubotyを送り出すために隙のないベスト選曲で臨んだBIGMAMAの本気の演奏。まさに圧倒的の一言だった。




 そのBIGMAMAとグッドモーニングアメリカ(以下グドモ)、そしてTOTALFATの3組の中で最も“エモい”ライヴを繰り広げたのがグドモだった。 “UKFC on the Roadに憧れてた。一緒にイベントを作れてうれしい”と語った渡邊幸一(Gt/Cho)をはじめ、この日のグドモのメンバーたちの胸の中には、去来するさまざまな感慨が溢れていたようだ。
 しかし、“喋りたいことが渋滞している。長くなるからやめよう”(渡邊)と、彼らもまたその思いを、“全部音楽に詰め込んだつもりです!”(金廣真悟/Vo, Gt)と胸を張れる渾身の演奏にぶつけていった。もっとも、たなしん(Ba/Cho)だけはKubotyがTOTALFAT以前にやっていたバンド、LOWBROWの曲を流しながらKuboty風のロン毛のカツラを被って客席から登場したり、Kubotyを意識したレスリング・ユニフォームを着たりとKubotyに対する餞の気持ちが、やや暴走していたように思えたが(笑)、それでこそたなしんだ!  それはさておき、この日のグドモはセットリストも特別だったんじゃないか。エモい「YEAH!!!!」やメロディック・パンク風の「言葉にならない」でぐっと盛り上げると、前身バンド、for better, for worseの「A landscape back to us」も披露。そこにはアマチュア時代、ともに切磋琢磨していたTOTALFAT、BIGMAMAに対する思いが込められていたに違いない。




 「未来へのスパイラル」では演奏に加わったJose(TOTALFAT,Vo/Gt)がフロアにダイヴ。クラウド・サーフィンしながら、“おまえらの声を聴かせてほしい!”と訴え、観客にもシンガロングの声を上げさせる。そして、Kubotyに贈る「餞の詩」を、グドモの4人がじっくりと聴かせてからのラストは、アンセミックな「空ばかり見ていた」を、金廣からギターを渡されたKuboty、そして、観客とともに歌い、♪お~お~お~という歌声を会場中に響き渡らせたのだった。

“普通にワンマンやったほうが楽だった(笑)”とTOTALFATのメンバーは幾つものステージに出たことを振り返ったが、もちろん、それはジョーク。多くの仲間たちが自分たちを応援してくれるなら、自分たちも自ら汗をかかなければ、と考えたのだろう。

いよいよ大トリのTOTALFATだ。時間はすでに午後9時を回っている。しかし、平日も平日、まだ週の真ん中であるにもかかわらず、TOTALFATを見ずに帰れるかとフロアは、いまだすし詰め状態。そんな観客にTOTALFATが“最後まで残ってくれてありがとう。ハデにやっちゃいましょう!よろしく!”(Jose)といきなりぶつけたのが、真夏にふさわしいパーティー・ソングの「夏のトカゲ」なんだから盛り上がらないわけがない。





“暴れられんだろ?”とバンドが煽る前にモッシュ・サークルが出現。その周りでは、ジャンプや手拍子、思い思いの乗り方でそれぞれに楽しんでいたが、中盤、祭りのビートに合わせ、“それ!それ!それ!”とタオルを回すと、大きな一体感が生まれた。

そこから“行くぞ!行くぞ!行くぞ!新木場ぶっこわせ!”(Jose)と、昨年リリースした目下の最新アルバム「Conscious+Practice」からTOTALFAT流メロディック・パンクの何たるかを詰め込んだ「Broken Bones」「Phoenix」、そして、「Room45」とつなげ、シンガロングを交えながらきっちり盛り上げたところで、“俺たちのファミリー”(Shun)とBIGMAMAの金井と東出を呼び込み、“一緒に歌おうぜ!”と披露したのが「晴天」だ。Shunと金井のデュエットに加え、Kubotyのギターに東出がヴァイオリンを重ねる、この日だからこそのスペシャルなセッションに観客も大喜び。大きな円陣を組んで、くるくると回る光景は、まさにピースフル。




そんなスペシャル・セッションは、パーティ・アンセムの「PARTY PARTY」でも実現した。BLUE ENCOUNTの田邊駿一と江口雄也(Gt)、the telephonesの長島涼平(Ba/Cho)と岡本伸明を迎え、ShunとJoseがピン・ヴォーカルで歌い、Kubotyと江口がツイン・リードを閃かせた、今回の「PARTY PARTY」。タイトルをコールする観客のシンガロングの声も、いつもより大きかったんじゃないか?




“現在の4人でUKFC on The Roadのステージに立つのは、これで最後。そんな俺たちのために駆けつけてくれた、みんなに感謝”と語ったShunは、“わかった!来年、Kubotyをゲストに呼べばいいんだ。UKFCにはNGがない(笑)”と、本気なのか、ジョークなのかわからない思いつきを口にしながら、“きっと大事なところは一緒にいる”とKubotyに餞の言葉も贈る。

そして、“怖いものは何もない。これからも怖がらないで、一緒に走っていこう。一緒に歌いましょう。俺たちの未来を託そうぜ!”と観客に今の思いを伝えると、本編のラストを「ONE FOR THE DREAMS」で締めくくった。 そして、“やらないわけないじゃん(笑)”(Shun)とアンコールでも三たびスペシャル・セッションが実現した。

 


TOTALFATのメンバーとグドモのメンバーが高校の同級生で、その2年下にBIGAMAMAのメンバーがいたことを語ったShunは、“中大付属高校学閥チームでアンコール”とグドモから金廣、渡邊、ペギ(Dr/Cho)、BIGMAMAから金井、柿沼、東出、安井英人(Ba)を呼んで(その頃、たなしんはなぜか客席に!)、披露したのが「Good Fight & Promise You」なのだが、演奏を任せ、Shun、Jose、Kuboty、Buntaがマイクを持っているという光景は、たぶん2度と見られないんじゃないか。

演奏中、BLUE ENCOUNT、SPiCYSOL、the telephonesのメンバーがステージに乱入。いつの間にかドラムがペギからBIGMAMAのリアド偉武(Dr)に、ベースが安井から、たなしんに変わっている。
“この夏一番でかい声を出して、笑顔で帰りましょう!さあ、胸を張っていくぞ!”(Shun)。仲間たちが見守る中、TOTALFATの4人は最後の最後に「Place to Try」を、観客がシンガロングの声を上げる中、演奏した。この曲を作った時と現在では、バンドの状況はまた違うものの、〈何も怖くなんてないんだ〉と歌うこの「Place to Try」ほど、新たな道を歩き始めた彼らにふさわしい歌はなかった。





 見守っていた仲間たちが次々にステージからダイヴをキメる。この日、ShunはUKFC on the RoadのUKFCの意味を、UK. PROJECTのFamily Conference=家族会議と語ったが、お互いに遠慮が要らない家族の集まりにふさわしい大騒ぎを繰り広げる仲間たちが頼もしく思えたに違いない。それはKubotyと自分らの新たなスタートを盛り上げ、背中を押そうと集まった仲間たち――Shun曰く、ガキの頃から大好きな音楽で戦いながら、切磋琢磨してきた同志の存在の大きさを改めて実感したからに他ならないわけだが、ステージを去る前にShunが大きな声で言った“俺たちがUK. PROJECTだ!”という一言には、この日の感慨が集約されているように感じられたのだ。



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