LIVE REPORT

TOTALFAT "BAND FOR HAPPY Tour 2022" LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by Masaty

 

2022.12.12 @渋谷Spotify 0-WEST
"BAND FOR HAPPY Tour 2022"

 

いつか自分の番が回って来る。そんなふうに信じつづけて、自分を肯定しつづければ、きっと誰かが見つけてくれる。俺達はそれを証明してきた。
Shun(TOTALFAT)

「Joseが“風邪”をひいたおかげで(ライブが延期になって、その後、入場規制が緩和され)観客が増えた(笑)」(Shun)
「(延期せず、予定通りやっていたらキャパの)半分だったでしょ?」(Jose)
結果オーライとは軽々しくは言えないが、そんなふうにTOTALFAT(以下TF)のメンバー達も言っていたように8月4日の振替公演として、12月12日に開催した「BAND FOR HAPPY Tour 2022」のファイナル公演は、いわゆる社会情勢の変化を追い風にTFと、この日の対バンだったハルカミライ、そして2組の熱演に精一杯応えた観客が1つになって、8月の時点ではありえなかった最高の景色を、渋谷Spotify O-WESTに作り上げたのだった。
こんなライブを見たのは、いつ以来だったろう?

「始めようぜ! やるか⁉ やろうぜ!」
橋本学(Vo)が開口一番、スタンディングのフロアを挑発しながら、ハルカミライは「君にしか」「カントリーロード」とアンセミックなパンク・ロック・ナンバーをたたみかけていった。
「俺らを初めて見る人とか、曲をあまり知らない人が多いらしい。八王子というTOTALFATと同じ町でバンドを組みました。最初に“ハルカミライどう?”って感じで、最高の接し方をしてくれたのがTOTALFATでした。ファイナルに呼ばれて、超うれしいです」(橋本)

地元の先輩に胸を借りる風を装いながら、ハルカミライの中に物怖じするという概念はないらしい。轟音の演奏はもちろんのこと、エネルギッシュという言葉ではバンドの向こう意気が伝わらないと思うから、敢えて強めの言葉を使うが、傍若無人、あるいは乱暴狼藉という表現がふさわしい橋本、関大地(Gt, Cho)、須藤俊(Ba, Cho)、小松謙太(Dr. Cho)の4人がステージで暴れまわる向こう見ずなパフォーマンスは、まるでTFに真正面から勝負を挑んでいるようにも見えた。

そんなハルカミライのパフォーマンスを、この日、Shunは「ハルカミライ、ヤバかった。とんでもない後輩がいたもんだ。あんな怪物みたいな後輩がいたら、地元に帰りづらい(笑)。(やっと対バンできると思ってうれしかったけど)あいつら、すぐケガするじゃん(それが心配だった)」と振り返ったが、その激しさが観客の気持ちに火をつけないわけがなかった。
「8月4日にやる予定だったんですけど、今はもう真冬。今日は夏を取り戻しましょう! 今日はやっていいらしいぜ!」
橋本の言葉を合図に「ファイト!!」になだれこむと、関、須藤、小松が重ねる声に合わせ、観客が拳を振りながらシンガロングする。そこから繋げた2ビートのパンク・ロック・ナンバー「俺たちが呼んでいる」で観客が感情のままに思い思いの楽しみ方を始めたとき、筆者は遅ればせながら、この日のライブにおいては厳しいルールで観客を押さえつける事なく、自由なライブの楽しみ方をある程度容認していたことを知ったのだった。

「フルアイビール」「フュージョン」「幸せになろうよ」「Tough to be a Hugh」「QUATTRO YOUTH」。この日を待っていた観客の気持ちを駆り立てるようにバンドはお馴染みの曲をほぼノンストップで繋げていく。もちろん、観客の勢いも止まらない。
「俺達のところに夏が! 灼熱の夏が戻って来たぜ!」(橋本)
想像するに後半戦はパンク・ロック・ナンバーをたたみかけた前半戦から一転、フォーキーな魅力もある曲を観客とシンガロングしながら最後のクライマックスに持って行きたいと考えていたようだが、前半戦、逸る気持ちを抑えきれず、演奏が前のめりになってしまったのか、「世界を終わらせて」「春のテーマ」と繋げたところで、時間がかなり巻いていることに気づき、「10年バンドをやってきても、セットリストがうまく組めません!(笑)」(橋本)と当初はセトリに入っていなかったと思しき「ウルトラマリン」を披露するといううれしいハプニングも。曲が持つ切なさと須藤が加えたファルセットのハーモニーが観客の気持ちをぎゅっと掴む。
「TOTALFATと打ち上げするとシモネタしか話さない。それもいい。ヤンキーの明るい先輩みたい。ふだんは、めっちゃウィ~って感じなんだけど、キレたとき、めっちゃケンカ強いみたいな。イッちゃってるタイプの(笑)。最高です。呼んでくれてありがとう」
橋本なりに言葉を選んで、TFに賛辞および謝辞を贈ってから披露したのは、「ヨーロービル、朝」。ハルカミライというバンドが持つ懐の深さを物語るこのバラードを、橋本は「俺達が育った町、八王子の歌!」と紹介したが、「俺達」が何を指しているかは言うまでもない。地元の先輩、TFとの対バンなのだから、ラスト・ナンバーはこの曲しかなかっただろう。

橋本がファルセットを交え、最後のサビを歌い上げると、バンドの演奏がヒートアップ。すると、橋本は最後の最後にTFの「Place to Try」のサビを歌い上げた。この心憎い演出に観客はもちろん拍手喝采――と書きながら、筆者は拍手だけではなく、喝采と書ける歓びを噛みしめているのだが、観客の手拍子に迎えられたTFは、「やっときたぜファイナル!」「それじゃあいこうか!」とJose(Vo, Gt)とShun(Vo, Ba)が声を上げると、5月に配信リリースしたEP『BAND FOR HAPPY』からいきなり「Steer This Band」「Dirty Party」「Ashtray」をたたみかけ、再び観客の気持ちに火をつける。

「行こうぜ、ライブハウス!」(Shun)
そこからさらに「Summer Frequence」「Good Fight & Promise You」と繋げ、止まらない熱気と興奮で応えるフロアを目の当たりにしたJoseとShunは、「テンションがハンパじゃない!」「バイブスがすごいです。すげえ楽しいです!」と観客のガッツを称える。
そして、タフな印象もあるメロディック・ハードコア・ナンバー「ALL AGES (Worth a Life)」を挟んで、「このまま踊れ!」(Shun)と「Welcome to Our Neighborhood」「World of Glory」「PARTY PARTY」の3連打でフロアを揺らしたこのブロックを締めくくったのがオールディーズ風のスロー・ナンバー「白煙」だ。Bunta(Dr, Cho)も声を重ねたサビのハーモニー、Joseのギター・ソロ、言葉をたたみかけるShunの歌、そしてBuntaの激しいドラムの連打――エモーショナルな演奏に、それまでじっと聴きいっていた観客の拳が上がる。

「コロナ禍の中、俺らもいろいろ曲を作って、出してきたんだけど、こんなクソみたいな流れの世の中が終わって、俺達が信じる世界がまた回り出したらいいなと思って書いた曲があるんだけど、もしかしたらファイナルが延びたせいで、この曲を歌う意味は増したんじゃないかな」
その「白煙」を演奏する前、Shunは曲に込めた思いを、そんなふうに語ったのだが、曲を書いた時は、希望に過ぎなかった《今日がその始まりの日になれるはずだろう Today is the day. さあ歩き出そう》という歌詞はこの日、にわかに現実のものとなり始めた。その実感を噛みしめながら一音一音を鳴らしているのだから、演奏がエモーショナルになるのも当然だろう。
「長い長いツアーを回っている間に独立を発表したことも含め、コロナ禍の中、俺らも思うことがあって、選択があって、決めることがあって、自分達の道を歩き出して、それについてきてくれるみんながいて。だけど、1個も間違ったと思ったことはなかったと思うし、俺達が今日ここに立っていることも、みんなが来てくれていることも、今この瞬間の全部が間違ってないと思うんで、このまま思いっきり楽しんでいきましょう!」(Shun)
懐かしい「Livin’ for The Future」から始まった後半戦も大きなグルーブでバンドのスケールを見せつけた「宴の合図」、「みんなの声をもっと聞きたい!」というShunのリクエストに応え、観客がシンガロングした「晴天」、お馴染みのタオル回しで、会場の一体感をさらに高めた「夏のトカゲ」とハイライトと言える光景を幾つも作り出していった。

「いつか自分の番が回って来る。俺達はバンドを始めた時からずっとそう信じているし、実際、信じつづけていたら、あのバンドとライブができた、フェスに出られた、でっかいワンマンができたというふうに自分達に番が回って来た。そんなふうに信じつづけて、自分を肯定しつづければ、きっと誰かが見つけてくれる。俺達はそれを証明してきた。テンションが下がるものばかり見せられて嫌になることもあるかもしれないけど、信じて欲しい。いつか自分の出番が来る。いつか自分の夢が叶うって。いつかおまえらの日が来るから、その日が最高になるように俺達もハルカミライも全身全霊で音楽を鳴らし続けていきます!」
Shunによる改めての宣言とともに「ONE FOR THE DREAMS」を観客と歌って、本編を締めくくると、「ライブに来る人が得しなきゃ」(Shun)と情報解禁の午後10時までツイートしないようにと念押しした上で来年1月に開催する「PUNISHER’S NIGHT 2023」の対バンをフライングで発表。会場を沸かせながら、バンドが歩みを止めないことをアピールすると、アンコールを求める観客に応え、「DA NA NA」「Show Me Your Courage」「Place to Try」を披露したのだった。
「でっかい声を出してください。どんどんアガッていこうぜ。声を出すことを許された俺達にできることを精一杯やって帰ろうぜ!」(Shun)
「Place to Try」では観客によるサビのシンガロングに対して、コロナ禍以降、この曲を演奏するたび「心の中で歌ってくれ!」と言い続けてきたShunが快哉を叫んだ。

「やっと聞けたぜ!」
それはコロナ禍以降も歩みを止めず、逆境に歯を食いしばりながら、さまざまな制約がある中、手探りで活路を見出してきたこの約3年の活動が報われた瞬間だった。
「自分を肯定しつづければ、いつか自分の出番が来る。いつか自分の夢が叶う」とShunは言ったが、それが誰かを励ます時に言う決まり文句でも何でもなく事実であることを、この日、TFはまた証明してみせた。この日のライブが最高と言えるものになったのは、決してシンガロングなどのコロナ前のライブの楽しみ方が解禁されたからだけではないということを僕らは記憶しておくべきだろう。
「おかえり、ライブハウスへ!」(Jose)
もちろん、コロナ禍はまだ終息したわけじゃない。しかし、この日、「白煙」で歌ったようにTFはこの日、僕らが見た最高の景色をここからまたさらに繋げていってくれるに違いない。

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