INTERVIEW

locofrank "Beyond the epilogue"&"Time Files" INTERVIEW!!

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Yasumasa Handa

 

 

 

9年ぶりのシングル

ーー今作は「TIME AFTER TIME / HAPPY」(2010年5月リリース)以来9年ぶりのシングルですが、今回シングルという形でリリースした理由を教えてください。

Tatsuya(Dr,Cho):先にDVD(「Time Files」)を出すことが決まってて。「DVDと一緒に何か出したいなあ」という話から「全然出してへんし、シングル出す?」と。

木下正行(Vo, B):前回シングル出したのっていつやったっけ? 2010年か。

森勇介(G, Vo):「TIME AFTER TIME」やね。しかもカバー曲って。どんなメジャーバンドやねん(笑)。

木下:当時、TOSHI-LOWさん(BRAHMAN)にめっちゃ怒られたな(笑)。

森:「気が狂ったのか、お前たち」って(笑)。

ーー(笑)。シングルとアルバムの制作は、どういうところが違いますか?

木下:アルバムだったら十何曲を使ってストーリーや起承転結を作り上げられるんですけど、シングルは3曲で完結させなくちゃいけないので、そこが難しいですよね。今回はひさびさのシングルだったこともあって緊張しましたね。結果、いい具合にまとまったかなとは思います。

ーー今作はシングルのタイトルでもある「Beyond the epilogue」(終幕を超えて)の通り、3曲とも20周年イヤーを終えても走り続けるlocofrankだからこそ歌える景色や感情がつづられているという印象を受けました。

木下:そうですね。長いこと活動させてもらって、いい意味での振り切り方がわかったというか。今までは気負って気負って突っ走るみたいなところがあったと思うんですけど、ある時期から振り返る余裕ができて。突っ走るという俺らの良さも持ちつつ、肩の力を抜いたラフさみたいなところも出せたらと思って作ったので、それが3曲に共通して出たのかもしれないです。

ーーコンセプチュアルに作ったわけではなく、自然とこうなったんですね。

木下:はい。歌詞は俺が書いてるんですけど、最近のロコはライブも自然とそういう感じになっているんじゃないかなと。あんまり硬くならずに、いい意味でのラフさを出す。それが結果的に楽しむってことにつながればいいなと思いながら。

ーー「ある時期から振り返る余裕ができた」ということですが、そのきっかけは何かあったんですか?

木下:レーベルを3人で回すようになって、演者と裏方の両方を試行錯誤しながらやっていく中で、考えなしでは前に進まれへんかったというか。

Tatsuya:ライブ1つにしても「これでほんまにええのかな?」とか「これってもしかして俺らっぽくないんじゃないかな?」とか思うことが増えたかな。

森:結局のところ、僕らは行き詰まったんですよね。バンドが好きでがむしゃらにやってきて、でも行き詰まっちゃって。「じゃあどうするんだ?」と考えたときに、ただ突っ走るという今までの価値観がダメだとは思わないけど、ここからは1つずつ考えて、もっともっと自分たちが伸びていくしかないんだろうなという感覚に変わったんだと思う。

木下:自分たちのできることをやってきたら20年経ったけど、改めて20年やれてることってすげーよなと思って。ありがたいことにメンバーも変わってないし。ただ、そのぶんこの3人、ロコでできることはだいたいやったきた。じゃああとは「どうやったらもっと楽しめるやろ?」「どうやったらもっといろんなやつらと出会えるだろう?」ということを実現するために、何をするべきかを考えるようになった感じやな。
 

楽曲についてあまり語らないのでイキリました!

ーーではここからは収録曲について1曲ずつ聞かせてください。

木下:(森に向かって)1曲目、どうですか?

森:この曲はひさしぶりにリフから作ったんですよ。いつもはまずメロディを作って、次にイントロを作って……って進めることが多いんですけど、今回は入れてみたいなと思ったリフからイントロと間奏を作って、それに合うメロディを探して……って。こうやって作ったのはごっつひさしぶり。何年ぶり……もしかしたら何十年ぶりとかかもしれないです。

木下:「何十年ぶり」ってお前、バンド20年しかやってへんやろ。芸歴40年の大物作曲家みたいやないか(笑)。

森:ああ、そうか、すみません! 俺、楽曲について語る機会がほぼないのでイキリました!(笑)

全員:あははは!(笑)

森:いつもとは真逆の作り方だったので新鮮でしたね。「このリフに合うメロディってどんなんかな」と探していったので時間はかかりましたけど、ひさびさだったので楽しかったです。

木下:ギタリストが作った曲って感じがする。こんなわけわからんコード、俺は絶対出てけえへんもん(笑)。

森:わけわからんコードは使ってないでしょ!(笑)

木下:ちょっとオシャレにしよるんですよねえ。俺にはない引き出しやからすごいなって思う。悔しいと思えるくらいええ曲やなと。

ーーマイナー調の楽曲がリード曲になるのもひさしぶりな感じがしますね。

木下:ああ、HATANOさん(HAWAIIAN6)もそう言ってたな。

Tatsuya:昔はよくやってたんですけどね。とはいえ別に狙ったわけではなくて、単純に出来上がった3曲の中からリード曲について話し合って「Beyond the epilogue」になっただけで。それがたまたまマイナー調やったっていう。

森:僕が根暗なだけです(笑)。

木下:根暗っていうか、なんか色っぽいねんな。
 

「START」のアンサーソング

ーー2曲目「Don't Mind A Scratch」はどうですか?

森:「正行、来たねえ」って感じですね。

ーーこの曲は木下さんが作曲されたんですね。

木下:はい。ちょっと明るい曲が作りたくて。でも明るい中にも泥臭さが欲しかったんで、「かすり程度は気にしない」って意味のタイトルで、そういう内容の歌詞にしました。ありがたいことに年数を重ねてきて、そのぶん支えてくれる仲間も多いんですよ。でも逆におらんくなっていくやつも多い。だからこそ今、一緒に酔っ払ったりふざけたりする仲間の存在のありがたみをしみじみと感じてて。そういう仲間のことを思いながら「つらいこともあるやろうし、うまくいけへんこともあるやろうけど、かすり傷程度やったら気にしない、その精神でいたいよな」という思いを歌詞にしました。

ーー明るい曲調に、ただ明るい歌詞を乗せるわけじゃないところにlocofrank節を感じますね。

木下:根暗なんでしょうねえ(笑)。

ーーいやいや(笑)。最後に3曲目の「STILL」について聞かせてください。

木下:これはちょっと狙ったんです。

ーーと言うと?

木下:去年「Stories TOUR」が終わったときに、「START」(2003年10月リリースの1stミニアルバム「Starting AGE」収録曲)のアンサーソングのような曲を作ろうと思いついて。「START」を出した頃ってバンドが20年も続くと思ってなかった。だからといって解散するとも思ってなかったけど。どこまで続くかということすら考えてなかった。でも結果、ここまで続けさせてもろうて。続けてる限り、20年もゴールじゃなくてまだ過程なわけで。あの時“始まった”僕らは“まだ”やれてる。どこがゴールかわかれへんけど、また何年後かに「あの時ああ言ってたけどまだやれてる」って言うんかなと思ったら、夢あるなと。それで「START」のアンサーソングを作ろうと思った。だから歌詞も「START」からピックアップして、そのときと比べて今はどうかという内容にしてます。

森:へえ。

木下:今、知ったやろ?

森:うん。

ーーえ、そうなんですか? 今のお話聞いて、お二人はどう思いました?

森・Tatsuya:へええええええ!(笑)
 

言わんでええことまで言ってるし、見せんでええとこまで見せてる

ーーDVD「Time Files」についても聞かせてください。DVDには1998年の結成当時から今年までのさまざまな映像が収録されています。過去の映像を改めて観ていかがでした?

Tatsuya:痩せてんなーって(笑)。

全員:あはは(笑)。

森:「がむしゃらやったなあ」と思いますね。

木下:2006、2007年あたりの映像観ると、一切笑ってないもんな。

Tatsuya:実際、あのとき余裕なかったですしね。

森:今も余裕あるわけじゃないですけどね。

ーーライブ映像のほかに、3人それぞれのソロインタビューも入っていたと思いますが、ご覧になられました?

木下:観ました、観ました。気になるのはTatsuyaがタバコ吸う音ですね、「スポーン」って。それが気になって全然話が入ってこうへん(笑)。

Tatsuya:癖なんですよ(笑)。

木下:それを気にして観ていただけたら(笑)。話全然入ってこないですけど(笑)。

ーーあはは(笑)。インタビューでは3人ともかなり赤裸々に語っていますよね。

木下:実際は俺も、たぶん勇介もTatsuyaももっとしゃべってるんですよね。言わんでええことまで言ってるし、見せんでええとこまで見せてる。ほんまにアカンところだけ切ってもらってて。

ーー表に出せるギリギリまで収録されているということですね。

木下:そう。だからこそ作品として出す意味もあると思うし。20年とは言わずとも、10年以上俺らのこと見てくれてる人は、これまでの間に俺らの異変に気付いたこともあったやろうし、なんなら1回離れた人もおると思う。そういう人もこのDVDを観て「あのときはもしかしてこういう時期やったんかな」とか、時系列を一緒に追ってもらえたらなと思います。

ーー最近locofrankを知った人にとっても、locofrankの20年がわかりやすくて。

森:離れていくでしょうね、「こんなバンドあかんー」って(笑)。
 

地獄!?の相撲茶屋

ーーこのDVDを観てから曲を聴くとまた印象が変わるかもしれないですよね。そのくらい見応えのある映像作品だと思いました。

Tatsuya:ただライブの映像がちょこちょこあって、間にインタビューが入ってるんじゃなくて、ちゃんと起承転結のある1つの作品になったんじゃないかなと。その点ですごく満足してます。

森:相撲茶屋(結成当初のバンド名)の映像も入ってますからね。そこも観ていただいて。

ーー当時の相撲茶屋もですし、「Stories TOUR」でのひさしぶりの相撲茶屋の映像も入っていますよね。ひさしぶりにやった相撲茶屋はどうでした?

森:地獄ですよ!(笑)

木下:その質問は愚問です(笑)。

森:やるって決めたことやから一生懸命やりましたけど、3人とも心の中では「キツイなー」って思ってました。それなのにゴウさん(IKKI NOT DEADスタッフ)が「WANIMAの前座狙えるな」って言いましたからね(笑)。

Tatsuya:あと相撲茶屋を音源化したいってこともずっと言ってます(笑)。

森:でも絶対にIKKIからは出してくれないんでしょ(笑)。

全員:あははは(笑)。

森:それにしても昔のMCとかも収録されてて。本当にヤバいですよね、今回のDVDは。

木下:あんな映像、ようありましたね。

Tatsuya:恥ずかしかったけど、これはこれで俺らの原点やから、観てそれぞれ消化してもらえればなと。

森:相撲茶屋の映像を出すの、初めてだもんね。

Tatsuya:曲もデモテープくらいやし……。

森:だからまさか作品になるなんて思わなかったですよ。

Tatsuya:今回「JUMPING」入ってるんでしたっけ?

スタッフ:え、あれ、曲名「JUMPING」なの?「JUMP」にしちゃった……(笑)。

木下・森・Tatsuya:じゃあもう「JUMP」にしましょう!

木下:……「JUMP」て!(笑)。

Tatsuya:そんなタイトル付けてたやつが、よう「Beyond the epilogue」とか言えんなー(笑)。

森:そういった意味では、語彙力もアップしたということで!
 

CDを聴いてツアーに

ーーリリース後にはツアーが始まります。シングルのツアーは、アルバムのツアーとは考え方や気持ちの面で違いはありますか?

木下:アルバムのツアーだと新曲がセットリストの大半を埋めてしまうんだけど、今回は3曲なので、アルバムツアーよりは縮こまらずにできるんやろうなと。

森:だからといって、いつものライブに3曲入るだけにならないようにしないといけないから、それはそれで迷いますよね。

Tatsuya:新曲でお客さんの気持ちがブワッて上がるのか上がらへんのかって、ツアー1発目のライブをやるまでわからないじゃないですか。だから旧譜との温度差をどうやったらなくせるのかを、ツアー前に考えるのがすごく難しくて。「どこに入れたらいいんやろ?」「どういう聴かせ方をしたらええんやろ?」って考えて、今すでにゲロ吐きそうです(笑)。

ーーお客さんからしたら馴染みのある曲の中に、するっと新曲が入ってくるわけですもんね。

木下:だから声を大にして言いたいですけど「ツアーに来るんやったらCD聴いて来いよ!」と。もちろんYouTubeで1曲……今回やったら「Beyond the epilogue」のPVを観ていただくのもありがたいですし、「(YouTubeに)1曲だけしかないんや」っていう気持ちもわからんでもないけど、せっかくツアーに来てくれるんであれば、今回アルバムよりは軽い、3曲やから! 最悪借りてもええわ。借りてもええから、3曲くらい聴いて来いよ、と。これは絶対に書いてください!! ほんまに! ライブを楽しんでもらいたいから。

森:本当にそうだね。

Tatsuya:フェスとかイベントやったら別にいいっすよ。でもリリースツアーだから。

木下:そう。リリースのツアーやん。3曲くらいのボリュームやん。マジで聴いて来てほしい。こっちはその3曲を含めてどういう1日にしようかって考えてるから。

Tatsuya:別に全部の曲を好きになれとは言わない。アメリカだと「このバンドは好きだけど、この曲は嫌い」っていう意味で、ライブ中にファンが中指突き立てることとかあるらしくて。それくらいでいいと思うんですよ。でも中指突き立てられるのは、ちゃんと曲を聴いて来てるからで。

木下:ただ、「Beyond the epilogue」のイントロが鳴った瞬間に中指立てられたら怒るけどな(笑)。全バンドがそうだと思うんですけど、CD出して終わりじゃなくて、ツアーを回っていく間に曲を育ててもらっているという感覚なんですよね。俺らの「START」なんてまさにそうやし。だから育てるためにも、まずはその地点に立ってほしいねん。3曲とも2分半くらいでしょ?

Tatsuya:トータルタイム、7分1秒でしたっけ?

森:だから7分だけお時間いただいて。カップラーメン作って、3分待って4分くらい食いながら聴いてもらって。

Tatsuya:食い終わる頃には聴き終わるから。

木下:これ1枚1200円と、カップラーメンと……。

森:合計で1500円くらいですかね。7分と、1500円いただければ!



“Beyond the epilogue”
1. Beyond the epilogue
2. Don't Mind A Scratch
3. STILL
IKKI-1022/¥1,200+tax

“Time Files”
IKKI-2004/¥4,000+tax



>>locofrank OFFICIAL HP