LIVE REPORT

04 Limited Sazabys "YON EXPO" LIVE REPORT!!

Report by 小林千絵
Photo byヤオタケシ

 

2019.9.29
04 Limited Sazabys “YON EXPO”
@さいたまスーパーアリーナ


「開けたときのワクワク感を大事にしたい」という思いから最新シングル「SEED」を“缶”でリリースした04 Limited Sazabys。バンドにとって最大規模でのワンマンライブとなる「YON EXPO」も、さいたまスーパーアリーナという大きな会場で彼らがどんなことをするのだろうと、やはりワクワクさせてくれた。




当日は朝の10:00から会場付近でまず「YON PAVILION」がオープンした。「YON PAVILION」ではアミューズメントエリアや写真展、カラオケブースなどが用意され、さながらフェスのような空間が広がる。写真館でいえば、展示されたのはよくあるこれまでのライブ写真やオフショットというものではなく、この展示のために新たに撮り下ろされた写真。たった1日のワンマンライブにも手を抜かない彼らのこだわりが隅々まで光る。





もちろん彼らはライブでもワクワクさせてくれる。オープニングは、バッティング練習をする者(KOUHEI[Dr, Cho])、ラーメン屋で修行する者(RYU-TA[G, Cho])、キャバクラで羽を伸ばす者(GEN[B, Vo])、自宅で愛犬と過ごす者(HIROKAZ[G])と、各々の時間を過ごしていた4人がスーツに身を包み、さいたまスーパーアリーナへ向かうというハリウッド映画さながらの映像が盛り上げる。笑いと共に期待を煽ったあと会場が暗転すると、場内に鋭いギターリフが響き渡り、2013年5月に発売された2ndミニアルバム「sonor」収録曲「Now here, No where」でライブの幕が開けられた。ステージを覆う紗幕には「自分の弱さ」「自分の怖さ」といった、当時GENやバンドを取り巻いていた苦悩をつづった歌詞が映し出される。苦悩を歌った初期の楽曲を大舞台の1曲目に選んだ理由は何だろうかと考えていたのだが、紗幕に映し出された「膨らんだ世界には 今、無数の未来」という歌詞で納得した。彼らは「無数の未来」を信じ、もがいて、潜って、ここまでやってきたのだ。そんなたどり着いた1つの“未来”の始まりを告げるように、紗幕が下がるとスーツに身を包んだ4人の晴れやかな姿が現れた。




GENは最初のMCで「ご来場の皆様、ありがとうございます」とかしこまった挨拶をしたのち、「お前らよく来たな、ありがとう!」と言い換える。この一言で一気にステージとフロアの距離を縮めて、アリーナをライブハウスにしてしまった4人は、序盤に最新シングルの収録曲「Cycle」「Montage」や「message」「My HERO」と比較的新しい楽曲を続けて、現在のモードを見せつける。またスモークが立ち上ったり、火柱が上がったり、レーザーが会場を飛び交ったりと、ステージングはここぞとばかりにド派手で、さいたまスーパーアリーナという大きな会場を彼らなりに自由に楽しんでいる様子がうかがえる。




もうすっかり大きな会場をライブハウスにする方法も、大きな会場ならではの遊び方も知った04 Limited Sazabys。さいたまスーパーアリーナでも、臆することなく熱量いっぱいのパンキッシュなライブで、クラウドサーファーやサークルモッシュを発生させてしまう。一方で“特別感”も忘れない彼らは、この日アコースティック編成でのライブも披露。GENがハンドマイク、HIROKAZがアコースティックギター、RYU-TAがマラカス、KOUHEIがタンバリンを手に、「labyrinth」を演奏しながら会場内を練り歩いて会場中央に用意されたセンターステージへ進む。またセンターステージで椅子にラフに腰掛け、「hello」をゆったりと演奏し始めると、観客が自然とスマートフォンのライトを点灯して彩るという印象的なひと幕も。その光景に4人は「うれしいね」と頬を緩ませていたが、勢いや音圧に任せることなく、ミニマムな音と歌声だけで2万人を魅了できるバンドであることを証明した場面でもある。




彼らのワンマンライブではおなじみの茶番も健在。今回はRYU-TAに激似(?!)の「麺や おがた」店主によるラーメンマラソンに密着した映像を何度も挟むという大作で会場を和ませた。茶番でゆるんだ空気を引き締めるかのように、後半には「Utopia」「Alien」とエッジィな楽曲が続く。メジャーデビュー以降、彼らがモノにしたこの手の楽曲は、今や“フォーリミ節”の1つとなり、何万人ものファンを大暴れさせている。ライブで楽器を持ち替えるという空白の時間が生まれるのが嫌で避けていたというドロップチューニングの楽曲も、KOUHEIが手数の多いドラムソロで魅了している間にすっかり持ち替えられるようになっている。彼らは自らの努力でライブや楽曲の制約を、1つひとつ無くしていけるたくましさも持ち合わせているのだ。




終盤、「milk」ではGENが珍しく歌詞を飛ばしてしまった。彼は「好きな歌詞なのに」と悔しがりながらも「まあご愛嬌ってことで」と笑い、「みんなの前では恥ずかしいところも弱いところも見せられる」と弁解。すると「恥ずかしいところが見せられるという話で言うと……」と切り出し、今回の「YON EXPO」ではチケットがソールドアウトしなかったことを告白した。チケットの残り枚数からすると「ソールドアウト」と打ち出してもいいほどだったそうなのだが、スタッフから「ソールドアウトとアナウンスしますか?」と尋ねられた際「嘘はつきたくない。見栄を張りたくない」と断ったという。そんな状況を彼は「『YON EXPO』をもう1回やらなきゃいけない理由ができた」と話した。アリーナ規模の会場でもライブを行い、主催フェスも毎年大盛況の04 Limited Sazabys。最近のインタビューでは実際に「特に目指している場所はない」と話すほどだ。もちろん彼らは今後も「チケットを売り切る」を目標に掲げることはないだろうが、このひと匙の悔しさをバネに、きっと売れ残りチケットの枚数なんかよりももっともっと大きなものを満たす何かをやってくれるんじゃないだろうか。

GENが、「思い出した!」と飛ばしてしまった「milk」の歌詞を愛おしそうに歌ってから始まったアンコール。スーツ姿で登場したオープニングから比べ物にならないくらい、すっかりリラックスした様子の4人はうれしそうに会場をじっくり見渡す。カメラに向かっておどけてみせたりしながら、「Squall」「Remember」の2曲を終えたあと、エンドロールが流れ、ライブは終了……かと思いきや「麺や おがた」のアザーストーリーのような茶番が始まり「これじゃ終われない!」とメンバーは再びステージへ。最後にワンマンライブでしかやらないという「Give me」を演奏するという彼ららしいフィナーレで初めての「YON EXPO」の幕を下ろした。

「幸せすぎて今後の目標がない」と話す04 Limited Sazabysだが、昨年“耕す”というタイトルを冠したアルバムを発表し、今年“種”と題したシングルを缶でリリースしている。この日のステージでは次のツアーと、「YON FES」の開催をアナウンスした。彼らが今後、どのような芽を出し、花を咲かせるのか。まだまだ彼らにはワクワクさせられそうだ。






[SET LIST]
01. Now here, No where
02. Warp
03. Kitchen
04. Cycle
05. message
06. My HERO
07. fiction
08. Montage
09. Chicken race
10. midnight cruising
11. Galapagos
12. me?
13. swim
14. labyrinth
15. hello
16. Shine
17. Utopia
18. Alien
19. discord
20. Horizon
21. Puzzle
22. Letter
23. milk
24. Feel
25. monolith

En01. Squall
En02. Remember

En03. Give me




>>04 Limited Sazabys OFFICIAL HP