LIVE REPORT

BACK LIFT & KUZIRA / 2YOU MAGAZINE pre "IF I FELL" LIVE REPORT!!

Report by 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
Photo by Photo by JON…

 

2019.10.16
BACK LIFT & KUZIRA 2YOU MAGAZINE presents “IF I FELL”
@名古屋 栄 R.A.D


名古屋のメロディックパンクシーンを代表するBACK LIFT、そしてシーンに新たな風を吹かせまくっている岐阜を担うホープKUZIRAが10月16日、名古屋の音楽フリーマガジン2YOU MAGAZINEの呼びかけで今年10周年を迎えた名古屋は栄のライブハウスR.A.Dを祝うツーマンライブを行った。R.A.Dを運営するRAD CREATIONはインディーズレーベル「TRUST RECORDS」を主宰しており、現在同レーベルに所属中のKUZIRAとメジャーデビューを機にレーベルを卒業したBACK LIFTが対峙するという、R.A.Dの10周年に相応しいツーマンとなった。

超満員のライブハウスに文字通りギュウギュウ詰めとなったキッズ達。先攻のKUZIRAがステージに現れるとその時点でダイブやサーフが起きる。KUZIRAの名を一気に全国に知らしめたデビューアルバム『Deep Down』のオープニングを飾る「In the Deep」でライブはスタート。少年っぽさを孕んだ末武竜之介(Vo/Gt)のハイトーンと、芯の通った熊野和也(Ba/Vo)のミドルボイスの絶妙なバランス感で成り立つツインボーカルと、ふち(Dr)の疾走するツービートで、体感時間にして20秒もないくらいのスピード感を持つ「In the Deep」の猛攻をオープニングから全力立ちこぎでぶっ放すKUZIRAに、R.A.Dがあっという間に地獄絵図に。間髪容れずに「Detour」「Ambivalent Attitude」「Muggy」「The Weak」とまるで『Deep Down』再現ライブかのようにアルバム収録順に叩きつける3人。「Detour」では「アルプス一万尺」をオマージュしたベースラインに合わせ満員のR.A.Dをスカダンスさせ、メロディックパンクの持つファンな部分を「Ambivalent Attitude」で魅せると「Muggy」「The Weak」では双璧をなすエモーショナルな部分もしっかりと提示する。どの曲もブラッシュアップされまくっていて、『Deep Down』をリリースした後に80本を超すツアーを乗り切ったことがライブからビシビシ伝わる。



イントロの印象的なベースライン、裏打ちスカパートからのツービート、ツインボーカルといったメロディックパンクの持つ要素を全部乗せした初期の名曲「Daily Daily」に湧き上る会場。ここR.A.Dで何度も何度も演奏されてきたこの曲がKUZIRAと共に成長してきたことを、R.A.D10周年のバックドロップを掲げ歌われていることに深く感じる。

西海岸テイストたっぷりの「Backward」は過去の自分と対峙することで今の自分を肯定する今のKUZIRAを象徴したナンバーだ。顔をくちゃくちゃにさせて泣きながらダイブするキッズが視界に入り感慨深くなってしまう。きっと彼には彼のKUZIRAやR.A.Dとの物語があるんだろう。ライブハウスって、バンドって、そういう人達の気持ちの集合体が元気玉のように力となる存在なのかもしれない。「Wing It」から「Blue」のお決まりの繋ぎから更に「Clown」へと繋がっていく流れも秀逸だった。『Pay The Piper』にて「Clown」が再録されたことによって過去と今が交差するこの感じ。自然と拳に力が入る。




BACK LIFTとR.A.Dに対するリスペクトを言葉ではなくライブを通してぶつけるKUZIRA。「Minority」「BOX」と初期衝動が詰め込まれた曲を地元の先輩であるBACK LIFTとのツーマンで所属レーベル元のR.A.Dで聴くと、この数年でKUZIRAが築き上げてきたことがしっかりと血となり肉となり身を結んできたことを実感する。袖で見守るBACK LIFTの面々も熱い視線を送っている。こういう光景をライブハウスで今まで何度も見てきたし、BACK LIFTがこの視線を受けている姿も何度も見てきた。ライブハウスで起きることにロマンを感じてしまっているからこそいつまでもここに来てしまう。ライブ後半戦、「The Otherside」「Missed My Stop」「Castaway」と新旧織り交ぜたラインナップから目下最新曲「A Sign of Autumn」、代表曲「Snatch Away」とライブが進行する中でストーリー性が増していくのはロングセットでのライブの面白さだ。そしてラストは「Boy Meets Youoth」。KUZIRAの結成時よりずっと大事にしてきたこの曲を最後の最後で演奏するという心意気。これがKUZIRAだ。R.A.Dの10周年を祝うバトンをBACK LIFTに繋ぎステージを後にするKUZIRAに、会場に賞賛の歓声が響く。




後輩からの体当たりを全身で受け止めステージに立ったのは後攻BACK LIFT。R.A.DでBACK LIFTのライブを観るのはこれで何回目だろう。10年前、R.A.Dがオープンした当初は月に何回もここでライブをしている姿を観たし、TRUST RECORDS在籍時はホームとして04Limited SazabysやTHREE LIGHTS DOWN KINGSらと切磋琢磨してきた場所でもあるし、ステップアップを重ねる中で生まれ変わってた新たな距離感であったり、R.A.Dの10周年を思うとき、必ず頭に浮かぶのはBACK LIFTの存在だ。そんな彼らがこの日の1曲目に選んだのが「PEACEFUL SONG」だ。R.A.D設立当時、この曲をライブでやらなかったことはないんじゃないか。この小さなステージの上から投げかけていた「PEACEFUL SONG」はその曲のアティチュード含め何も変わらないままひたすら強くなっていた。イントロの畳みかけるような疾走感がBACK LIFTとR.A.Dの10年間を頭の中で物凄いスピードで再生させる「Don’t worry be alright」で「あなたには何度も救われた」と叫ぶKICHIKU(Vo/Ba)。それはそのままR.A.Dに歌っているようにも聴こえた。




ここからはBACK LIFTのメロディックパンクショーの炸裂。高速ナンバー「Screaming」でR.A.Dをモッシュとダイブまみれにしたあと、『Ten Years Later』より「OUR BIG ROCK」「You will be happy」とTRUST RECORDS在籍時の曲で感情に訴えかける。BACK LIFT節ともいえるコーラスの掛け合いが気持ち良い「HUNGRY」のポップさも痛快だ。彼らの原点に90年代後半のメロディックパンクやスカパンクが根付いているのは「HUNGRY」をライブで観るたびにいつも感じる。この流れで「DON'T TRUST FAKE」がくることはアルバム『Heartful world』を意識してのことなのか分からないが観ている側としてはこういう展開は感情を揺さぶられてしまう。そこから「Breakthrough」のような活動の幅を広げた先で鳴らされる何度目かの初期衝動が駄々洩れの楽曲が続くと、その衝動に突き動かされたダイバーが続出。「New Old」ではそのタイトル通り、古き良きロックンロール要素をスカパンクに持ち寄った最高のツイスト・ミーツ・メロディックパンクを披露。まるでチャック・ベリーのようにギターを弾くYU-PON(Gt/Cho)の楽しそうな表情は見ているだけで嬉しくなる。音楽って本当に最高だ。




BACK LIFTの代表曲、代名詞ともいえる「This is myself」でKICHIKUは「生きるってことは辛くて怖くて迷いも人生のひとつになってそれも含めてここに残していこうよ」と歌っている。この曲がリリースされたYU-PON加入当初、日本語やポエトリーリーディングの導入もあり「迷走」と言われることも少なくなかったと以前KICHIKUは話してくれた。でも3人は自分達のスタイルを更新し続けることでBACK LIFTのオリジナルを確立したと思っている。あの日あの時R.A.Dで自信と不安の入り混じった表情で歌い始めた「This is myself」が、文字通り彼ら自身の個性となってとんでもない経験値を積んで2019年のR.A.Dで鳴らされている目の前の光景が溜らなく嬉しかった。バンドの経験値がそのまま楽曲になったような「Because of you」の破壊力も凄まじかった。イントロのHEAVIN(Dr/Cho)のタムから一気に疾走するこの曲にR.A.D全体が揺れまくる。この曲には初期の名曲「LOOK UP TOGETHER」と同じフレーズがそのまま引用されていて、R.A.DとBACK LIFTが辿ってきたものがライブハウスを駆け巡るように鳴り響くことに目頭が熱くなる。イントロのYU-PONのオクターブがそのまま感情を表現する「Hate」で吐き出したバンドの意思、『FOR YOU,FOR US』の頃から歌い続けてきた「SAVE YOU」、そして初の全国流通作のタイトルでもあった「THE MEMORY MAKES ME SMILE」と、彼らの歴史を辿った展開はライブのエンディングを飾った「LOOK UP TOGETHER」「LIFTING ME UP」「GO OVER」で大爆発することに。



彼らが名古屋から全国に活動を広げる前夜、ここR.A.DはBACK LIFTにとってまさに家だった。その頃の彼らがここで書いてきた曲をBACK LIFTがずっと歌い続けてきたことを、R.A.DにもオーディエンスにもKUZIRAにも全身で伝える気迫がメンバー全員から放出されまくっていた。その姿をKUZIRAがどう受け取ったか。そしてここからどう自分達の物語を作り上げていくか。BACK LIFTのライブからきっと沢山のことを受け取ったはずだ。ライブハウスで起こるドラマをこの日またひとつ見ることが出来たと思う。このツーマンがR.A.Dで2019年に行われたことは、きっと何年か先に語り継がれる日になる気がしてならない。



>>>BACK LIFT OFFICIAL HP
>>>KUZIRA OFFICIAL HP