BACK LIFT “Breath” INTERVIEW!!
BACK LIFTがニューアルバム『Breath』をリリースした。表題曲の配信時に、KICHIKU(Vo,Ba)が同曲の制作の背景として自身の過去をSNSに綴ったことでも話題を集めた本作。この曲を書いたことで、「自分の言葉でよりリアルに生々しく、自分の思っていることをはっきり全部曲にしていきたい」と思ったといい、その結果、今までで一番生々しい作品が完成した。そんな『Breath』について3人に話を聞いた。
Text by Chie Kobayashi
この曲がストッパーになれたら
──「Breath」の先行配信時にKICHIKUさんが「『Breath』を書いたきっかけ」として、SNSでご自身の過去も含めて赤裸々に投稿していましたが、改めて、このタイミングで「Breath」という曲を書いたきっかけを教えてください。(https://x.com/KICHIKUBACKLIFT/status/1709881252533485592)
KICHIKU(Vo,Ba) まずこのタイミングだからとかではなく、ずっとこういう曲を作りたかったというのがあって。歌いたいこと、書きたい言葉がこの曲にはちゃんと書けたと思う。SNSにも書いたけど、いじめやうつ病、パニック障害といろいろ経験したんやけど、たまたま自分は音楽という表現方法を持っていて、音楽は時に自分のはけ口にもなるから、言葉にしたり曲にしたりすることで、自分の過去から拭い去れる感覚があった。ただうまく言葉にできやんし、もし言葉にできたとしてもうまく伝わらないなと思っていたんやけど……俺たちは途中から日本語詞というスタイルを取りだして。この曲は日本語でまっすぐに届けたいと思ったときに、今だったらうまく書けるかもと思ったのがきっかけかな。
KICHIKU <「死にたい」なんてさ 口に出してしまうなよ>という歌詞から始まるんやけど、俺は死にたいと思ったことはない……というか、どんなにしんどくても死にたいとまで思う勇気はなかったんやけど、「死にたい」って言える人って、めちゃくちゃ生きたいんやろうなって思った瞬間があって。人それぞれケースは絶対に違うけど、自分は経験した側ではあるから、ちょっとでも理解してくれる人がいるだけで前向きになれると知っている。だからこの曲が、そういう人たちのストッパーになれたらと思って書き始めました。
──ある意味、自身の気持ちを発散させるために書いた曲でもあるし、似たような境遇の人の助けにもなれたらという?
KICHIKU まぁそうかな。あとは、みんな吐き出す場所もないんだろうなと思って。実際に、SNSであれを書いたときに「俺に吐き出してスッキリするならリプライでもDMでもいいから吐き出してください」と言ったら、本当にめちゃくちゃ届いたんですよ。だから俺は代弁……とまではいかないけど、こういう表現方法を持っているから、代わりに吐き出せたらいいのかなって。この曲自体は2021年に書き始めたんですが、コロナ禍でみんなネガティブマインドになっていたし、自分とは関係ない人たちがSNS上で炎上したり誹謗中傷に遭ってるところなんかを目にして、「死にたい」っていうワードが思い浮かんで、そこから言葉にしていった感じです。
──お二人は初めてこの曲を聴いたときはどう受け取りましたか?
HEAVIN(Dr, Cho) 初めて聴いたのはスタジオで。そのときに歌詞まで完璧に完成していたかどうかはちょっと覚えていないんですが、メロディとか歌詞の雰囲気で、なんとなくこの曲はBACK LIFTの代表曲になるんじゃないかなって思いました。歌詞の内容については、KICHIKUにそういう経験があるというのは知っていたから「やっと言葉にしたんや」と思いましたね。
SEIYA(Gt, Cho) 僕が初めて聴いたのもスタジオでした。<息ができなくて>という歌詞とか、僕もKICHIKUさんの経験は聴いていたので、初めて聴いたときにパッと情景が浮かびました。
──KICHIKUさんは改めて「Breath」という曲が完成してみていかがですか?
KICHIKU すごくスッキリしました。何か引っかかっていたものがパーンッて全部流れ出した感じがして。そこからこのアルバムの他の曲も作れたかなと思う。今までは「これを言葉にしたらえぐいな」と思ってフィルターをかけていた部分があったんだけど、今回のアルバムは本当に自分の本音で溢れかえってる感じがして。「Breath」を作ったことで、この先はわからんけど、とにかく今の俺は、自分の言葉でよりリアルに生々しく、自分の思っていることをはっきり全部曲にしていきたいと思った。「Breath」という曲ができたことで本当にいろんなことが書けるようになったなと思う。
──「Breath」で書かれている内容も含めて、自分の過去をさらけ出すのって勇気がいることでもあると思うのですが、そこに抵抗はなかった?
KICHIKU もちろん最初は誰にも言いたくなかったです。「鬱やった」とか「パニックやった」とかって、恥ずいし、弱いなって思われるのも嫌やったし。でもいつからかは覚えていないけど、ある時から「別に恥ずかしくないな」「カッコ悪いことじゃないないな」と思うようになって。だからといってひけらかすようなことはしたくないけど、作品を作る上では自分の経験も知ってほしいし、それを言うことで同じような経験をした人が少しでも心が軽くなるんやったらいいかなって。
「Calling」では腕をつるかも!?
──既発曲も収録されている本作ですが、自主レーベルになってから初のフルアルバムということもあるからか全体的に別れの曲が多い印象を受けました。そこは偶然ですか?
KICHIKU 偶然ですね。ま、実際タイミング的にレーベルを離れたり、前ギタリストのYU-PONがいなくなったり、コロナ禍で今までのお客さんが離れてしまったりと、確かに別れが多かった数年ではあったような気もするけど……でも別れの曲が多いのは自分では気付かなかったですね。ただやっぱり別れの経験は自分の中で、曲にしたいという気持ちが強くなるきっかけでもあるのかもしれない。このアルバムは前作の「Dream Wagon」と同時進行で制作していたんやけど、「Breath」という曲はもうあったから、できた曲を「これは『Breath』やな、これは『Dream Wagon』やな」ってなんとなく分けながら作っていたところがあったからというのもあるのかも。
──なるほど。色分けした結果、別れの曲が多く感じるようになっているんですね。今作はフルアルバムということで、様々な楽曲が収録されています。収録曲の中で特にチャレンジングだったことや、成長したと感じるパートがあれば教えてください。
HEAVIN 僕は「Calling」です。今までのBACK LIFTにはないリズムを使っていて苦労しました。この曲はYU-PONがいたときからあった曲なんですけど、もともとは全然リズムが違って。
KICHIKU めちゃくちゃスローな曲やったよな。
HEAVIN そうそう。でも「こういうリズムの曲があってもいいんじゃない?」って提案して、アレンジしてガラッと変わりました。ただ自分から提案したものの、やったことのないリズムだったから慣れてなさすぎて(笑)。収録曲の中で一番レコーディングのときに苦労しました。
KICHIKU メロディックパンクのバンドは結構使っているリズムなんやけど、自分の中ではカッコよく昇華できないと思ってあえて避けてきていたリズムで。でもこの曲のメロディはずっと気に入っていたから、スローな曲だとライブであんまりできないのがもったいないなと思っていて。そしたらHEAVINが「こういうリズムの曲あったらいいな」って言ってくれたんで、挑戦してみました。ライブでは腕つりそうやけどな(笑)。
HEAVIN たぶん腕つるよな(笑)。
──ライブで演奏していくうちに慣れていただいて(笑)。SEIYAさんは挑戦した曲を挙げるなら?
SEIYA 僕は「Letter for you」のイントロです。どこにいったらいいかわからなくて結構悩みましたね。「いつもの自分だとここにいきたいけど、ここにいくと音がぶつかって気持ち悪い」みたいな感じで。
KICHIKU イントロは俺も一緒に考えてたんやけど、俺もイントロメーカーじゃないから結構時間かかったな。この曲はシンプルな曲やからこそ、イントロでは音の引っ掛かりを作りたいなと思って、マイナーコードをちょいちょ散りばめたんやけど、そのせいで難しくなって(笑)。
SEIYA でもいいイントロができたと思います!
「この曲を聴き終わったらすごくハッピーな世界が待っている」から始まる
──KICHIKUさんのチャレンジングだったところは?
KICHIKU まずはこのアルバム全体的にやりたいことをいろいろ試したという感覚があるんやけど、特に新しい試みをしたなと思うのは1曲目の「Overture」。この曲ってやっていることはずっと一緒なんですよ。ずっと同じコード進行しか出てこなくてメロディもほぼ一緒。そこにシンガロングが入ってきたり、リズムが変化したり、ベースのフレーズを変えたりして変化をつけた。ループしている中でいろんな展開に持っていく感じとか、もちろん歌詞の内容とか、とにかくこの曲めっちゃ好きなんですよね。
──この「Overture」は、このアルバムで一番言いたいことを言っている曲だなという印象を受けました。
KICHIKU そうそう。「Overture」の単語の意味は「序曲」。「この曲を聴き終わったらすごくハッピーな世界が待っている」という意味で「Overture」というタイトルを付けたんですけど、アルバムの最初に「俺たちは幸せになるために生まれてきたんや」っていうことを認識してからこのアルバムを聴いてほしくて。
──そこから「Breath」につながっていくのがすごく良いですよね。本作はKICHIKUさんが本音をさらけ出したということなので、HEAVINさん、SEIYAさんの特に好きな歌詞や好きな曲を教えてください。
HEAVIN 「Overture」かな。歌詞も好きだし、ドラムの音作りやリズムも気に入っていて。僕もめちゃくちゃ好きな曲になりました。
SEIYA 僕は「On Your Side」。サビの<誰かが振りかざした正義 それに従えば皆んなが誠実? それで平気? それが定期? それじゃ全部つまらないだろう>っていう歌詞が特に好きで。こんなことを表立って言う人いなくないか?と思って。それでいて曲調的には怒り丸出しではない。その感じがすごくKICHIKUさんぽいなと思って好きです。
KICHIKU この曲を作ったきっかけはSNSとかでよく見る、謎の正義感というか。「そもそも、そいつの正解のために生きてないしな」って思ったことなんやけど、そういうところから「俺がいるからお前が絶対に孤独、孤立することはない」ということを歌いたいと思った。俺自身、苦しい時期に誰かの存在のおかげで孤独に救われるということが何度もあったから。ふと寂しくなったり、マイナスな感情になったときにも、解消してくれる誰かがいて。だから今度は、そういう心境の人に「俺がいるから」って言いたいなって。
──だから、怒り丸出しの曲にすると、伝えたいことが変わってきちゃう。
KICHIKU そうそう。誰かに対する怒りを歌っているんじゃなくて、救ってくれた人へのメッセージだったりするから。
BACK LIFT史上一番いいアルバムができた
──個人的なことを歌っているけど、バンドにとってもKICHIKUさんにとってもすごく意味のある1作になったんじゃないかなと思います。改めてバンドにとってどんな1枚になったと思いますか?
KICHIKU バンドにとっては、ここまでのことをめっちゃバランスよくミックスできたアルバムになったなと思います。「All or Nothing」で<どうせやるなら誰もやってないこと どうせ行くなら誰も行ってないとこ>って歌ってるんやけど、BACK LIFTとしてもオリジナリティを突き詰めたいと思ってこれまでやってきた。今までメロディックパンクから、スカ、レゲエ、ヒップホップ、ポエトリーといろいろな要素を詰め込んできたけど、そこに説得力を持たせるためには自分たちがそれをひたすら貫いてやるしかなくて。初めはいろいろ言われたけど、ブラッシュアップして「いいやん」って思わせるしかないと思ってやってきた。それがうまくミックスできたのがこのアルバムかなと思っているから、今からBACK LIFTを知る人は『Breath』から入ってくれたらいいよと思う。それくらい今までの俺たちが突き詰めてきた道筋の先頭にいるアルバムになったなと思います。BACK LIFTの代表作になる気がするし、そういう作品を今このタイミングで作れたのがまずうれしいかな。「Breath」という曲が書けたこともあって、今、作曲意欲もすごくて。毎日のように曲を作ろうとしている。だからまだまだやりたいこともあります。
SEIYA 僕はBACK LIFTに加入するときにBACK LIFTの曲を100曲くらいコピーしたから“BACK LIFTの王道コード”みたいなものがあるなと思っていたんですけど、「Breath」ではそれを使わない曲が多くて。そういうアルバムが作れたことがうれしいですね。まぁ、ただアルバムを作るのってしんどいなとは思いました(笑)。でも出来上がったアルバムを聴くと、あっという間に終わるように感じるんです。あんなに苦労して、散々弾いたのにあっという間に感じられる。そういう作品を作れて良かったなと思います。
HEAVIN 今まで積み上げてきたものプラスSEIYAが新しく持ってきた色がすげえ出てるなと思って。曲作りのときにSEIYAが「今まで使ってないコードを使ってみよう」と言ってコードブックを持ってきたんですよ。そういう面で新しい要素が入ったと思うし、BACK LIFT史上一番いいアルバムになったのかなと思います。
──では最後に、本作を携えて現在開催中のツアー「Breath Of Fresh Air Tour 2023-2024」の意気込みを聞かせてください。
KICHIKU 作品を出すたびに思ってるんですが、今までBACK LIFTのライブに来たことがない人にも1回はライブに来てほしいな。ここ半年くらいかな、目に見えてライブに来てくれる人が増えているのを感じるんですよ。サブスクを解禁したことも影響しているのかもしれないけど。「BACK LIFT、名前は知ってるけど」という人や、聞かず嫌いをしている人もおると思うんやけど、試しに聞いてみよう、ライブに行ってみようって思ってもらえたらうれしい。今回の『Breath』は特にそう思っていて。もし「ライブ行ってみたいな」と思っている人がいたら、騙されたと思って来て欲しいな。楽しませる自信はめちゃくちゃあるから。このツアー、まだ発表していない公演もあるけど、めっちゃ長いんで!
BACK LIFT「Breath」
1.Overture
2.Breath
3.All or Nothing
4.Sweet
5.Calling
6.Midnight Summer
7.All Mouth
8.UNITY
9.Nomad
10.So long
11.Twilight
12.Brand new days
13.Letter for you
14.On Your Side
"Breath Of Fresh Air Tour 2023-2024"
10/30(月)千葉LOOK ワンマン
10/31(火)横浜B.B.STREET w/MARIO2BLOCK
11/4(土)福岡Queblick w/MAYSON'S PARTY , FROM ME.
11/11(土)昼 下北沢DaisyBar w/COPES
11/12(日)松本ALECX w/Sunny Girl , COPES
11/13(月)心斎橋 火影 w/PAIL OUT
11/18(土)函館ARARA w/Stuck in Life , BLAST
11/19(日)苫小牧ELLCUBE ワンマン
11/21(火)札幌KLUB COUNTER ACTION w/Stuck in Life , TRAST
11/28(火)上前津Zion / BUZZ THE BEARS
12/1(金)豊橋club KNOT w/FIVE STATE DRIVE , INKYMAP
12/8(金)四日市CLUB CHAOS w/LEODRAT , Danablu
12/9(土)奈良RHEB GATE w/LEODRAT
12/16(土)山梨KAZOO HALL w/TOYSNAIL , Stain hung over
12/24(日)横須賀Pumpkin w/carabina
2024
1/7(日)岐阜ants w/HERO COMPLEX
1/13(土)新都心HEAVEN’S ROCK VJ-3
1/14(日)水戸LIGHT HOUSE
1/21(日)神戸太陽と虎
1/27(土)盛岡the five morioka
1/28(日)仙台enn 3rd
2/2(金)静岡UMBER
2/11(日)宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
2/12(祝月)横浜F.A.D
2/17(土)出雲APOLLO
2/18(日)岡山Crazymama 2ndRoom
2/24(土)京都MUSE
2/25(日)滋賀B-FLAT
3/8(金)大分SPOT
3/16(土)金沢vanvan V4
3/17(日)新潟GOLDEN PIGS BLACKK
3/24(日)広島ALMIGHTY
3/30(土)高知X-pt.
3/31(日)高松Sound space RIZIN’
前売 ¥3,500
学割 ¥2,500
1月末までは一般発売中!
2,3月のチケットは二次先行受付中!
11/18 10:00 ~ 11/26 23:59まで
https://www.backliftjapan.com/
BACK LIFT official website
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