INTERVIEW

TOTALFAT "MILESTONE" INTERVIEW!!

Interview by Tomoo Yamaguchi
Photo by Masaty

 

 


 結成20周年を目前にして、15年間、活動を共にしてきたKuboty(Gt)が脱退するというまさかの展開を迎えたTOTALFATが早くも最新アルバム『MILESTONE』を完成させた。Kuboty脱退からわずか3か月というスピードで3人で新たにスタートすることを決めたShun(Vo/Ba)、Jose(Vo/Gt)、Bunta(Dr/Cho)の並々ならぬ意気込みが窺えるが、もしかしたら、中には「TOTALFATどうなっちゃうんだろう?」と心配したファンもいるかもしれない。そんなファンは、いや、そんなファンこそ、『マイルストーン』を聴いてほしい。
 TOTALFATらしいアンセミックなメロディック・パンクはもちろん、ゴリゴリのハードコアからレゲエまで、硬軟織り交ぜた多彩な全12曲が印象づけるのは、TOTALFATというバンドが持つあらゆる可能性だ。これを聴いて、彼らのこれからが楽しみにならないファンはいないはず。『マイルストーン』で、TOTALFATは最高傑作を更新した――という表現を使うことを、筆者は躊躇しない。
 ファンのみならず、シーン全体に動揺を与えた状況を、彼らは見事、“ひっくり返した”わけだが、メンバーたちもかなりの手応えを感じているようだ。その手応えが決して、新作をリリースするとき、多くのバンドが口にするお決まりのものではなく、ちゃんと確信にうらづけられたものであることは、インタビューを読んでいただければ、ちゃんと伝わると思う。彼らは、いかにして3人で新たにスタートしようという決意に至ったのか? 
 

この3人がオリジナルだからなんですよ。

――すごく思いの詰まった、とてもいいアルバムが完成しました。まず手応えから聞かせていただけますか?

Shun:ほんとの手応えは、これから感じるんだろうなと楽しみにできる手応えがあります(笑)。

――う、うん? というのは?(笑)

Shun:ファンはもちろん、周りのバンドも「TOTALFAT、どうなの?」って思ってると思うんですよ。そこに対して、「いや、俺らやってやったっしょ!」って思っているんです。今まさに。だから、新しいアルバムを聴いたとき、「みんなはどう思うんだろうか」とか、「どれだけ俺らのこれからを楽しみに感じてくれるのかな」とか、そういうことを、今、楽しみにしているんです。

――なるほど。

Jose:僕らの1stアルバム『End of Introduction』を作った時の感覚に近くて。これまでずっと活動してきて、前回のアルバム『Conscious+Practice』なんかは、自分らのテクニックや、当時の4人でやれるTOTALFATをどう打ち立てて、伝えていくかってところに集中した手応えがありましたけど、今は夢しかないと言うか。Shunが言ったように、「これ、みんな聴いて、どう思ってくれるんだろう?(このアルバムの曲で)どういう景色を作れるんだろう?」みたいなところで、まだ自分も見えてないけど、超ワクワクしているんです。ほんとにあの頃に立ち返れた。けど、この20年やってきた3人の太い音で鳴らせているっていう感覚もあるんで、フレッシュなんだけど、歴史もある太い音を出せたアルバムができたのかなって。

――Buntaさんはどうですか?

Bunta:3ピースでライヴをする前に作ったんですよ。つまり3ピースでライヴを1本もやったことがない状態でアルバムを作ったんです。だから、実際、これからこの3人でアルバムの曲をやってみて、どういう形で鳴らせるかっていうのは、追々わかってくると思うんですけど、手応えって意味では、ライヴを1本もやってないのにアルバムを作ったっていう事実のほうが。

Jose:なるほど!

Bunta:俺は「やってやった!」っていう。

Jose:確かに、確かに。

Bunta:アルバムの内容にもちろん手応えはあるけど、このスケジュールの中でこれを作って、このままツアーで出られることにモチベーションも期待も高まるしっていう。

――アルバムを聴きながら、「そう来るよね」ってところもあったし、「そう来たか」ってところもあったし、新たなスタートを印象づけるのに相応しいものになったと思うんですけど、すごく良くできたアルバムですよね。

Shun:良くできたっていうのは、構造的な物とか、心情的な物とか、いろいろあると思うんですけど(笑)。

――心情的なものを抜いて、作品として、音楽として、すごく良くできた作品だなって。

Shun:うわ、うれしい。

――TOTALFATというバンドのいろいろな可能性を詰め込んだアルバムになっているから、いろいろなことはありましたけど、そういうことを抜きに、まっさらな耳でファンには聴いてほしい。

Shun:そうですね。実際、ものすごくいいアルバムができたという実感は今まで以上にあるんですよ。メンバーが抜けて、新しい体制で走り出したってことに対する感情の振れっていずれ消えると思うんです。それを消したいから俺らは休まずにと言うか、すぐに動いたし、それが消えて、ここから2枚目、3枚目とさらに出していってから、振り返ったとき、そういう色眼鏡抜きで、「このアルバムを作れたから良かったんだな」って思えるだろうなって感じたんですよね。僕自身、一歩退いた耳で聴いても、「いいアルバムだ」っておっしゃっていただいたことと同じ感覚はあります。でも、構造的に何か気を遣って、順序立てて作ったわけではないんですよ。むしろ、溢れたものをそのままつまんで、大至急、形にしたって感じなんです。3日間の合宿で5曲できたこともありましたから。


――3日で5曲!

Shun:とにかく俺らは会話することをやめなかったし、先のことを話すことをやめなかったし、むしろそれが増えていった。俺らの中で全然消えないポジ(ティヴ)の部分っていうのが、ちゃんと3人で表現できたっていう実感はあります。

――そうなんですよ。すごく良くできた作品と思いましたが、作り上げていったようには聴こえないんですよね。おっしゃったように溢れ出てたきたものを詰め込んだ結果、すごくウェルメイドな作品になったのは、さっきJoseさんが言った、20年やってきたバンドの太い部分なのかなと思いつつ、それにしてもですよ。昨年の10月22日に新木場STUDIO COASTでKubotyさん参加の最後のライヴをやった翌日に……

Shun:日付が変わる瞬間に(笑)。

――早速、新曲「Give It All」を配信リリースして、「バンドは止まらないぞ」ってことをアピールしたじゃないですか。でも、そこからこんなに早くアルバムをリリースするとは思わなかったですよ。そこはびっくりでした。

Shun:俺らもなる早だとは思ってましたけど、意外と急げたなっていう(笑)。

――でも、3人になってからのアンサンブルを、改めて作っていかなきゃいけなかったわけじゃないですか。それを考えると、なぜ、こんなに早く出せたのかなっていう。

Shun:でも、たぶんこの3人がオリジナル(・メンバー)だからなんですよ。

――ああ。

Shun:新たにメンバーを入れたわけでもないし、Kubotyもずっとやってきたけど、後から入ったメンバーではあるんで、やっぱりTOTALFATっていう1つのバンドと言うか、1つの生き物と言うか、そういうものの本当にコアな部分は、この3人で支えていたっていう要素はやっぱり大きかった。Kubotyはいい意味で、その上に乗っかって、飛び道具と言うか、ものすごくでかい武器を振り回していた存在だったんです。だから、彼がいなくなったことで、俺らはこの3人の強さに改めて気づけたし、「3人でどういうアルバムを作ればいいんだろう?」って不安はなかったんですよ。

Jose:そうだね。

Shun:Buntaも「だってBLINK-182もGREEN DAYも3人じゃん」って(笑)。そういうある意味、軽々しい発言が意外と俺の中でしっくり来て、「そうだよな。BLINK-182だってサポートを入れずに、当たり前のように3人でライヴやってるし。それを俺ら、アメリカで体感してきたじゃん。2万2千人があの3人の演奏に熱狂しているんだから、俺らにだってできるでしょ」って普通に思っちゃったって言うか。しかも、あのバンドはヴォーカルが変わって、初めてビルボードで1位を獲ったわけじゃないですか。そんなふうにひっくり返していっているバンドが今一番、好きなバンドとして、自分の心の中に君臨しているから、考え方はそもそもシンプルでしたね。

――そうなんだ。

Shun:4人でやってきた曲を、3人で練習すればするほど、3人で作った曲が欲しすぎる気持ちになってきて。4人で作った曲に関しては、マイナスワンの印象を取り去るという意味で、やっぱりKubotyがいないって大変なことなんですよ。物理的にJoseにのしかかってくる作業量と、精神的な重圧はものすごくて、そこでJoseは一回折れましたから。でも、それをちゃんと俺らに言ってくれたから、俺らも支えられたけど、でも、危なかったよね、正直ね。

Jose:「別にやめたいわけじゃないんだけど、マジでつらい。どうしたらいい? 今すぐには無理だわ」って2人に打ち明けたんですよ。

Shun:「だったら、3人で早いとこアルバム2枚ぐらい出したらいいんじゃないの?」ってシンプルに思ったんですよ。

――なるほど。

Shun:だから俺は2人に「とにかく3人でやるって、みんなで決めた。でも最低条件として、まずはアルバムを作ることと、それも1枚じゃなくて、2枚ぐらい出して、新しい曲だけでワンマンができるバンドになろう」って話をしたんです。

――アルバムの曲作りはいつ頃から?

Jose:すぐでしたよ。

Shun:(Kubotyが脱退するという発表をした19年)4月には、もう始めてました。「Perfect Pieces」のデモを最初に作って、Buntaと海に行ったとき、車の中で聴かせて、「ああ、こんな感じなんだ」みたいなところから、「ALL AGES (Worth a Life)」を作って。

Jose:4月中に合宿に入ったもんね。その時に「Give It All」のネタは出てきたし。

Bunta:4月に入ったのか。

Shun:だから、5月ぐらいには「Give It All」「ALL AGES (Worth a Life)」「Perfect Pieces」のデモは上がっていて、その中から第1弾で出す――Kubotyのラスト・ライヴが空けて、 「4人のTOTALFATの余韻を嘘みたいに消せる曲はどれだ?」ってなったとき、「「Give It All」じゃない?この曲、パワーあるよ」って話になりました。

――じゃあ、Kubotyさんがまだバンドにいる頃から作り始めていたってことですよね。その時の3人とKubotyさんの関係とかバンドの中の空気とかって、どんなことになってたんですか?

Shun:いたって平常運転でした。

Jose:うん、全然

Shun:ライヴが多かったから、リハも含め、しょっちゅう会ってたっていうのもあるし。だから、Kubotyがリハに来る前に3時間とか4時間とか3人で入って、そこにKubotyが合流するみたいに1日の内で3人の時間と4人の時間を分けたり、新曲を作る日はKubotyはオフだったり、個人の仕事をやってもらったりして。

Jose:既存曲に関しては、「ここのフレーズどう弾いてるの?」って動画を送ってもらったりもして、そういうことは全然やってたんで。

Shun:だから空気感は、いつも通りでしたね。たまに「この人、ほんとにやめるんだっけ?」 って(笑)。

Jose:Kubotyも脱退を発表してから3か月経った頃、「自分がやめることを忘れてた」って言ってました(笑)。

Shun:それが夏フェスが終わったくらいからちょっとエモーショナルになってきて。

Jose:そうだね。たまに元気がない時があったね(笑)。

Bunta:それで最後のほうは卒業旅行みたいになっていて(笑)。

Shun:各地で後輩を呼び出して、連れ回したりしてたね。

Bunta:もうあんまり行けなくなっちゃうからって。

Shun:それでどっかんどっかんやってみたいな(笑)。


――今までのお話から想像するに曲作りはスムーズだったようですね?

Shun:時間がない中で滑るようにできていきましたね。でも、それにはメタルの要素がなくなったというところに1つでかいスピードアップの理由があって。しかもスピードだけじゃなくて、がっちりハマりも良くなったっていうのは、3人全員が実感していると思います。ギター・ソロを入れることを含め、メタル的なマナーでの曲の解釈ってところで、今まではどんな曲を作っても、大体、意見が分かれていたんですよ。もちろん、そこを超えていくための作業を、俺らは楽しんでいたし、その先でできた曲は、「やっぱいい曲だね」ってなってたけど、でも、それにはものすごい作業量と時間がかかっていたから、時間がうまく使えてないと感じることもあって。けど、この3人でパンクのマナーの中でやるってなると、言わずもがな、1曲の中で自分たちがやりたいことって揃ってくるんですよね。だからセッションしてフル尺ができたっていう曲も今回、けっこう多いです。

Jose:「My Game」は完全にゼロからセッションで作りましたね。

Shun:合宿の休憩時間にアコギちゃかちゃか弾きながらサビのメロディーを考えて、「じゃあ、スタジオに戻ってみようか」って。

――じゃあ、1曲できあがるまでの時間も短くなったわけですね。

Shun:そうですね。メロディーとか演奏とかは全然すぐに。で、1回できたものを一度冷静になってから、数日後に合わせてみて、「ここはこうだね」ってマイナー・チェンジしていくぐらいでしたから。

――それは新鮮でした? それとも昔に戻った感覚でした?

Shun:昔は深いことは考えずに、みんなで、「いいね!いいね!」ってやっていて、それと同じではないですけど、でも、なんか曲ができるテンポ感とか、物事を感覚で判断していく過程は、全部が全部じゃないですけど、1stアルバムや2ndアルバム(『ALL THE DREAMER, LIGHT THE DREAM』)を作った頃に近かったかもしれないですね。

Jose:それにしても、「すげえできるなぁ」って思ってましたけどね(笑)。セッションしながら、「めっちゃいいじゃん。この尺で、このアレンジで行こうよ」って決まって、パソコンに打ち込んで、デモを作りながら、「こんなにサクサクできていいの?」って時もありましたね。でも、3人っていうのは、こういうことなのかなって。

Shun:曲自体を、短く仕上げようっていう意識はあったよね、俺らの中に絶対。ギター・ソロとか、展開する要素がなくなった分、必然的に曲の尺は短くなると思うんですけど、そうじゃなくて、やっぱりぎゅっとさせたいって言うか。今まで40分セットで6曲、7曲しかできなかったところを、10曲できるようにしたいって気持ちがけっこうあって、それがパンクのライヴだろうっていうのは、けっこう意識にありました。それに曲を削ぎ落しても、いい曲にできるという自信も20年やってきて持てるようになっていたし。そこに対する自信はあったんですよね。それも短い期間の中でアルバムを仕上げることができた理由の1つだと思います。
 

「3人で武道館あるな」って話をしたよね?

――曲調は、なかなかバラエティーに富んでいますが、それも意識せずに?

Shun:バラエティーに富んでいるのがTOTALFATだっていうのは、ずっと思っていることなんで、それは変えたくなかった。アルバムを1枚聴いた時の聴き応えと、もう1周したいと思わせる、いい意味での枯渇感の両方を求めるためには、同じような曲が並んでいると、何周もできないと思うから。

Bunta:俺らが影響を受けた00年代初頭に出てきたBLINK-182とか、NEW FOUND GLORYとか、GOOD CHARLOTTEとかがそもそもそうだったんですよ。そういうポップ・パンク的な要素が、もう1回、3人に立ち返ったとき、自然に出せたから、バラエティーに富んだ楽曲の振れ幅にはなっているのかなと思います。

Shun:Buntaの今の話に付け加えると、BLINK-182とか、NEW FOUND GLORYとかが出てきて、ドラマーがものすごくうまいバンドがかっこいい時代が始まったんですよ。BLINK-182のトラヴィスしかり、NEW FOUND GLORYのサイラスしかり。

Bunta:進化していったよね。

Shun:俺たちもBuntaがビートとBPMをコーディネートするんですよ。俺たちに対して。


――ふむ。

Shun:さっき客観的に作為的なことはしていないと言いましたけど、唯一、作為的にやったことがあるとしたら、唯一、それだと思うんですよ。

――そこなんだ。

Shun:俺、2ビートの曲ばっか作っちゃうから。

Jose:ハハハハ。気持ちがパンク・モードだからね(笑)。

Shun:できあがった曲を見渡したら、「2ビートしかない!」ってなって、「My Game」を書いたんです。Buntaが「まずくない?2ビートしかないんだけど、これじゃ疲れちゃうよ」って(笑)。

Bunta:疲れるって言うか、それだけじゃおもしろくないから。

Shun:それで、「ミドルの歌える感じとか、揺れる感じとか欲しいよね」ってなって、Buntaが「じゃあBPMはこれぐらいで、8ビートで」ってドラム・パターンを作って、そこに歌を乗せていってっていう。

――中にはBuntaさんがビートを変えることで、曲ががらっと変わったものもあるんですか?

Bunta:「Mirror」はそうじゃん。

Shun:サビをタテノリにしたね。

Bunta:あれも元々、最初から最後まで2ビートだった(笑)。

Shun:俺らがあの時代のパンクから一番恩恵を受けているビート・チェンジや、1枚の中で振り幅を出すのがおもしろいアルバムだっていう価値観は、たぶん未来永劫、TOTALFATがアルバムを作っていく中で変わらないところだと思います。

――ところで2曲目の「Welcome to Our Neighborhood feat.LOW IQ 01」はアイリッシュ・パンクっぽい感じが新しくないですか?

Shun:それはイチさんの一声で書いた曲なんで。イチさんはアイリッシュの要素を持っている人だというメージがあって、俺たちのお庭へようこそって曲なんですけど、イチさんと俺、めっちゃ家が近くて、1日に3回とか会うこともあるんですよ。8月に3日連続で飲んだんですよね。偶然会ったりっていうのも含めて、その最後の夜に酔っぱらったイチさんが「TOTALFATで歌いてえな。ギャラ要らねえからさ」って言うから、「明日、改めて連絡します」って。

Jose:そしたらShunから「イチさんが歌ってくれる」ってLINEが来て、マジで?って。

Shun:やってもらおうよって。

Bunta:その時にはもうイメージは決まってたよね。

Shun:「Neighborhood」ってタイトルで曲を書くって、2人に言って、イチさんが入るならってイチさんをイメージして書いたんです。

Bunta:シャッフルの、こういうビートって、こういうことでもないとやらないじゃないですか。だから、いい意味でスパイスになったかな。

Shun:イントロのアコギのジャンジャカジャ・ジャンジャカジャでSCAFULL KINGの「IRISH FARM」リスペクトみたいな(笑)。

Bunta:イチさんも言ってたよね。「これ、SCAFULLのね」って(笑)。

Shun:すごいのが手ぶらでスタジオに来て、「歌うか」って歌って、そして最後にティン・ホイッスルが入っているんですけど、あれ、ほんとに1ミリも頼んでないのにイチさんがポケットから笛を出して、いきなり吹き出して、俺ら全員、「えっ?」って(笑)。

――へぇー!!

Shun:「これはキーがDだから、どこを押さえてもこの曲に合うんだよ」って(笑)。イチさんの人間のジャズりがすごかった。「やるよ」って言って、ほんとやってくれるし、頼んでいないことまでやってくれるっていう。ヴァイブスは入りましたね。曲の入りも「掛け声が欲しいんですけど」って言ったら、「ワン・ツー・ゼロ・ワンって言っちゃう?」って。

Jose:「いいんですか?」って(笑)。

Bunta:俺らのアルバムなのに「ワン・ツー・ゼロ・ワン!」で入っちゃってるからね(笑)。

Shun:やっぱスターですね。

――スパイスと言えば、Joseさんが作曲した「Lucky Boy」もそうですね。

Jose:ありがとうございます。

――パンクといなたいハード・ロックを掛け合わせたようなところがJoseさんらしい。

Jose:KISSっぽいと言うか。

Shun:「Shout it out loud」的なね。

Jose:Buntaと2人でネタと言うか、刺激が欲しいからって石巻のOneparkってスケートパークが今、どんな状況なのか見に行ったとき、そこで教えているプロ・スケーターの荻堂(盛貴)さんが今度2度目の結婚するとかで、その日ずっと「いやぁ、この歳で2回目の結婚ができてラッキーだよ」って言ってたんですよ。

Bunta:ヒデさんが言いだしたんだよ。

Jose:そうだっけ?

Bunta:Oneparkをやっている勝又(秀樹)さんとその荻堂さんって、俺らがOneparkとそこに来ている子供たちのことを思って、作った「Seeds of Awakening」っていう曲のPVにも出ているんですけど、荻堂さんが「2度も結婚してすみません」って言ってたら、「ほんとラッキーボーイだよ」って勝又さんがずっとイジってて(笑)。

Jose:でも、その空間がすごく良くて、愛があるなって。その時、すでに作っていたあの曲のギター・フレーズを思い出して、これで「Lucky Boy」って超おもしろくなりそうだと思って、デモをShunに聴かせて、「「Lucky Boy」ってタイトルで作りたいんだけど、歌詞を書いてくれ」って、その時のストーリーを話して。

Bunta:Shunは別の用があって、一緒に行けなかったんだよね。

Shun:俺も荻堂さんのことは知ってるから。そしたら勝又さんが「荻堂君だけ歌を作ってもらってズルい。僕の曲も書いてほしい」って(笑)。

Jose:アレンジの面で言うと、3人でセッションしている感じをすごく出したくて、だからメロもみんなで歌うし。

Shun:ソロ回しもあるしね。

Jose:コテコテのハード・ロックのライヴでよくやるじゃないですか。あれをいつかやりたいと思ってたんですよ。

Bunta:ワンマンだったら10分ぐらいやらないとダメだよね(笑)。

Shun:この曲を作っている時は特に楽しかったですね。

――唯一、全編、ほぼ日本語で歌っているアルバム・タイトル曲の「マイルストーン」は、歌詞の内容を考えると、やっぱり日本語で歌いたかったということなんですよね?

Shun:そうですね。日本語の曲が欲しいなと思ってたっていうのもあるんですけど、敢えてファンに向けるなら、吐き出したものをそのまま聴いて欲しかったんです。訳を読んでではなくてね。実は、レコーディングの2日前ぐらいにデモができて、滑り込みで入ったんですよ。「マイルストーン」がない状態で、「よし!レコーディングだ」ってなってたんですけど、「いや、何かもう1曲出来そうな気がする」って。

Jose:いきなり言い出して。

――じゃあ、もしかしたら入らなかったかもしれない?

Shun:ほぼそうでした。リフのアイディアはあったんですよ。でも、2日後にはレコーディングが始まるし。でも、できそうな気がするしって作ったら、「いいね」ってことになりました。

――それがアルバム・タイトルにもなった、と。

Shun:最後に振り絞って出てきた一滴がけっこう濃くて。「マイルストーン」って言葉は前から好きだったんですよ。あ、そう言えば、「マイルストーン」って言葉をくれたのは、今度、PUNISHER’S NIGHTの東京と名古屋に出てくれるDragon AshのKJさんなんですよ。以前、俺らのライヴを観て、「すごくいいライヴだった。このライヴと、この経験はきっとおまえらのマイルストーンになると思うよ」って言ってくれて、その時、マイルストーン・トーントーントーンって心に響いて(笑)、すげえいい言葉だなと思ったんです。でも、その言葉を使うタイミングが自分のバンド人生の中になくて、だからっていつか使えたらいいなって感じでもなかったですけど、ふと、「この曲、どういう曲なんだろう?」って考えたとき、歌詞にも出てくるんだからって。

――胸を打つ歌詞は、3人で新たにスタートするという決意をする前後の赤裸々な心情を言葉にしたものですよね?

Shun:わかりやすいですよね。

――そういう曲が最初からあって、何が何でも入れたいと考えていたわけではなく、滑り込みで入ったというところがおもしろい。

Shun:歌詞に入りきらなかった言葉が自分の中にいっぱいあったんですよ。でも、消化しきれなくて。そんな気持ちが曲を書くことで、整ったんですよね。Kubotyから「抜ける」という話を聞いてから、その後のことが何も決まらない間は、すごくもやもやしていたし、混沌としていたし、悲観しそうにもなったし、でも、曲を1曲、また1曲と書くことで、ほんとに先に目指すものとか、自分のなりたいものがぎゅーっとピントが合ってきて、頭の中にあったいろいろな言葉が自然に並んできてくれた。そういう意味では、他の曲を書くことで、やっと「マイルストーン」を書くところまで行けたっていう。

――できるべくしてできた曲だ、と。

Shun:間に合って良かったですよ。これが次のアルバムに入っていても違うし(笑)。

――そうですよね。これだけ確信に満ちた力強いアルバムを作れたんだから、これは今日、聞く必要はないかなと思っていたんですけど、Kubotyさんがやめることになって、3人で続けていこうっていうのは、割とすぐそう思えたのか、それともけっこう考えたのか、どっちだったんだろうって。

Shun:2か月ぐらいモヤっとした?

Bunta:前のアルバムのワンマン・ツアーが終わるまではモヤっとしてたと思うよ。

Shun:ワンマン・ツアーが終わったのが18年の11月か。

Jose:その手前のリハで、「3人でやろう」ってなったんじゃない? そんな気がする。

Shun:だから、(18年の)9月にKubotyから言われて、やっぱり2か月ぐらいか。その間はかなりモヤっと、モヤりがハンパなかったです。

Bunta:他のギターを探そうかとも考えたんですけど、ピンとくる奴もいないし、ワンマン・ツアーも回らないといけないからそんな余裕もなかったし。その期間中はずっと悶々としてましたね。

Shun:3人で飲みに行ったりしてね。

Jose:飲みに行ったねぇ(笑)。

Shun:「どうする?」って答えの出ない話をして。でも、常に意思を確認したいって気持ちも強かったと思うんですよ、お互いの。

――3人でやっていこうって思えた決め手は何だったんですか?

Bunta:直観ですよね。ワンマン・ツアーの終わりぐらいにKubotyがたまたま別の用事でリハに遅れてきた日があって、3人でスタジオに入ったんですよ。まさに立ち位置も、今のさ。

Jose:そうだったね。

Bunta:上手からShun、俺、Joseっていう。

Shun:アンプがそういうふうに置かれてたんですよ、たまたま。

Bunta:で、鏡を見ながら合わせてたら、「行けるかも」って思えたんですよ。

Jose:僕に関しては、「無理だ。やめよう」とか、「やっぱりTOTALFAT好きだし、誰か入れてでも続けたい」とか、それまで日によって気持ちが違ったんですけど、その日のスタジオで、「うわ、やっぱ楽しい。やりたい!」と思ったんですよ。そしたら2人ともピンと来ていて。「3人で良くない?」ってBuntaが言い出したら、Shunが実はね。


Shun:そう。その前の日にうちのマネージメントのチーフと「今後の話をしよう」って飲んでたんですけど、その時、「3人でやってみるのもいいんじゃないか?」って話になって、「TOTALFATの良さは正三角形のほうがわかりやすく表せるんじゃないか」って言われたんですよ。

Bunta:たとえば、フェスなんかで大きなヴィジョンに演奏しているバンドの姿を映すとき、普通のバンドはヴォーカル多めで、あと他のメンバーってバランスがあるんですけど、TOTALFATは4人ともしっかり捉えないとダメだからカット割りが早いって話になったことがあって(笑)。ってことは、観ているお客さんも迷子になっちゃうんじゃないかって。Kubotyが好きな人はKubotyを観るけど、でも、歌2人だしっていう。でも、3人になったら、シンプルにツイン・ヴォーカルとドラムって整うんですよね。

Shun:3人でガチッてやれたら一番理に適っているんじゃないのって話になったんですよ。でも、そうは思いながらもまだ確信は持てなかったんです。そしたら次の日、スタジオでBuntaが「3人で良くない?」って言うから。

Bunta:クロマニヨンズのバンド名を決める時の話みたいじゃない?(笑)

Jose:ああ。「せーの」で考えてきたバンド名を言ったら、ヒロトさんもマーシーさんも同じだったっていう。

Bunta:そんなことある?って思うけど、そういうシンクロはあったよね。

Shun:今思い出したけど、その時、俺、「3人で武道館あるな」って話をしたよね?

Jose:した!

Bunta:そこまで目指そうって。

Shun:Zeppツアーを回って、日本武道館だろうって。

Jose:その時に結成したんですよね、この状態を。それを考えると、3人でやるって意思を固めてから1年経っているんですよね。3人での活動はまだ3か月ですけど。

Bunta:そういう流れがあるから、アルバムもこのタイミングでできたんじゃないかな。

――早いうちにアルバムを2枚作って、新曲だけでワンマンできるようにしたいとおっしゃっていましたが、次回作についてはもう考え始めているんですか?

Shun:今年の夏ぐらいには何かしら出したいなとは思ってます。今回のアルバムは、うちのお祭りボーイがギターに一生懸命で、鳴りを潜めてたんで。でも、「今はそれでいい。曲は俺が書くから、とにかくギターをがんばってくれ」って言ってたんで。だからJoseはまだ本気を出していないんですよ、曲作りに関しては。「Lucky Boy」は書いているけど。

Jose:企みはいっぱいあって、すでに準備は始めているんですけどね。

Shun:今回、コアな部分はすごく出せたんですけど、それに付随する俺たちの持ち味――みんなを盛り上げるとか、楽しませるとか、エンターテインするとかってところが俺らの武器で、それは絶対変えたくないんで、そういうことがもっとできる作品はボリュームにかかわらず、なるべく早く、ね。『マイルストーン』のツアー中から、いろいろアクションを起こして、早めにお届けしたいと思ってます。

――楽しみにしています。最後に2月26日から始まる「MILESTONE Tour 2020」の意気込みを聞かせてください。

Shun:いい歌と、いい演奏を毎日交わしたい。それだけですね。今は、あまり余計なことを考えてるヒマはないんで、とにかくまずはこの3人で、もっとバンドになりたい。これだけ回れば、バンド感は出るだろって思ってます(笑)。

Jose:3人になってからだいぶライヴやってますけど、まだ行けてない場所もあるんですよ。実際、3人になってから初めて行く場所もたくさんあるので、来てくれたお客さんを安心させるのはもちろんですけど、燃えて帰ってもらいたい気持ちがあります。

Bunta:3人になってから、先輩のバンドや同世代の仲間たちにライヴに誘ってもらって、助けてもらって、今こうして活動できてるわけなんですけど、今回のツアー、ほぼ対バンになると思うんですよ。改めて対バンっていいなと思ったんですよね。同じシーンのバンドはもちろん、シーンが違っても同じ志でやっているバンドとガチコンでやり合う、その相乗効果がライヴハウスの醍醐味なんじゃないかって。中には厳しい状況のバンドもいるから、支え合いながら、俺らもいろいろなバンドに、いい影響を与えて、刺激し合えるようなツアーになったらいいですね。再度、日本のパンク・シーンを意識した対バンになると思うんですけど、シーンの状況が伝わっていったら、もっと盛り上がると言うか、そんなふうに俺らだけじゃなくて、シーン全体を盛り上げるようなツアーにできたらいいですね。




“MILESTONE”
[CD]
1.Heroes From The Pit
2.Welcome to Our Neighborhood feat. LOW IQ 01
3.ALL AGES(Worth a Life)
4.Perfect Pieces
5.Lucky Boy
6.My Game
7.S58'
8.Give It All
9.Mirror
10.We're Gonna Make a Bridge feat. J-REXXX
11.MONSTER
12.マイルストーン


[DVD]
1.Broken Bones
2.Good Fight & Promise You
3.夏のトカゲ feat.男鹿なまはげ太鼓
4.Room45
5.Angry Shotgun
6.World of Glory
7.Invention~Good morning, my treasures~
8.Dear My Empire
9.Seeds of Awakening
10.晴天
11.Delight!! feat. J-REXXX
12.Just Say Your Word
13.DA NA NA
14.Summer Frequence
15.Highway Part2
16.Phoenix
17.Visible
18.X-stream
19.Livin' for The Future
20.Walls
21.Space Future
22.See You Later, Take Care
23.All for You
24.The Naked Journey
25.ONE FOR THE DREAMS
26.Show Me Your Courage
27.Place to Try

EN1.宴の合図
EN2.PARTY PARTY
EN3.Good Bye, Good Luck
EN4.Overdrive


RX-RECORDS / RX-169 / 形態:CD+DVD / 価格:¥3,800(税抜)





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