LIVE REPORT

dustbox "The Awakening Tour FINAL SERIES" LIVE REPORT!!

Report by 柴山順次(2YOU MAGAZINE )
Photo by 岩渕 直人

 

2020.1.23
dustbox "The Awakening Tour FINAL SERIES"
@Zepp Nagoya


昨年リリースされたアルバム『The Awakening』を引っ提げ、様々なバンドをゲストに迎え全国各地で結成20周年ツアーを展開してきたdustbox。年が明け2020年、ツアーのFINAL SERIESとして発表された東名阪ツアーの初日が1月23日名古屋はZepp Nagoyaにて、盟友GOOD4NOTHING、SiMを迎え開催された。昨年6月の新宿ACBより始まった約7ヵ月に及ぶThe Awakening Tour。名古屋では7月に今池HUCK FINNでNorthern19と行ったツーマンから半年を経てのツアーファイナルシリーズ公演。会場であるZepp Nagoyaに集まったオーディエンスと20周年を盛大に祝う祭典は正月ボケも一気に吹っ飛ぶパンクロックパーティーとなった。

まずは堺のオッサンことGOOD4NOTHINGが登場。彼らも2018年に結成20周年を迎え脂の乗りまくったメロディックパンクを鳴らし続けてきたバンドであるが、昨年Vo、GtであるTANNYの脱退を経て3ピースに。ヴォーカルの脱退といえばバンドにとって致命傷ともいえる出来事である。しかしそれを乗り越えたGOOD4NOTHINGの底力というか、勢いというか、とにかく今のGOOD4NOTHINGがエネルギーで満ち溢れていることが、盟友であるdustboxの20周年を祝う場で爆発していた。いつものSEでステージに登場すると「FOUND」でいきなり最高潮の盛り上がりを見せるフロア。3人になったことでヴォーカルの振り分けも代わり楽曲が生まれ変わった印象も受けるが根本は何も変わらず、「メロディックパンクが楽しくてしかたない」という相変わらずのメロディックホリックぶりを見せつけてくれるGOOD4NOTHING。泣きのメロディ炸裂の「IN THIS LIFE」、縦ノリ西海岸リフ爆発の「J.C.」と必殺技を畳みかけたところで、新たなGOOD4NOTHINGの始まりの曲である「NEW STORY」で形は変われど何も変わらないスタイルを投げかけると会場からは大声援が飛ぶ。今の彼ら自身を投影した楽曲を盟友であるdustboxの大事なステージで堂々と歌う3人の姿。GOOD4NOTHINGがGOOD4NOTHINGであることを叩きつけた圧巻のライブを見せてくれた。「Cause You're Alive」での大合唱はdustboxと築いてきた関係性や時間や色んなものが渦巻いていたように感じた。

続くSiMも流石のライブでオーディエンスの度肝を抜いていた。「オナナナー!オナナーナーナ!」の号令を合図に「Blah Blah Blah」でツーステップ地獄と化したZepp Nagoya。SiMの特徴であるパンクとレゲエのコントラストがZepp Nagoyaという大きな会場に拡がる。ジャンルの壁を失くすのではなくジャンルとジャンルが手を繋ぐ。それが今の時代だと思うし、今の在り方だと思う。それはこの日のラインナップにSiMがいることでも証明している気がする。「Faster Than The Clock」では巨大なサークルが出来上がりスイッチしていく楽曲展開に合わせ気持ちをトリップさせたオーディエンスがこれでもかと暴れまくる。そんなオーディエンスに向けMAH(Vo)が「dustboxのファンの総称って何ていうんですか?ゴミですか?」とブラックジョークを投げかけると、Zepp Nagoyaに集まった満員のゴミ達(失礼!)も大爆笑。続けざまに「お正月、何してました?」と問いかけておいて間髪入れずに「興味ないです!」とのヒトコマにも大ウケの会場。こうやって会場を自分達のホームにしていく流れは流石過ぎるし秀逸だ。彼らのルーツであるレゲエが色濃く反映された「GUNSHOT」では場内総モンキーダンス状態、パンカビリー要素満載のイントロが印象的な「MAKE ME DEAD!」ではまるでテーマパークに来たような雰囲気にも。重厚なリフの猛襲とキャッチーなメロディが並走する「KiLLiNG ME」の破壊力も凄い。ラストはSiMの要素を全部詰め込んだ「f.a.i.t.h」でZepp Nagoyaをカオティックに掻き乱しdustboxにタスキを繋いだ。

GOOD4NOTHING、SiMからバトンを受け取ったdustbox。「目覚め」の意味を持つ『The Awakening』を冠したアルバムを完成させ7ヵ月に及ぶツアーを経験してきた3人がそのツアーのファイナルシリーズでどんなライブを見せてくれるのか胸が躍る。メンバーがステージに登場すると期待と興奮ではち切れそうなキッズ達が一斉に拳を上げる。アルバム『The Awakening』のオープニングでもある「Awakening」をSEにメンバーが登場。アルバムのツアーらしく「Awakening」から「21g」といったアルバム再現でスタートダッシュをキメるdustbox。スピード感のあるメロディックパンクサウンドにキラキラした良メロディを落とし込んだ「21g」のイノセント感といったらもう。特筆すべきは3人の表情が半年前にHUCK FINNで観たときとは何かが違って見えたこと。このツアーでdustboxが何を感じ何を得たか。



それはライブ冒頭の「21g」を演奏する3人の表情が物語っていた。これまで何度も何度もライブで聴いてきた「Not Over」も少しだけ表情が違ったような気がする。メロディを追いかけるようなギターリフに涙腺を刺激され、dustboxというバンドがここに辿り着くまでの経緯を想像する。そういうイメージを頭に浮かべるとき、dustboxの放つメロディックパンクは滅茶苦茶効いてくる。「Don't Call Me An Average Guy」の冴えわたるメロディワークはZepp Nagoyaという大きな会場だと更にその破壊力を増すことも実感した。スリーピースのメロディックパンクにおけるコーラスの掛け合いは正義だなと改めて思う瞬間でもあった。「Riot」で「ライオット!」と全員で叫んだ後に「Farley」で「ネバー!トゥーレイト!」と叫びながら「これこれ!」と気持ちが高まる。コーラスワークだけでなく、シンガロングもメロディックパンクの醍醐味だ。これだけの美メロにシンガロングもコーラスもがっつりなんだから、dustboxというバンドは無敵のメロディックパンクバンドなんだと思う。「アラフォーのメロディックバンドでZeppツアーが出来るのは俺達くらいでしょ!」とSUGA(Vo/Gt)が叫ぶと会場からは拍手と歓声も。続けることだけが全てじゃないが、続けることで辿り着く場所があることをdustboxが実証してくれていることは、後続のバンドにも希望を与えているのではないだろうか。




「Resistance」のような歌をしっかり聴かせながらも疾走するスタイルもdustboxの持ち味だ。このスタイルを確立したこともdustboxがdustboxで在り続けられる所以な気がする。「Bird of Passage」の突き抜けるようなSUGAのサビの高音がZepp Nagoyaの屋根を突き破るような抜け方で、今日何度目かの昇天しそうな感覚になりながら、続く「Vicious Circle」の前のめりな高速ビートに身体ごと持っていかれる。アウトロの一瞬変化するリズムパートまで一気に駆け抜けるライブに走り出したくなる。「Out Of Control-Father's Melon Bread-」ではMAHも飛び込んできて楽曲に華を添える。こういう展開がファイナルシリーズで待っているんだからツアーって本当に素晴らしい。続く「Try My Luck」ではダイバーが続出。この曲の持つパワーにはライブで聴くたび驚かされる。サビの掛け合いを聴く度に拳に力が入る。この流れで「Still Believing」なんてきちゃうからロングセットでのライブは見応えがある。「Dance Until Morning」のような軽快なダンスミュージックミーツパンクロックな楽曲もこの日のセットリストには組み込まれていてひたすら楽しい。「Missing Piece」で魅せるdustboxのポテンシャルにも結成20年にしてさらに未来を感じることが出来て「いつまでもワクワクさせられるなあ」なんてニヤニヤしてしまう。




ニューアルバム『The Awakening』から披露された「One Thing I Know」の普遍的なポップさやサビ後のギターフレーズに何も変わらない、それこそ普遍的なdustbox節をまじまじと感じて、思わずみんながどんな顔でライブを観ているか知りたくなって満員のZepp Nagoyaを見渡してみる。そしてすぐに後悔した。なんでかって、それはそのすぐ後に「Here Comes A Miracle」がきたから。ぐちゃぐちゃな笑顔で会場がひとつになって歌う「Here Comes A Miracle」なんて体感してしまったら堪えていた何かが溢れてしまうからだ。この曲は希望であり奇跡。その奇跡がそのまま音になったようなイントロから引っ張る「Hurdle Race」、そして本編ラストとなった「You Are My Light」で今度はバンドそのものが奇跡になったような光景を見せてくれた。奇跡じゃないか、軌跡か。こうやってdustboxは20年走り続けてきたんだろう。




アンコールでは「Bitter Sweet」、GOOD4NOTHINGのMAKKIN(Ba/Vo)を迎えた「Neo Chavez 400」、「Jupiter」、そして「Tomorrow」を披露。盟友と共に20周年を彩ったツアーファイナルシリーズ初日名古屋を大成功させたdustboxは、このツアーを経て現在は21年目に突入している。もうこうなったら30年40年と、覚醒を繰り返し、とんでもない次元まで連れていって欲しい。






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