INTERVIEW

“FIGHT BACK 2025” INTERVIEW!!

盛岡Club Change主催のライブイベント「FIGHT BACK 2025」が5月24日、25日に岩手・盛岡タカヤアリーナにて開催される。コロナ禍の混沌への“反撃”と名付けて始まった「FIGHT BACK」は、続けることによって、地方都市からの“反撃”と、その意味を変え、まるでバンド主催フェスのようなアットホームな雰囲気でのイベントとして今年で3回目を迎える。

開催を記念して主催者である盛岡Club Changeの店長・黒沼亮介氏にインタビューを実施。立ち上げた経緯や今年の見どころなどを聞いた。


Interview by Chie Kobayashi
Photo by Taio Konishi


地方ということにも時代にも争っていきたい 

──「FIGHT BACK」を開催するのは今回で3回目ですが、そもそも立ち上げたのはどういった経緯だったのでしょうか?

初めて開催したのは2022年の年末。盛岡Club Changeの20周年を記念したイベントとして開催しました。コロナがようやく少し落ち着いた時期だったこともあって開催を決めたのですが、2022年になったら次はオミクロン株が流行って、また厳しくなってしまった。コロナに散々やられた時期だったのでそれの抵抗勢力として「FIGHT BACK」と付けました。

──まさに“反撃”ですね。

はい。それまでClub Changeって15周年、20周年と5年おきにイベントを開催していたんですが、チバさん(チバユウユケ)が亡くなったことなどもあって、僕らみんな年齢を重ねてきたから、5年おきだと、なんかもうだいぶ会えないなと思うようになって。だったらできる限り毎年やったほうがいいなと思って、そこから毎年開催することにしました。

──それが昨年の2024年につながったわけですね。

はい。去年は1DAYだったのですが「FIGHT BACK」を続けることができたのがうれしかったので、今年はまた2DADYSに戻そうということになって、今回で3回目です。

──最初はコロナ禍への反撃という意味で「FIGHT BACK」を始めたと思うのですが、同じイベントとして続けていくイメージは、2022年当時からあったんですか?

いや。2022年は20周年のイベントだったからそれだけで終わらせようと思っていました。だけど……2022年のトリはThe Birthdayだったんですね。で、僕はThe Birthdayの「涙がこぼれそう」という曲が好きで、「何やって欲しい」って聞かれて「涙がこぼれそう」と答えていたんです。そしたら「涙がこぼれそう」を最後にしてくれて。つまり初めての「FIGHT BACK」が、「涙がこぼれそう」で終わったんです。なんかそれがずっと心に残っていて……なんだか「やめんなよ」って言われているように感じた。だから同じイベントでまた去年から動かし始めたという感じですね。それに、時代的にロックバンドって流行っていないですけど、それに抗いたいと思った。やっぱり地方って厳しいんですよ。そもそも人口は減っていくばかりだし、おじいちゃんおばあちゃんしかいないし、なんなら俺もおじいちゃんになりかけているし。だからそういうものにも抗いたかったので「FIGHT BACK」として続けていくことにしました。

 

──「FIGHT BACK」というイベントを始めた当初とは、趣旨や目的は少し変わってきていると思うのですが、シリーズイベントにしていくと決めた際、どのようなコンセプトにしようと思ったのでしょうか?

コンセプトはおぼろげながらちょっとあって。「SATANIC CARNIVAL」と、HAWAIIAN6がやっている「ECHOES」の合いの子みたいなものにしたいなと思っているんです。今は1ステージですけど、本当はステージ数を増やして、出演バンドをもっと増やしたい。それと……「サタニック」も「ECHOES」も、偏っているじゃないですか。

──音楽のジャンル的に。

ジャンル的にも集まっている人も。僕も、偏りたいんですよ。ただそれを田舎でやるのはなかなか難しくて……。だから少しずつ、そういうイベントになっていけばいいなって。サタニックも「ECHOES」も、主催者も出演アーティストもバックヤードも偏っているじゃないですか。ライブハウスの延長線上にあるイベントっていう感じがして。そういうものをやりたいんですよね。今って、フェスがすごく多くて、よくわかんなくなってきている。でも僕らはよくわからないものにはなりたくない。ちゃんと差別化されたイベントでありたい。そもそもライブハウスがやっているフェスだから、古いものだけじゃなく、新しいものも取り入れながら、ライブハウスがどこまでできるのかに挑戦したい気持ちもあります。

──ライブハウスが主催しているわけですもんね。

そう。そもそもちょっと様子のおかしい人が好きなんですよ(笑)。去年の打ち上げとか、80人きましたからね。「帰れよ」っていう(笑)。3次会で24時間営業の焼肉屋に行ったんですけど、そこでROTTENGRAFFTYのN∀OKIがラップをしたんですよ。それを見て「ああ、成功したんだな」と思いました。まぁ「終わってんな」とも思いましたけど(笑)。

 

──まさに、これまでの「FIGHT BACK」での印象的だったエピソードを伺おうと思っていました。打ち上げ以外に何かありますか?

去年はオオカミさん(Tokyo Tanaka)が出たんですけど、そのあとトラさんも出たんです。

──トラさん……?

10-FEETのときにトラの格好をしたTOSHI-LOW(OAU)が出て(笑)。いや、なんかもうすごかったですよ。

 

──意味は分かりませんが、なんだか想像はつきますね(笑)。

みんな同世代なので、修学旅行みたいなワイワイした感じですなんですよね。もちろんステージはみんな真面目にやるんですけど、それ以外はワイワイわちゃわちゃ。TOSHI-LOWはトラの着ぐるみを着ていたんですが、脱いでもトラで。シルク・ド・ソレイユみたいになっていて、もうわけわかんないです、いいイベントでしょ?(笑)

──確かに、それはいいイベントですね。バンド主催のフェスのような雰囲気が。

そうそう。みんなリラックスしているのかな、わかんないけど。去年、5月に「FIGHT BACK」をやって、その翌月に「SATANIC CARNIVAL」があって、そのあと「京都大作戦」もあって、それぞれ見に行ったんですけど、どっちもみんなカッコよく終わっていて、「ああ、フェスってカッコよく終わるものなのか」って思いました(笑)。

──確かに「SATANIC CARNIVAL」はどこかヒリヒリしていますし。

そうそう、バチバチしていて。京都大作戦はめちゃくちゃ感動する。なのに、「FIGHT BACK」はよくわかんない感じで、「打ち上げいこう!」ってなる(笑)。

──でも楽しそうです。

うん、楽しいです。ライブがカッコいいバンドを集めているから、ライブはみんなカッコいいし。だけどアットホームな感じだから、なんかみんな……楽しそうにやっています(笑)。

──アットホームな雰囲気なのは、黒沼さんをはじめ、スタッフがバンドにとって顔見知りな人たちであるとか、出演者が仲の良いバンド同士だったりすることが理由ですよね、きっと。

そうだと思います。出演している人が、友達しかいない。僕はそもそも人柄が見えるようなライブをする人が好きで。そういう人を集めたいんですよ。その結果、さっき話したように、様子がおかしい人が集まるっていう(笑)。

──今年のラインナップで言うと、UNISON SQUARE GARDENは新鮮ですね。

ユニゾンは結構前からClub Changeにはよく出てくれていて。しかも彼らは普段あまり打ち上げをしないんですけど、Club Changeのときは打ち上げもしてくれて。しかも彼らもやっぱり様子がおかしくて(笑)。だから好きです。


大船渡地域の高校生とコラボ

──そして今年は「大船渡山林火災支援PROJECT」という新たなプロジェクトも行われます。これはどういったものなのでしょうか?

今年2月に発生した大船渡山林火災の災害支援プロジェクトです。3.11を経て海沿いから山のほうへ移動した人たちが被害に遭ってしまうというとても悲しい災害で。だけど、だからといって御涙頂戴になるのは嫌だった。そこでいろいろと考えた結果、FUNNY THINKのドラムの森亨一の母校である大船渡東高等学校の太鼓部とのコラボステージ、FUNNY THINKのボーカル・金野一晟の母校である大船渡高等学校の特設ブースの展開をすることにしました。

──ではまず、大船渡東高等学校太鼓部とのコラボステージから聞かせてください。これは売上などが出るわけではないと思うのですが、どういう形での支援をイメージしているのでしょうか?

支援というよりは、大船渡を知ってもらうという意味合いです。それと、大船渡の高校生にも「FIGHT BACK」に来てもらいたいなって。森林火災は山側で、大船渡の高校がある地域は、実被害はなかったんだけど、だけど同じ市内ということもあって「災害に遭っています」みたいなモードにならなきゃいけない感じがあるそうなんです。だからちょっとリフレッシュになったらという思いで、大船渡の人たちと話して「じゃあ高校生にも来てもらおう」と。提案したら高校の先生たちも乗り気で。

──なるほど。それこそ同じ県内だからこそできる支援の形ですね。

そうそう。交流しながら支援を続けていけるほうがいいなって。それこそ3.11を機に、内陸と沿岸の絆というものも生まれたから、それを続けていきたい気持ちもあります。

──ちなみに、太鼓部とのコラボというのはどなたのアイデアだったんですか?

FUNNY THINKと高校生のコラボというのは僕のアイデアですが……よくあるのは吹奏楽部とか軽音楽部とかじゃないですか。僕もそのイメージで学校と話をしていたら、学校側から「太鼓部で」って言われて。太鼓部が有名なんだそうです。

──そうなんですね。

でも太鼓部とバンドってどういうコラボになるのか、僕も全然想像がつかなくて(笑)。歌うわけでもないし、楽譜もないから本当にどうなるのか、現時点では全然わからない(笑)。(※取材は4月下旬に実施)でも、まぁやってみます。

──そしてもう一つは大船渡高等学校の特設ブースです。

大船渡高等学校にはボランティアチームというものがあって。何か災害が起きると炊き出しとかに参加するんです。その子たちが、大船渡をPRするようなものを販売するブースです。「被災したから何かください」みたいな感じではないので、来場者は気軽に覗きに来てもらえればと思います。

──フェスと地元の橋渡しをする役目になることで、FUNNY THINKの意識も変わりそうですね。

彼ら自身が東日本大震災を経験してきているから、もともとそういう意識は高いし、今回も何かできないかなというのは思っていたらしくて。すごく良い機会なんじゃないかなと思いますね。グッズを販売してその売り上げを支援金に回すとかだったら自分たちでもできることですけど、地元の高校生とコラボするというのは自分たちだけじゃ簡単にはできないこと。だからいい経験になるし、いい刺激にもなると思います。

───さらには災害支援プロジェクト「CONNECT」との共同企画も決まっています。

はい、災害支援プロジェクト「CONNECT」と共同で、「FIGHT BACK」とTOKYO TANAKAに加え、大船渡と関わりの深い10-FEETの協力もいただきながら、トリプルコラボ支援Tシャツを販売します。売上は制作費を除いた全額を、CONNECTを通じて被災者への生活再建関連の支援に寄付します。


地方からの反撃

──そのほか飲食ブースなどにはどのような特色がありますか?

なんだろうな……飲食の出店の8割くらいが地元の店で。いわゆるフェス飯というよりは、もうちょっと地元っぽいものが出る予定です。冷麺が有名な「ぴょんぴょん舎」とか。あと知り合いも多いので、その……出店者も様子がおかしいです(笑)。だからオペレーションはちょっと……すみませんって感じかも(笑)。

──ステージだけでなく、飲食などのブースにもステージのような雰囲気が漂いそうですね。

はい(笑)。あと、駅から近いんですよ。盛岡駅から徒歩10分で、海浜幕張駅から幕張メッセくらいです。終演は19時を予定しているので、遠方から新幹線で来る人も安心です。東京だったらその日のうちに帰れます。函館も大丈夫。そこで悩んでいる人はぜひ安心して来てほしいですね。たまには田舎に来てください!(笑)。

──では、黒沼さんが出演アーティストやお客さんに当日期待していることはありますか? どんなライブを見せてほしいとか、どんな1日にしてほしいとか。

ライブって一回一回違うじゃないですか。この組み合わせもこの日しかないし。だからお客さんにはまずはそれを楽しんでもらいたいです。アーティストにどんなライブをしてほしいかということについては……みんなそれぞれ生きていれば、コンディションが違うじゃないですか。良いときもあれば、もちろん悪いときもある。だからそういうものも体験できればいいなって感じかな。ずっと見ているバンドが多いから。たとえば2022年にThe BONEZが出てくれたんですが、そのときはJESSEが首の手術を延期して「FIGHT BACK」に出てくれたんです。だからきっといつもとは違うパフォーマンスだったと思う。人間だから、そういうものって絶対にあって。そういうものを確かめられたらいいかなと思いますね。

──バンドがいること、出てくれることにもう意味があると。

うん。だって、もうわかんないですもん。病気とかもあるし、僕らみんないい歳だし。バンドって1人でやっているものじゃないから、はっきり言っていつ終わってもおかしくない。それもあって毎年やっていこうと決めたのもあるんですよ。

──毎年、会えるように。

そうそう。あとは「FIGHT BACK」を誰かに引き継いで、ずっと繋いでいけたらいいなと思っています。自分の仲間たちでどこまでできるのか勝負みたいな。東京とか大阪みたいに大きい都市ではないから、続けていくことも難しいけど、そこにも争っていきたい。「田舎でもできるんだぞ」って。愛媛のライブハウス・Double-u Studioをやっているアニキともよく話していて、アニキも、同じような志で「Diamond Dance」というイベントを始めて。お互い、「しんどいね、でも毎年やろう」って言ってるんですよ。

 

──変な話、ライブハウスだけでもいいところを、大変な思いをしながらもフェスを開催しているのはどうしてなのでしょう?

友達に会いたいっていう、それだけですね。あとは人と人を繋げたい。それこそ今年だったらUNISON SQUARE GARDENとPaleduskとかって、たぶん今は面識ないと思うんだけど、会って話せば仲良くなりそうだなと思うし。

──黒沼さんは「いしがき MUSIC FESTIVAL」も主催されていますが、岩手にパンクミュージックが浸透している感覚はありますか?

いや〜、どうだろうね……。

──そこも目指していきたいところではある?

あります、あります。Club Changeには高校生のバンドがたくさん出てくれるんだけど……8割9割は県外に出ちゃうんですよね。地元で続けてほしい気持ちはあるけど、まぁそればっかりはね。それに、仙台や東京に出て頑張っているのはそれはそれでうれしいし。「いしがき MUSIC FESTIVAL」はまちづくりのイベントだけど、「FIGHT BACK」はそれとはまた違って。

──「いしがき MUSIC FESTIVAL」は街に根付くイベントですが、「FIGHT BACK」はそれこそ“偏っている”ことが大事。

うん。とにかく本当のカッコいいものを見せたいっていう感じ。でもまぁやっぱり、一番は僕がみんなに会いたいからっていうのが一番ですね。今日、取材してもらうから、新幹線の中で「何話そうかな」って考えていたんだけど……何もなかったんですよ(笑)。このイベントのアピールポイントとか、人を呼び込むための施策とか。

──逆に言うと、そういう戦略的なものを考えずに、本当に黒沼さんの会いたい人、ライブが好きな人たちを集めたイベントということですもんね。

うん。最初にも話したように、東北にこういうイベントがないから、僕らも、遠くにいかないと見られないわけで。だから岩手で開催しようと思った。だから、もちろん遠方からも来てほしいですし、普段は東京や大阪までいかないとこういうライブを見られないと思っている東北近郊の人には「遠出しなくても見られる」という理由だけで来てもらえたらうれしいです。

 

FIGHT BACK 2025

日程:2025年5月24日(土) / 25日(日)
会場:岩手県 盛岡タカヤアリーナ
出演:
<5月24日>
SiM / SHANK / ストレイテナー / 04 Limited Sazabys / Paledusk / ヤバイTシャツ屋さん / UNISON SQUARE GARDEN / ROTTENGRAFFTY / FUNNY THINK

<5月25日>
Ken Yokoyama / The BONEZ / G-FREAK FACTORY / SLANG / 10-FEET / Tokyo Tanaka(MAN WITH A MISSION) / nil / バックドロップシンデレラ / HEY-SMITH


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