INTERVIEW

NOISEMAKER「H.U.E.」INTERVIEW!!

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Takaki Iwata

NOISEMAKERがミニアルバム「H.U.E.」を7月1日にリリースした。

昨年10月発売のシングル「MAJOR-MINOR」以来の作品となる「H.U.E.」。AG(Vo)いわく「令和という激動の時代に入り始め、コロナショックによりライブもキャンセルが続き、自分達主催の初の野外フェスも中止。当たり前が当たり前ではなくなった瞬間でもありました。そんな逆境や困難を振り払うかの様にスタジオに籠り続け作ったアルバム」だという。

ジャケット、ブックレット、MVが“色別”できる仕様になっているのも今作の特徴。メンバーが「今年一番面白いCD」と太鼓判を押す、こだわりぬかれた本作について、メンバー4人に話を聞いた。
 

明るい音楽が必要だと思った

――アルバムリリースを発表した際のAGさんの「逆境や困難を振り払うかの様にスタジオに籠り続け作ったアルバムです」というコメントがとても印象的でした。制作はいつ頃だったんですか?(【NEWS】NOISEMAKER「逆境や困難を振り払うかの様にスタジオに籠り続け作った」新作発売 


HIDE(G):作り始めたのは1月くらいからだよね。
AG(Vo):そうだね。コロナの影響が大きくなってきたのはレコーディングのあたりで、レコーディングをし終えるくらいの時期に、東京をロックダウンするかしないかみたいな話が出てたかな。自分たちのライブも、友達もツアーが中止になったり延期になったりしていて、不安な気持ちはいろいろありましたね。
HIDE:それこそ「H.U.E.」のリリースも延期になったしね。
AG:うん、もうぐっちゃぐちゃだった。リスナーの人たちも音楽どころじゃないだろうなと思ったし、いろいろ難しかったですね。ただ、普段はライブをやりながら曲を作ったりレコーディングしたりするんですけど、今回はライブがないぶん、レコーディングに集中できたからそれはよかったかな。とにかく自分たちの信じてる音楽を作りきるという気持ちだった。


――楽曲作り自体は新型コロナウイルスがここまで猛威を振るう前だったかと思いますが、作品にも影響はありましたか?
AG:「Better Days」は世の中を見て、タイトルも歌詞も少し変えました。もともとこの曲は「自分はもうダメかもしれない」と思ったり、うまくいかない日々のことを書いた曲で、もう少しネガティブな歌詞だったんです。ネガティブっていうか……俺は人の痛みに寄り添ってくれるような曲が好きで、そういう曲に励まされてきたから、ネガティブな感情を赤裸々につづっていたんですけど、時期的にみんな辛い時期、大変な状況だったから、明るい言葉に変えました。


――明るい歌詞が求められていると感じた?
AG:そうですね。俺ら自身も明るい曲を欲していたし、「もし今ライブをやったら?」と考えたら、ファンも、カッコよさよりもポジティブになれる音楽、本当に力になる音楽が必要なんじゃないかなって。
――ゴスペルのような入り方もパワフルで力をもらえますよね。
HIDE:本当のゴスペルシンガーに歌ってもらっているんですよ。
AG:出来上がったメロディがゴスペルっぽかったから「ゴスペルっぽくしてみない?」っていう発想から始まって。手拍子したり、自分たちの声を入れたりしてたんだけど、せっかくだから本当のゴスペルシンガーに頼んでみようと。お願いしたのは夫婦だったんですけど、めちゃくちゃ歌うまかったです。
HIDE:30分で帰ったもんね。
AG:時給いくらよって(笑)。
HIDE:でも「ロックバンドなのにゴスペル!?」って思われるんじゃないかなという怖さもちょっとあります。どんなふうに受け取られるか。チャレンジという気持ちも大きい曲ですね。

前作からの進化を感じる「H.U.E.」

――アルバムを聴かせていただいて、それこそゴスペルが入っていたり、シンセやアコースティックギターが入っていたりと、これまでと大きく変わった印象を受けました。
AG:前作と同じような曲はあんまり入れないというのが自分たちのスタイルなので。でもデモをバーっと作って、その中からどの曲を入れようかと考えていくという、やり方自体はいつもと同じです。
YU-KI(B):具体的には挙げられないんですけど、曲を聴いて俺も前作より進化している印象を受けました。言ってた通り、2人(AGとHIDE)はすごく曲の被りを気にするんです、「前のあの曲に似てる」とか。でも俺は今作を聴いて全然感じなかったので、そういう会話はしましたね。
――個性豊かな楽曲が詰まった今作ですが、特に好きな曲や印象的なパートなどはありますか?
UTA(Dr):僕は「SILENCE」。最後のドラムは、何重にも重ねてるんですけど、収録曲の中で一番苦労したと思います。うちのスパルタのディレクターが……(HIDEを見る)。
HIDE:ふふふ(笑)。
UTA:一つずつ録って重ねてを繰り返していくので、本当に大変でした。
HIDE:そんなに大変じゃないだろ、叩くだけなんだから(笑)。
UTA:いやいや!(笑) でも出来上がったものを聴いて「こんなにカッコよくなるんだ!」と感動しました。苦労した甲斐があったなと思いました。
――「SILENCE」はオーケストラも入っていて、すごく綺麗な曲ですよね。
UTA:綺麗ですよねえ。そこにAGの綺麗なボイスがねえ(笑)。
AG:ははは(笑)。
UTA:でも本当に、大人っぽくてカッコよくて気に入っています。
――YU-KIさんは?
YU-KI:一番好きなのは「THE ONE」かな。ベースもいい感じに入れられて気に入ってますね。でも全曲聴いてほしい。というのも、今回は3種類のベースを使って録ったんです。曲にあわせて使う竿を選んで。こだわったので聴いてもらいたいですね。
――3本はどのように使い分けていったんですか?
YU-KI:ディレクターと相談して。細かい話なんですけど、3本とも使ってる木が全然違って、その木の違いが音の違いになるんですよ。その細かい音の種類を、曲にあわせて選んでいきました。レコーディングのためにベースをいくつも借りてきて、1曲ずつベースを替えるくらいの人もいると思うんですけど、俺は自分のベースだけでやりたいなと思っていたので、今回自分が持っている3本がうまくハマってよかったです。

より自由に

――曲を作っているHIDEさん、AGさんは今作の楽曲を改めて聴いて、いかがですか?
HIDE:1曲目「Spineless Black」はNOISEMAKERっぽいし、2曲目「Better Days」はチャレンジ、3曲目「THE ONE」はオルタナ感強め……と、いろいろな曲が入れられたなと思います。それぞれ色が違うからこそ良さが引き立つというか。それこそ「Because」では初めてアコースティックギターも使いましたし。

――アコースティックギターを使った曲、初めてですよね。
HIDE:はい。家とかではもちろん弾いてましたけど、音源になるのは初めてですね。
――これまでもミディアムチューンなどありましたが、すべてエレキギターでした。今回アコースティックギターを使ってみようと思ったのはどうしてだったんですか?
HIDE:バラードだから「ギャーン」って鳴るのもなぁと思って……やっちゃいました。ラウドバンドとしてくくられがちだけど、もうオルタナティブだなと思ってもらえるんじゃないかな。
――NOISEMAKERとして、発想がどんどん自由になっていっている感じがしますね。
HIDE:確かに。ドラム、ベース、ギター、ボーカルのベーシックな楽器なので、それで曲を作っていくと、良くも悪くも限界があるんですよ。似たような曲を作らないようにはしてるけど、サウンド的には変わらないし。同じような曲を作り続けること、変わらないことって悪いことではないですけど、僕らはそれじゃ満足できない。だからシンセを入れたり、アコースティックを入れてみたり、今回みたいにオーケストラやゴスペルを入れたり。いろんな変化を楽しんでいきたいですね。
――AGさんはいかがでしょうか?
AG:全部好きなんですけど……「Because」は自分にとって特別な曲で。この曲は3、4年前から持っていたんです。そのときからメロディとコード、サビの歌詞だけはあって。今回入れることになって歌詞を読み返してみたけど、今と歌いたいことが変わってなかった。自分にとってすごく大事なメッセージです。あとは全体的に僕の声がいいですよね(笑)。
UTA:それは間違いない!
――ボイトレに通ったり、意識的に歌い方を変えたりしたんですか?
AG:単純に成長したんだと思う。歌が上手な人に追いつきたいと思って、家でよく歌ってますし。だからこの先も成長していくと思いますよ。歌で言うと譜割も好きで。「Spineless Black」の譜割なんかは本当に武器だなと思います。あと、特に「Spineless Black」とか「THE ONE」がわかりやすいと思うんですけど、歌はハイブリッドなことしてるのに、サウンドはオールドな、イギリスのロックバンドみたいな音をしてる。こういうバンドって今いないなというのはすごく思ってます。
 

ミックスでは“だらしなさ”を追求

 AG:俺、「THE ONE」のギターソロも好きなんですよね。いわゆる“ラウド”界隈だと、ギターソロでライトハンドとか細かいことをするバンドが多いと思うんですけど、うちは真逆ですからね。そういう違いも、日本のキッズに伝わってほしいなと思います。
HIDE:ちなみにそのギターソロ、レコーディングで弾いてないんですよ。
――え?
HIDE:デモのままなんですよ。レコーディングする時間がなくて……というのは冗談で(笑)、ラフな感じがいいなと思ったの。
AG:適当に弾いた感じがいいですよね。改まって弾くと力入っちゃうし。
HIDE:ミックスしてると、みんなうまいの。レコーディングだから、みんなちゃんと弾く。でも俺、だらしないのが好きだから、「キツイ」なと思って、要所要所であえてだらしなくしたんですよ。その作業がめっちゃ大変だった。
UTA:何をだらしなくしたの?
HIDE:ブレイクをわざとずらしたり。
UTA:ああ。

AG:きっちりかっちりすると逆に安っぽく聴こえるよね。「Because」のピアノもわざとずらして弾いたんですよ。
HIDE:それこそシンセみたいに聞こえちゃうから。
――人間味が欲しくなってくるんでしょうね。
HIDE:そうそう。
 

「H.U.E.」は今年一番面白いCD

 ――最後にアルバムタイトル「H.U.E.」について教えてください。
AG:色彩という意味の「hue」と、「Humanity Under Extremes(人々は極限の中にある)」という2つの意味を込めています。曲の全体像と、今の世の中を見て、レコーディングが終わってからタイトルを決めたんですけど……コロナがなかったら「H.U.E.」というタイトルにもならなかったかもしれないですね。「色彩」は“人の目によって見え方が変わる”ということを伝えたかったから。「見え方」というか、感じ方かな。1つの物事に対して、面白いと思う人もいれば面白くないと思う人もいる。メディアを通すだけで違う見え方をすることもあるし、それこそコロナ禍ではいろんな意見が飛び交っていた。その状況を見て、「人々は極限の中にある」と思えたんです。
――その“見え方の違い”はアートワークにも落とし込まれています。
AG:はい。笑顔1つ取っても、本当に幸せで笑っているのか嘘笑いなのか。涙は嬉し涙なのか、不幸で泣いているのか。ドクロは死を表しているのか、もしくは生まれ変わりを表しているのか。見る人によってネガティブにもポジティブにも捉えられるジャケットにしました。
――そしてさらにそのジャケットは初回限定版付属のカラーシートを使うことで“色別”できる。しかもブックレット、そしてMVまでもが“色別”できる仕様になっています。毎回NOISEMAKERのアートワークには驚かされますね。
HIDE:アルバムはサブスクで配信します。だけどCDも出す。俺はそれがずっと引っかかってて。サブスクで聴けるのに、高いお金を払ってCDを買ってくれる人に対して、喜んでもらえるプラスアルファをいつも考えてるんです。で、そのアイデアを探しに本屋に行ったときに、絵本を見て「これだ」と。
AG:それこそアート本を手に取るような感覚に近いんじゃないかな。音とセットになるっていう意味でも。
――カラーシートを通すことでジャケットの絵柄やMVの結末が変わるという発想、とてもワクワクしますよね。何度でも楽しめるし、それこそ本当にCDを手にしないと楽しめないことなので。
AG:アートワークも含めて、このアルバムは次の作品のきっかけというか……今後のNOISEMAKERの次の場所への入り口になっているような気がしています。
HIDE:今年一番面白いCDかもしれない。マジで思ってます。
AG:うん。こんな作品作ってるバンド、ほかにいないっていう自信があります!

 

NOISEMAKER「H.U.E.」

1. Spineless Black
2. Better Days
3. THE ONE
4. MAJOR-MINOR
5. MY TIME
6. Because
7. SILENCE
初回限定盤
(CD+ORIGINAL COLOR SHEET+SPECIAL ART&PHOTO BOOK)
VPCC-86337 ¥3300

通常盤(CD ONLY)
VPCC-86338 ¥2200

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