INTERVIEW

クニタケ ヒロキ from THE FOREVER YOUNG「夢幻」INTERVIEW!!

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki


THE FOREVER YOUNGのボーカル・クニタケヒロキが初の弾き語り音源「夢幻」を9月2日にリリースした。

“クニの日”にリリースされた本作には、コロナ禍中に制作された新曲「俺はもうどうなったっていいよ」のほか、「GO STRAIGHT」のセルフカバー、中島みゆき「糸」などが収められている。コロナ禍中の葛藤、「GO STRAIGHT」をセルフカバーした理由など、本作に込めた想いをクニタケに聞いた。
 

ライブから得るエネルギーの大きさを実感

──最初に、今回弾き語りの作品をリリースすることになった経緯を教えてください。

「聖者の行進」(2018年5月リリース)の頃くらいから弾き語りの曲を作るようになって。それに伴って、弾き語りライブをさせてもらう機会も増えてきたんです。それでどんどん弾き語りの曲を貯めていって「いつか出したいなぁ」と思っていたところに、レコード会社の方から「出してみないか?」と提案されたので作ることにしました。

──「弾き語りの曲を作るようになった」とのことですが、バンドの曲と弾き語りの曲で作り方に違いがあるんですか?

全然違いますね。技術的な話じゃなくて、ベクトルが違うんです。弾き語りの曲は自分のことだったり地元のことだったり、すごく狭いことを歌っています。最初はどっち用とか考えずに作っていくんですけど、進めていくうちに狭いところへの想いが濃くなっていったら、弾き語りの曲になる感じです。

──今作で言うと「俺はもうどうなったっていいよ」「小郡駅2」が新曲です。「俺はもうどうなったっていいよ」は頂いた資料によると「コロナ禍の中、葛藤する日々の中生まれた新曲」とのことですが、コロナ禍中はどんなことを考えていたんでしょうか?

当初は「ゆっくりできていいな」くらいに思ってたんですけど、ライブがない日々が続くとだんだん自分の存在意義がわからなくなってしまって。焦りが出てきて、制作しては「これじゃないな」を繰り返してました。

──ライブがないと、曲として出てくるものもそれまでとは変わりそうですね。

全然違いました。それにはびっくりしました。ライブから得るエネルギーってめっちゃ大きかったんだなって。それも今回弾き語りの曲を作った理由かもしれないです。
 

俺はこの人たちのために歌うしかない

──とはいえ「俺はもうどうなったっていいよ」は歌詞を読むとすごく前向きですよね。自分に言い聞かせていたところもあったんでしょうか?

言い聞かせていたところもあったと思います。何もやっていなくてもどかしかった時期に、SNSで何かアクションを起こすと「エバヤン(THE FOREVER YOUNG)見たい」とか「曲聞いて元気もらってます」みたいなコメントがたくさん来て。ライブをしない期間「みんなに忘れられとったら嫌やな」くらいに思ってたんですよ。でも逆で。だからそんなみんなからの反応にハッとして「俺、こんなぼさっとしとる場合じゃないな。俺はこの人たちのために歌うしかないんやった」と思ったんです。

──「この人たちのために歌う」という考え方はもともとあったものですか?

だんだんと生まれてきた考え方ですね。昔は「おりゃー」と思うことが、地元のことだったり、身近なやつのことだったりして、それに対して「俺の気持ちはこうだ」ということを歌ってたんですけど。おかげさまで、俺のそういう気持ちをわかってくれるやつとか、俺のこういう気持ちを自分の気持ちと重ねて聴いてくれる人が増えて。そしたらすごく素直に感謝の気持ちが芽生えたし、そいつらのためにやるしかねえなという気持ちに自然となっていきました。

──ライブをして各地でファンの人の顔を見たり、一緒に歌ったりしていることで、そういう気持ちになっていったんでしょうね。

そうですね。「何も言わんでもお互いの気持ちがわかる」。ライブではそういう空間を作れてきていたのかなと思います。正直、今俺は「1日も早くライブをやりたい」という気持ちはなくて。もちろんライブはやりたいけど、みんなが安心してやれるようになってからでいいと思ってるし、必ずそういう日は来るから。それまでは、昔の思い出を引っ張り出して、曲を作ったり、毎日がんばれてる。そういう意味で、俺らの音楽を聴いてくれる人、認めてくれている人に、俺も救われているんですよね。すぐに全部は返せないかもしれないですけど、CDを出すことで少しずつでも返していきたいです。



──レコーディングはいかがでしたか? 何よりもソロ名義の作品であることを実感する場面だと思いますが。

もう脇汗だらだらでしたね。一人なのでやりやすい部分もあったんですけど、逆に考えなくちゃいけないことも多かったし、めっちゃ緊張しました。「俺はもうどうなったっていいよ」はゲストで小田和奏さんにキーボードを弾いてもらっているんですが、それが死ぬほどよくて。

──小田さんをゲストに迎えたのはどうしてだったんですか?

もともとキーボードを入れたいなとは思っていて。亮介さん(STEP UP RECORDS)に相談したら小田さんにお願いしてもらえることになりました。お会いしたことはないですがNo Regret Life超好きだったんで、ありえないことが起こったと思いましたね。高校の友達に自慢しました。

──「こんなふうに弾いてほしい」といったやりとりはあったんですか?

レコーディングでもお会いはしていなくて、亮介さん伝いでお話をさせていただいたんですが……ほとんど何も言わずだったのに、送っていただいた音がすごくよくて。「なんじゃこりゃ」って思いました。本当にわけわかんなかったです。小田さんのピアノのおかげでめちゃくちゃ良くなりました。ピアノの音が入るだけでこんなに広がるんだと、えらい気付かされました。レコーディングの日、終わってから一人でカラオケ行って「失くした言葉」(No Regret Lifeの2005年6月リリースのシングル表題曲)歌いましたもん(笑)。
 

同級生の結婚式で弾き語りをしていた「糸」

──2曲目は中島みゆきさんの「糸」のカバーです。この曲を選んだのはどうしてですか?

20代前半の頃、同級生が次々と結婚したんですけど、そのときに「お前らバンドしよるなら弾き語りしてくれん?」って言われて、当時のギターのヒラタ(タクヤ)くんと2人で、合計10件くらい結婚式で弾き語りをしてたんです。「糸」は毎回やってたんですけど、酔っ払ってることもあって、いつもヒラタくんは途中でギター弾くのをやめて手拍子にするんですよ。俺はそれをいつも「クソだなこいつ」って思いながら見てたんですけど(笑)、そういう思い出もあって、俺にとっては地元の曲みたいな感覚がある曲なんです。

──さまざまな方がカバーしている曲ですが、聴かせていただいて、すごくクニタケさんらしさを感じました。結婚相手とのたった一人の出会いというよりも、人生で出会ったすべての人との出会いをかみしめたくなる、結婚式よりもどちらかといえばお葬式で聴きたいというか……。

あはは(笑)。でもうれしいですね。言われたら確かにそうかも。亮介さんに「『糸』をタコ糸みたいに歌ったらクニっぽいんじゃない?」ってアドバイスをもらって。だいたいほかの方のカバーはファルセット(裏声)を使って上手に歌われてるんですけど、俺はノーファルセットなんですよ。

──演奏にはバイオリンとキーボードが入っていて、力強い歌声とのハーモニーが絶妙です。

バイオリンは氏川恵美子さん、キーボードは小田さんに弾いてもらってるんですけど……地獄っすね。とてもヤバいです。

──結婚式で歌っていたときは途中からギターすらなくなってたのに、音源になったらキーボードとバイオリンまで入っていて。

そうですよ! レコーディングのときに初めてバイオリンのフレーズを聴いたんですけど、涙が止まらんくなりました。素晴らしすぎたのと、自分の思い出が蘇ってクロスオーバーして。これは……地獄だなと。

──ギターはCOUNTRY YARDのHayato Mochizuki(G, Cho)さんが弾いているそうですね。

Hayatoにはレコーディングの直前にお願いしました。直前というか、レコーディング中というか……。もともとこの曲は俺がギターも弾く予定だったんですけど、同じフレーズを1時間繰り返しても弾けないという悪いほうの地獄で(笑)。Hayatoには3曲目の「GO STRAIGHT」をお願いする予定でレコーディングにも来てもらっていたんですけど、この曲を録るときもいてくれたので「お願いします」って。助かりました……。

Hayatoと「GO STRAIGHT」をやりたかった理由

──3曲目はHayatoさんが参加している「GO STRAIGHT」のセルフカバーです。THE FOREVER YOUNGの曲の中からセルフカバーとしてこの曲を選んだのはなぜですか?

この曲に関しては、Hayatoにギターを弾いてもらって弾き語りをするという構想がすごく前からあって。タイミング的にも今、すごく響く曲になったなと思って入れました。というのも、コロナ禍で外出自粛が始まったくらいのときにTwitterで「うたつなぎ」という企画があって。あんまりSNSで弾き語りとかしてなかったんですけど、そのときに「GO STRAIGHT」で参加したら、みんなえらい喜んでくれたんですよね(https://twitter.com/92_1985/status/1246496074216255489)。自分で言うのもあれですけど、「がんばれ」って、アコースティックにすると嫌味がなくて。

──もともとすごくいい曲ですが、アコースティックにするとまた違う魅力がありますよね。

しかも今回はHayatoがまたいい感じにしてくれて。温かみしかない曲になりました。

──元からこの曲でHayatoさんと弾き語りをしたいと思っていたというのはどうして?

この「GO STRAIGHT」は、もともとHayatoのことを歌った歌なんです。一時期、Hayatoがバンド活動の中で悩んでいたことがあって。「あいつが辞めちゃったらどうしよう」と思ってこの曲を作りました。やけん、歌詞はHayatoに向けた言葉。「語り明かした約束どうする?」という歌詞は、ツアー中にフェリーでいろいろ話したことだったりして。

──Hayatoさんはこの曲が自分に向けて作られた曲だというのは知ってるんですか?

知ってます。当時のレコーディングにもHayatoが遊びに来てくれていて、歌い終わったあとに歌詞を書いた紙を「お前の曲やけん」って言って渡したんですよ。だからいつかHayatoのギターでこの曲を歌いたいなと思っていて。

──すごくいい話ですね。

あいつのおかげでできた曲を、悩みを乗り越えたあいつと一緒にやるの、不思議だなあと思いますね。今回一緒にやるって決まってからあいつがギターに関して「これはどう?」っていろいろ提案してくれて。めっちゃ気持ち込めてやってくれてるなあと思ってうれしかったです。いつかライブでも一緒にできたらと思ってます。たぶん俺ら泣きますけど(笑)。

──「うたつなぎ」の話もありましたが、この曲は本当に不思議な力を持った曲ですよね。

この曲のすごいところは、ライブで俺はこの曲を目の前の人に向けて「がんばれ」って歌ってるんですけど、一緒に歌ってくれる人がいて。つまり俺が「がんばれ」って言われてるんですよ。歌う分だけ俺も「がんばれ」って言われているような気持ちになる。あと単純にいい曲っすよね。俺、たまに自分がキツいときとかに自分で聴いて泣いてますもん。いまだにこの曲に助けられてる。そんな曲を、こんなにいい感じの弾き語りバージョンで出せるのは最高だなと思います。

 

カッコよくねえなと思いながらローソンで飲んでいる人へ

──最後は「小郡駅2」です。「聖者の行進」には「小郡駅」という弾き語りの曲が入っていましたが、その続編というか。

そうですね。地元のやつの歌で、メロディと歌詞がバーっと出てきてすぐにできた曲です。地元で仲いいやつらがいて、それぞれいろんなことを抱えてるんだけど、みんなで集まったときはみんな愚痴とか言わずに、くだらない昔話をして笑いながら飲むんですよ。「小郡駅」ではそういう「つらいことを隠してみんなで酒飲むのが最高」みたいなことを歌ってるんですけど、あるときその中の一人の、見たことのない表情を見たことがあって。そしたら「友達なんだから、なんでも言ってくれ」みたいな気持ちになったんですよね。「次いつ会うかわからないし」みたいな。すごくピンポイントだけど、そいつらに響いたらいいなと思ってできた曲です。

──友達に対しての気持ちも変わりつつあるんですね。

さっき話した、俺らの曲を聴いてくれるやつに「ありがとう」と思う気持ちと一緒で、友達に対しても「友達でいてくれてありがとう」「一緒にいてくれてありがとう」と思うようになった。人間的に変わったんだと思います。

──何かきっかけがあったんですか?

だんだんかな。年を取って大人になってきたのもあるのかもしれない。

──「俺たち今年で34だぜ」ですもんね。

34なのに、金ないから二次会はローソンなんですけどね(笑)。

──でも歳を取ってもそうやってコンビニの前で気軽に飲める友達って大事ですよね。

そう、カッコつけなくていいってことなんで。でも大人になると「そういう人が大事」と思える人は少なくなってくると思うんですよ。みんな「二次会、バー行こうぜ」ってなりますもん。でも俺は、そういうやつに対して「俺にはそんな気を張らなくていいのにな」って思う。

──この曲は明らかに特定の誰かへの歌で、最初に言っていた、弾き語りだからこそできた曲ですよね。とはいえ「悲しみは俺にまかせとけよ」みたいなことは、みんながクニタケさんに言われたい言葉でもあるような気がします。

そうですね。自分の話を基に作った曲ですけど、聴いてくれる人にも響いてほしいなと思っていて。それこそ「俺たち今年で34だぜ」のフレーズなんかは、聴いてくれている人が今はまだ34歳じゃなくても、34歳になったときに聴いて、何か刺さったらいいなと思ってあえて入れたんです。「俺、今34歳でローソンで酒飲んでる。あの人と一緒だ」って思ってくれたらなと。「恥ずかしくねえぞ」じゃないですけど……たぶんその人は自分のこと「カッコよくねえな」って思いながらローソンで飲んでると思うんですよ。そういう人に何か響けばいいなって。だって俺、ローソンでベロベロになるまで飲んでますからね(笑)。

──その背伸びをしないクニタケさんの姿や言葉に、みんな「自分と一緒だ」と思って力をもらえるんでしょうね。

俺は本当にTHE FOREVER YOUNGを聴いてくれている人とか、このインタビューを読んでくれてる人と何も変わらないですからね。そういうことがこの「夢幻」で伝わればいいなと思います。
 

ライブや音楽は夢と幻

──この作品に「夢幻」というタイトルを付けたのはどういう思いからですか?

コロナの時期で葛藤しながら曲を作ったと話しましたけど、この期間に「俺に足りないものはライブ、音楽だ」ということを痛感して。ライブとか音楽って、夢と幻だなあって思ったんですよ。

──現実じゃないと。

確かに現実なんですけど、儚いから。パンクロックは一般的なものではないと思うし、ライブは非日常な時間。CDという形はありますけど、音楽自体は手につかめるものじゃなくて。耳に残ったり、心に響いたりするものだと思うので、このタイトルにしました。コロナが終わったらまた“夢と幻の間”に行きたいです。

──今作の収録曲もいつかライブで披露できるといいですね。

そうですね。以前みんなにオススメのラーメン屋さんを聞いたらものすごく反応があったので、教えてもらった全国のラーメン屋さんを回りながら弾き語りツアーができたら最高っすね。

 

 

 

 


クニタケ ヒロキ from THE FOREVER YOUNG「夢幻」
01. 俺はもうどうなったっていいよ
02. 糸(※中島みゆきカバー)
03. GO STRAIGHT(※セルフカバー)
04. 小郡駅2

各配信サイトにて配信中:https://vap.lnk.to/mugen

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