LIVE REPORT

04 Limited Sazabys "YON EXPO'20" LIVE REPORT!!

Report by 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
Photo by 瀧本"JON…"行秀 / ヤオタケシ

 

2020.11.29
04 Limited Sazabys “YON EXPO'20”@愛知国際展示場


  8月に公開されたドキュメンタリー『04 Limited Sazabys Documentary “Terminal”』にて『YON FES 2020』以降活動休止する予定だったことが語られ、その「活動休止」というセンセーショナルなワードはSNSのタイムラインを席巻した。GENの突発性難聴、KOUHEIの職業性ジストニア、『MYSTERY TOUR 2020』の一部中止、『YON FES 2020』中止と、メンバーの体調と新型コロナウイルスの影響がダブルでバンドを襲い、かつてない状況がフォーリミを取り巻いていたことはドキュメンタリーでメンバーの口からも語られていた。

だけどこのドキュメンタリーに『Terminal』と名付けられていたことで確信していた。全てはフォーリミが新しいスタートを切るために必要なことなのだと。終点を意味するTerminalという言葉をフォーリミが使うのは、それまでの状況から次に向かうときだと思っている。2015年、『CAVU』でメジャーデビューしたフォーリミが「Terminal」で別れを告げたものと新たな始まりを宣言したこと。その助走から高く飛ぶイメージを「Terminal」に持っているからこそ、2020年にもう一度フォーリミがその言葉を発したのではないかと推測する。最低な世界を最高の世界に変換するターニングポイントとしてのターミナル。転がって夢は続いていくのだ。

それを確信させたのが地元名古屋にて開催された『YON EXPO'20』だ。2019年にさいたまスーパーアリーナで開催された『YON EXPO』もコンセプチュアルなライブであったが、活動休止を経て、またコロナ禍におけるライブとして、フォーリミがどんな打ち出し方をしてくるか、期待と少しの不安を持って会場である愛知国際展示場「Aichi Sky Expo」に足を運んだが、そこには徹底的かつ圧倒的なエンターテイメントが待っていた。セントレア空港より浪漫飛行を提供してくれたのはYON AIRLINESというフォーリミの世界にだけ存在する空港会社。ゲートを潜ったその瞬間からフォーリミとの秘密の空の旅が始まっていた。会場では搭乗アナウンスが流れ、堅苦しくなるルールやマナー喚起をもエンタメにすることにニヤリとさせられる。こういう配慮がフォーリミだ。


復活ライブともいえるYON EXPO'20は初日と2日目で全く違うものになった。久し振りのステージに、良い意味での緊張感と再会の喜びがメンバーを包んだ初日を経て、2日目となった11月29日はライブバンドとしての勘を完全に取り戻したフォーリミの姿があった。今回の『YON EXPO』を要約したオープニング映像に胸が高鳴り、メンバーの影が投影された紗幕が落ちフォーリミの姿を目視。雲ひとつない快晴のフライトに大声を出したい気持ちをグッとこらえ拍手で応える搭乗者たち。我慢して我慢して我慢して我慢してきたバンドとオーディエンスが果たした再会の瞬間はあまりにも感動的だ。ライブをするのも、ライブを観るのも久し振りな今のバンドとオーディエンスの気持ちをそのまま表現したような「Feel」でライブはスタート。

肌にこびりついてる感情を取り戻し、ただ先に進む。ターミナルポイントを勢いよく蹴り飛ばしフォーリミが完全復活したことを実感する。オーディエンスが声を出せないことやジャンプ出来ないことでライブシーン自体が完全に再生したわけではない。しかしその状況下で最大限の楽しみ方を見出すことはフォーリミだって観客だって出来る。「音に任せ連れてけ」「音の世界を自由自在fly」と歌う「Warp」なんて今この瞬間のために書かれた曲なのではと思わせてくれる。続く「climb」でも「高く飛ぶための音色」「今、飛び立てよ」と今こそ、今だからこそのメッセージが響く。ここまで来て引き返せないし、ここまで来たなら信じたい。「climb」が発表された当初もあの頃のフォーリミの状況がそのまま歌われているように感じたが2020年の今投げかけられた「climb」も2020年の今の状況そのものであることが非常に興味深い。楽曲がバンドと寄り添って連れ添ってきたことが証明された気がしてならない。

「days」「nem…」「medley」とフォーリミの真骨頂であるポップネスをこれでもかと叩きつける中、叫びたい気持ち、暴れたい衝動を拍手と拳に集中するオーディエンスの気持ちを考えていた。ライブハウスが槍玉に挙げられ、ライブシーンを取り巻く環境が決して良いものではなくなってしまった今、この日だけではなく全国のライブハウスでは様々なガイドラインやルールの中でライブが行われている。だけどバンドが、オーディエンスが守っているのはガイドラインやルールではなく、ライブシーンなのだ。ライブシーンを守るためだったらどんな規制だって守る。ライブハウスを守るのも、ライブシーンを守るのも、バンドを守るのも、自分達だ。


そうやって障害物だらけのジグザグロードを乗り越えてきたバンドと我々の新しい歩幅を示した「Jumper」では最新型のフォーリミを堪能することが出来た。目下最新曲である「Jumper」は武道館やアリーナ公演など大規模なライブを経験してきたからこそのスタジアム感を纏っている。続く「fiction」でもレーザーと映像でライブが最大限に演出されており、フォーリミとしてステージに立っているのはメンバー4人だけど、フォーリミという名のもとに沢山のプロフェッショナルが集結していることを感じる。MCでGENがスタッフに対する気持ちを吐露し、ゲネプロ時にマネージャーがカレーのトッピングまで気を配ってくれるエピソードを話しながら涙ぐむシーンもあったが、ライブが出来ないということは関わるスタッフひとりひとりの生活に直結することをフォーリミは知っているからこそこの期間は辛かったのだろう。4人で飛ばしたフォーリミという紙飛行機はいつしか巨大なジャンボ機になって、乗組員も増え、沢山の搭乗者もいる。その責任を4人が背負う覚悟と決意を垣間見れた瞬間であった。


「Milestone」で醒めない夢を歌い、「mahoroba」で更に深い森にいざなったところでYON EXPO恒例のアコースティックコーナーに突入。「Horizon」「soup」と披露。希望の行方を追うべく名古屋から東京へ活動拠点を移したあの頃があって、今こうやって名古屋の地で「Horizon」を演奏する4人に暖かい光が射し、その光景を見守るファンとバンドが会えない時間に、会えないからこそ育んだものを「soup」から想像する。絆とか愛とか、形として見えないけど確実にそこにあるものを感じさせるアコースティックコーナーが観れるのもYON EXPOの醍醐味だ。


アコースティックコーナーを終えスクリーンにはフォーリミ版「アテンションプリーズ」もしくはフォーリミ版「スチュワーデス物語」なコントドラマが放映された後に、空港整備士のような揃いの衣装で再登場するその姿はユニコーンやRIP SLYME、はたまたビースティーボーイズのよう。ここから後半戦に突入し「Night on」で夜間飛行モードに。夜間だからといってスピードを抑えることはなく、「monolith」でマッハを記録するあたりがYON AIRLINESだ。空港会社なら火気厳禁が常識だがYON AIRLINESは「Alien」では火柱を上げ「Utopia」では爆発音まで出してしまう。でも大丈夫、それがYON AIRLINESなのだ。


この後演奏された「Letter」も「Shine」もまるでこの日のために書かれた歌詞のように感じた。それは最初に書いたバンドと曲が寄り添ってきたこともあるし、ライブという瞬間瞬間の空間で発せられる言葉に気持ちが宿っているからこそ、今のメッセージとして届いているように感じた。

個人的にはYON FESでの「hello」の観客の合唱が今でも脳裏に焼き付いているのだが初日のアコースティックアレンジ、そしてこの日の「hello」では観客の声は出ていなかったはずなのにしっかりと大合唱が聴こえた。それは幻聴とか言霊とか思い込みとかではなく本当に聴こえたんだ。誰も信じてくれなくても自分には聴こえたし、きっとメンバーにも聴こえていた気がする。音楽は常識を超えるのだ。


コロナ禍で自分自身を見つめ直す機会が何度もあり、その都度自分と向き合い不安になった。そんな自分を自分のまま新しい自分へと誘ってくれる「Squall」はこれまでずっと背中を押してくれる存在であったのだが、この日、またまた思いっきり背中を叩かれた気がした。夢にしてしまった蓋を投げ捨てて自分自身に生まれ変わる。またフォーリミに救ってもらった気分だ。そしてきっとフォーリミ自身も自分に向けて歌っているのだろう。同じ時代に同じ痛みを持って同じ時間を過ごしてきたフォーリミと我々の決意表明。後ずさりした弱気も勇気もフォーリミが一緒なら前進出来る。そのためにこうやって再会したのだ。終点としてのターミナルではなく出発としてのターミナル。だからこそこの日のラストナンバーは「Terminal」だったのだろう。最低な世界を最高な世界にしたい。それはバンドもオーディエンスも、もっと言えば音楽に関係ない人だってこの世界に生きる全ての人の願いなんじゃないだろうか。特効薬はまだ見つかってないのかもしれないけれど、不要不急とされた音楽が気持ちの薬になることを僕達は知っている。そのことを確信出来たのもYON EXPOの大きな収穫であった。

アンコールでは「音楽シーンに光が射しますように」と「swim」「Give me」を披露し、まだまだやりたりない表情を浮かべたGENが「今日のライブを忘れないように」と「Remember」で大団円を迎える。フォーリミ完全復活の瞬間だ。2020年12月現在、まだまだ世界を取り巻く環境は厳しい。だけどこれまでだってみんなで乗り越えてきたはずだ。そこにはきっと世界を救う先導者がいて一丸となって戦ってきたはずだ。僕らの世界には今、フォーリミがいる。彼らが希望にアジテーションしてくれる。コロナで失ったものはあまりにも大きい。だけどコロナで気付いたことも大きい。ひとつのバンドがこの期間で何を感じ、何を決断し、何を乗り越えてきたか。そしてそれがどうこの世界に作用するか。大袈裟な話かもしれないけれど、04 Limited Sazabysという世界に4体しかないモビルスーツが誕生したことすらこの世界にとって必然だったように今は感じる。ターミナルから全世界に向けて「04 Limited Sazabysいきます!」と4人の大きな声が聞こえた気がした。



{SETLIST}
01. Feel
02. Warp
03. climb
04. days
05. nem...
06. medley
07. midnight cruising
08. Jumper
09. fiction
10. Milestone
11. mahoroba
12. Horizon
13. soup
14. Night on
15. monolith
16. Alien
17. Utopia
18. Letter
19. Shine

20. hello
21. Squall
22. Terminal
EN1. swim
EN2. Give me
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>>04 Limited Sazabys Official Web Site