INTERVIEW

FUTURE FOUNDATION「TRINITY」INTERVIEW!!

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki

 


Crystal Lake、SHADOWS、NOISEMAKERによるプロジェクト・FUTURE FOUNDATIONが1st EP「TRINITY」を6月2日にリリースした。

昨年ライブハウス支援プロジェクトとして3組が立ち上げたFUTURE FOUNDATION。彼らが、当初発表した「DAWN」に新曲を加えたEP「TRINITY」を完成させた。これを記念して、3組のボーカルによる鼎談を実施。楽曲に込めた想いや、ライブバンドとしてのコロナ禍での葛藤について聞いた。
 

今の状況に対する怒りと、それを通り越した先の希望

──FUTURE FOUNDATIONはライブハウス支援を目的として昨年6月に発足したプロジェクトです。発足と同時に「DAWN」の音源とミュージックビデオをリリースしましたが、当時からEPのリリースまで想定されていたのでしょうか?

 

 


Ryo(Crystal Lake):全く想定していなかったです。「DAWN」だけの予定だったので、まさかEPを出したり、山手線に広告を出したり、多くのミュージックビデオを撮ることになったりするなんて思ってもいなかったです。

Hiro(SHADOWS):去年の10月、11月くらいにEPを出すということが決まって。

AG(NOISEMAKER):「DAWN」のほかに3曲作ることになって、1日1曲のペースで作ったよね。

──えっ、1日1曲のペースで今作を?

AG:はい。全部1日で作ったんですよ。

Ryo:3組で合宿をして、本当にゼロの状態から3曲作りました。誰かがリフを持ってきて、それを元にメロディを作ってサビを作って、1曲できたら「はい、次の曲!」って。

AG:楽器陣がバックを作ってる裏で、俺らは歌詞を作って。

Ryo:で、3人でデモ録って。

──人数が多い分、普段の曲作りよりも時間がかかりそうなものなのに、むしろその作り方で1日1曲ペースは大変ですね。

AG:いい意味でみんな割り切ってましたね。時間が限られてるのもわかってるから。みんなプロだったね。

Ryo:結果、すごくシンプルだけど奥行きがある、3組それぞれの良さの出た曲になってるんじゃないかなと思います。

──「DAWN」は“見えない真っ暗な現状から希望の光が差すイメージ”というコンセプトだったかと思いますが、今作はどのようなコンセプトで作っていったんでしょうか?

Hiro:この状況やコロナに対する怒りですね。

Ryo:基本的に「DAWN」のときのポジティブなテーマがベースになってはいるんですけど、その中でそれぞれ思うことはあったので、ブレインストーミングをして、その中からテーマをピックアップして……という形で歌詞を作っていきました。1曲ずつそれを繰り返していったんですけど、最終的にどれも共通して言えるのは、コロナや今の状況に対する怒りと、それを通り越した先の希望。その2つが大きなテーマになっていると思います。「DAWN」のときはまだ何もわからない状況だったけど、今はある程度見えてきているので、将来へのビジョンみたいなものも描けているんじゃないかな。前回はとにかくそれぞれの思いがぶつかって、かなり散漫で。それがエモーショナルでよかったと思うんですけど、今回はテーマがシュッと絞られて、ストレートにメッセージが込められたと思います。

普段やらないようなトライを

──ではここからは今作に収録される新曲3曲について伺っていきたいと思います。まずは1曲目「FUTURE FOUNDATION」。

AG:これはFUTURE FOUNDATIONのテーマソングみたいな感じじゃない? “ヒーローが集まった”みたいな。アベンジャーズ感というか。

Ryo:まさにアベンジャーズ感。「ヒーローの登場を感じるから、1曲目っぽいよね」って話をしながら作ってました。

Hiro:俺はこの曲で、2人にすげー引き出してもらった感じがしていて。自分のバンドじゃやらない……というかスキルがなくてできないようなことをやれた感じがします。

──それは2人に影響されて出てきたんですか? それとも「こういうふうに歌って」と渡されて、やってみたらできた?

Hiro:「とりあえずこんな感じで」っていうのがあって、それをいかに自分っぽくできるか。それをやってるうちに「自分にこんな引き出しもあったんだ」って。2人に感謝です。

Ryo:そう言うHiroさんもいろいろアイデアを出してくれて。特にバースのところはHiroさんらしさ、SHADOWSらしさが出てると思います。メロディとかリフはSHADOWSらしさがあって、開けたサビにはNOISEMAKERらしさがあって、その合間にあるメタルっぽい尖った部分にはCrystal Lakeらしさがあって。3組がうまくミックスされたなという印象ですね。

──それは意図的だったんですか? 「ここはSHADOWSっぽく」とか「サビはNOISEMAKERが作る」といったルールを決めたり。

Ryo:いや、自然とですね。

AG:本当にジャムって作っていったので。でもみんなどこかしらでバランスは考えてたんじゃないかなと思います。

Ryo:ボーカルで言うと、さっきHiroさんが「引き出してもらった」と言ってましたけど、3人とも普段やらないようなトライを入れようとは思っていて。例えば僕以外の2人は普段あまりシャウトしないですけど、最後の速いパートで「ここは叫んでほしい」とお願いして、シャウトで掛け合いをしてもらったんです。

AG:ハードコアパート歌ったの、生まれて初めてですからね。


──歌ってみていかがでした?

AG:いや~、もうちょっと練習しとけばよかったなと(笑)。

Ryo:いやいや、カッコよかったよ!

AG:でも元々ハードコアは好きで、やってみたい気持ちはあって。ただNOISEMAKERだとちょっと違うから、こういう形でやりたいことができる場所があってうれしいなと思いましたね。まあ疲れましたけど(笑)。

一同:あははは(笑)。

Ryo:2人とも俺が求めてるものがスッと出てきてさすがでした。ここだけじゃなく、それぞれにやったことないことがいろいろあって面白かったですね。

──NOISEMAKERらしさが出ているとおっしゃっていた、開けたサビを3人が歌うのも新鮮でした。

Ryo:3人の声って全然違うはずなのに、合わさるとすごく馴染んで聞こえて。その結果、芯のあるというか、パワーを感じられるサビができたのが面白いなと思いましたね。自分たちでも、デモと完成した音源で全然違うものが出来上がった感じがしました。
 

真面目に歌っちゃダメ!

──歌詞についてはいかがですか? バンド名やイベント名などが散りばめられたユーモラスな歌詞が印象的です。

Ryo:歌詞は「俺たちがFUTURE FOUNDATIONだぜ」って、おちゃらけながら自己紹介しているという内容で。最初、仮でビースティ・ボーイズの歌詞を使って歌を乗せてたんです。その感じが良かったのと、みんなビースティ・ボーイズが好きだから、その雰囲気を残して。

──確かに3組ともおちゃらけた曲はあまりやらないですよね。

Ryo:そうなんです。だから「これはやるしかない」と思って。

Hiro:面白かったですよ。レコーディングのとき、卓にいるRyoから「Hiroさん、もうちょっとバカになっちゃいましょう!」って司令が飛んできて(笑)。

AG:いつも通り真面目に歌っちゃって(笑)。

Hiro:そうそう。「真面目に歌っちゃダメ!」「そこはバカになりましょう」って。で、思いっきりバカになってやってみたら、「めっちゃいいバカっす!」って(笑)。

Ryo:まさに求めてるバカさが出て(笑)。AGくんも独特のチャラさがあって、そこにバカさを足したら、すげークールになって。面白かったですね。3人ともかなりはっちゃけました。

「ツアーで飲み過ぎた翌日の辛い車内を思い出して」

──2曲目は「WHO WE ARE」。個人的には一番3組の“らしさ”を感じる曲でした。

Ryo:この曲は最後に「あと1曲必要だ」となって、本当に1日で作った曲。Takahiroさん(SHADOWS)とHIDEさん(NOISEMAKER)が作ったリフに、Kazukiさん(SHADOWS)とYD(Crystal Lake)が入ってバースができて、AGくんが出したサビがパッとハマって。あんまりこだわり過ぎないようにしようということだけ決めていて、1分で終わるならそれでもいいと思ってたんですけど、気が付いたら自然と展開が付いて、あの形になりました。出来上がったあとに改めて聞くと、一番ライブ感がある曲になってると感じます。モッシュしたくなる。

Hiro:俺、作ってるときのこと全然覚えてねえ(笑)。

──記憶がなくなるくらい急ピッチだったんですか?

Hiro:いや……酔っ払ってて(笑)。

Ryo:デモでのボーカル録りが最後のほうだったので、もうHiroさんはお酒を飲んでて(笑)。でもHiroさんのすごいのは、けっこう酔っ払ってたのにも関わらず、歌えてるどころか完璧に歌いこなしてたところ。

Hiro:自分ではまったく記憶ないんですよ(笑)。翌日「俺、歌った?」って聞いてましたもん(笑)。

Ryo:この曲は、ツアーでの車に揺られて次の場所に向かう場面っていうのがテーマで。前日のお酒が残ってて「かったりー」ってなりながら移動して。で、ステージに出たらちゃんと決めるっていうのがサビ。その状況がまさにぴったりだったんですよね。

Hiro:だからレコーディングのときに「Hiroさん、思い出してください。ほら、ツアーで酒飲んだ次の日つらいでしょ? それで車に揺られてるときの自分を想像しながら歌ってください。かったりー感じで」って言われて。「今もかったりーから、大丈夫だよ」って言って歌いました(笑)。

Ryo:AGくんは「もっと歪ませたい」って言ってたのが印象的でした。

AG:あー。いつもレコーディングにあわせて、歪ませたり歪ませなかったりっていうのを調整していくんだけど、その日はうまくいかなくて。

Ryo:全員のレコーディングが終わったあとに「今ならできるかも」ってもう一回録り直して。そのときのテイクが、いい感じに掠れた渋い感じで、めちゃくちゃよかったんですよ。

AG:よかった。

対立が起こるのは当然だけど、憎み合う必要はない

──先ほどおっしゃっていた、「ツアーのあった日々」という歌詞のテーマについても聞かせてください。

Ryo:懐かしむって言うと語弊があるんですけど「あの頃みたいな日々が必ず戻ってくるよ」と願うような、訴えるような想いを込めました。曲のテンポがドライブっぽくて、ツアーを彷彿とさせる感じがあって。

AG:それにコロナの中で感じた想いを織り交ぜたって感じだよね。

Ryo:サビがストレートでシンプルな分、バースでは抽象的で、かつ諭すような歌詞にしました。どうしてもこういうジャンルって、ストレートで「こうだからこうなんだよ!オラー」っていう勢いのある歌詞が多いんですけど、この曲は意外と知的というか。トーンもかったるい、だるい感じで、遠回しに説得していくようなニュアンスです。今までも世の中で対立や分断ってあったと思うんですけど、コロナ禍になってそれが如実に出たと思うんです。その中で自分の主張を押し付け合うのは違うと思う。それぞれの考えがあって、考えの違いによっては対立が起こるのは当然だけど、だからといって憎み合う必要はない。諭すように歌うことで、その想いを伝えられたらと思って、こういう歌詞になりました。


──冒頭で、歌詞は3人でブレストしながら作っていったとおっしゃっていましたが、一人で書くのとはやはり違いますか?

Ryo:全然違いますね。

AG:相談できる相手がいるっていうのが一番大きいかな。「これどう思う?」とか「こういうことが言いたいんだけど、どうしたらいいかな?」っていうディスカッションができるのがいいし、面白いなと。NOISEMAKERでのときはHIDEには相談しますけど、基本的に最初は一人で考えまくって、それでも出ないときはお酒飲んだりして無理やり書いていくんだけど、今回はそういう無理をしないで、ラフに挑めた。

Ryo:みんなオープンになってましたよね。Hiroさんがなんとなしに口ずさんでたフレーズを「それヤバいっすね」ってそのまま歌詞にしたこともありましたし。

Hiro:まずブレストが面白過ぎて。「最近のライブ、どう思います?」ってことから始まって、書けないようなこともいっぱい言いまくってますけど(笑)、最終的に「ライブに来るヤツらにはカッコよくいてほしいよな」って。

──確かに一人で考えるのとはまた違う視点や考え方が生まれそうですね。

AG:そこからみんなのアイデアをパズルみたいに作り上げていくのも面白かったですね。
 

ライブや音楽は必要なものなのか?

──最後は「GETAWAY」。メッセージ性の強い1曲ですね。

 

 


AG:「君にとって俺は存在してないのか?」っていう、この状況だからこそのメッセージになっていると思います。ライブやライブハウス、音楽って必要なものだけど、どこかで「もしかしてそこまで必要とされてないんじゃないかな」と思う瞬間もあって。歌詞に出てくる「hell」はまさしく、今の時代、今の状況。そこから抜け出したいという葛藤を歌ってます。
──「もしかして音楽やライブが必要とされていないんじゃないか」というのは、やはりこの1年半、皆さん感じていたんですか?

Hiro:俺らに限らず、伝統芸能とかもそうですけど、必要・必要じゃないの前に、当たり前だったんですよね。この状況になるまで、必要・必要じゃないって考えたことがない。

AG:ああ、そうですね。

Hiro:当たり前のことが当たり前にできないということが今、一番最悪なことで。だから俺は、必要・必要じゃないっていうことはあんまり考えてないですね。

AG:俺は、コロナが始まった頃、音楽どころじゃないんじゃないかなって思ってたんです。自分たちも周りのバンドも、配信ライブをやってたけど、1回目はけっこう見てくれるけど、2回目以降はどんどん見てくれる人の数が減って。アルバムを出したけどそんなに聴かれなくて。そういうのを数字で目の当たりにして、みんな生活にいっぱいいっぱいで音楽どころじゃないのかなって。そんな中で俺らバンドマンにできることはなんだろう、俺らの意味ってなんだろうって。自分たちのツアーが延期に次ぐ延期になる中で、そんなことばっかり考えてましたね。

──まさに「GETAWAY」で歌っているようなことを。

AG:はい。でもようやく最近になって、求められる感じがしてきました。みんなも少しずつ余裕が出てきたのかなと思うんですけど。

Hiro:NOISEMAKERはこの間ツアーをやったけど、Crystal LakeもSHADOWSも、コロナ禍になってからまだ有観客でライブをやってないんですよ。HIDEに「ツアーどうだった?」って聞いたら「やっぱりライブ楽しいです」って言ってたし、NOISEMAKERは俺らよりも、必要性を肌で感じてるんだと思う。俺らもライブをやったら、AGの気持ちがわかるのか、もしかしたら「やっぱり求められてない」って思うのか。ライブをやってみないとわからないかな。だからライブをやりたいですね。


Ryo:「TRINITY」を作る前は、ライブやライブミュージックがない日々が日常になっていくんじゃないかっていう怖さがあって。その恐怖も「TRINITY」では歌詞に込められているんですけど。Hiroさんが言うようにCrystal Lakeもライブをやっていないのでわからないですが、今は少しずつ再開しているのを見ながら、「もしかしたら自分たちが主張すれば、自分たちが求めれば、レスポンスが帰ってくるんじゃないか」という希望も感じていますね。今まで通りにできなくとも時代に合ったやり方を探していくことが大事なのかなと、今は思います。

Hiro:必要とされているかどうかの答えって、今まではライブで感じてたわけじゃないですか。でも今はそれがないからAGが言うように、CDを作って配信ライブをして、それを買ってくれた人や観てくれた人の数でしか見られなくて。でも俺は、数の多さじゃなくて、一人でも二人でも俺らを本当に好きで見に来てくれるやつがいるってことのほうが大事だと思ってる。俺らを求めてくれるたった1人のレスポンスを求めるためにライブがあるわけで。それができていないっていうのが、最悪なことなんですよ。

AG:そうだね。俺らがツアーをやったのも、一番は待ってくれる人のためだったし。モッシュもないし、声も上げられない。そんな中で、みんなも自分たちも楽しめるかどうか、やる前はちょっと不安だったんですよ。でも実際に俺らのライブを待ってくれてる人がいて、ライブをやったら喜んでくれる人がいた。そういう人たちの前でライブをやって初めて「あ、ライブやれるじゃん」って気付けた。ライブをしないと、曲も作れなかったんだけど、ライブをやったことでようやく新しい曲もできて。

──そういう意味では、ライブがなくて曲が作れない状況下で、3組で「TRINITY」を作ったことはそれぞれにとって刺激的だったのでは?

Ryo:そうですね。インスピレーションがなくなっていく中だったので、みんなのアイデアをお互いに求めていた感じはありましたね。

AG:このアルバムとこのバンドって奇跡だと思うんですよね。コロナのおかげでできたから……。コロナのネガティブから生まれた奇跡で、必ずライブハウスにカムバックするという想いを持っている3バンド。それを楽しみに、ライブまでこのアルバムを聴きまくって、曲を覚えておいてほしいですね。

──来年1月にはFUTURE FOUNDATIONのライブが決まっていますからね。

AG:ただ……FUTURE FOUNDATIONのワンマンとなったら曲数足りないですよね(笑)。また曲増やすことになったらちょっと怖いなと思ってます(笑)。

Ryo:もう「DAWN」5回くらいやるしか(笑)。


 

FUTURE FOUNDATION「TRINITY」

1. FUTURE FOUNDATION
2. WHO WE ARE
3. GETAWAY
4. DAWN
5. DAWN (80KIDZ REMIX)

2021年6月2日発売
FF-1003 / 1600円(+税)

 

FUTURE FOUNDATION DAWN atTSUTAYA O-EAST" 日程:2022年1月28日(金)

会場:東京都 SHIBUYA TSUTAYA O-EAST
OPEN 18:30 / START 19:30

FUTURE FOUNDATION ? Official Website
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