INTERVIEW

Crossfaith "Slave of Chaos" INTERVIEW!!

Interview by 山口智男
Photo by yao takeshi

 

 9月2日に凶暴な衝動に満ちた新曲「Slave of Chaos」を配信リリースしたCrossfaithを代表して、Koie(Vo)とTeru(Vision / Program)にインタビュー。コロナ禍の真っ只中で結成15周年を迎えたCrossfaithは逆境に抗いながら何を掴んだのか、2人がじっくりと語ってくれた。頼もしい言葉の数々に溜飲が下がることは必至。10月13日からは15周年を記念する「15th ANNIVERSARY TOUR - ATLAS OF FAITH -」がスタートする。


――結成から15周年を迎え、10月からは「15th ANNIVERSARY TOUR - ATLAS OF FAITH -」も始まるわけですが、15周年を迎える現在の心境からまず教えてください。

Koie:うーん、そうだなぁ。Teru、何かある?(笑)
Teru:そうっすねぇ、ほんとに時間の流れっておもしろいもので、結成した1年目の時は5周年とか10周年とか、すげえ先のことだと思ってましたけど、今、15周年を迎えて、あっという間だったって感じてます。いつの間にか時間の流れがすげえ速くなってきた(笑)。俺、Koiちゃん(Koie)とは小学校から一緒で、死ぬまでロック・バンドをやるって思ってたから、バンドをやってるって自然なことではあるんだけど、でも、ロック・バンドをやってれば、嵐もあって、全然平坦な道のりではなかったから、今も同じメンバーでずっとやれてることには本当に感謝してるし、奇跡みたいなもんだなとは思ってます。まして、今のクソみたいな世の中で解散するバンドも中にはいることを考えると、だからこそ俺はバンドの繋がりが大事だとも思うんです。これでバンドがなくなっちゃったら、路頭に迷うと言うか、事件でも起こしそうな感じになっちゃうけど……。
Koie:ハハハ、それはまずいやろ。
Teru:だから、よけいにバンドのみんながいるからやっていけるって感じますね。

――Koieさんはいかがですか?

Koie:15年間ずっと活動してこられたのは、いろいろな人を巻き込んできたと言うか、ほんとに周りの人の力があったからこそだと思うんですけど、俺たちはがむしゃらに15年間走ってきたところがあって。コロナ禍があってから、やっと急行から各停に変わったかなぐらいの感じですけど、ほんとあっという間でしたね。あぁ、15年なんやって感じが強いです。15年間、続けてこられたのは単純にうれしいし、日本のラウド・ロックとか、ヘヴィな音楽とかがちょっとずつ様変わりしてきたのがここ2、3年のような気もするんで、15年間続けてきたCrossfaithがそこで何を次の世代に提示していけるのかも含め、今を生きている若い音楽ファンに影響を与えられるような存在でいたいなとは15年経って、昔よりもさらに強く思うようになった気がします。

――今年の6月にDEADPOP FESTiVALでCrossfaithのライブを見せてもらったとき、「気に入らないことや納得いかないことはいっぱいあるけど、俺たちはそれに抗いつづける」というKoieさんのMCがとても印象に残りました。ライブができないこの1、2年は、バンドにとってなかなか辛い時期ではなかったかと思うのですが、そんな状況に抗いながら、Crossfaithは、さらに強くなれたという手応えもあるのではないでしょうか?

Koie:そうですね。コロナ禍になってから、ファンとの繋がりはこれまで以上に厚くなったと思いますしね。距離が離れれば、離れるほど、相手のことを思ってしまう…じゃないですけど、アーティストもそうだし、オーディエンスやリスナーもそういうふうに感じてくれてると思うんですよ。抗いつづけるっていうのは、もちろん各々が違う考えを持っているとは思うんですけど、その考えを信じて、それぞれに前に進んでいこうとしていることに対して、俺たちの音楽で後押しできたらいいし、俺たちの音楽を聴いて、自分も少し動いてみようって思ってもらえたらいいしってところでのメッセージだったんです。もちろん、俺は俺で政府に対して、アホな政策しやがってと思うこともありますけど、それは千差万別で、1人1人が自分で考えて、隣にそういう仲間がいるんだったら、そういう話をするのも大事だと思うし、そんなふうにみんなが動いていければ、より良くなっていくんじゃないかなとは思ってますね。

――なるほど。新曲の話の前に、もう少し近況を振り返らせてください。Species Inc.という自主レーベルを始めたとき、インタビューでTeruさんは「自主レーベルを始めたことでバンド感がより強固になって、バンドとして進化できる」とおっしゃっていましたが、この1、2年、バンド感と言うか、メンバーの絆もより一層強くなったのではないでしょうか?

Teru:そうですね。おのおのの役割もはっきりしてきたし、バンドのアウトプットに関しても自分たちで舵取りできるし。まぁ、裏を返せば、全部の責任が自分たちにあるわけですけど、本来はそうあるべきなんじゃないかと思いますしね。
Koie:初心に返るというところが強いような気がしますね。バンドを結成した当初は、Teruの実家の車を使わせてもらって、スタジオやライブに行ったり、ライブで使うバックドロップも自分たちで作ったり、自分たちでレコーディングした楽曲をTeruがミックスして、自分たちでデモCDを作って、レコード屋さんに持っていって、「これ無料配布したいんで置いてください。お願いします」って頼んだり、昔は全部、自分たちで完結したところがあったんですよ。そのあと、メジャーのマネージメント、レーベルに所属させてもらって、できることは増えた反面、自分たちの手を離れたまま進んでいく話もあったんですけど、自主レーベルになってからは、ほんとに1から10まで、細かい部分まで自分たちで舵取りしているから、その意味では、ほんとにバンドを始めた頃に戻ったような気がしていて。コロナ禍になる前までは、とめどなくツアーをしていたので、常にメンバーとは一緒にいましたけど、長いツアーが終わって帰ってきたら、1か月ぐらい会わないなんてこともけっこうあったんですよ。でも、それも自主レーベルになってからは、自分たちが進まないと、何も動かないってことが当たり前になったので、そういうところでもメンバーが集まる機会が増えたんですよ。
Teru:ツアーがなくなることで、ツアーで保ってたものもなくなったんですけど、その代わりメンバーが集まって……こういう状況だからこそ、バンドの繋がりが大事っていうのは、そういうことなんですけど、こういう時期だからこそバンドが拠りどころになっている。メンバー全員が共通して、そう思ってるからこそ、有意義な時間を過ごせているんだと思います。

――そんなふうにメンバーが集まると、自然と曲作りになるんですか?

Teru:俺たち、中学や高校の頃からやってる遊びって今も変わってないんですよ。集まって、音楽聴いて、酒飲んで、ほんとに音楽で遊んでるみたいなんです。地元も大阪の田舎だったんで、外にスピーカーを持っていって、廃墟の心霊スポットみたいなところで、自分たちで勝手にレイブみたいなことしてたんですよ。それは今も変わらなくて、自分が曲を作る時も、ふだんからメンバー同士で、「これ、やばいよな」って言い合っている中で、「曲を作ってきたんだけどさ」ってなるんですけど、そこでメンバーから「かっけえ」って言われるとやっぱりうれしいんです。それが曲作りの原点なんですけど、そういうところも変わらないんですよ。

――9月2日に配信リリースした「Slave of Chaos」もそんな中から生まれたわけですね?

Teru:そうです。

――ところで、どんな考えから、このタイミングで9月、10月に2か月連続で新曲を配信しようと?

Teru:15周年記念のツアーに合わせて出したいよねってことなんですけど、「Slave of Chaos」も近日リリースする「Feel Alive」もどっちもこの状況だからこそ生まれた曲なんですよね。「Feel Alive」は去年の11月と12月に開催した「JAPAN TOUR 2020 - SYNTHESIS -」って俺たちのツアーでレコーディングしたお客さんのクラップを使っているんですけど、「Feel Alive」が今の状況を前向きに捉えているとしたら、「Slave of Chaos」は逆にダークサイドと言うか、俺たちの初期衝動や現状に対するフラストレーションをストレートに乗せたんです。
Koie:けっこう両極端な2曲ですね。
Teru:でも、どっちもコロナ禍になってから生まれた曲ではあるから、どこかで繋がってる。

――そんな2曲をツアーの前にリリースして、ツアーに弾みをつけよう、と。

Teru:やっぱりライブでやりたいじゃないですか。だったら、ツアーの前に聴いてもらわないと(笑)。そういうシンプルな理由から配信リリースすることになりました。

――「Slave of Chaos」は、どんなふうに作っていったんですか?

Teru:1回目の緊急事態宣言が出たとき、俺たち、奈良に一軒家を改造したスタジオを持っているんですけど、そこで合宿をしたんですよ。メンバーだけで。その時に作りました。ベーシックは大体、俺が作ったんですけど、その時に出てきた感情っていうのはやっぱり政府への不満も含め、行き場のない怒りで、それを俺たちが表現するとなると、やっぱり自然とエクストリームなものになりますよね。とは言え、俺たち、ほんと雑食で、いろいろな音楽を聴くんですよ。だから、ギターで作ったリフをシンセサイザーに落とし込んで、いろいろな音色を試してたら、同じリフを基に作ってるんですけど、バンド・サウンドと、今回はトラップの要素が多いですけど、おもしろい対比になりましたね。昔からそういうバンド・サウンドとエレクトロ・サウンドの融合っていうのがCrossfaithの持ち味ではあるんですけど、今回、そういう意味では、すげえメリハリがついたと思います。

――今年4月にシングルとしてリリースした「RedZone」「Dead or Alive」とは正反対と言えるくらいCrossfaithが持っているメロディアスな叙情性を排除した曲になりましたね。

Teru:ハードコアの衝動を、曲を作りながら意識しましたからね。ライブをめちゃめちゃ想定した曲ではあるんですよ。

――歌詞を書くにあたって、Koieさんどこから取り組んでいったんですか?

Koie:Teruが最初に雛型になるデモを持ってきたとき、「この状況に対して、とりあえずフラストレーションが溜まってるんだ」と言ってたんですよ。それこそ安部さんがマスク2枚配り始めた時期なんですけど、なんでやねんってみたいなところもあって、その衝動を前面に出したいと聞いて、そこから歌詞を書いていこうとなりました。俺がまずこの曲を聴いたとき、ぱっとイメージしたのが、脱走と言うか、自分がいる現状からの離脱と言うか、ジェイルブレイクじゃないですけど、そういう衝動を感じて。その頃、芸術が世界的に敵視されたじゃないですか。イベントが軒並み中止になったり、ライブハウスは悪だ、エンタメなんてやってる場合じゃないだろってことが言われてるっていうのが当時の状況だったので、そういうフラストレーションは誰しもが抱いていただろうし、特に俺たちはそういう状況に、なんでやねんって思いが強かったし。だから、歌詞には俺たちの居場所を取り戻そうってメッセージも込めました。ただ、もちろん歌詞も大事ではあるんですけど、曲を聴いただけで、みんなが同じような感情を抱くと思うんですよ。

――確かに。

Koie:みんながこの状況から脱出したいだろうし、納得いっていない思いもあるだろうし、この曲に乗せて、その思いを爆発させてくれたらいいなっていうイメージでボーカルラインは考えました。さっき言ってた「RedZone」「Dead or Alive」は、けっこうCrossfaith然とした系譜を辿ってるような楽曲だと思うんですけど、そこに対して、俺たちも音楽的に新たなことにトライしていくことが自然にできたと言うか、コロナ禍のせいで抱く感情が新たなインプットに繋がって、新しいことにもどんどん挑戦していきたいと思えたところもあって、それも含め、自分がいる現状からの脱出を意識しながら歌詞を書きました。トラップのパートでがっつりラップしてるんですけど、そういうところもこういうタイミングだからできたのかなという気はします。ほんと、大脱出したいという衝動が詰まっているんで、バイトしている子がバイト終わりに聴いたら、ムカつくことを夜道で発散してしまうんじゃないかという危険性を孕んだ曲だと思います(笑)。

――なるほど(笑)。

Koie:いや、それは冗談ですけど、Teruのデモを聴いたとき、俺自身がそういう感情になったんですよ。「うぉー!!!!」みたいな。でも、ラップ・パートではしっかりメッセージを伝えるっていう。楽曲の中で、静と動がはっきり分かれてるんですけど、そこで自分のキャラクターの二面性も出せたと思います。

――さっきおっしゃっていたアベノマスクの話やライブハウスが敵視されていたことを、もう忘れちゃっている人もいるんじゃないかと思うのですが。

Teru:いやぁ、夏フェスだって中止に追いこまれてるし、フジロック・フェスティバルに対して、賛否が分かれてるし、上っ面だけで批判してる奴らがめちゃめちゃ多いんで、俺はまだ、ずっとムカついてますよ。

――だからこそ、今、「Slave of Chaos」をリリースすることには大きな意義があると思うんですよ。

Teru:そう思います。今の状況ってまさに混沌としてるじゃないですか。それで、知らず知らずのうちに、その混沌の奴隷になってしまっている。

――まさに。

Koie:いただきました(笑)。

Teru:そういう状況を打破したいという思いもあるんです。聴いた人がちょっと立ち止まって、あれって気づく曲にもなればいいのかな。自分たちに対しても割とあるんですよ。自分たちの曲で自分たちを叱咤すると言うか、自分たちが変に変わってしまわないようにって言うか、音楽とか、芸術とかってそういう力があるって信じているんで。とにかく早くライブでやりたいです。

――最後に15周年記念ツアーの意気込みを聞かせてください。

Koie:Teruも言ってましたけど、俺たちが信じてやってきた音楽の力をみんなにも体感しにきてほしいです。月並みではあるんですけど、俺たちのライブが生きる糧になればいいなと思いますね。自分たちももちろんそうなんですけど、混沌とした日々の中で何か1つ照らしてくれる光みたいなものを、みんな求めていると思うんですよ。そこでそういう光になれたらいい……と言うか、そういうことを感じさせられる自信もあるんです。

――声を出せないとか、モッシュできないとか、Crossfaithが得意としてきたことが封じられている中でライブを続けてきたわけですが、フロントマンとして、アジテーターとして、ライブにおけるパフォーマンスに向かう意識が変わったところはありますか?

Koie:俺は特にないですね。コロナ禍になってから初めてやった有観客ライブがさっき言った「JAPAN TOUR 2020 - SYNTHESIS -」ってツアーだったんですけど、それをやる前は、どういうふうにしたらいいんだろうって考えたこともあったんです。でも、いざステージに立ってみたら、考えてたことがふっとびました。Crossfaithのライブって、暴れるお客さんが多いと俺らも思ってたんですけど、それが封印されたとしても会場やお客さん1人1人の熱は変わってないと思えたんですよ。そしたら自分もそれに合わせて、自然にパフォーマンスできたんです。ライブもいつぶりってくらい久しぶりだったから、正直、大丈夫かなと思ってたんですけど、できるもんですね(笑)。そこにイスがあろうが、マスで区切られてようが、俺たちの思いは届くし、それを感じてるみんなの思いも俺たちに伝わってきたし。セットリストや演出のほうでは意識したところはあったけど、パフォーマンスに関しては変わったところは何もないですね。
Teru:お客さんを以前よりも意識できるようになったところはあるかもしれない。目と目が合うことも含め、1人1人にフォーカスできるんですよ。それは他のメンバーも同じだと思います。

 

Koie:Crossfaithのピットは、このコロナ禍でも一番カオスなんで(笑)。ルール違反をしてるってことではないですよ。6月にLIQUIDROOMでライブしたとき、観にきた友達が「おまえらのお客さん、すごいな」ってびっくりしていて。逆に自分のスペースができたから、自分の世界に入っている奴も見たらわかるし、「ジャンプしろ!」って俺が煽ったら、全員がするから、ステージから見える景色がすごいんですよ。うれしかったですね。Crossfaithのファンはモッシュできなくても、めっちゃカオスだって思いました。
Teru:俺はステージからダイブする衝動を抑えるのがしんどいですけどね(笑)。
Koie:それはな。
Teru:Koiちゃんもクセで、「モッシュ!」って言いかけたことあるやろ?
Koie:あるある。あるけど、俺、プロフェッショナルだから(笑)。

――間違いなくいいツアーになりそうですね。 

Koie:そうですね。Crossfaithって暴れさせるって印象があるから、「Crossfaithはちょっとリスクがある」って考えてるフェスもあると思うんですけど、今年、誘ってくれてるフェスは俺たちを信頼してくれてるんだなって思います。モッシュができなくてもきっちり盛り上げられるって。全然イケると思いますよ。本数はもちろん減って、大変は大変なんですけど、そういう状況下でもライブは全然やりたいですね。

 

 

Crossfaith "Slave of Chaos"

 

”15th ANNIVERSARY TOUR - ATLAS OF FAITH -”

10/13 (水) 大阪なんばHatch
10/15 (金) Zepp Nagoya
10/22 (金) 東京USEN STUDIO COAST
10/30 (土) 福岡DRUM LOGOS
10/31 (日) 広島BLUE LIVE
11/17 (水) 札幌PENNY LANE 24
11/19 (金) 金沢EIGHT HALL
11/20 (土) 仙台GIGS

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