INTERVIEW

Look Back “Birth Tour” Vol.2 CUBE RECORDS

  photograph by Yuta Kato text by Teneight

Crystal LakeのYDらが立ち上げたCUBE RECORDSが企画し、Earthists.とGraupelとSable Hillsの3組が参加したEP「Birth」とそれに伴うBirth Tour。今注目すべき3バンドに声がかかり、スタートしたこの企画は、YDやお客さんの期待以上の楽曲とライブパフォーマンスで、東名阪の3箇所を沸かせ、大盛況にて幕を閉じた。普段、ステージに立つYDとMITSURUらが、CUBE RECORDSでは裏方として、次世代のバンドや海外バンドのサポートする立場で活動をし、この音楽シーンを盛り上げている。そんな彼らのBirth Tourに対する見解や、今後のCUBE RECORDSの目論見などが見えてきた。

  photograph by Kawado

 

“凄く意義があり次のフェーズにも繋がるツアーになった”


ーとりあえず、Birth Tourお疲れ様でした。ツアーを企画してみて率直な感想を教えていただけますか?

MITSURU:実際、僕らが彼ら3バンドと一緒にツアーを回ったことは無かったんですよ。ライブはみたことあるんですけど、どれだけ集客のあるバンドでどれだけの人気があるのかは、SNSやMV、楽曲を聞いた時の客観的な評価しかなかったんですよ。ただ、彼らが頑張っているのは知っていたし、彼らは僕らのライブによく遊びに来てくれていたので、そういうところで繋がりはずっとありました。なので、彼らの成長を見てきた中で、彼らだったら今回のツアーが面白くなるんじゃないかってのがスタートアップでしたね。

ーではツアー前から仲は良かったんですね。

MITSURU:で、蓋を開けてみれば彼らは同期で、もともと昨年には代官山UNITでライブをやろうとしていたけど、コロナの関係で出来なかったことを後から知って。『じゃあちょうどいいじゃん』ってなったものの、案外一筋縄ではいかないなってのがやっぱ率直な感想でしたね。3バンドともすごく勢いがあって、若手の中ではトップを走っているバンドとはいえ、普段彼らがプレイしている箱よりワンサイズ大きな箱で、かつ平日ど真ん中の月曜日という難しいシチュエーションだったので、彼らにとってはかなり大変だった思います。なのでトントン拍子ではなかったですね。



YD:2つの視点でいうと、1つ目は純粋に楽しかったです。今回は運営側の立場でツアーを成功させることができましたし、裏方として楽しむという経験ができて、また違った観点に気づけました。CUBE RECORDSとしての考え方では、ツアーはバンドたち個々が思っているバンドの在り方やお客さんとの関係性、今の音楽と活動をしているフィールドとのギャップを凄く感じられたりと、プレイヤーじゃなくて、運営側だからこそ気づけることがたくさんあって、勉強になったなって。自分自身もそうだし、ツアーを一緒に回ったスタッフにも色んなことを伝えたし、バンドに対してもアプローチの仕方だったり、バイブスのもっていき方やコンディションの整え方などなど。連日のタフなツアーの中で、どうやってライブを組んでパーフェクトな環境を自分たちでつくっていくかを話せたから、凄く意義があり次のフェーズにも繋がるものになったんじゃないかなって感じました。

ーこの3バンドに伝えられることはたくさんあったと思いますが、具体的には?

YD:折れない心?(笑)。

MITSURU:(笑)。



YD:もう軍隊や部活の世界みたいになっちゃうんですけど、プロモーションやライブをするにあたって、企画を打ち出して1回やればいいやじゃなくて、バンドも目標に向かっていくわけで。そこに障害があるとどうしても失速したり、ツアー3日目になるとしょぼくなったりとか、そういったところの気の持ちようを伝えたりしていました。あとはプロモーションって大事なんだよって。人との関係性って大事だよ。結局音楽って人間じゃん?ってところはツアーの中で、共同生活をしながら教えていけたかな。

ー3バンドがライブ予定日に近づくにつれて、自分たちの状態もどんどん上がっていったと話していたんですけど、それもYDさんとMITSURUさんが裏で擦り合わせて会議もして、導いていったって感覚なんですね?

YD:そうですね。第一線でMITSURUがバンドのインターフェースになってくれて、色々コントロールしてくれていました。その裏で自分たちは作戦の計画を立てたりしていたんです。

MITSURU:僕は鼓舞するような言葉をかけるのがあまり得意ではないのですけど、厳しい言葉を若手に言う行為は、彼らの為にも自分の為にも重要なことで、それを実行していくことが今回の学びに繋がりました。やっぱ、YDさんから言うのと、自分から言うのってなんとなく違いますし、僕がしっかり言った上で更にストッパーがいるという何段階かフィルターを通して彼らに伝えていくのはすごく大事だなと思いました。

YD:実際は自分たちも初めての経験は沢山あったし、逆にバンドも成長するし、MITSURUも今日いないSJも自分もノウハウを積んで経験値を上げていく感じではありました。



ーCUBE RECORDSとして、YDさんとMITSURUさんの役割は明確に分かれているんですね。

MITSURU:まあそうですね。YDさんがCUBE RECORDSとして、考えの総意を伝えたり指揮を取ってもらって、それを現場で言葉として伝えるのが僕とか。そういうバランス感でやっていた部分と、SJってもう1人はカメラや写真を中心にやっているので、宣伝用の素材やティザーを作ったり。

YD:動ける人数の人間だけでやっていて。総合的な方向性や計画、そしてドキュメント周りや事務的なところ、映像や写真などメディアやお客さんへ向けたアプローチ。その3つの柱があれば回っちゃうよね?ってのが、DIYのバンドと同じような感覚で一番ミニマムなスタイルなのかなって。

ーCrystal Lakeも全てDIYで活動をされていますよね。そのDIYな活動の経験をCUBE RECORDSとして、今打ち出していっているんですね。

YD:そうですね。そもそもCUBE RECORDSとして打ち出すのは初めてだったんですけど、Crystal Lakeは、ツアーもマーチャンダイスもワールドワイトのブッキングも自分たちでやっているし、マネージメントも主体は自分たちなんで、その大きな概念の作り方やノウハウは自分たちの中にあって。今まではCrystal Lakeを通じて一人称でやっていたものを、今回三人称の観点で挑みました。

MITSURU:CUBE RECORDSは自主レーベルとしてずっとあったんですけど、今年の4月にタイのANNALYNNってバンドがウチからリリースするところから始まり、本格的に若いバンドのサポートや、バンドたちとの接点を持ってやっていこうよって決定したのが今年からで。その第1弾が今回のBirth Tourでした。



ーこのツアーで3バンドの成長を感じた部分はありますか?

MITSURU:やれば出来る。

YD:おおー(笑)。確かに。

MITSURU:渋谷のduoを埋めるのは彼らにとって初めての経験でしたし、ソールドにはならなかったものの、平日でも彼らは最終的に結構な人数を入れてましたし、やってないだけなんだってのが分かりました。だから彼らが本気を出して集客をすれば、それだけの評価がついてくるバンドで、彼らがやってこなかったことを今回やってみて、今後1つ上のステップにいけるんじゃないかって思いました。

YD:やっぱツアー最終日はライブもすごく良くなっていて。ツアー初日やその1ヶ月前の彼らの考え方やライブの挑み方も全然違うし、すごく強いバンドになったと感じました。それに気迫が全然違います。ライブってステージに立つ瞬間が大事じゃないですか。俺はそれって、人間性やミュージシャンとしてのバイブスが核となる部分だと思うんで、普段の私生活から現れてくんじゃないかって考えています。だからライブも普段の生活も全部繋がっているんだなって。

MITSURU:ちなみに、Sable HillsのTakuyaは遅刻魔です。

一同:(笑)。

YD:走ってきて、笑顔と大声で『おはようございます!』って言ってクリアするよね。

MITSURU:これからあいつには、集合時間の30分前の時間を伝えようかなと思ってますけど(笑)。



ーそれこそ、Takuyaくんが3バンドのインタビューで、Crystal Lakeがライブ後に必ず会議をやっていて、それをSable Hillsにも取り入れたと話していました。その結果、バンドとして成長できたと話していました。

MITSURU:海外ツアーでは、時間がなくても毎日会議をやっていて。夜中の3時までしていることもありました。

YD:毎回飯と酒を飲みながらノリで楽しんでいる海外アーティストも含めて、1つのツアーバスなんですけそ、その中で、テーブル2個くらい使って、ビデオ見ながらあーだこーだ話し合って。

MITSURU:照明さんもCrystal Lakeをずっとやっている方じゃなかったりするので、初日と最終日だと、ブラッシュアップした分結果に出て、最終日はバッキバキでしたね。

YD:間違いないね。最後は乾杯だけで終われるくらいにね。

ーCrystal Lakeのストイックさが3バンドに伝わっているんだなっていうのは、彼らの話を聞いていて感じました。

YD:よかった。まあそれが正解なワケじゃないけど、自分たちが経験してきたことは伝わればいいなって。

ーちなみに、Birth Tourの第2弾を開催する予定はありますか?

YD:やりたいねって話はしています。それは今回と同じバンドでもいいし、また別のバンドにフォーカスしてもいいし。で、CUBE RECORDSとしても12/1にOFF THE EDGEって企画をスタートします。それは渋谷のduoで定期的にやっていこうかなって思っていて。今回はSHADOWSとPaleduskとOTUSの3バンドが出演します。SHADOWSはFACTからの流れで今でもメインストリームで活動し続けているし、Paleduskは若手の中でも凄くハイブリッドで、世界に目を向けてやっていて。OTUSもハードコアシーンの中堅で実力もあり、それぞれのポジショニングを持ったバンドたちがクロスオーバーすることをOFF THE EDGEではやりたいなと思い、企画をスタートさせます。ツアーもやるし今後CUBE RECORDSからも音源をリリースできたらいいですね。

ー今後は色んな企画を打ち出していこうとしているんですね。

YD:エクストリームな観点で色々できたらいいのかなって。どうしてもイベントによっては偏った観点になってしまうところを自分達の視点で面白くしたり、盛り上がっていく為にはどうしたらいいのか常に考えています。それに、バンド同士が面白いって思えるイベントって大事だと思うんです。非日常的なイベントは絶対にバンド同士でも刺激があるし、お客さんの層も異なるので、初めて観るバンドもあるだそうし、OFF THE EDGEはバランスが良くて、面白くなるんじゃないかと。



“今はバンドが生まれた時のパッションに近しいものがある”

ーでは、今後のCUBE RECORDSとしてのビジョンは?

YD:まずコロナが収まってみんなが動けるようになったら、海外のバンドを日本のバンドとリンクさせて、何か面白いことをしたいですね。もう1つは継続してイベントを企画したり、新しいバンドにも出会っていきたいなって。それは違うジャンルでも良いし、一緒に働く人でも新しい出会いがあれば良いと思っています。クリエイティブな人たちやグッドバイブスな人たちと出会って、自分たちもブラッシュアップして新しいものにつながっていければ良いのかなっていうのが個人的な思いですね。

MITSURU:レーベルを本格始動しますってアナウンスをしてTwitterとかを始動したんですけど、意外と日本のバンドから連絡がこなくて。。。アジアやヨーロッパのバンドからは連絡をもらえるんですけどね(笑)。

YD:今の人たちって、さっきの冒頭の話じゃないけど、DIYでやるのがベースにあるのかなって。自分たちで制作しているから、それが今の世の中の流れだと思っていますね。しかもCDも出さずにSNSで発信することもできるし、前よりもライブハウスでブッキングなんてすぐ出来る世の中になってるから、ちょっと昔とイメージ違うんだと思います。でも自分たちの強みって、経験値として彼らの足りない部分や、くすぶっている部分を引っ張る力だと思っているので。まあ結局は人と人なので。そういうところに気づいて面白いって思ってくれる人がいれば、どんどん繋がるんじゃないかなと思います。

ーそれがCUBE RECORDSとしての付加価値にもなっているんですね。

YD:一番大きいところじゃないですかね。

MITSURU:Crystal Lakeとして10数年培ってきたノウハウを近い距離で体感してもらえるレーベルなのかなって思います。なので、近い距離で成長していけることも、CUBE RECORDSとしての付加価値になるかなと。

YD:ただ、自分たちも数年後には考えは変わっている可能性もありますし、今はバンドが生まれた時のパッションと近しいものがあると思うんです。好きだからやるし、広めたいからやる。周りの人間がいるから必然的に始まるけど、バンドも組織もどんどん次のフェーズを求めていくと思うんで、自分たちもポジティブにビジネスのフィールドを広げていったり、規模感を大きくしたり、キャッシュフローを作っていったりっていうのはしていくんだろうなって考えています。CUBE RECORDSは今後もお客さんやバンドから面白いと思ってもらえて、更にこのシーンを盛り上げられるるような企画を、僕らのフィルターを通して打ち出していく予定ですね。

ー今後も楽しみにしています!




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