LIVE REPORT

“HEY-SMITH ONE MAN SHOW -15th Anniversary-“ LIVE REPORT!!

Report by Chie Kobayashi
Photo by HayachiN、鈴木公平

2022.3.27
“HEY-SMITH ONE MAN SHOW -15th Anniversary-” @東京ガーデンシアター

バンドキャリア15周年にして、2度目のワンマンライブ。普通ならここまでの15年間を振り返って、大変だった時期を振り返ったり「つらいこともあったけど続けていてよかった」みたいなことを話しそうなものだが、この日のHEY-SMITHに、そんなしんみりしたムードは皆無だった。「バンドはこの世で一番楽で、この世で一番カッコいいんやからどうしようもないわ!」とステージ上で猪狩秀平(Gt, Vo)も話していたが、その言葉の通り、楽しくてカッコよくて、明るい未来を感じさせるライブだった。

クールポコ。による前説ののち(この交友関係もHEY-SMITHらしい)、メンバー1人ずつ車に乗り込んでいくというアニメーションが流れ、観客の期待が最高潮に達したところで、いつもどおりのSEに乗せてメンバーが登場。猪狩は「ハロー! 東京ガーデンシアターへようこそ! ついにこの日がきた。準備できてるか?」と畳みかけ、バンドは「Endless Sorrow」でライブをスタート。乗っけから火玉が飛び出すド派手な演出で、観客のテンションも引き上げていく。

序盤から「2nd Youth」や「Not A TV Show」といったライブ人気曲を惜しみなく飛ばしていく彼ら。フロアに座席こそあれど、ファンは自身のスペースでスカダンスを踊ったり拳をあげたりと、HEY-SMITHの音楽に存分に身を委ねていく。そこに「懐かしい曲」として2011年リリースの「Free Your mind」から「Go Back Home」「No Worry」と2曲が続けられる。リリース当初はメンバーが違ったことや、メンバーチェンジを経て、さらにHEY-SMITHがパワーアップしたことなどを思い出し、改めて15年という長さを知る。そんな観客の気持ちを知ってか知らずか、演奏後には猪狩がぐるりと会場を見渡し、「いろんな人がいる」とうれしそうにつぶやく。そして「わがままにバンドやってきたけど、バンドだけは真剣に取り組んできました。一回も音楽を疑ったことはない。HEY-SMITHを疑ったことはない。ギターを持ったときから同じ気持ちです」とまっすぐに告げた。

ステージ後方の「HEY-SMITH」のロゴがネオンに輝き、「California」「Radio」とポップなナンバーが続くかと思いきや、YUJI(Ba, Vo)がメインボーカルを取る「Don't Try So Hard」ではお得意のツービートが光る。ひさしぶりに演奏された「American Pie」のあとには、「Fog And Clouds」「Drug Free Japan」とドープなナンバーが続けられ、観客は“HEY-SMITHの音楽”でキマっていく。満(Sax)がシャウトするなど、エモーショナルな演奏が続いていたが、照明トラブルが発生。「こんなんあるの?!」と驚くメンバーだったが、さすが百戦錬磨のライブバンド。焦ることなく、猪狩が「何か叩いて」「何か弾いて」とTask-n(Dr)とYUJIに声をかけ、ステージ上で自然とセッションを始める。満が、猪狩が驚くほどの腕前でブレイクダンスを見せる場面もあり、改めてライブバンドとしてのHEY-SMITHの頼もしさを目の当たりにする。しかも、このあとVTRに行く流れだったそうなのだが、「このままはおかしいよな」と急きょ「The First Love Song」をプレイ。予想外ながらも、あっという間にライブへの流れに引き戻したからさすがだ。

VTRで紹介されたのは、猪狩の「吹奏楽部とコラボしたい」という夢の実現までのドキュメンタリー。VTRが終わると、いくつもの応募校の中から選ばれた銚子市立銚子高等学校の吹奏楽部の生徒とHEY-SMITHのメンバーがステージに姿を現した。

「この吹奏楽部より気合いが優っている学校はいなかった」という猪狩の紹介どおり、銚子高校吹奏楽部の生徒は、息のあったパワフルなロングトーンを聴かせながらHEY-SMITHと「Dandadan」をプレイ。「Family」の演奏後には、猪狩は「泣きそうや」と目を潤ませる。「こういうときに娘が欲しくなるんやろな」と笑っていたが、高校生のまっすぐな気持ちは観客にもまっすぐ届いていた。「I'm In Dream」ではイントロを高校生だけで演奏するアレンジに。夢を歌った楽曲でこのアレンジを選ぶところにもHEY-SMITHの愛情深さを感じる。最後はインストナンバー「Proud and Loud」を心地よく演奏して、エネルギッシュで希望にあふれたコラボステージは幕引きとなった。

SiMのMAH(Vo)からの電話で「HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2022」の開催が発表されたあとには、“ハジマザでこの曲が歌えるように”と「Summer Breeze」、“15年経っても俺たちの旅はまだ終わらない”と「Journey」、“すべての友達に捧げます”と「Don't Worry My Friend」と、メロディアスな楽曲が続き、エモーショナルなムードに。最後に猪狩が「15年間ありがとう。そして、これからもよろしく!」と挨拶し、バンドは「Living In My Skin」で本編を締めくくった。

アンコールの声でふたたびステージに登場すると、猪狩は改めてフロアの椅子に目をやり「いつか自由なライブを取り戻そう。そのときまでバンドを続けていようと思っていますので」と、オーディエンスと約束を交わした。そして珍しく他のメンバーにもMCを振ることに。突然の展開に焦り、話す順番を取り合う5人は、先ほどまでパワフルなパフォーマンスをしていたとは思えないほど微笑ましい。そしてトリとなったかなす(Tb)が「15年の歴史で私は半分くらいですが、15年分くらいの気持ちで今日やってます。バンド最高ー!」と声を上げると、大きな拍手が会場を埋め尽くした。「Longest Day」「Goodbye To Say Hello」を演奏したあと、メンバーの顔が一転、引き締まる。猪狩が「あと1曲、この曲はどうしてもこの場でやらなければいけない。俺たちの15周年。ほんまはハッピーな曲だけがいいかもしれないけど、それよりも大事なことがある。パンクバンドとして、中指を立てて終わりたいと思います」と告げて、バンドは最後に「Stop The War」を演奏。バンドとしてのアティチュードをステージ上でしっかり示してライブを終えた。

しかし、アンコールの声は止まず、さらにステージに出てくると、6人は「2分間だけやって帰るわ」と言い、「20 Seconds」「Teenage Frustration」「Come Back My Dog」のショートチューン3曲を一気にお見舞いして、「HEY-SMITH ONE MAN SHOW -15th Anniversary-」を締めくくった。


「バンドってお金以外全部ある。夢も希望も、先輩後輩のつながりも」と猪狩はこの日のMCで話していた。冒頭にも書いたけれど、猪狩はこれまで「バンド最高」「バンドマンが一番カッコいい」と一貫して言い続けてきた。その「最高」で「カッコいい」を、そして「夢も希望も」すべてを見せてくれたステージだったように思う。この日のライブを見て、バンドを始める人がいるんじゃないか。そう思うほどに、HEY-SMITHの姿はいつも以上にカッコよかったし、楽しそうだった。

セットリスト

01. Endless Sorrow
02. 2nd Youth
03. Not A TV Show
04. Fellowship Anthem
05. Be The One
06. Judgement Day
07. Go Back Home
08. No Worry
09. California
10. Radio
11. Jump!!
12. Don't Try So Hard
13. Summer Head
14. American Pie
15. Fog And Clouds
16. Drug Free Japan
17. Over
18. Truth Inside
19. Everlasting
20. The First Love Song
21. Dandadan
22. Family
23. I'm In Dream
24. Proud and Loud
25. Summer Breeze
26. Journey
27. Don't Worry My Friend
28. We Sing Our Song
29. Let It Punk
30. Living In My Skin
31. Longest Day
32. Goodbye To Say Hello
33. Stop The War
34. 20 Seconds
35. Teenage Frustration
36. Come Back My Dog

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