SHANK “STEADY TOUR 2022” LIVE REPORT!!
Report by 山口智男
Photo by chabo (OLEDICKFOGGY)/岩渕直人 (SHANK/NOVOL)
2022.04.13
SHANK “STEADY TOUR 2022” @渋谷Spotify O-EAST
SHANKが還ってきた!
いや、彼らはどこにも行っていないし、コロナ禍においてもツアーを行ってきたしフェスにも出演してきた。そして、昨年11月には主催フェス「BLAZE UP NAGASAKI」も2年ぶりに開催した。
それを考えると、むしろ他のどのバンドよりもSHANKは我々の前に、いつづけてくれたと思うのだが、それでも3月19日にスタートした「STEADY TOUR 2022」の5本目となる東京・渋谷Spotify O-EAST公演を見た筆者は、冒頭に書いたことを快哉として叫ばずにいられなかった。
東京公演の対バンは、「奏でる音色は極悪フォーク、溢れる煮汁はパンクの魂。ダーティ・ラスティック・ストンプ!!!」を掲げるOLEDICKFOGGYだ。彼らとはお互いのライブに参加しあったこともある仲だが、SHANKの庵原将平(Vo, Ba)はこの日、「(コロナ禍で)ライブができない間、G-FREAK FACTORY、OLEDICKFOGGY、WANIMAばかり聴いていた。ボーカルが髪の長いパーマのバンドが好きみたい(笑)」と語っていた。
SEも流さず、バンジョー、およびアコーディオン奏者を含む6人のメンバーがふらっとステージに現れたと思ったら、ドラマーの大川順堂がいきなりドラムを叩き始め、そのまま1曲目の「シラフのうちに」になだれこんだOLEDICKFOGGYはそこから35分、ベスト選曲と言える全8曲を披露していった。
昨年3月にリリースした目下の最新アルバム『夜明け来ず跪く頃に』から1曲もやらなかったのは、延期を繰り返しながら、奇しくも「STEADY TOUR 2022」のスタートと同じ3月19日についにファイナル公演を迎えた全国ツアー「蟻の行進TOUR」で、十二分に演奏してきたからということなんだろうか。
ともあれ、シャッフルのリズムが跳ねる「神秘」、メンバー全員が一丸となって、演奏の熱をぐっと上げる「いなくなったのは俺の方だったんだ」、ギターの裏打ちのカッティングがスカっぽい「HELP」と曲を繋げながら、懐かしい歌謡曲を連想させるせつないメロディをがなるように歌い上げる伊藤雄和(Vo, Mandolin)をはじめ、メンバー達が放つ熱量がとにかく凄まじい。
大半をSHANKのファンが占めていたと思しきスタンディングのフロアにOLEDICKFOGGYのファンはどれだけいたのだろう? フロアから突き上げられる拳の数が曲を重ねるごとに、どんどん増えていったのは、演奏の熱はもちろん、伊藤が歌うメロディの魅力がじわじわとフロアに浸透していった証拠。
「(照れ臭そうに)こんちは。ありがとう。SHANKのツアーに呼んでくれて助かってます。SHANKも俺達に媚びなんて売らなくていいのに(笑)」
伊藤によるジョーク交じりの短い挨拶を挟んでからの後半戦は、伊藤が奏でるMandolinの音色がフォークロア調の味付けを演奏に加えた歌謡バラードの「さよならが言えなくて」で、まず伊藤の色っぽい歌声をアピール。そこから一転、Oh Oh Ohというメンバー達のシンガロングがアンセミックに響き渡る「日々がゆく」、さらにグルービーなリズムがゴキゲンなアイリッシュ調の「月になんて」と繋げ、観客の体を揺らす。気づけば、ステージの袖でSHANKのメンバー達もステップを踏んでいるではないか。
その「月になんて」のアウトロのララララというシンガロングからそのままなだれこんだラスト・ナンバーは、「歯車にまどわされて」。ダンサブルなサウンドに滲む悲壮感は、まさにOLEDICKFOGGYの真骨頂。そして、「うあぁぁぁぁぁ!!」と演奏を締めくくるように伊藤が上げた渾身のシャウトに突き動かされるように無数の拳がフロアから上がったのだった。
対するSHANKは1時間半たっぷりとアンコールも含め、計26曲を披露。この日はSHANKのライブに加え、もう1つ『Candy Cruise EP』と『STEADY』のアートワークを手掛けたアーティスト、NOVOLによるライブ・ペイティングという見どころも。SHANKが「Candy Cruise」で演奏を始めると同時にバックドロップにNOVOLが描いていった絵がライブの終盤に完成したとき、大きな拍手が沸き起こるのだが、それについては後述するとして、「Candy Cruise」「Hope」「Bright Side」とメロディック・パンク・ナンバーをたたみかけ、それに突き上げた拳や手拍子で応える観客とともに序盤から大きな盛り上がりを作っていったSHANKはこの日、演奏のみならず、曲間に挟むMCも絶好調だった。
YON FES 2022以来、11日ぶりに顔を合わせたという3人が、またコロナ禍以前と同じようなライブができる日が来ることを切望しながら、「今の平和な状況を楽しんで帰ってください」(庵原)、「今は前で見ているお姉さんたちも、そのうち後頭部にカカトが飛んでくるようになるから」(松崎兵太/Gt, Cho)と軽口を叩いたのは、まだまだ制限はあるとは言え、ライブの状況が段々良い方向に変わってきたことを肌で感じ取っているからだろう。
「普通のバンドはMCで良いことを言おうとするけど、僕ら、休憩しているだけなんで(笑)」(庵原)
もちろん、休憩が多かったとは思わない。しかし、普段から無口な池本雄季(Dr, Cho)はさておき、この日、庵原と松崎はいつも以上に饒舌だったと思うし、MCはここ最近、ライブを見た中では断トツでリラックスしていたように感じられた。前述したMCも絶好調だったというのは、そういう意味だ。
曲のスケールの大きさをアピールした「Surface」、待ってました!とばかりに観客が飛び跳ねた「Rising Down」、ワウを踏んだ松崎のカッティングに気持ちを預け、観客が心地よさそうに体を揺らしたR&B調の「Karma」と繋げ、観客の気持ちを鷲掴みにしていったところで、2階席に04 Limited SazabysのGENがいることに気づいた庵原と松崎が「GENちゃん、ありがとう!」と言ってGENをイジり始めたもんだから、観客がGENに気づき、ステージの3人が次の曲に入るタイミングを失ってしまうというちょっとしたハプニングも。
いや、ハプニングではないだろう。「もう曲に行ってもいい? GENちゃんに手を振らんでいい! いいですか? 曲やっても」と庵原が言い、観客の笑いを誘ったのだから、ある意味、ライブならではと言える見どころになったのでは。しかも、その直後の庵原による曲の紹介が「アルバムから、『チンチンが立たん』って歌です」なのだから、この日、SHANKがいかにのびのびとした気持ちでステージに立っていたかが窺える。
そのチンチンが立たんって歌=「Mind Games」のスカパンク~レゲエ・サウンドで観客に2ステップを踏ませると、「Departure」「Two sweet coffees a day」「CHOICE」と2ビートのメロディック・パンク・ナンバーをたたみかける怒涛の展開に。前のめりの速いビートに言葉を乗せる庵原の横で、ビートを止めずに曲を繋げる池本と松崎がしっかりとアイコンタクトを取っている。怒涛の展開とは言っても、ただただ闇雲に突っ走っているわけじゃない。
そして、マージー・ビートに通じる魅力もあるパワー・ポップ・ナンバー「Feeling for my words」からの後半戦もタイトな池本のドラムに庵原のウォーキング・ベースが絡みつくスカパンクの「620」、歌メロが際立つメロディック・パンク・ナンバー「#8」、短い尺の中にシャッフルをはじめ、リズムの変化を詰め込んだ「drama queen」と1曲1曲、変化を付けながら曲を繋げていった。松崎が奏でるレイドバックしたリフが異色とも言える「High Tide」で庵原が歌い上げるせつないメロディを、観客がじっと聴きいっている光景が印象に残っている。
そこから「Set the fire」「Smash The Babylon」「Rules」とテンポの速い曲をたたみかけたところで、NOVOLのライブ・ペインティングが完成した。3人が即興でBGM代わりの「Lazy Daisy」を演奏する中、NOVOLがカッターで入れた切込みを剥がすと、そこに「SHANK」の文字が。
「新しいバックドロップ。このツアーからこれを使っていきます」(庵原)高々と掲げられた新しいバックドロップを背負いながら、3人はラストスパートをかけるようにレゲエ・ナンバーの「Wake Up Call」から「Steady」「Cigar Store」「submarine」とメロディック・パンク・ナンバーをたたみかけ、駆け抜けていった。ぐっと引き締まった演奏と《Gotta keep on moving》というパンチラインを持つ「Steady」のかっこよさは格別だ。松崎がギターをかき鳴らしながらジャンプをキメた「Cigar Store」からなだれこんだ本編最後がショート・チューンの「submarine」というところもSHANKらしいが、「リクエスト、全曲やってない。もうちょっとやれたら」(庵原)と、アンコールに応え、3人は「My sweet universe」「Honesty」「BASIC」の3曲を追加。
「みんなで自由に遊べるようになったら、また思いっきり遊びましょう」(松崎)
穿った見方かもしれないが、この日、ステージでのびのびと振舞うSHANKを見ながら、コロナ禍以降の、これまでのライブはもちろん自由にやれない部分もあったと思うし、メンバー達も堅苦しさを感じていたのかもしれないと思ったりも。それがこの日はこれっぽっちも感じられなかった。だから、SHANKが還ってきたと筆者は快哉を叫んだのだが、同時にそこに明るい未来も感じ取ったのだった。
それはやがてやって来るものなのか、それとも自分達で掴みにいくものなのか。どちらにせよ、SHANKはこれっぽっちも悲観などしていない。むしろ、肩の力が抜けた様子からは彼らなりのオプティミズムが感じられた。
それがこの日、会場に足を運んだ人達に、どれだけのインスピレーションを与えたことか。MCで良いことを言おうとしなくても、しっかりと胸に響くものはある。ある意味、そんなSHANKらしさを改めて感じられたことがこの日一番の見どころだったと思う。
STEADY TOUR 2022 追加公演
2022/6/6(月) 高崎 club FLEEZ
2022/6/8(水) 八王子 RIPS
2022/6/10(金) 横浜 BAY HALL
2022/6/28(火) 神戸 太陽と虎
2022/6/29(水) 京都 KYOTO MUSE
2022/7/1(金) 滋賀 U-STONE
2022/7/15(金) 岐阜 Yanagase ants
2022/7/18(月・祝) 静岡 浜松 窓枠
2022/7/25(月) 郡山 HIPSHOT JAPAN
2022/7/27(水) 石巻 BLUE RESISTANCE
※ゲスト:後日発表
[オフィシャル1次先行(抽選制)]
受付期間:4/23(土) 21:00~5/8(日) 23:59
受付URL:https://l-tike.com/shank-steadytour2022/
[チケット]
特典(ラミネートパス)付きチケット ¥4,800
チケットのみ ¥4,200
※特典付きチケットはオフィシャル1次先行のみ受付