LIVE REPORT

SHANK “STEADY TOUR 2022“ LIVE REPORT!!

Report by ヤコウリュウジ
Photo by 岩渕直人

2022.10.16
STEADY TOUR 2022 @ 豊洲PIT

SHANKのツアーファイナルでゲストがDizzy Sunfistにdustbox。いや、これはエグい。このメンツを見たとき、きっと同じように思った人が多いんじゃないだろうか。今年3月からスタートしたSTEADY TOURの最終公演はライヴバンドの雄による三つ巴で華々しく開催された。

ダブルピースを掲げ、大きな雄叫びを挙げ、いつも通りエネルギッシュなあやぺた(Vo/G)が高らかに歌い出し、「SHOOTING STAR」で一気に駆け出していったのがDizzy Sunfist。のっけから凄まじいテンション感。新メンバーとしてメイ子(Ba/Cho)が加入して約半年ではあるが、土台をしっかりと支えるmoAi(Dr/Cho)とのトライアングルも強固であり、一丸となって襲いかかってくるようでもある。この3バンドが顔を揃えたライヴのトップバッター、手加減無用がドレスコードに違いない。

そのまま裏打ちで踊らせまくる「No Answer」に適度な重みを伴ったミドルチューン「Diamonds Shine」へとなだれ込み、オーディエンスを引っ張っていくが、過度な煽りがないのも印象的だった。あやぺたが足を蹴り上げたり、叫んだり、メイ子がフロアを見渡すような仕草をする程度で、基本的には自らのポジションでがっつりとプレイ。その立ち姿は観るたびに頼もしくなっている。

ただ、そうは言っても、テンションがアガりすぎて何を言ってるのかわからなくなるあやぺたのMCは変わりない様子。「みんな、(ツアー)ファイナルって意味わかってる?」と問いかけ、ツアーの最終公演以外の意味があるのかと待ち構えるオーディエンスに対して「えっ、わからんの? このツアーの最後ってこと」と当たり前の意味を続けるあやぺた。いや、そりゃそうだろうという空気が流れるが、その感じが何だか嬉しくもある。気持ちが入りすぎて空回っちゃうぐらいの勢いがやっぱり彼女たちには似合うのだ。

そんな熱い気持ちを爆発させてから大事な友達を思って制作した「Andy」へ。こみ上げてくるモノがあるのか、moAiのグルーヴ感もより増幅していく。そこから新体制になり初の新曲となった「Hey! Stay by my side!」でポジティブなムードを描き、爆走ロードのスイッチを入れるような強烈なメロディックチューン「Life Is A Suspense」をズドンと投下。メイ子のベースソロも飛び出し、オーディエンスも力の限りに拳を突き上げる。そこへキレッキレの「Someday」で追撃するのだから、ステージとフロアともに熱気が上昇し続けていくのは当然だろう。そんなオーディエンスの意気を感じ取ったあやぺたが「進んでる! 進んでる! 進んでる! 進んでる! 日本は前に進んでる!」と叫ぶほどだった。

そして、改めてSHANKへリスペクトを表し、「SHANKのようにウチらも自分をどんどん更新していこうな!」とあやぺたが語りかけ、「夢は死なへん!」と盛大なタイトルコールからこの瞬間に最もふさわしい「The Dream Is Not Dead」、締めくくりには「So Beautiful」をセレクト。ド迫力でありながらどこか温かく、全部を出し尽くそうと叫ぶように歌うあやぺたまでを含めて、どこまでも彼女たちらしいステージだった。

次はスペーシーなSE「New Cosmos」が鳴った瞬間、オーディエンスから歓喜のクラップが巻き起こったdustbox。そんなムードの中、SUGA(Vo/G)の咆哮が口火を切ったキラーチューン「Try My Luck」からスタートするのだからたまらない。YU-KI(Dr)もグッと力のこもったショットを繰り出し、JOJI(Ba/Vo)がフロアへ向けて手を上に挙げ、もっともっとと誘っていくが、そんなアプローチは必要ないぐらいの盛況っぷり。さすがはメロディックパンクバンドの顔役。期待感を軽々と超えるパフォーマンスを見せつけてくれる。

張り詰めたテンション感に惹きつけられる「Emotions」に続けて、「SHANKに贈ります」とSUGAが語ってから放った「Time To Wake」はdustbox流の激でもあったであろう。トリのSHANKへ見せつけるような瞬発力が凄まじく、オーディエンスも飛び跳ね、拳を突き上げる。会場全体がどこまでもヒートアップしていく様に圧倒されてしまった。

だからと言って、妙な気負いを感じさせないのが彼らのスタイル。SUGAが伸びやかでコシのある美声を響かせ、YU-KIがビシッとリズムを刻みつつも、JOJIの独特の軽やかさがいい抜け感を生み出し、バンド全体としてはどこまでもナチュラル。この日も「Riot」から止まらずに「Bitter Sweet」へ続くかと思いきや、「心の準備が必要」とJOJIが一旦ストップをかけるシーンがあったが、そんなやり取りも皆が当たり前のように受け入れられるのだ。

中盤のMCでSHANKへの愛を語って「Take Me Back」をチョロっとプレイしつつ、この日にかける想いを改めて口にした後はまさに怒涛の流れ。まるでシンガロングが響くような熱に包まれたフロアへ向けてバッチバチに「Here Comes A Miracle」にボヤボヤしてたら置いていかれる高速チューン「Hurdle Race」を叩きつけて完全に会場を手中に収め、ダメ押しをするかのように3人がまっすぐに音と想いを飛ばす「Jupiter」と連投。圧巻の光景が繰り広げられていき、ラストは「今日、集まった全員に贈ります」とSUGAの言葉から「Tomorrow」を鳴らしていく。希望の光が射すようなステージに導かれて生まれる一体感。いやはや、素晴らしいステージだった。

いよいよ、本日の主役であるSHANK。2バンドの熱演後ということも拍車をかけ、照明が暗転すればどよめきのような声も聴こえるほどではあるが、そこはあくまで自然体。ゆったりと庵原将平(Vo/Ba)、松崎兵太(G/Cho)、池本雄季(Dr/Cho)は姿を見せ、持ち場へつく。いつものように「長崎、SHANK、始めます」と庵原の宣言から思いっきり「Long for the Blue moon」を鳴らし、ライヴをスタートさせる。

ツアーファイナルということもあり、どうしたって祝福ムードは漂うが、そこに甘えるようなこともない。熱を帯びた庵原の歌声、踏み込んだ松崎と池本のプレイもグッとくる。気持ちの高ぶりがビシビシと伝わってくるのだ。

「踊って帰ってくれ!」との庵原の言葉から放たれた「Life is...」はイントロからフロアが大揺れ。曲展開に合わせて、オーディエンスは飛び跳ねたり、踊ったり、拳を突き上げたり、ここぞというポイントを押さえたノリを見せる。別にそうしなきゃいけないわけじゃない。能動的にひとりひとりがそうしているのが塊となっているのが美しい。

松崎が奏でるリフでフロアが沸き立ち、緊迫感のあるイントロからコクのある美メロが響く「Good Night Darling」、感情が着火されるに決まってる「Rising Down」、オーディエンスが待ってましたと庵原の歌い出しに合わせてクラップし、ガツガツと踊り狂った「620」と叩きつけ、これを感じたいんだよという熱に包まれる。豊洲PITはキャパ3000を誇る大会場ではあるが、流れる空気は完全にライヴハウスだ。

さらにそれを勢いづけたのが「Karma」。庵原が今回のツアーでいちばん人気がなかったと語っていたが、それは押すなよ的な前フリだったのかなと思うほどの盛り上がり。ミクスチャー的な強靭さが押し寄せてくる感じが秀逸だった。

息をつく暇もなくキラーチューン「Hope」を爆発させ、のんびりとチューニングした後も落ちることがないテンション。中盤戦に入っても毎曲がスタートダッシュを決めるような勢い。「Wall Ride」、「Departure」から上手い繋げ方で持っていった「Two sweet coffees a day」に「Bright Side」を剛速球でぶちかます。

もちろん、果敢に攻めかかるだけじゃない。グッドメロディ―を爽快に鳴らす「Time is...」、渋さも光るキレの良いスカチューン「Mind Games」、少し落ち着いたトーンがいい違和感を生み出す「Classic」、印象的なギターリフに曲中で景色が移り変わるようなアレンジが見事な「Smash The Babylon」と続けていくように、その懐の深さも見せつけていくのだ。

ここで庵原がビールを開けて乾杯をし、ひと呼吸。その和やかなムードのまま、ゆったりと「High Tide」を奏でていく。オルタナティブな匂いもする、アコースティックテイストなナンバーだ。歌の良さが引き立つアプローチであり、松崎のギターも味わい深い。聴き入り酔いしれながらグッと拳を握りしめたくなるエモーショナルさも実に良かった。

そこから歌うような池本のプレイも印象的だった「Set the fire」をドロップし、地元の盟友ザ・アンドロイズのカバー「Once Again」から「drama queen」へ。普段のSHANKとはまたひと味違うビートロックテイストにキャッチーなメロディーがリピートされる曲から一気にカオティックなナンバーを続けるのも彼ららしい振り幅であろう。

そして、本編ラストとして畳み掛けるかと思いきや、みんなで焚き火を囲んでいるようにじんわりと心が温まる「Wake Up Call」から駆け抜ける「Surface」とつなげ、サビでグッと開ける「Steady」にショートチューン「submarine」という激動の展開で締めくくり。気持ちよく翻弄されたオーディエンスは惜しみない拍手を送っていたが、これがずっと鳴り止まない。まだまだこの空間を味わっていたいのだ。

そんな熱い気持ちに呼び戻された彼らは、アンコールとしてミラーボールも輝いた「My sweet universe」と「Honesty」をクライマックスと変わらないダイナミズムに溢れたプレイで届けていく。これにてフィナーレと思いきや、3人がステージを去り、フロアがライトで照らされても大きなクラップを鳴らし、その場から動こうとしないオーディエンス。そうであるならば、と再びステージに舞い戻り、「Stop the crap」に「Cigar Store」を叩きつける。最後の最後までバンドとオーディエンスが気持ちをぶつけ合い、高め合う素晴らしい時間だった。

この日、「もう戦う時期じゃないかな」や「取り戻しにかかりたいと思います」といったことを庵原や松崎はステージ上で口にしていた。たしかに高ぶった感情にリミットをかけなければならない現状にはうんざりするところがある。

ライヴに限らず、SHANKのメンバーは決して多くを語らない。押し付けることを好まない性格でもあり、自分たちは好きなようにやるし、それを自由に受け取って楽しんで欲しいということだろう。そんな彼らがあえてそう言葉にしたのは自分たちの単なる決意表明ではなく、駆けつけてくれたオーディエンスと約束したかったのではないか。ともに目指そう、と。もちろん、今すぐにとはいかない。このライヴでも制限があったように乗り越えるべきことも多々ある。だが、こんな夜が繰り返されていけば、きっとまたあの空間が近い将来やってくる。そう信じられるライヴでもあった。



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