LIVE REPORT

SHANK “BLAZE UP NAGASAKI 2022“ DAY1 LIVE REPORT!!

Report by ヤコウリュウジ
Photo by 岩渕直人

2022.11.19
BLAZE UP NAGASAKI DAY1 @出島メッセ長崎

 11月19、20日、2日間に渡ってBLAZE UP NAGASAKI 2022が開催された。会場は出島メッセ長崎。長崎駅から直結しており、小雨がパラついてはいたが、何も気にせず足を運べる好立地。長崎名物のチリンチリンアイスや角煮まんじゅうの出店もあり、その土地ならではのモノを感じられるのが嬉しいところ。加えて、今年はライヴエリアのすぐ近くにレストスペースも設けられ、より過ごしやすい環境になっていた。

 初日のオープニングアクトとしては、昨年に引き続き、龍招宝による長崎が誇る伝統芸能、龍踊り。日本三大祭のひとつとしても数えられる長崎くんちで奉納されているのだが、巨大な龍が空を舞い、玉を飲み込もうとする様はド迫力。開始早々いいムードが高まっていった。

 


■coldrain

 そして、「What’s up NAGASAKI!」とMasato (Vo)が咆哮し、不敵な笑みを浮かべながら爆音と美メロでトップバッターらしい切り込みを見せてくれたのがcoldrain。「オレらもフェスをやってるから知ってるんですよ。1日目の1番目、すげえ大事なんです」と語っていたように、一切遠慮がない。「FINAL DESTINATION」に「HELP ME HELP YOU」と強烈なナンバーを繰り出し、会場をぶちアゲつつも「イケるヤツ、どんだけいるんだよ?」とまだまだ満ち足りないとアジテート。ただ、それはコロナ禍でも現場をともに守り続けてきたオーディエンスに対する信頼があるからこそ。大ジャンプが起こった「MAYDAY」、激しく襲いかかる「RABBIT HOLE」等をドロップし、ラストは「PARADISE(Kill The Silence)」でもっと自由に解放を促していく。今年はオールスタンディングとなり、環境としても前へ進んだBLAZE UP NAGASAKIを勢いづけるパフォーマンスだった。

 


■My Hair is Bad

 最高の土曜日にしようと、オーディエンスの心に響く歌とメッセージを放っていたのがMy Hair is Badだった。BLAZE UP NAGASAKIを主宰するSHANKとの出会いを振り返り、「オレらが言うこと、やることはもう決まってるから!」と椎木知仁(G/Vo)が口にして始めた「ドラマみたいだ」から張り裂けそうなテンション感が抜群。ド直球なラブソング新曲「瞳にめざめて」を瑞々しく鳴らした後、「お昼から酒の歌、歌います」と底抜けにゴキゲンな「仕事が終わったら」をセレクトするらしさも見せつつ、3ピースバンドらしい、ギュッとしながらも弾けるプレイ、その瞬間の感情を投影した歌声も生々しく響き、昨年のステージを超えようという意気込みがビシビシと伝わってくる。

 地元でこういったフェスを主宰しているSHANKへリスペクトを表し、「大好きなモノがずっと大好きであり続けますように。大好きなモノを想像して、自分の歌だと思って聴いてくれ」と椎木が願いをこめて最後に放った「歓声をさがして」は特筆すべきハイライト。自分の心に対してまっすぐに従うことを歌い、より会場全体をヒートアップさせていった。

 


■ロットングラフティー

 いつもとは違う、懐かしいSEが鳴る。それもそのはず。「抗うカタカナモードでよろしくお願いします」とN∀OKI(Vo)もライヴ中にも触れていたが、なんとこの日はROTTENGRAFFTYならぬ旧表記のロットングラフティーとして登場した彼ら。つまり、披露する曲もその時期に絞ったスペシャルバージョン。

 と言っても、懐メロが並ぶような印象はまったくない。ヘヴィなサウンドに歌謡曲の系譜も感じさせるメロディーとの融合は結成当初からのモノ。「毒学PO.P革新犯」で切ないメロディーとガツンとくる音を響かせ、ツインヴォーカルの畳み掛けも痛快な「DESTROCKER’S REVOLUTION!!!!!」に突っ走る「夕映え雨アガレ」と続ければ、会場は揺れに揺れる。いつ観ても彼らのパワー感は凄まじい。

 「ロットンのみんなが知ってる曲、1曲もやりませんけど大丈夫ですか?」とNOBUYA(Vo)が話す場面もあったが、レアなセットリストに歓喜するオーディエンスばかり。淀みなく強靭な曲を叩き込み、ラストは名刺代わりの1曲として書き上げ、<古都のドブネズミ>というフレーズも生まれた「切り札」。「たまにはこんなロットングラフティーもいいでしょ?」とNOBUYAが話した通り、いつもとはひと味違う貴重なライヴは格別だった。

 


■MOROHA

 「アコギとラップでいちばんデカい音、鳴らしたい!」とアフロ(MC)が獣のような大声を上げ、張り詰めた空気の中でスタートさせたのがMOROHAだった。マイク1本にギター1本というミニマムな編成ではあるが、UK(G)が奏でる軽やかな調べをバックに、<俺等は俺等の道を行くだけ>、<勇気や希望笑わない勇気 それだけが俺らを運ぶぜ>といった背筋がピンと伸びるようなバースをアフロが力強く刻み込む「革命」から、観る者を高ぶらせまくっていく。

 「オレの言いたいことはただひとつ」とアフロが叫び、そのままなだれ込んでいった「俺のがヤバイ」でその剛腕ぶりを見せつければフロアからは無数の拳が突き上げられ、柔和に語りかけるラブソング「花向」になっても決して熱は冷めない。どんなアプローチでも本気で挑む姿が美しくもあり、オーディエンスを惹きつけてやまないのだ。

 そして、長崎の地を思い出させてくれたSHANKへ感謝を言葉にして、「オレたちがどんな人間なのかを力いっぱいわかってもらいたい」と出会ってくれたオーディエンスへ向けて「勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ」と「三文銭」を放つ。全身全霊をこめた言葉と音が血をたぎらせ、強く印象に残ったはずだ。

 


■東京スカパラダイスオーケストラ

 圧倒的な多幸感でBALZE UP NAGASAKIを包み込んでくれたのが、初出演となった東京スカパラダイスオーケストラ。揃いのスーツでビシッと決めた極上の音楽集団は、もうその存在自体が音楽フェスのようなモノ。はじめましての人も多いとあってか、まずは「ゴッドファーザー 愛のテーマ」でグッと惹き寄せつつも、ノンストップでとにかくハッピーな空間を描き出し、心浮き立つ「DOWN BEAT STOMP」ではどこもかしこも無邪気な踊りで溢れていく。

 また、加えて懐の深さも一級品な彼ら。「曖昧な悲しみはすべて喜びで塗りつぶすんだよ!」と谷中敦(B-Sax)が叫び、ステージへ呼び込んだのはSiMのMAH。スペシャルコラボとしてSiMのナンバーである「GUNSHOTS」を共にプレイするというサプライズは間違いなくハイライトのひとつ。いや、こんなのアガるしかないでしょう、ということをさも当然のように披露するのは流石とかしか言いようがない。

 その後も華麗なソロ回しや麗しい音を響かせながら極上のナンバーを繰り出し、締めくくりは興奮必至のキラーチューン「Paradise Has No Border」を投下するダメ押しな流れ。会場は笑顔とダンスで終始埋め尽くされていたのだ。

 


■SiM

 間髪入れずに戦闘態勢へ入って、キレッキレのヘヴィサウンドをぶちかましたのがSiMだ。彼らの登場を待ち望んでいたオーディエンスも瞬時に呼応し、襲いかかるような「Blah Blah Blah」、巧みな曲展開で踊らせ、飛ばせ、翻弄する「Amy」、疾走する伝家の宝刀「T×H×C」と矢継ぎ早に繰り出す状況に喜びを爆発させる。

 そして、「僕ら、世界のSiM。そんじょそこらのバンドとの格の違いを見せてやりますよ」とMAH(Vo)が宣言し、ビルボードで6週連続1位を記録した「The Rumbling」を投下。壮大なストリングス、甘美なメロディーにデスボイス、合唱のようなコーラスもあり、まさに世界標準のスケール感が素晴らしかった。

 終盤には「苦労してこのBLAZE UPをやってるのも知ってるんで、地元のみんな、これからもSHANKを支えていって欲しいなと思います」とMAHがエールを贈り、今日はありがとうしかなんだけどと前置きしつつ、そこは悪魔らしく中指を立てながら「長崎、死ねー!」と絶叫しながらの「KiLLiNG ME」で痛快なフィニッシュ。バンドの充実ぶりを見せつけるには十分な内容だったであろう。

 


■SHANK

 初日から熱狂しっぱなしの中、トリを務めるのはBLAZE UP NAGASAKIを主宰するSHANK。意気込みすぎてもいいことなんかない、と語っているように、いつものように自然体で登場する庵原将平(Vo/Ba)、松崎兵太(G/Cho)、池本雄季(Dr/Cho)の3人。SEに合わせて軽くリズムをとりながら、「SHNAK、始めます。よろしく」と庵原が声を上げ、オーディエンスの盛大なクラップに重ねるよう、まずは「Rising Down」を鳴らしていく。

 なだらかなスタートにも思えるが、そこから非日常的な世界へ一瞬で連れ去ってくれるのが彼ら。助走などなく、一気にゼロ距離で迫ってくる音。飄々としているように見えて、実はいつでも臨戦態勢が整っているのがSHANKというバンドなのだ。

 まっすぐに飛ぶ歌声、小気味よいリフ、興奮をより誘うリズムが一体となり、高まっていた期待感を軽々と超えながら「620」へ。今年はオールスタンディングになったBLAZE UP NAGASAKI 2022、裏打ちに合わせてオーディエンスも気持ちよく踊り、ステージへ気持ちを届けるように拳を突き上げる。

 雰囲気のあるリフから2ビートで疾走する「Good Night Darling」をプレイした後、音楽イベントでのガイドラインと現状のギャップについても口にするが、世紀の一戦と呼ばれ興奮の坩堝と化した那須川天心対武尊戦ぐらいの白熱を作ればいいと、問答無用で焚きつける「Departure」を投下。曲の勢いもそうだが、この勝ち気なスタンスも実に彼ららしく、何だかスッとする瞬間にもなった。

 グルーヴ感満載で突如訪れる加速もたまらない「Karma」、<Don’t play around who killed my voice?>という歌い出しが取り巻く状況にも重なって胸を打たれた「Hope」、ガツガツと踊らずにはいられない「Life is...」と続けるのだから、会場の熱気は天井知らずだ。

 ここでひと息つくようにリラックスしたムードを展開。MCでのちょっとした和ませる話も、龍踊りなどのBLAZE UPならではの演出とリンクさせていく。そこまで深い考えはないのかもしれないし、あくまで思いついたことを話しただけかもしれない。ただ、そういったことが生まれる必然性みたいなモノも感じてしまった。

 そんなムードから「調子よくやっていきましょうよ」と庵原が告げ、放たれたのは「High Tide」。温かく、どこか郷愁を感じる曲を丁寧に紡ぎ、冒頭のアルペジオから絶妙なタイム感で庵原が歌いだした「Set the fire」へ。先ほどのMCから一転、胸を熱くさせる曲を連打。この振り切りも実にいい。

 そして、地元の仲間ザ・アンドロイズのカバーである「Once Again」。ソリッドでありながら味わい深いロックンロールナンバーで勢いづけ、さらに踏み込むように「Knockin’on the door」へ。会場全体をガサッと持っていくノリが最高だった。

 「この日ばかりはありがとうしか出ません。僕ら、シンプルに性格が悪い人たちですけど(笑)、今日は心から言います。ありがとうございます!」と庵原が感謝を伝え、BLAZE UPの歴史を振り返る。長崎NCC&スタジオ、長崎Studio Do!、神の島公園、ハウステンボスと会場を移しながら、現在は出島メッセ長崎。今でこそ多くの協力もあって環境が整ってはいるが、それこそ神ノ島公園では草刈りからスタートしたというほどDIYだったBLAZE UP。今年は座席指定からオールスタンディングとなったこともあり、より一層の感慨深さがあったに違いない。

 みんなが喜びを改めて噛み締めているところに、前へ進もうと背中を押してくれる「Wake Up Call」は美しすぎるセレクト。オーディエンスを心地よく揺らし、曲中に庵原が「なんで、お前ばっかビール飲んで!」と松崎をイジる場面もあった「Love and Hate」でもう一段階熱気を上昇させ、本編ラストは「Steady」。どんな状況だとしても抗ってやる、というSHANKのマインドが投影されてるようでもあり、華々しくライヴを締めくくってくれた。

 アンコールでは「Wall Ride」、「Honesty」と連投し、激走するショートチューン「submarine」でフィニッシュ。爽快感とともに心が温かくなる、鮮やかなステージだった。
 


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