LIVE REPORT

Wienners "CULT POP WORLD" LIVE REPORT!!

Report by Chie Kobayashi
Photo by かい

2023.8.3 @Zepp Shinjuku
Wienners "CULT POP WORLD"

 

Wiennersにとって、これまでで最大キャパでのワンマンであり、自分たちを表す「Cult pop」を掲げたワンマンであり、そしてメンバーのKOZO(Dr)の脱退前最後のライブとなった「CULT POP WORLD」。玉屋2060%(Vo, Gt)は常々「自分たちのライブは走馬灯のようでありたい」「悲しいことを歌うときほど明るくいたい」と言っているが、この日の祭りのようなライブも、まさにその言葉を体現したような一夜だった。

 

「2023年8月3日、Zepp Shinjuku、世界中の全ての熱狂、感動、混沌、祭りを集めて、我々WiennersがCULT POP WORLD開催宣言します。お前ら全員、かかってこい!」と玉屋2060%が高らかに宣言し、祭りは幕開け。「蒼天ディライト」、玉屋が「音楽の神様、今日Zepp Shinjukuに集まったこいつらがとち狂ったようにブチ上がることをどうかお許しください」と祈りを捧げてから始まった「GOD SAVE THE MUSIC」と、さっそく会場内には大きな音と大きな夢が満ち、まさに“お祭り騒ぎ”に。この日のテーマソングとも言える「Cult pop suicide」でさらにぶち上げたあとには、大きなミラーボールが回りディスコを思わせる「ジュリアナ ディスコ ゾンビーズ」、どでかい「頑固一徹!」の声が広がった「TRADITIONAL」、サンバのリズムに乗せた「ULTRA JOY」、和の雰囲気をまとった「 SHINOBI TOP SECRET」と、世界中の音楽、各地のお祭りモードを集約させる。

 

ここで突然、筆者の目線が出てきて申し訳ないのだけど、私はこの日のライブを、2階席で見させてもらっていた。ステージもフロアも上から見えたのだけど、ステージから音が鳴り、観客はそんなWiennersの楽曲にあわせて掛け声やシンガロングを息ぴったりに返し、楽曲がエネルギーを増してぐんぐん大きくなっていくのが、まるで目に見えるようだった。声出し禁止の時期にもWiennersのライブを見させてもらっていたし、そのときも確かに熱量に満ちていて物足りなさは感じなかったけど、やっぱりこうでなくちゃと思わされた。それでいて、観客は自由自在に踊っていたのも印象的。同じ曲を聴いて、同じライブを見て、ぴったりなタイミングでシンガロングをしているけれど、踊り方はそれぞれ。本当に世界中の人たちが一堂に会したお祭りみたいだ。


玉屋とアサミサエ(Vo, Key, Sampler)のラップの掛け合いが印象的な「ASTRO BOY (Black Hole ver.)」では、玉屋がギターを置いてフロアへ進む。「シャングリラ」では、KOZOのドラムに乗せてクラップが広がり、“世界一美しい歌声”が響き渡る。まさに観客と、祭りを作り上げていく。一方で「午前6時」では玉屋が弾き語りで、ひときわ優しい歌声を聴かせる。<午前六時 ひとりぼっち>そう紡がれた楽曲が、Wiennersのお祭りを掲げたZepp Shinjukuに響き渡る様の美しいことと言ったら。

 

そんな祝福の日に初披露された楽曲がある。コロナ禍にTwitterでファンからアイディアや歌詞を募るという“リプライ作曲”を経て出来た楽曲「カフノリカ」「Yahman」だ。彼らは自粛期間を経てライブを再開させても、この2曲だけはライブで披露していなかった。∴560∵(Ba/Cho)が「やっとみんなで歌えます!」と喜びを爆発させると、冒頭の「1、2、3、4!」のカウントから大合唱に。ステージ後方のビジョンには作曲時のツイートややりとりなどを使ったMVが写しだされ、当時の不安感や、その中でワクワクさせてくれるWiennersに感じた光などを思い出させた。演奏後には4人は「マジで最高!」と高揚し、「よろこびのうた」へ。最高な気分のときに歌いたい曲、最高な気分を言葉よりも雄弁に表す楽曲があるのが、“喜怒哀楽の先”を音楽で届けたいと常に言っているWiennersだ。メンバーも観客も、みんなで同じ感情を抱いて、それが爆発して、この世で一番綺麗な場所になっていく。

 

現メンバーになってから初めてリリースされた「みずいろときいろ」も久しぶりに選曲される。3人がKOZOと向かい合う場面もあり、思わずぐっとくる。さらにこんな暑い夏にぴったりな「SOLAR KIDS」、そして最新曲「TOP SPEED」で駆け抜けるように本編は締めくくられた。本編では、ほぼKOZOの脱退にフォーカスを当てることなかったこの日のライブ。ただただWiennersのお祭りを繰り広げ、観客はそんな彼らの音楽に体を委ねているうちに、あっという間に本編が終わってしまった。<離れても一生一緒ね バイバイ>と歌う最後の「TOP SPEED」で、ふと我に返る。

 

再び4人が姿を現したアンコールで、ようやくKOZOが口を開く。「今日は何喋ろうかなとずっと考えてたんですけど、そういうの関係ないなっていうくらい楽しかったです」と笑顔に。しかし改めて最後のステージであることを噛み締め、Wiennersに加入する直前、何もなかったらドラムをやめようと思っていたことを明かした。そんなKOZOの言葉を受け、玉屋もオリジナルメンバーが抜けたときのことを振り返り「2人(KOZOとアサミサエ)がいなかったら、Wiennersはあのままフェードアウトしていたかもしれないんですよ」と話した。本編でめちゃくちゃ楽しませてくれて、感情が高ぶったあとで、こんな話されたら泣いちゃうよ。でも、それこそがWiennersの音楽であり、Wiennersのライブなんだ。

 

……と、寂しくなってしまったけれど、Wiennersの祭りはまだまだ続く。本編後半「UNITY」演奏前に玉屋が語った言葉。この言葉に、彼らの音楽にとてつもない力が宿っている理由が改めてよくわかったので、最後に、彼の言葉を記しておきたい。

「俺は“音楽で一つになる”ということを目指して「CULT POP WORLD」、ここで音を鳴らしてます。一つになるっちゅーのは、みんな同じになるってことじゃない。それぞれ違った思い、思想、感情、色、景色、表情、言葉、その違ったものが、違ったまま、混ざり合ったときにできる、なんかよくわからないでっかいうねりみたいなものが見たくて、俺は鳴らしているわけですよ。でも一つになるっていうのはすごく難しいこと。一つになるには、賛同はしなくてもいいけど、お互いを認め合わないといけない。お互いが違うっていうことを知らないといけない。いろんなことを知ってこそ、一つになれる。同じになったらつまんない、一つになりたいんだ。一つになったときに生まれる、わけわかんないうねり、感情の高ぶりで、それこそ喜怒哀楽の向こうにいけるんじゃないかなと俺は信じて、音楽を鳴らしてます。そして音楽を信じているし、その音楽を聴きに来ているあなたのことも信じています。その全員違った表情で、全員違った歌声で、一つのハーモニーを奏でたら、めちゃくちゃ最高なんだよ。だから音楽は最高なんだよ。これからもとてつもない景色が見れる事を信じているし、お前らのことも信じてるから。俺たちのことも思いっきり信じてくれ」

とち狂った世界でも、一つになれる。それを証明したのが、この日の「CULT POP WORLD」だった。


セットリスト

01. 蒼天ディライト
02. GOD SAVE THE MUSIC
03. Cult pop suicide
04. ジュリアナ ディスコ ゾンビーズ
05. TRADITIONAL
06. ULTRA JOY
07. SHINOBI TOP SECRET
08. おおるないとじゃっぷせっしょん
09. 恋のバングラビート
10. FACTION
11. Justice4
12. ASTRO BOY (Black Hole ver.)
13. シャングリラ
14. 天地創造
15. 午前6時
16. カフノリカ
17. Yahman
18. よろこびのうた
19. みずいろときいろ
20. SUPER THANKS
21. LOVE ME TENDER
22. UNITY
23. SOLAR KIDS
24. TOP SPEED
<アンコール>
01. Hello,Goodbye
02. レスキューレンジャー
03. 子供の心
<ダブルアンコール>
01. Idol
02. Cult pop suicide

>>Wienners Official HP