LIVE REPORT

"PUNK IN SUMMER 2023" LIVE REPORT!!

Report by 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
Photo by Daiki Miura / イノコシゼンタ

2023.8.30 @名古屋Diamond Hall / SPADE BOX
 "PUNK IN SUMMER 2023"

 

39度のとろけそうな日、なんて「ありえない夏」を歌っていたあの頃から半世紀経って、今じゃそれくらいこの地球の気温は上がっていて、それにも関わらず、さらに夏を暑く、熱くしちゃうフェス「PUNK IN SUMEER 2023」が8月30日に名古屋はDiamond Hall、SPADE BOXにて開催された。夏の終わり、残暑を猛暑にした「PUNK IN SUMMER 2023」を立ち上げたのは名古屋のインディーズレーベルTRUST RECORDS。夏を終わらせてたまるかと全国各地から名古屋に大集結したパンクでサマーなバンドたちによる熱戦、烈戦、超激戦。あの場にいた人なら分かると思うけれど、体感温度は53度だ。


「PUNK IN SUMMER」というだけあって、それぞれのパンクを貫くラインナップが集ったこの日。Diamond HallではKUZIRA、SHANK、dustbox、SHADOWS、COUNTRY YARD、Dizzy Sunfist、Track's、ENTH、May Forth(O.A)が、そしてSPADE BOXではMaki、Some Life、BACK LIFT、POT、HOTSQUALL、かずき山盛り、SideChest、ONIONRINGが熱演。さらに別会場であるLive & Lounge Vioでは「EAT A SLICE. MEET JERKS」と題したフード&DJイベントも同時開催。DJのYAMACHAN、Kevin、Okada、さっちゃん、Ken$uke、Mareiがお腹も心も満たすパーティーを行っていた。そしてもうひとつ、世界最小規模ライブハウスであるRADminiによる「裏PUNK IN SUMMER 2023」も開催。新たな風が名古屋に吹き始めていることをMORGIC、Beat Light、SLACKが見せつけた。

夏休みとはいえ平日の名古屋のライブハウスにこれだけの人が集まっていることにグッとくる。「PUNK IN SUMMER」の発起人であるTRUST RECORDS綿谷“wata”剛は開催に先駆け「フルキャパシティに戻るDiamond Hallで汗と唾に塗れたイベントをやりたい」と語っていた。当たり前だったことが当たり前じゃなくなって、沢山の規制の中でそれでもライブハウスというカルチャーを守る為、バンドも、ライブハウスも、音楽ファンも戦ってきた3年間。なにくそって思うことだらけだった。まじかよって思うことだらけだった。でもそんなときこそ、そんなときだからこそのPUNKだと思っていた。2023年に「PUNK IN SUMMER」が始まったことは、抗って抗って抗ってきたライブハウスの逆襲の幕開けのようにも感じる。


トップバッターはオープニングアクト大抜擢のMay Forth。夏の終わりに終わらない夏のセレナーデを叩きつけるカンタ•デ•ラ•ロッチャ。メンバーの脱退により一人になったMay Forthはサポートメンバーを迎え活動中であるが、永遠なんかじゃなくこの瞬間に全てをかけた全身全霊シンガロングの美しさはMay Forthがスリーピースバンドであること、スリーピースバンドで在り続けることを宣言しているかのよう。この街、この夏、神様の目も届かない場所ライブハウスで見つけた綺麗なもの。ずっと忘れないでいたい。その存在を確かに叩きつけたMay Forthによって「PUNK IN SUMMER」が灼熱確定したナイスO.Aだった。


SPADE BOXトッパーはONIONRING。グッドメロディが鳴り響いてサマーエンドはエンドレスサマーになる。誰かの為じゃなく自分自身に向けて放つ歌が回り回って誰かの心を動かすんだから音楽って凄い。夢中になれることがいつか凄い奴にするって噂が本当かもしれないって、新曲「Still Kids」が響き渡るライブハウスのど真ん中で実感したことがある。子供のままじゃいられないけど子供でいられる場所がある私達は最高だ。


エンジョイ俺達のサマーっていうか年中真夏みたいなENTHがぶちまける熱い放射とテキーラにまみれてダイアモンドホールも淫ら。胸騒ぎの腰つきに上から下からやられちゃってフロアもびっちゃびちゃのべったべた。ゲット・スタート・イクときは一緒2023夏。って「何を言ってるの?」って思うかもしれないけど、ENTHってそういうバンドなの。遊んで飲んで笑って過ごして、その全部が音になる。そりゃいいライブするはず。


PUNKには色んな形があって、SideChestのそれに共感することも多かったりする。悩みも葛藤も吐いた弱音も、声にして音にするSideChestの弱さは強さ。毎日に流されるけど、だからライブハウスに俺たちは集まって確かめ合って何かを取り戻そうとしているのかも。まるで疾走するセラピー。その先に、絶望の先に、光るものを掴めそうな気がする。もう一度言う。弱さを曝け出せること、それは強さだ。


「PUNK IN SUMMER 2023」のステージをもってユウキがバンドを離れることになったTrack's。今日だから感じること。今日しか感じられないこと。活動休止を経て、今日が現体制最後で、だけどTrack'sの夏はまだまだこれからで。迎えたこの日がPUNK IN SUMMERで良かった。何回も夏を数えて、過ぎて、また新しい夏がきて。ビートは続くよ何処までも。


かずき山盛りの何が山盛りか今日のライブを観れば分か…いや、やっぱり分からないけれど、答えなんかない方がいいこともある。やっていることが答えになる。ナンセンスでハイセンスなディスイズメロディックパンクの新しい形(なのかな。知らんけど)。お賽銭がフロアを舞い、ユニコーンがフロアを泳ぐ光景とか、なんなのマジで。早くちゃんと誰かに怒られたらいいのに。


Dizzy Sunfist、バリヤーマン。ENTHお家芸のテキーラガールも飛び出して今日のPUNK ROCK PRINCESSたちはどうやら暴れん坊将軍スタイル。夢を見て、それ以上に現実を見ているからこそ、語る夢の説得力が夢見た夢を溢れさせるし、ワクワクを100倍にする。今をちぎり取って、明日に投げつけて、Dizzy Sunfistが発する全てがPUNKを前進させると割と本気で思っている。


HOTSQUALLがライブハウスで歌い続ける理由、ステージに立ち続ける意味が全部そのままドバドバ溢れ出てフロアに広がっていくあの感じ。伝わり繋がりこうやってメロディックパンクはライブハウスでずっと鳴ってきたんだ。絶対的な経験値とそれでいてまるで初めてライブをするような瑞々しさ。愛し愛され24年目の衝動が照らした明日。未来に希望が持てるのはHOTSQUALLがずっとそこにいるから。


空から降り注がれるような、そして地から突き上げるような、パンクロックの、COUNTRY YARDの本質を観た気がする。何度もステージ前方に赴き拳を突き出すSit。握った拳のその強さと優しさもまた本質。心のずっと奥の方にある熱く燃え上がる感情は夏のせいじゃない。感じたこと全てを大切に抱きしめたい。COUNTRY YARDを見て熱くならないなんて嘘だ。


がむしゃらに踏み込んだあの日の一歩がキラキラ輝くこの瞬間に繋がっているんだって、POTから今日もパワーを貰って漲ってハッスルするっす。終わらない夏、輝くフロア、調子乗って笑い飛ばして、皆んなで作ったこの景色。繋いで続けて大きくなれ。どこでもいつも誰とでも笑顔でなんかいられないけれど、POTが居てくれるだけで全部ひっくり返るんだから凄い。


超武装した機関車からありとあらゆる攻撃を、重く、速く、かつポップにぶっ放すSHADOWSのライブに狂喜乱舞するフロアの遊び散らかし方。目の前の光景を観ながら、この数年間ライブハウスがどんな状況だったか思い出す。戦って抗ってきたこの勝負、ライブハウスの在り方、本当の自由を完全に取り戻したSHADOWSと俺たちの勝ちみたい。


吐きかけた弱音を飲み込んで、立てた中指に人差し指を足してピースマークにして、そうやって戦い続けてきたBACK LIFTのパンクロックが作り上げる笑顔の連鎖。BACK LIFTのような存在がいるから、ライブハウスに居るときは少年や少女のような汚れの無い気持ちで居られるのかもしれない。あの頃のTRUSTを押し上げた足跡に嘘がないことを証言するようなライブにも胸が熱くなる。


dustboxの歌が、ビートが、そのユーモアが、色を付けた矢印みたいにステージからフロアにビュンビュン飛び立ってグルグル回って返ってきて、胸の真ん中に突き刺さった時、失くしていた自分を思い出すような、全部を洗い流してくれるような、そんな感覚を覚える。そして終わらない雨を抱きしめた夜が朝を迎える。dustboxを観ながら本当の自分に会えた気がした。流石に泣く。


優劣も窮屈もこうしてああして壁にドーン。赴くままに思うがままにセンスとアイデアをちょいと詰めて、きざみ生姜にごま塩振ったらこんなん出来ました、Some Lifeの覚醒ミュージック。これが合法ってパンサマまじかよ。飛んでトんで回れ回れ音楽。もう全部夏のせいにして、どうにかなっちゃって。「PUNK IN SUMMER」においてSome Lifeが法律なのです。


しかし色んなことに遮られてきたこの数年。でも大丈夫。俺たちを邪魔するものなんてもう何もない。焚きつけて立ち向かうSHANKが照らすその道を、バンドもライブハウスも俺たちも歩き続ける限り、パンクは、ライブハウスは死なない。残暑にブレイズアップするSHANKに着火させられたフロアの熱量は俺たちの夏を完全に取り戻した祝福の狼煙のよう。


いつもなら夜明けを待つことの方が多いけれど、今日みたいな、こんな夜なら朝は来なくてもいい。価値観ごと変えちゃうほど、今日のMakiには何かを動かすパワーが溢れていた。爆音の中で美しく響く祈りのような言葉たちが頭の中でリフレインし続けて鳴り止まない。どうかまた。いつだって。それって今。


PUNKは人生を変える。きっと今日のKUZIRAのライブを観て、人生が変わった人もいる。袖には沢山の先輩バンドマン。例えるならセルゲーム戦の孫悟飯。何も変わらないまま絶対的な強さを身につけた今のKUZIRAはさながら超岐阜人。PUNKの持つパワー、エネルギーを受け取って、今度は放って、そうやって次へと繋がっていく。PUNK IN SUMMER 2023の大トリが彼らだったことに沢山の意味があった。時代はKUZIRAに委ねてる。

夏の終わりを感じる少しセンチメンタルな時期に開催された「PUNK IN SUMMER 2023」でバンドが、TRUST RECORDSが教えてくれたのは、PUNKを前にしたとき夏は永遠に終わらないということだ。今日のことを思い出せば、俺たちは何度でも夏の匂いをかげる。思い出はアイスクリームみたいに溶けるかもしれないけれど、だったらまた夏を探せばいい。大丈夫、きっとまた次の夏もTRUST RECORDSはやってくれるはず。2024年、また夏に会いましょう。