ピザオブデスの新プロジェクト「PIZZA OF DEATH FAMILY」始動、意図を横山健が語る
話題の新人ガールズロックバンド・サバシスターがPIZZA OF DEATHに所属、同時にPIZZA OF DEATH RECORDSが新たなプロジェクト「PIZZA OF DEATH FAMILY」を立ち上げたというニュースが世間を賑やかせた。この「PIZZA OF DEATH FAMILY」とは何なのか。PIZZA OF DEATH RECORDSの代表取締役である横山健に、ショートインタビューという形で答えてもらった。
Q: サバシスターがPIZZA OF DEATHに所属することが決定した上で、PIZZA OF DEATH RECORDSから音源をリリースするのではなく、敢えてメジャーレーベルと組んだのはなぜですか?
横山健(以下:健)うーん、直感(爆笑) でも誰もが「彼女達はメジャーでやるべきバンドだ」と納得するでしょう。インディーの色を必要とするバンドではないと思います。当然社長として「我が社でリリースしたい」という気持ちがないわけではなかったですけどね。しかし PIZZA OF DEATH はとてもイメージが強くてカラーのはっきりしたレーベルなので、それが彼女達の将来を限定的にする可能性がある、と冷静に判断しました。メジャーから出すのでもメジャーならどこでも良いというわけではなく、話し合いの中でポニーキャニオンが我々と同じような熱量を持ってバンドに関わってくれると判断したので、ポニーキャニオンと組むことにしました。ひとつの場所だけでなく、メンバーと2つの大人達の会社で知恵を出し合いながらやっていけば、きっと楽しいアイデアに満ちた毎日が待っているのではないか、と最高にポジティブな決断です。
Q: サバシスターのなちには「PIZZA OF DEATHのロゴを背負いたい」という強い想いがありました。サバシスターのユニフォームを作るにあたり、PIZZA OF DEATH RECORDSのロゴではなくPIZZA OF DEATH FAMILYのロゴを新たに作ったのはなぜですか? またFAMILYとつけたのはどうしてですか?
健:サバシスターと組む時に、なちがそう思ってくれていたように、僕も「サバシスターにピザロゴを背負ってもらいたい!」と思いました。僕もそのTシャツを着たい。しかしよく考えてみれば、ピザロゴのTシャツは PIZZA OF DEATH RECORDS からリリースしているバンドが作るものじゃないですか?サバシスターは PIZZA OF DEATH のマネージメントに所属するわけで、RECORDS から音源をリリースするわけではない。サバシスターの PIZZA OF DEATH RECORDS のロゴが入ったTシャツがあっても誰も気にしないかもしれませんが、そこの整合性は僕が気になってしまいました。しかしサバシスターにピザロゴを背負ってもらいたい気持ちは変わらない。しかもなちの強い希望があるなら、むしろマネージメントとしては実現させなければいけないことで。なにしろ僕自身がバンドにマネージメントとして関わるということ、その大きな役割/仕事のうちの一つに「バンドの夢を実現させること」ということを言語化できるくらい強く思っています。それがロゴの入ったTシャツひとつ作れないようでは(困)、となるわけです。しかし三日三晩寝ずに考えたら「あら?RECORDS じゃなくて FAMILY って入れればよくね?」となりました(爆笑) マネージメントと英語で入れるとなんかカタい、というかシックリ来ない感じがしていまして......彼女達との関わりがすでに始まっている中で、すごく大きく、強く感じたことが「ファミリー感」なんです。僕達は責任を負って仕事をする立場ですが、「サバシスターのメンバーの人生の大切な時期を預かるんだ」ということを、仕事だということ以上に意識として強く持ち始めました。我々は人生の一部を重ね合わせて日々を過ごす「FAMILY」なのです。この言葉がピッタリです。お陰で PIZZA OF DEATH RECORDS 以外にも PIZZA OF DEATH FAMILY という新しいブランド、といかアウトプットチャンネルができました。
Q: 元々はHi-STANDARDのレーベルとして設立したPIZZA OF DEATH RECORDSでしたが、その後、MOGA THE ¥5のCDをリリースしたことによって様々なバンドと、レーベルとして関わってきました。そして現在ではマネージメントとしてもバンドに関わっています。さらに今回のように最初からメジャーとタックを組んで打ち出していくという新たな試みもします。こうして様々なカタチで健さんがPIZZA OF DEATHの代表としてバンドと関わっていくことについてのモチベーションを教えてください。
健:Hi-STANDARD の活動をサポートするためだけに設立した会社ですが、様々なパンクバンドのリリースを20年以上に亘って手掛けてきました。基本的にパンクバンドは「セルフマネージメント」なので、マネージメントを必要としません。しかし音源リリース時のサポートやツアーのブッキングなどを通じ、我々はマネージメントの機能も少しずつ果たしてきたと言えます。2004年に Ken Yokoyama が始動した時には、PIZZA OF DEATH のマネージメント機能は必要不可欠でしたが、どこからどこまでがマネージメントの仕事なのかは判然としないまま進んで行きました。しかし WANIMA とのマネージメント契約をきっかけにマネージメントの機能を強化し、しっかりと我が社でもバンドのマネージメントをできるという実績を作りました。そもそも WANIMA は元々 PIZZA OF DEATH RECORDS から音源もリリースしていたのですが、音源はメジャーから出すようになってもマネージメントは昨秋まで継続していました(現在は退社)。そして今回サバシスターと組むに当たり、音源はポニーキャニオンにお任せし、弊社は最初からマネージメントを手掛けるという、今まで私どもがやったことのない形にトライします。なぜこういったバンドとの関わりの変化が起こり、それを受け入れ挑戦していくのか......いろいろな要因が考えられます。まずは音楽の聴かれ方がCDからサブスク中心になり、インディー1社だけの力でできることに限りがある時期であること。これは今後もその傾向が強くなるのか、昔のような我々にとって良い時代が戻ってくるのかは全く定かではありません。それから、手掛けたいと思うようになったバンド達の変化。以前はそれこそパンク/メロディック系のバンドの数も多く、みな元気で魅力的でした。しかし今、自然と耳に入り、自分もファンになってしまうようなバンドは、メロディックパンクではないサバシスターでした。僕は、PIZZA OF DEATH をパンク/メロディック系のバンドのための専門レーベルにしたい、とは20年以上前から考えていませんでした。そしてマネージメントという機能も身に付けた今、カッコ良いバンドと手を組むためなら形は問いませんし、なんの不安も迷いもありません。そうやって柔軟にやって行けば、自分の一番のモチベーションである「カッコ良いバンドと関わる/世の中に輩出する」という軸はブレないだろうと考えています。
Q: 新たにFAMILYというブランドを立ち上げたことに対する期待、または今後の展望などがあったら教えてください。
健:サバシスターが、我々にとって「1stアルバムからメジャーでリリースし、PIZZA がマネージメントをやる」初めてのバンドになります。今後これに似た形で関わるバンド達が現れると感じています。そのためにこの「FAMILY」というブランドや理念が突破口となって、大きく門戸が開かれることになったらいいなぁと期待をしております。しかしね!結局「サバシスター専用」でも構いやしないですし!!
ただ「あらゆる可能性を否定しない姿勢でいたい」とは思います。このブランドが上手く行こうがイマイチだろうが、結果はあくまでも結果論なので、大したことではないと考えています。成功するもんもあれば、上手く行かないもんだってあるもんです。トライするという事実に価値があるんです。せっかく PIZZA OF DEATH FAMILY というものができたのですから、まず門戸を開き、あらゆる可能性を否定せず、ワクワクしてこれを使っておもしろいことをやって行きたい、という気持ちが明日以降を作ってくれるんだ、と考えています。