LIVE REPORT

Maki Tour 2023-'24“清老頭” LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by takeshi yao

2024.1.21 @Zepp Shinjuku
Maki Tour 2023-'24“清老頭"Final

 


「やってやるぜ!」
山本響(Vo& Ba)が声を上げ、まっち(Dr&Cho)がズタズタズタと連打する2ビートとともに「風」から演奏になだれこんだとたん、観客がステージに押し寄せ、早速、ダイブが始まる。そこから「音楽信じてやってきたぜ!」「歌舞伎町のど真ん中、誰よりかっこいいロックバンド、Maki!」と観客の気持ちを煽るように山本が勇ましい言葉を投げかけながら、「文才の果て」「シモツキ」と繋げ、Makiらしい叙情が滲む「soon」で佳大(Gt&Cho)が体をのけぞらせ、トレモロピッキングでギターをかき鳴らした直後、山本は快哉を叫ぶように言った。

「感慨深いな。こんな大勢の人に見てもらえるなんてうれしいです!」
昨年10月4日に配信リリースした『Toy box』をひっさげ、全13公演を開催した「Maki Tour 2023-'24“清老頭”」。この日、迎えたツアーファイナルも含め、全公演ソールドアウトで有終の美を飾ったこともさることながら、そのツアーファイナルはいわゆるデカ箱と言えるZepp Shinjukuを、ワンマン公演としてソールドアウトできたのだから、Makiのメンバー達はもちろん、彼らのファンも感慨深いものがあったに違いない。

しかし、この日の一番の見どころはそこではなく、VJによる映像を投影しながら、というデカ箱ならではの演出も交えながら、むしろメンバー達の中でむくむくと頭をもたげてきた向こう意気とともにMakiというバンドが持つ矜持を改めて見せつけたことだと思う。


「泥まみれのところから始まったバンドなので、それを男らしく見せたいと思っているんで、最後までよろしくお願いします!」
山本が声を上げ、バンドが「春と修羅」から2ビートを織りまぜながら「秋、香る」「斜陽」「ユース」「pulse」と曲間をほぼ空けずにノンストップでたたみかけると、観客のダイブはどんどん勢いを増していった。観客が荒れ狂う大波と化したフロアは、まさに壮観の一言だ。

「どんな会場でも変わらずに俺達は泥にまみれたライブハウスでやってきたことしかやるつもりないんで、そのつもりで一緒にライブしようぜ!」(山本)
そう語る山本の言葉には自信に加え、これっぽっちも揺らがない信念が感じられた。

この日、バンドが2時間にわたって演奏したのは、『Toy Box』の全8曲を含む新旧の28曲だ。これでもかとダイバー達の気持ちに火を点けた序盤から一転、中盤は観客がぴょんぴょんと跳んだリフもののオルタナロック・ナンバー「No.11」、観客が肩を組んでサビをシンガロングしたやはりリフものの「Lucky」、観客が体を横に揺らしながらバンドの演奏に聴きいったメロディアスな「Toy box」、「聞かせてくれ!」と叫んだ山本に観客がシンガロングで応えたフォーキーな「1997」と繋げ、フロアにダイブとは違う景色を作り上げる。

静と動を大胆に使い分ける轟音の演奏が観客の気持ちを駆り立てながら、バンドが持つポテンシャルをアピールした「Landmark」を挟んでから、イントロで奏でたギターのアルペジオが観客に声を上げさせた「RINNE」から始まった後半戦は、「フタリ」「生活の行方」「銀河鉄道」「嫌い」「boys & girls」「五月雨」とお馴染みの曲を繋げ、観客に再びダイブをさせつつ、同時に前半戦以上にシンガロングの声も上げさせていく。

ノスタルジックなメロディに黄昏れた風情が滲む「boys & girls」は、山本がベースで加えるダイナミックなグリッサンドも聴きどころ。「ここで1曲挟んでおくか」(山本)と急遽、セットリストに加えたと思しき「五月雨」は、Makiのレパートリーの中ではオーソドックスなメロディックパンク・ナンバー……と思わせ、2ビートを軸に大胆にリズムチェンジを繰り広げるまっちのドラミングで差を付ける。

そこに繋げた「揺れる」のミッドテンポの8ビートの演奏に観客がじっと聴きいったのは、エモい歌メロもさることながら、弱さを曝け出した歌詞が胸を打つからだ。そんな曲の良さがライブにおいてもしっかりと観客に届いていると確信したのだろう。

「めっちゃ楽しい!」と山本は快哉を叫んだ。
その「揺れる」とともに『Toy box』におけるバンドの新境地をアピールしたのが、UKロック風のグルービーなロックサウンドが観客の体を横に揺らした「world’s end」だ。「歌ってみようか」と山本が声をかけ、観客にシンガロングの声を上げさせると、山本によるベースの速弾きをきっかけにバンドの演奏は一気に白熱! ぶっとい低音でリズムを刻んだ山本のベースプレイ、チョーキングでフレーズを泣かせた佳大のギターソロ、まっちの暴れ回るようなドラムの連打。どれも大団円にふさわしい渾身の熱演だったと思う。しかし、彼らにはまだまだ歌いたことがあった。

「今回、全13ヶ所いろいろな場所に行ったら、全箇所めっちゃ快く迎えてくれて。年々、俺らの曲を歌う君らの声のほうが俺よりも大きくなっていて、めちゃくちゃうれしいと思いながら、負けないようにがんばろうって肌で感じられたツアーでした。いろいろな場所に行ってきたけど、いつでも帰っておいでって思ってます。これからもいろいろなことが起こると思んで。どうしようもなく辛いとか、どうしようもなくウザイ奴が出てきたとか、どうしようもなく誰かと話したいとか、歌いたいとか、たまには泣きたい、めっちゃ笑いたいとか思ったら、ライブハウスで俺らずっと歌ってるから、そこに帰ってきてください。あなた達の帰る場所は間違いなくここです。みんなが帰ってこられるように命が続くかぎり歌い続けてます」(山本)
ツアーの手応えとともに、なぜ自分達がバンドを続けるのかその理由を今一度、自分自身の胸に刻みこむように語ってから、「その場所をこう呼ぶ!」(山本)と演奏したのは、もちろん、『Toy box』のキラーチューン「ホームタウン」。ギターリフを奏でる歯切れのいいコードカッティングとタイトなドラムが疾走感を作り出す一方で、聴く者を包み込む言葉とエモーショナルなメロディが観客の気持ちを鷲掴みにしていることは、エネルギッシュなバンドの演奏をじっと聴きいっている観客の姿からも明らかだろう。

そして、泥まみれのライブハウスでやってきたバンドの矜持を今一度見せつけるように「ストレンジ」を、そして再会を誓うように「平凡の愛し方」を披露。ダイブに加え、観客にシンガロングの声を上げさせながら会場を一つにすると、佳大がギターを抱えたまま客席にダイブ!

「超楽しかった!」という山本の快哉とともに終演を迎えたが、客電がつき、音楽が流れ始めても止まらないアンコールを求める観客の声に応え、バンドはさらに2曲、ダイブおよびシンガロング必至の「憧憬へ」「こころ」を演奏して、ダメ押しでライブハウスらしい熱狂を作り出した。そして、終わりがあれば、新たな始まりがある。
「終わることを楽しもうぜ。終わることを楽しめたら超かっけー大人だ」とこの日、山本がMCで語ったのは、Makiのこれからにわくわくしているからだろう。

「今日は特に発表はない。ないない。全然ない」と言いつつ、年明け早々、新たな目標を聞かせてもらえたことがうれしかった。
「俺、日本武道館の重みみたいなものがずっとわかってなくて。今度、友達のバンドがやるってなって、見にいこうと思っていて。今まで特に武道館でやりますってなかったけど、俺らがまだ若いうちに、30代になる前にできたらいいと思いました。それを目指してがんばってみます。30まで、あと2年か。ヤバいじゃん(笑)。いい感じに歳も重ねてきたんで、いい曲も書きつつ、やっていきます。これからもよろしくお願いします!」(山本)
Zepp Shinjukuを、自分達らしいライブのやり方で揺らしてやったという手応えは、Makiの3人にとって大きな自信になったことだろう。2024年もMakiの精力的な活動に期待している。

 

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